極道の密にされる健気少年

安達

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雑談

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*松下視点




「おーい。圷。いるかー?」



俺は圷と海斗がいるはずの部屋の前でそう叫んだ。ってのも理由がある。無理言って部屋に押し入ってもいいがもしかしたら海斗と圷がお楽しみ中かもしれねぇ。それだったら大変だろ?海斗に触れさせるのだけでも嫌がる圷が海斗の裸でも俺たちがみたりすれば…。考えただけで恐ろしい。



「いないのかな…。」

「いやいる。音がしたから。」



中にいんのはんかってんだぞ圷。出てこいよ。駿里が海斗に会いたがってんだよくそが。



「おい圷!」

「…うるせぇぞ康二。」

「やっと出てきたか。遅せぇよ。」

「何が遅いだ。つかなんの用だよ…って駿里じゃねぇか。御子柴さんも。お疲れ様です。どうしたんだ駿里。」



おいおい圷…。なんだよその態度の差は。駿里には相変わらず優しいやつだな。まぁいいけど。



「海斗に会いに来たの…。けど迷惑だったら帰るよ。」

「迷惑なもんか。海斗!駿里が来てるからおいで。」



…チッ。ほんっと、圷は腹が立つ野郎だ。駿里には甘々なんだからよ。俺だけだったら絶対海斗呼ばなかったのに。駿里には頭も撫でて海斗をすんなり呼びやがった。まぁ駿里が幸せならいいけどよ。



「…駿里?」

「海斗…!!」



はーこいつら可愛いやつだな。久々の再会ってやつだな。抱き合っちまって…。駿里もそんな嬉しそうな顔してよ。



「おい康二。ニヤニヤすんな。」

「お前もな圷。」



はは、どっちもどっちだな俺たち。



「海斗元気だった?」

「うん。駿里は?」

「元気だよ。直樹とは会ってるの?」

「うん。兄貴とも会ってる。頻繁じゃないけどね。」

「そっか。なら良かった。」

「駿里も元気そうで良かったよ。」



うん。可愛い。俺の駿里ってなんでこんなに可愛んだろうな。



「康二。」

「あ?今話しかけんな。駿里見てんだよ。お前の面なんて今見たくねぇんだよ圷。」

「それなら言わせてもらうがお前もその顔やめろ。駿里はお前のもんじゃねぇ。」

「いいや。俺のもんでもある。俺の大切なやつだ。」



恋人じゃなくてもいいんだよ。俺は駿里のそばにいてやれる。組長の次にな。志方よりも圷よりも森廣さんよりも駿里のそばにいるのは俺だ。



「組長の前でもそれを言えるか?」

「ああ。いつでも言える。」

「そうか。お前のその鬼メンタルが欲しいもんだな。ねぇ御子柴さん。」

「そうだな。まぁこりゃ康二の生まれ持ったもんだろうな。」

「たしかに。」

「確かにじゃねぇよ圷。御子柴さんもからかわないでくださいよ。」

「はは。」



何笑ってんだこの人。つーかまじでこの人俺たちとお話をするつもりかよ。御子柴さん暇じゃねぇのによ。それともなんだ。御子柴さんは俺の事探ってんのか…?



「康二。駿里には悪ぃけどそろそろ切り上げていいか?」

「あ?なんかあんのか?」



楽しそうな海斗をみて幸せそうにしてた圷なのに急にそんなことを言い出した。もしかしたら初めから用事があったのに無理して駿里を海斗に会わせてくれたのかもしれねぇな。



「いや俺の事情だ。」



あーなるほどな。つまりお前は…。



「勃起したんだな。」

「黙れ。」

「はは、若いねぇ。」

「お前が言うな康二。いいから駿里を連れていけ。優しくな。」

「言われなくても。」



まぁ元々長いなんてする気無かったからな。だから俺は圷に言われた通り駿里の回収に向かった。



「駿里。そろそろ帰ろう。海斗も慣れない環境で疲れてるだろうから。」

「そうだね。じゃあまたね海斗。」

「うん。またね。」

「行こう駿里。御子柴さんも行きますよ。」



なんて言いながら俺たちは圷と海斗にバイバイをした。この後圷と海斗はあんなことやそんなことをするんだろうなぁなんて思いながら。



「圷も変わったもんだな。」

「そうですか?あいつは一番変わってないと思いまけど御子柴さんからしたら変わったように見えます?」

「ああ。なんか圷から牙が見える。」

「はは、そりゃ海斗と一緒にいたからですよ。」

「海斗?さっきの子か?」

「はい。」



つか駿里のやつえらくご機嫌だな。海斗と会えたからか?いやそれだけじゃねぇな。こうやって外に出れるのも嬉しいんだろうな。



「圷はあのタイプが好きなのか。つかどうやって出会ったんだ?まさかあの圷が攫ったのか?」

「違いますよ御子柴さん。海斗は俺の大切な友達です。」



そうだな駿里。海斗はお前にとって唯一と言っていい友人だ。



「友達?どういうことだ。」

「えっとですね御子柴さん。俺が簡単に説明しますと…駿里が脱走した時に駿里のことを匿ってくれた優しい子たちです。あの子が海斗で海斗の兄の直樹ってやつもいます。2人ともいい子ですよ。」

