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chap5.浸潤する影

74.届かない礼

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「さあ、ここにいる全員に奉仕してもらおうか?」

 チュスラスの言葉を聞いて、周りの男達は一斉にフィズに好色の目を向けてきた。
 その視線に、フィズはぞっとした。こんなにも人の視線が恐ろしいと思ったのは初めてだ。

 チュスラスは楽しげに言う。

「全員、満足させることができなければ……わかっているな?」
「そ……んな……」
「不満なのか? 奴隷が。早く皆様にお願いしたらどうだ? 犯してくださいと」
「くっ……う……」
「早くしろ。さもなければ、この男が処刑台にあがることになるぞ!」

 チュスラスに加え、給仕までもがフィズを急かしてくる。

「おい! 早くしろよ!! お前の勝手で巻き込まれた俺の身にもなれよ!」

 チュスラスに従うまでは、この悪夢は終わらないだろう。フィズは、もう逆らうことはせずに、早く終わるよう、ただひたすら屈辱に耐えた。自分のまわりで嘲るような目をしている男達に向き直り、頭を下げる。

「…………犯して……ください……」

 震えながらの声に涙が混じる。シグダードを撃った男の命令でこんなことを言わされる屈辱に、気が狂ってしまいそうだった。

「それじゃあだめだなあ? ちゃんと誘ってみろ」

 チュスラスに、誘え、と言われても、なにをすればいいのか分からない。しかし、やらないわけにもいかず、フィズは涙を流しながら恥を忍んで自分の後孔に指を突き立てた。

「ど、どうか……お願いします……私のここに……皆様のものを入れてください……」

 泣きながら言うフィズに嘲笑が浴びせられる。そのままイケと言われ、フィズは前と後ろを自ら弄りながら大勢の前で果てた。

「ははははは! 浅ましい豚だなあ! そんなやつに皆様の大切なものをくれてやるなど、できるものか! 貴様にはやはり家畜が似合いだ! 馬小屋で馬にでも奉仕していろ!」

 笑いながら、チュスラスはフィズの後孔に巨大な張り型を突き立てた。尻尾の飾りがついたそれは、フィズの内壁をこじ開け、引き裂いてしまう。

「ぐああっ!!」
「はは……尻尾が似合うじゃないか。おい! そこのおまえ! こいつを馬小屋へ連れて行け! 貴様にはいずれ専用の小屋をくれてやる。それまではお馬様のお部屋を分けてやろう。ありがたく思え! ははははは!」

 チュスラスと周りの者に笑われながら、フィズは兵士に鎖を引かれ、部屋を後にした。







 フィズは、首輪につけられた鎖を引かれ、城の端にある馬小屋につれてこられた。
 全身が痛み、もう自分の意思では体を動かせそうにないし、動きたいとすら思えない。フィズは裸のまま藁の山の上に倒れ込んだ。

 鎖をつなぎ、フィズに一瞥もくれずに兵士が去っていった後、フィズはこみ上げてくる吐き気を我慢できず、その場に中のものをすべて吐いた。

「う……え……」

 周りには馬ばかりで誰もいないことで気がゆるんだ。あんな視線を向けられるくらいなら、馬しかいないここの方が心が安らぐ。そのままフィズは眠るように意識を失った。







 どれだけ寝たか分からない。誰かに呼ばれた気がして、フィズは意識を取り戻した。懐かしい、聞き覚えのある声だった。

 相手の名前を尋ねようと開いた口に、唇が重なった。口移しで水を飲まされているようだ。

「シグ……?」

 朦朧とする意識の中で彼の名前を呼ぶ。

 目がかすんで、はっきり姿の見えない相手は、フィズにもう少し休んでいてくださいと言って、今度は口移しで果物を食べさせてくれた。
 譫言のように礼を言ったが、相手には聞こえなかったようで、その人は何も返してこなかった。
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