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4.墓穴か?
しおりを挟むこうして俺が見捨てられたという結論が出た。
実の父親に、監獄とも揶揄される城に送られた時点で気づくべきだが、ちょっとくらいは期待していた。もしかしたら、本当に期待されているのではないかと。
そんなわけないか……俺だし。
分かっていたとはいえ、島流しを実感すると肩を落としてしまう。
だけど、凹んでいる場合じゃない。このままだと、俺を待つのはバッドエンドばかりだ。
再び俺は、慣れない愛想笑いで、ヴァグデッドに向き直る。
「えーっと……じゃあ、あ、あの、主人公くん、じゃなくて、あの……ティウルさんを知りませんか?」
「ティウル?」
「き、今日から、お……私と同じようにこの城に来ている人です。私に挨拶しにくる……じゃなくて、挨拶に行こうと思ったんです! 私が! 朝の挨拶の時、いなかったので!!」
「ああ…………忘れてるんじゃない? 彼は平民だし、公爵令息であるあなたに挨拶なんて、恐れ多くてできないのかも」
それでも来るんだって。
こうしてすでにゲームとは違うってことは、もしかして、もうどこかでバッドエンドが始まっているのでは……?
いつのまにか俺は、主人公くんに嫌われることしてて、いつのまにか泣かせていたりするのか!?
会ったことも顔を合わせたこともないけど……
むしろ、こうしてじーーっと待っていることが、相手を傷つけていたりするのか!? 主人公くんにしてみれば、むしろそっちからこいよ! ってことか?
魔力は主人公くんのほうが上だし、主人公くんにしてみれば、なんで俺が行くんだよってことなのかもしれない。
……それなら、俺から行くか。
他人に自分から挨拶に行くって、かなり緊張するけど……だけど行かなかったら行かなかったで不安なんだよ! 俺は!
「……どうかしたの?」
ヴァグデッドが首を傾げている。急に俺が押し黙ってしまったからだろう。
「なんでもないです……だったら私から挨拶に行こうと思うんです。あなた、城を案内してくれる、ヴァグデッドさんですよね? ティウルさんの部屋に案内してくれませんか?」
「ダメ」
即答!!?? なんで!!?? 案内役の人なのに!??
驚く俺から、ヴァグデッドは顔を背けたまま。
どうしよう……食い下がって挨拶に行く? 行かない?
もちろんゲームに、こんな選択肢はない。そもそも俺は悪役令息。主人公じゃないんだ。
だけど、どっちか選ばなきゃならない。
行きたくはないけど、これだけ来ないと心配だ。何かあったのかもしれないし、気づかないうちに傷つけていても困る。
「あの……できればお願いしたいんですけど……なんでダメなんですか?」
「……」
……なぜ黙る? なぜ顔を背ける? 言えない理由でもあるのか??
ど、どうしよう……
相手が黙ったら、俺はどうしていいのか分からない。いつか裏切る奴だし、慎重に接したいけど……
こんなシーンは、ゲームにない。俺はヴァグデッドとフィーディがこの城で初対面なことすら知らなかった。ヴァグデッドは、ゲームでは悪役の手下みたいな感じで、情報も少ないんだ。
何か言わないと……でも、もう話すことがない……
あえて言えばー……主人公くんをいじめないで、だろうか……
だけど、そんなのいきなり言うのおかしい。そもそも彼も、主人公に会ったこともないはず。つまり、まだ何もしていない。何も止めようがない。
「あ、あの……だ、だったら、しゅじ……ティウルさんが今どこにいるのか分かりますか?」
「……さっき会った」
「ほ、本当に!? いじめてませんか!? 追い出そうとしちゃダメですよ!」
「……え?」
あっ……しまった……初対面から俺は何を言ってるんだっ……!!
見る間に相手の顔が曇っていく。それはそうだ。だっていきなりこんなこと言ったら、変に思うに決まってる!! まずい……裏切られる日が近づいたか!?
いや待て、まだ早い。ここから巻き返せばいいんだ。
「ち、ちがっ……! 違う違う違う!! そ、そうじゃなくてあのっ……え、えっと……」
「なに?」
「あ、あの……わ、私は、いじめられてないかなって……ティウルさんが! ほら! 平民だし!」
「相手が平民だからって追い出すの? 公爵令息様は」
「違う違う違う! 違うんです!! そんなつもりじゃありません!!」
ますます慌てる俺。
これは……墓穴掘ったか?
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