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しおりを挟むキラキラが止まらないの。
だからわたしは歌うの。
数万もの聴衆が一堂に会するコンサートホール。巨大な空間はしかし、今やたった一人の少女に完全に支配されている。マイクを通じて拡散される少女の歌は大気を震わせ、今日この場に立ち会うことを許された観客たちの鼓膜を、心を容赦なく揺さぶる。
アイドル。
ただそこに立つだけで無尽蔵の輝きを放つ生ける偶像。彼女は人間であって人間ではない。人ならざる輝きは人ではないからこそ持ちうるもの。その輝きを求めて、数万の聴衆がこの場に足を運び、その数十倍もの観客が、あらゆるメディアを通じてステージ上の少女を見守る。
わがままに自分勝手に
でも、そんなわたしが好きなんでしょ
少女の投げキスに、あざとく閉じられる片目に、どう、と湧く幾万もの観衆。誰ひとり彼女のカリスマを疑わない。疑う余地などない。なぜなら彼女はアイドルになるべくして生まれた存在。アイドルとして生き、輝きながら死ぬ。まさに偶像。そう、私達だけのー-
だが、人は所詮、ただの人であり。
偶像だった彼女も、いつかはただの人に戻って。
そして悲劇は起こった。
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