悪役令息に転生したが、全てが裏目に出るところは前世と変わらない!? 小心者な俺は、今日も悪役たちから逃げ回る

迷路を跳ぶ狐

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10.そんなことさせない

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 会う予定もなかった人に会ってしまい、俺は、震え上がりそうだ。
 ウィエフだって、俺とは話したくないだろう。適当に誤魔化して逃げるのが得策だ。

「あ、あの……俺…………急ぐので……」

 下手くそな愛想笑いのまま言うけれど、ウィエフは俺を逃さないとばかりに睨んでいる。

「……明日から、あなたたちには、魔法の武器を作るための素材を集めてもらうことになるのに、こんなところでふらふらと……何をしていたのですか?」

 じーっと、刺すような視線のまま見下ろされて言われると、それだけで俺はすくみ上がりそう。

 怖すぎる。

 なんでこの城はこんな奴ばかりなんだっ……一人くらい、友好的な奴がいてもいいだろう!!

「な、何も!! 何もしてません!! す、すみません! そ、そうですよね……そ、素材っ! 集めないと……あ、あの……俺、急いでて……こ、これで失礼します!」
「その竜は?」
「へ!?」
「あなたが抱いている、その竜です」
「あ、えっと……ね、眠っちゃった……じゃなくて、すみません……お、俺が眠らせたんです」

 正直に白状する。

 ウィエフに嘘はつかない方がいい。言ったところで彼はそれを見抜くし、不信感を与えると、彼は魔法で首を狙ってくる。

 ヴァグデッドを眠らせたのは俺だけど、それは仕方がなかったからで、そんなに糾弾されることもない……はず……

 自信がないまま恐る恐る言う俺の前で、ウィエフは首を傾げた。

「眠らせた? なぜそんなことを?」
「あ、あの、ちょっと……い、言い合いになって、彼が暴れ出してしまったので……」
「…………そうですか……ずいぶん急いでいるようですが……どこへ行くのですか?」
「じ、城主様に会いにっ……! その……し、城を傷つけてしまったので、その説明に……」
「……そうですか。では、早く行きなさい。城で起こったことは、つぶさに城主に報告するべきです」
「お、俺もそう思います! で、では、これで……」

 ヴァグデッドが起きて、また暴れ出したら困る。
 俺は彼を抱きしめて、ウィエフの横を通り過ぎようとした。

 それなのに。

「待ちなさい」
「へっ……!??」

 突然呼び止められて、驚いた。ま、まだ何か用なのか!??

「……その竜は、私が預かります」
「へっ……!? な、なんで…………あ!! し、食事の時間……」
「…………はい。そろそろ、その竜は食事の時間です……今日は私が用意することになっているので、こちらで預かります」
「えっ…………えっとぉ……」

 どうしよう……渡していいのか? いや……絶対にダメだ!!

 ゲームの中盤、主人公が竜の大群に襲われる事件が起こる。それは、ウィエフの仕業なんだ。

 ヴァグデッドの食事を用意し続けていたウィエフは、彼の食事に細工をして、ヴァグデッドを狂わせる。魔法にかかったヴァグデッドは、竜の大群を引き連れ、主人公を襲ってしまう。

 ヴァグデッドは、今は魔力を回復することも吸血も制限されている。その代わりに、最低限の力を補給することができるように、魔法の植物を使って作る食事を魔法使いに用意してもらわなきゃならない。普段はそれは城主が用意していたんだけど、ウィエフが代わると言い出すんだ。きっとその時から、ヴァグデッドを利用することを考えていたんだろう。

 でも、そんなこと、させるわけにはいかない。ヴァグデッドが狂って困るのは俺。
 ヴァグデッドと俺が接触することは、これから多分、避けて通れない。だったらこの竜がこれ以上狂って、一番困るのは俺じゃないか!! 勝手に狂わされてたまるか!!
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