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崩壊
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七月を迎える頃には、ベランダはすっかり賑やかになっていた。
スペアミントにカモミール、バジルなどがにょきにょきと葉を伸ばし、そろそろ葉っぱの一枚も収穫できそうな勢いになっている。ここ数日はあいにくの天気続きで、日照時間も少なくお世辞にも順調な生育とはいえないものの、裸の時期が続いただけに、芽を出して少しずつでも葉を増やしてくれているのが嬉しい。
土を流してしまわないよう、じょうろの水をそっと注ぐ。
「今日も元気だねぇ」
小さいながらも懸命に水を求め、成長しようとする命たちが愛おしくて、つい、そんなふうに声をかける。ベランダの外を見ると、今日もバケツをひっくり返したような土砂降りだ。が、今日はとくに外出の予定もなく、それに、眺める分には雨もそこまで嫌いじゃない。
今日は試験前の貴重な休みということで、一日かけて今までの勉強のおさらいをするつもりでいた。速水の協力の甲斐もあって勉強は順調に進み、今では、試験に出される予定となっている基本ハーブについては、目を閉じていても匂いだけで言い当てられるほどだ。
試験は今から一週間後。
あとは、体調さえ整えて臨めば、きっと、合格は間違いない……
ガチャ、と玄関の方でドアの開く音がしたのはその時だ。
渉の知るかぎり、この部屋の鍵を持っているのは渉のほかには家主の鷹村しかいない。その鷹村は、今日は名古屋の方でクライアントと会うことになっていて、早朝から新幹線に乗るべく東京駅の方に出かけているはずだ。時間的に行って戻ってきたとは考えられないから、忘れ物に気づいて取りに戻ったのだろう。
「早かったね涼、忘れ物?」
声をかけながら、玄関先に向かう。と――
「下の名前で呼んでるの。あの人のこと」
「……あ」
三和土に立ち尽くす人影に思わず渉は立ち止まる。細身の身体、顎のラインで切り揃えたストレートの髪、何より、人形のように整いすぎるほど整ったその顔は――
「み、御園、さん……どうして」
「どうして? 恋人が合鍵を使って恋人の家に上がることの何が不自然だとおっしゃるの?」
言外に〝恋人でない人間は出て行け〟と言われているような気がし、事実、それは反論の余地もないほどの正論で、渉は返す言葉もなく黙った。
まして今、渉は彼女に対して償いきれない罪を犯しているのだ……
「あ、あの、とりあえず、お茶でもお淹れしましょう、」
「結構よ。嫌いなのハーブティー」
「……そうですか」
取りつく島もない物言いに、渉は早くも気持ちが折れそうになった。
「と、ところで……今日はどのようなご用です? 社長が名古屋に行っていることは、御園さんも把握していらっしゃるはずで――」
渉の言葉尻も待たずに、大きな瞳がぎろりと睨んでくる。来ちゃ悪いのかよと言いたげな眼差しに、ますます渉はかける言葉をなくしてしまう。
このままでは久しぶりに例の病気が発症してしまいそうだ。今のうちに部屋に戻って薬を手元に確保しておくか……
「前の会社でのこと、調べさせてもらったわ」
「え?」
「大変だったんですってね……パニック障害と鬱病を発症して、心療内科に通いながら、それでも懸命に会社に通って」
言いながら御園は、ダイニングテーブルの椅子に腰を下ろす。今までのそれとは打って変わった優しい声色に、しかし渉は違和感しか覚えない。そもそも、あの御園がそんなものを調べてきたという事実それ自体、渉に言わせれば不安の呼び水でしかなかった。
業績の悪い店は、たとえ鷹村が開いた店でも潰しにかかるほど無駄を嫌う彼女が、何の理由もなく渉の前歴を調べにかかるわけがない。じゃあ一体、何のために……?
