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誘拐
頼み事
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*松下視点
「頼み事…?」
組長からの頼み事って言ったら大体ろくなもんはねぇけど今は駿里も組長が優しいってわかってっからそう聞き返したんだろうな。いつもだったら嫌だって言って走り出すのに。
「ああ、そうだ。明日のことなんだがお前、事務所に行ってみねぇか?」
組長がそういったのを聞いて俺は少し駿里を外に出すには早いんじゃないかと思った。本音としてはな。だが組長は駿里のことを思ってそう言った。だから俺は口出しせずに2人のことを見守るつもりだ。
「事務所に…?」
「ああ。」
「…寛也、お仕事なの?」
駿里はとても不安そうな顔をして組長にそう言った。まぁそうだよな。駿里は多分今は組長と、この家にいたいんだよな。けどそれじゃ駿里は前に進めない。だからきっと組長は心を鬼にしてそう言ったんだ。
「仕事じゃねぇよ。駿里の気分転換にもなるだろ?まぁお前が嫌なら無理して行かなくていい。」
「…うん。」
今の駿里の顔を見る限りは行きたくねぇ感じだな。だったら…。
「組長。駿里が事務所に行くんじゃなくて志方達をこの家に呼んだらどうですか?そしたら駿里もあいつらに会えるし、あいつらも駿里に会えて安心するでしょうし。」
「それはいいな。そうしよう。」
「はい。では志方達に連絡しときますね。」
「ああ。頼んだ。」
「お任せを。駿里もそれでいいか?」
「…う、うん。」
俺は今の駿里の反応を見て志方に連絡を取るのを一旦やめた。どこか駿里がおかしかったから。そしてそれに組長も気づいたらしい。
「駿里?どうした?」
そう聞いたところで答えてくれるかどうかは分からない。けど聞いてみなければ分からない。だから俺は駿里の顔をのぞき込むようにしてそう聞いた。
「……………っ。」
俺が聞いても駿里の返事は帰ってこない。それどころか駿里は泣きそうになっていた。そんな駿里を組長も俺も優しく抱き締めた。
「駿里。顔上げてみろ。」
組長が駿里を抱き締めながら優しくそう言った。時より駿里の頬を触りながらなんだりして。だが駿里は首を横に振るばかりで顔を上げてくれない。
「我慢すんな駿里。組長も俺もお前の事、全部受け止めてやる。だから頼むから我慢しないでくれ。」
「そうだぞ駿里。だから全部言ってみろ。言葉にするんだ。抱え込まずに。」
と、組長が言った途端駿里の目から大粒の涙が零れ始めた。それを俺は優しく拭いながら駿里の顔を半無理やり上げさせた。
「ごめっ、ぅ、ごめんなさっ、ぃ、」
「どうして謝る。お前は何か悪い事をしたか?何もしてねぇだろうが。」
俺は駿里が何かに脅えて泣き始めたのかと思っていた。だが今回はどうやら違うようだ。駿里はなにかに罪悪感を感じている。そのせいでこうして謝りながら泣かせてしまった。俺達がもっと早くそれに気づいてやるべきだったのに。
「そうだ。康二の言う通りだぞ。謝るんじゃねぇ。泣くのはいい。だが謝るのは違う。」
「で、っ、も、おれのせっ、ぃで、2人ともっ、仕事もあるのに…っ、」
「は?何言ってんだ。仕事なんかよりお前が大事だ。別に俺はトップを引退したっていいんだ。お前といれるならな。」
組長は泣き崩れる駿里を叱りつけるようにそう言った。そりゃそうだ。駿里がそれで責任を感じる必要なんてないんだから。だが駿里は心の優しい子だからどうしても罪悪感を感じてしまうんだろうな。
「駿里。俺も組長と同じ考えだ。お前がいなきゃ今の俺達はなかった。お前のおかげで今の俺たちがある。それに何よりもこの組のみんながお前を愛してる。だから甘えるんだ。お前にはそれが難しいことかもしれねぇけど甘えれる時に甘えてみろ。」
「そうだぞ。仕事を捨ててまでお前の事を優先してしまうほど俺はお前が大切なんだ。いい加減それに気づけ。どれだけ俺がお前を愛してることか。それに気づいてねぇとは言わせねぇぞ駿里。」
「っ、ぅ…っ、ふっ、ぅ、」
駿里は嬉しいのか不安な気持ちがまた膨れ上がったのか嗚咽を漏らしながら泣き続ける。駿里自身が今は1番大変だろうに俺達のことまで気遣って…。あんな劣悪な環境で育ったのが嘘のように善良な子なんだ駿里は。だから俺達がちゃんと支えてやんねぇとな。
「罪悪感とか感じるな。逆の立場だったらお前はどうする?優しいお前のことだから俺達と同じようにしてくれるだろ?だから責任を感じる必要なんてない。お前は俺達が幸せにすると決めた大切な子なんだから。ですよね、組長。」
「ああ。自由さは束縛してしまうがお前の心は嫌ってほど満たしてやる。だから甘えてくれ駿里。俺達をもっと頼ってくれ。そうしてくれねぇと俺達もお前を守るに守れねぇからな。」