「そうかそうか。そういうことか。」



御子柴さんも歳とったよなぁ。危害ありそうなやつはすぐに殺せとか破門しろとか言ってたのに。今じゃこうだからよ。まぁ俺も人のこと言えねぇか。



「坊ちゃんもよく受け入れたな。」

「組長は駿里のためならなんでもしますからね。な?駿里。」

「うん…っ、ほんっとに色んなことしてくれるんだ寛也。けど怒ると怖い。」

「はは、そうだろうな。坊ちゃんは昔別の組の組長を一人でボッコボコにしてたからな。」

「そうなんですか…!?」



ちょいちょい御子柴さん…。そりゃ言っちゃいけねぇ話なんじゃないですか?まぁバレなきゃいっか。



「そうだ。坊ちゃんがまだ19かそこらの時だ。まだ坊ちゃんが康二とも出会ってない時だな。部下が攫われたやなんやら言って1人で乗り込んで何十人も病院送りにした挙句に組長も殴り倒した。」

「御子柴さん。その部下って森廣さんですか…?」

「勘のいいやつだな。そうだ。森廣だ。」



へぇ…。知らなかった。そうだったんだ。森廣さんのために組長がそこまで…。



「だから寛也と森廣さんはあんなに仲がいいんですね。」

「そうだな。んで、その後に攫われたのがこのポンコツだ。」

「御子柴さん…俺はポンコツじゃありません。」

「いいやポンコツだ。そのポンコツを何をどう気に入ったのか坊ちゃんが連れて帰ってきた。」



うーわすんげぇ懐かしい…。めっちゃ昔…だよな。あの時組長に拾われなかったら俺今も暗闇の中だったなぁ…。



「康二さんを?」

「そうだ。そん時の康二は一生忘れねぇ。何せボロボロだったからな。ポンコツな上に。」

「…御子柴さん酷いですよ。」

「康二さんなんでボロボロだったの?」



駿里も容赦ねぇな全く。可愛いからいいけどよ。男がボコボコになった話なんて本当は恥ずかしくてしたくねぇんだぞ?まぁするけどさ。



「組長にボコられたんだ。」

「え?寛也に?」

「そうだ。あん時の俺は礼儀もなんにも知らねぇクソガキだったからな。だから俺は何も知らずに組長に喧嘩を申し出た。むしゃくしゃしてたんだ。自分の置かれた環境に。」

「それで…康二さんは寛也との喧嘩に負けたの?」

「当たり前だ。組長だぞ。勝てるわけねぇだろうが。」

「寛也ってそんなに喧嘩強いの?」



強いってレベルじゃねぇよ。俺をボコってた時も組長は傷一つも付けてなかったからな。けどそうだよな。よく考えたら組長は駿里の前で誰かをボコったことねぇな。



「ああ。強いさ。それは一番御子柴さんが知ってる。」

「そうなんですか?御子柴さん。」

「そうなるな。坊ちゃんは元旭川組の金バッチ達もボコボコにしてたからな。」

「金バッチって…?」

「幹部の事だ。坊ちゃんは極道の世界に生まれたことが嫌だったらしい。けど逃げることも許されない。受け入れるしかない。それが坊ちゃんのストレスとなり色んな事件になった。駿里が坊ちゃんに攫われたのもその一つだ。」



それは俺も知らない組長の過去。聞いたりゃ教えてくれるんだろうが聞く勇気はない。組長の過去に首を突っ込めるほど俺は偉くないからな。


 
「…そうだったんですね。なんか俺想像できないです。」

「なんの?康二がボコられる想像か?」

「ち、違いますよ御子柴さん。寛也です。俺が出会った時の寛也は根っからの極道だったから。」



確かにそうだな。お前の友人も殺したし…。お前の全てを奪った。それに俺も組長も躊躇なかった。そんな俺たちしか知らない駿里からしたらそう思うよな。



「あーそうだな。駿里と坊ちゃんが出会った頃は荒れてた坊ちゃんだな。まぁあれもマシな方ではあるけどな。なぁ康二。」

「はい。ていうかあん時俺も荒れてました…。」

「だな。権力争いも凄かったし何より他の組の奴らが坊ちゃんの命を狙ってたからな。」

「あー懐かしいですね御子柴さん。そんな時もありました。今じゃこんなに平和なのに。ま、全部駿里のおかげだけどな。」

「…?俺?」



また分かってない顔して。けどお前はそれでいいんだ。何も知らなくていい。幸せなままでいろ。嫌なことは全部俺が引き受けてやるから。だから一生幸せに笑ってろ。



「そう。駿里のおかげ。ですよね御子柴さん。」

「そうだな。坊ちゃんがあんな風に笑うなんて俺は想像も出来なかった。生きることにこだわっていないような感じだったからよ。それが今じゃ生きようと必死になってる。それもあって日本トップまで上り詰められたんだろうな。坊ちゃんはしようとしなかっただけで才能も能力もあったから。」

「ですね。」

「つーか康二。お前こんな時間まで駿里連れ出して大丈夫か?抜け出してきたんだろ?」

「んーーまぁ何とかなります。怒られたとしてもそれはその時です。な、駿里。」

「うん…!」

「まぁお前らがいいならいいけどよ。んじゃ、もうちょっと話すか駿里。」

「話したいです…!」
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