「でも驚いたわ」
「えっ?」
「あなたが、売り上げを伸ばすためにあんなことまでなさる方だったなんて……正直、見直したわ。なんて仕事熱心な方なんでしょうって」
「……?」
何のことを言っているのかわからず渉は小首を傾げる。と、御園は心底おかしそうに形の良い唇をにやりと歪めた。
「わからない? それとも、あなたにとってはあまりにも当たり前すぎて、それをいやらしいことと感じることもできないのかしら?」
その言葉に、初めて渉は息を呑む。まさか、この人が言おうとしているのは――
「ち、違います! あの時は、その……途中で怖くなって……」
「途中? ふん。どうかしらね。それを証明するものは、残念ながらあなたと、その担当者とやらの証言以外どこにもない。――ひょっとしたら二人して嘘をついていて、本当は最後までしっかり……ということも、ありえない可能性ではないのよ。私たち第三者に言わせればね」
「な……何を、言っているんですか、さっきから……」
「その穢れた身体で私の涼に近づかないでって言ってるのよ! あんたみたいなクズは、そのへんの変態でも相手してなさい!」
穢れた身体――唐突に叩きつけられたその言葉に、渉は視界がくらり傾くのを感じた。
何とかカウンターで身体を支え、怒りと悔しさで身体を震わせながら何とか声を絞り出す。
「うそじゃない……僕は……そんなこと、してない!」
そうだ。そもそも本当に抱かせていたら、無事にノルマも達成でき、あのままあの会社に残ることもできたのかもしれないのだ。上司からの風当たりも優しくなって、こんな厄介な体質を抱えることもなかったのかもしれない。証拠を見せろと言うのなら、この、ぼろぼろの身体と心がそれだ――
が、目の前の完璧主義者に、そんな理屈が通用するはずもなく。
「だから、あんたの言い分なんかどうだっていいって言ったばかりでしょ。それとも、所詮は地方の二流大出身のおつむじゃそんなことも理解できないのかしら? ――って、何よあれ」
怪訝そうな御園の声に、はっと渉は顔を上げる。その猛禽のような視線の先には、案の定、芽吹いたばかりのベランダの鉢植えが。
まさか、と渉が思ったときには、もう御園は椅子を立っていた。
「ま、待ってください……待って」
つかつかと足早にベランダに歩み寄る御園の背中を、渉は慌てて追いかける。が、まるで深い泥地でも歩くように、踏み出したそばから足が沈んでしまう。
駄目だ。また呼吸が、意識が――……
「こんなもの!」
パァン、と何かの弾ける音がして顔を上げる。ベランダに立つ御園の足元に、こなごなになった鉢の破片とともに鉢植えの土が無残に散乱しているのが見えた。
その土に混じって、ようやく増えはじめたばかりのミントの青葉が。
続けて御園はカモミールの鉢を蹴倒し、レモンバームの鉢を掴んで床に叩きつけた。バジルとタイム、セージの鉢を続けざまに叩き壊すと、ベランダに散乱したその土を、かかとで若芽ごとひねりつぶし、踏みつけた。
何度も。何度も何度も何度も……
「や、やめろ……やめろぉ!」
渉の激昂に、ようやく御園はベランダでの狼藉をやめた。もっともその頃には、すでに鉢は一つとして無事な姿で残ってはいなかったが。
「……やめろ?」
御園が、ゆるりとこちらをふり返る。その冷酷な眼差しに、渉は思わず戦慄した。
「あなた……何の権利があってそういうことを言うの?」
「……えっ?」
「気づいていないとでも思った? あなたが涼にどういう感情を抱いているか。どういう目で彼を見ているか。――でも残念ね。あの人が、涼が、あなたみたいなクズにふり返るようなことは万に一つもない。仮にあの人が、あなたに何かしらの優しさを示したとして、そんなものは本当の優しさじゃないの。強いて言えばそれはただの同情よ」
違う。そんなものじゃない。涼の僕に対する感情は――
が、なおも冷やかに渉を見下ろす御園の眼差しに、そんな渉のちっぽけな自信は他愛もなくぐらつきはじめる。最初に愛を交したあの夜から、すでに二週間以上の時間が経った。にもかかわらず鷹村の口からは、いまだに御園と別れたという話を聞かない。どころか今も、こうして御園本人が恋人として部屋に上がり込んでいる。
どういうことだ。本当は……本当の涼の気持ちは、じゃあ一体……?