「頼み事…?」
組長からの頼み事って言ったら大体ろくなもんはねぇけど今は駿里も組長が優しいってわかってっからそう聞き返したんだろうな。いつもだったら嫌だって言って走り出すのに。
「ああ、そうだ。明日のことなんだがお前、事務所に行ってみねぇか?」
組長がそういったのを聞いて俺は少し駿里を外に出すには早いんじゃないかと思った。本音としてはな。だが組長は駿里のことを思ってそう言った。だから俺は口出しせずに2人のことを見守るつもりだ。
「事務所に…?」
「ああ。」
「…寛也、お仕事なの?」
駿里はとても不安そうな顔をして組長にそう言った。まぁそうだよな。駿里は多分今は組長と、この家にいたいんだよな。けどそれじゃ駿里は前に進めない。だからきっと組長は心を鬼にしてそう言ったんだ。
「仕事じゃねぇよ。駿里の気分転換にもなるだろ?まぁお前が嫌なら無理して行かなくていい。」
「…うん。」
今の駿里の顔を見る限りは行きたくねぇ感じだな。だったら…。
「組長。駿里が事務所に行くんじゃなくて志方達をこの家に呼んだらどうですか?そしたら駿里もあいつらに会えるし、あいつらも駿里に会えて安心するでしょうし。」
「それはいいな。そうしよう。」
「はい。では志方達に連絡しときますね。」
「ああ。頼んだ。」
「お任せを。駿里もそれでいいか?」
「…う、うん。」
俺は今の駿里の反応を見て志方に連絡を取るのを一旦やめた。どこか駿里がおかしかったから。そしてそれに組長も気づいたらしい。
「駿里?どうした?」
そう聞いたところで答えてくれるかどうかは分からない。けど聞いてみなければ分からない。だから俺は駿里の顔をのぞき込むようにしてそう聞いた。
「……………っ。」
俺が聞いても駿里の返事は帰ってこない。それどころか駿里は泣きそうになっていた。そんな駿里を組長も俺も優しく抱き締めた。
「駿里。顔上げてみろ。」
組長が駿里を抱き締めながら優しくそう言った。時より駿里の頬を触りながらなんだりして。だが駿里は首を横に振るばかりで顔を上げてくれない。
「我慢すんな駿里。組長も俺もお前の事、全部受け止めてやる。だから頼むから我慢しないでくれ。」
「そうだぞ駿里。だから全部言ってみろ。言葉にするんだ。抱え込まずに。」
と、組長が言った途端駿里の目から大粒の涙が零れ始めた。それを俺は優しく拭いながら駿里の顔を半無理やり上げさせた。
「ごめっ、ぅ、ごめんなさっ、ぃ、」
「どうして謝る。お前は何か悪い事をしたか?何もしてねぇだろうが。」
俺は駿里が何かに脅えて泣き始めたのかと思っていた。だが今回はどうやら違うようだ。駿里はなにかに罪悪感を感じている。そのせいでこうして謝りながら泣かせてしまった。俺達がもっと早くそれに気づいてやるべきだったのに。
「そうだ。康二の言う通りだぞ。謝るんじゃねぇ。泣くのはいい。だが謝るのは違う。」
「で、っ、も、おれのせっ、ぃで、2人ともっ、仕事もあるのに…っ、」
「は?何言ってんだ。仕事なんかよりお前が大事だ。別に俺はトップを引退したっていいんだ。お前といれるならな。」
組長は泣き崩れる駿里を叱りつけるようにそう言った。そりゃそうだ。駿里がそれで責任を感じる必要なんてないんだから。だが駿里は心の優しい子だからどうしても罪悪感を感じてしまうんだろうな。
「駿里。俺も組長と同じ考えだ。お前がいなきゃ今の俺達はなかった。お前のおかげで今の俺たちがある。それに何よりもこの組のみんながお前を愛してる。だから甘えるんだ。お前にはそれが難しいことかもしれねぇけど甘えれる時に甘えてみろ。」
「そうだぞ。仕事を捨ててまでお前の事を優先してしまうほど俺はお前が大切なんだ。いい加減それに気づけ。どれだけ俺がお前を愛してることか。それに気づいてねぇとは言わせねぇぞ駿里。」
「っ、ぅ…っ、ふっ、ぅ、」
駿里は嬉しいのか不安な気持ちがまた膨れ上がったのか嗚咽を漏らしながら泣き続ける。駿里自身が今は1番大変だろうに俺達のことまで気遣って…。あんな劣悪な環境で育ったのが嘘のように善良な子なんだ駿里は。だから俺達がちゃんと支えてやんねぇとな。
「罪悪感とか感じるな。逆の立場だったらお前はどうする?優しいお前のことだから俺達と同じようにしてくれるだろ?だから責任を感じる必要なんてない。お前は俺達が幸せにすると決めた大切な子なんだから。ですよね、組長。」
「ああ。自由さは束縛してしまうがお前の心は嫌ってほど満たしてやる。だから甘えてくれ駿里。俺達をもっと頼ってくれ。そうしてくれねぇと俺達もお前を守るに守れねぇからな。」
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