「それと」
「えっ?」
「こういうの、本当にやめてくださらない? この部屋はね、涼に都会的で洗練された雰囲気を身につけてもらおうと、私が家具からインテリアからすべて何もかも計算に計算を重ねて完璧にコーディネートしたの。それを、こういう余計なもので穢さないでちょうだい」
「で、でも涼は、」
むしろ殺風景だった部屋が賑やかになっていい――あの夜、そう言って鷹村はガーデニングを許してくれた。芽を出せば一緒になって喜び、渉の努力を祝福してくれた。
「あなたもよ、山崎渉」
ぴしゃり渉の反論を遮ると、横面を張るように御園は言った。
「さっさと田舎に帰って、また前みたいに引きこもっていなさいよ。そもそも、あんたみたいな鈍臭い田舎者が涼のそばにいるってだけでも図々しいの。要するにあんたは不適格なの! 何もかも、存在すべてが不合格! 涼の友人としても、それにこの街の住人としてもね!」
そして、今なおカウンターのそばで崩れたままの渉の前に歩み寄ると、その眼前に一枚の封筒を投げてよこした。
木の葉のようにひらり舞い落ちたそれを、恐る恐る取り上げ、開く。中から現れたのは、渉の地元の空港へ向かう片道分の航空券だった。しかも、その出発日時は今夜。
「航空会社には、あとであなたがちゃんと飛行機に搭乗したかをチェックさせてもらうから。もし搭乗していなかったら――さっきのことを涼に話すわよ」
言い捨てると、あとはふり返ることなくつかつかと部屋を出て行った。
あとには、こなごなにされた鉢植えと無残に踏みにじられたハーブ、そして、故郷に向かう片道の航空券だけが残された。
スペアミントにカモミール、バジルなどがにょきにょきと葉を伸ばし、そろそろ葉っぱの一枚も収穫できそうな勢いになっている。ここ数日はあいにくの天気続きで、日照時間も少なくお世辞にも順調な生育とはいえないものの、裸の時期が続いただけに、芽を出して少しずつでも葉を増やしてくれているのが嬉しい。
土を流してしまわないよう、じょうろの水をそっと注ぐ。
「今日も元気だねぇ」
小さいながらも懸命に水を求め、成長しようとする命たちが愛おしくて、つい、そんなふうに声をかける。ベランダの外を見ると、今日もバケツをひっくり返したような土砂降りだ。が、今日はとくに外出の予定もなく、それに、眺める分には雨もそこまで嫌いじゃない。
今日は試験前の貴重な休みということで、一日かけて今までの勉強のおさらいをするつもりでいた。速水の協力の甲斐もあって勉強は順調に進み、今では、試験に出される予定となっている基本ハーブについては、目を閉じていても匂いだけで言い当てられるほどだ。
試験は今から一週間後。
あとは、体調さえ整えて臨めば、きっと、合格は間違いない……
ガチャ、と玄関の方でドアの開く音がしたのはその時だ。
渉の知るかぎり、この部屋の鍵を持っているのは渉のほかには家主の鷹村しかいない。その鷹村は、今日は名古屋の方でクライアントと会うことになっていて、早朝から新幹線に乗るべく東京駅の方に出かけているはずだ。時間的に行って戻ってきたとは考えられないから、忘れ物に気づいて取りに戻ったのだろう。
「早かったね涼、忘れ物?」
声をかけながら、玄関先に向かう。と――
「下の名前で呼んでるの。あの人のこと」
「……あ」
三和土に立ち尽くす人影に思わず渉は立ち止まる。細身の身体、顎のラインで切り揃えたストレートの髪、何より、人形のように整いすぎるほど整ったその顔は――
「み、御園、さん……どうして」
「どうして? 恋人が合鍵を使って恋人の家に上がることの何が不自然だとおっしゃるの?」
言外に〝恋人でない人間は出て行け〟と言われているような気がし、事実、それは反論の余地もないほどの正論で、渉は返す言葉もなく黙った。
まして今、渉は彼女に対して償いきれない罪を犯しているのだ……
「あ、あの、とりあえず、お茶でもお淹れしましょう、」
「結構よ。嫌いなのハーブティー」
「……そうですか」
取りつく島もない物言いに、渉は早くも気持ちが折れそうになった。
「と、ところで……今日はどのようなご用です? 社長が名古屋に行っていることは、御園さんも把握していらっしゃるはずで――」
渉の言葉尻も待たずに、大きな瞳がぎろりと睨んでくる。来ちゃ悪いのかよと言いたげな眼差しに、ますます渉はかける言葉をなくしてしまう。
このままでは久しぶりに例の病気が発症してしまいそうだ。今のうちに部屋に戻って薬を手元に確保しておくか……
「前の会社でのこと、調べさせてもらったわ」
「え?」
「大変だったんですってね……パニック障害と鬱病を発症して、心療内科に通いながら、それでも懸命に会社に通って」
言いながら御園は、ダイニングテーブルの椅子に腰を下ろす。今までのそれとは打って変わった優しい声色に、しかし渉は違和感しか覚えない。そもそも、あの御園がそんなものを調べてきたという事実それ自体、渉に言わせれば不安の呼び水でしかなかった。
業績の悪い店は、たとえ鷹村が開いた店でも潰しにかかるほど無駄を嫌う彼女が、何の理由もなく渉の前歴を調べにかかるわけがない。じゃあ一体、何のために……?
「でも驚いたわ」
「えっ?」
「あなたが、売り上げを伸ばすためにあんなことまでなさる方だったなんて……正直、見直したわ。なんて仕事熱心な方なんでしょうって」
「……?」
何のことを言っているのかわからず渉は小首を傾げる。と、御園は心底おかしそうに形の良い唇をにやりと歪めた。
「わからない? それとも、あなたにとってはあまりにも当たり前すぎて、それをいやらしいことと感じることもできないのかしら?」
その言葉に、初めて渉は息を呑む。まさか、この人が言おうとしているのは――
「ち、違います! あの時は、その……途中で怖くなって……」
「途中? ふん。どうかしらね。それを証明するものは、残念ながらあなたと、その担当者とやらの証言以外どこにもない。――ひょっとしたら二人して嘘をついていて、本当は最後までしっかり……ということも、ありえない可能性ではないのよ。私たち第三者に言わせればね」
「な……何を、言っているんですか、さっきから……」
「その穢れた身体で私の涼に近づかないでって言ってるのよ! あんたみたいなクズは、そのへんの変態でも相手してなさい!」
穢れた身体――唐突に叩きつけられたその言葉に、渉は視界がくらり傾くのを感じた。
何とかカウンターで身体を支え、怒りと悔しさで身体を震わせながら何とか声を絞り出す。
「うそじゃない……僕は……そんなこと、してない!」
そうだ。そもそも本当に抱かせていたら、無事にノルマも達成でき、あのままあの会社に残ることもできたのかもしれないのだ。上司からの風当たりも優しくなって、こんな厄介な体質を抱えることもなかったのかもしれない。証拠を見せろと言うのなら、この、ぼろぼろの身体と心がそれだ――
が、目の前の完璧主義者に、そんな理屈が通用するはずもなく。
「だから、あんたの言い分なんかどうだっていいって言ったばかりでしょ。それとも、所詮は地方の二流大出身のおつむじゃそんなことも理解できないのかしら? ――って、何よあれ」
怪訝そうな御園の声に、はっと渉は顔を上げる。その猛禽のような視線の先には、案の定、芽吹いたばかりのベランダの鉢植えが。
まさか、と渉が思ったときには、もう御園は椅子を立っていた。
「ま、待ってください……待って」
つかつかと足早にベランダに歩み寄る御園の背中を、渉は慌てて追いかける。が、まるで深い泥地でも歩くように、踏み出したそばから足が沈んでしまう。
駄目だ。また呼吸が、意識が――……
「こんなもの!」
パァン、と何かの弾ける音がして顔を上げる。ベランダに立つ御園の足元に、こなごなになった鉢の破片とともに鉢植えの土が無残に散乱しているのが見えた。
その土に混じって、ようやく増えはじめたばかりのミントの青葉が。
続けて御園はカモミールの鉢を蹴倒し、レモンバームの鉢を掴んで床に叩きつけた。バジルとタイム、セージの鉢を続けざまに叩き壊すと、ベランダに散乱したその土を、かかとで若芽ごとひねりつぶし、踏みつけた。
何度も。何度も何度も何度も……
「や、やめろ……やめろぉ!」
渉の激昂に、ようやく御園はベランダでの狼藉をやめた。もっともその頃には、すでに鉢は一つとして無事な姿で残ってはいなかったが。
「……やめろ?」
御園が、ゆるりとこちらをふり返る。その冷酷な眼差しに、渉は思わず戦慄した。
「あなた……何の権利があってそういうことを言うの?」
「……えっ?」
「気づいていないとでも思った? あなたが涼にどういう感情を抱いているか。どういう目で彼を見ているか。――でも残念ね。あの人が、涼が、あなたみたいなクズにふり返るようなことは万に一つもない。仮にあの人が、あなたに何かしらの優しさを示したとして、そんなものは本当の優しさじゃないの。強いて言えばそれはただの同情よ」
違う。そんなものじゃない。涼の僕に対する感情は――
が、なおも冷やかに渉を見下ろす御園の眼差しに、そんな渉のちっぽけな自信は他愛もなくぐらつきはじめる。最初に愛を交したあの夜から、すでに二週間以上の時間が経った。にもかかわらず鷹村の口からは、いまだに御園と別れたという話を聞かない。どころか今も、こうして御園本人が恋人として部屋に上がり込んでいる。
どういうことだ。本当は……本当の涼の気持ちは、じゃあ一体……?
「それと」
「えっ?」
「こういうの、本当にやめてくださらない? この部屋はね、涼に都会的で洗練された雰囲気を身につけてもらおうと、私が家具からインテリアからすべて何もかも計算に計算を重ねて完璧にコーディネートしたの。それを、こういう余計なもので穢さないでちょうだい」
「で、でも涼は、」
むしろ殺風景だった部屋が賑やかになっていい――あの夜、そう言って鷹村はガーデニングを許してくれた。芽を出せば一緒になって喜び、渉の努力を祝福してくれた。
「あなたもよ、山崎渉」
ぴしゃり渉の反論を遮ると、横面を張るように御園は言った。
「さっさと田舎に帰って、また前みたいに引きこもっていなさいよ。そもそも、あんたみたいな鈍臭い田舎者が涼のそばにいるってだけでも図々しいの。要するにあんたは不適格なの! 何もかも、存在すべてが不合格! 涼の友人としても、それにこの街の住人としてもね!」
そして、今なおカウンターのそばで崩れたままの渉の前に歩み寄ると、その眼前に一枚の封筒を投げてよこした。
木の葉のようにひらり舞い落ちたそれを、恐る恐る取り上げ、開く。中から現れたのは、渉の地元の空港へ向かう片道分の航空券だった。しかも、その出発日時は今夜。
「航空会社には、あとであなたがちゃんと飛行機に搭乗したかをチェックさせてもらうから。もし搭乗していなかったら――さっきのことを涼に話すわよ」
言い捨てると、あとはふり返ることなくつかつかと部屋を出て行った。
あとには、こなごなにされた鉢植えと無残に踏みにじられたハーブ、そして、故郷に向かう片道の航空券だけが残された。
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