極道の密にされる健気少年

安達

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誘拐

嫌いにならないで

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「おい駿里。もう腹いっぱいだろお前。無理して食べなくていい。余ったら俺が食べるからよ。」



駿里にお粥を食べさせ始めていた寛也だが明らかに駿里の様子がおかしいことに気づいた。駿里はどうも無理してでも食べようとする。残すのが勿体ないとでも思っているのだろうか?いや違う。そうでは無い。駿里は今、寛也に嫌われないように必死になっていたのだ。



「…ちがっ、まだ、食べれる。俺食べれるから。」



寛也に嫌われたくない。これ以上嫌われたくない。その一心で駿里は口に無理やりお粥を放り込もうとする。それは駿里は寛也に嫌われていると勘違いしているから。その理由はただ一つ。寛也ではないあの人達に体を汚されてしまった為に…。だから言葉には表さないもの寛也は自分のことを嫌っている。駿里はどうしてもそう思ってしまうのだ。そんなことあるはずがないのに。



「全部食べるよっ、ちゃんと食べるから…。」



そう言いながら口に再びお粥を口に放り込もうとした駿里。しかしその駿里の手を掴むようにして寛也はそれを妨げた。



「…な、に?」



寛也に腕を掴まれて止められた事が怖かったのだう。駿里は怯えたように寛也にそう言った。そんな駿里の手からスプーンを取り上げると寛也は駿里を優しく抱きしめた。



「駄目だ駿里。そんなことをするな。頼むから。飯も無理して食べなくていい。」

「ちがう…!」



寛也は駿里に無理をして欲しくなくて頼むようにそう言った。しかし駿里はそれが不安になるのだ。呆れられてしまった。そう思ってしまうのだ。そのため自分に自信がどんどん駿里はなくなっていってしまう。



「ちゃ、ちゃんと俺食べれるから…!」

「駿里。俺はお前に我慢も無理も欲しくねぇんだ。」

「我慢してない…っ!」

「してるだろ。駄目だそんな事をしたら。身体を大切にしろ。ただでさえお前は…。」



寛也はそこで言葉に詰まってしまった。今の状態の駿里に本調子ではないなんて言ってしまえばさらにムキになってしまうのではないかと思ったからだ。だから寛也は…。



「何にせよ食欲がねぇのに無理して食べたら体に毒だ、な?それはお前が1番分かってるだろ。だから休もう。体を休めよう駿里。ずっと隣にいるから。」



そう言いながら寛也は駿里にキスを落とした。なのに駿里はまだ不安そうな顔をする。まぁそれは当然だろう。駿里は寛也に嫌われてしまった。そう思い込んでしまっているのだから。



「ね、寝ない…っ、」



だって寝たら寛也がどこかに行ってしまう…。あ…でも。うん。そうだ。そうならない方法が一つだけある。



「ちかやっ、寛也の好きにしていいよっ…俺のことなんでもしていいから…っ、」



だから1人にしないで…。捨てないで…。



「だから、寝なくていい…っ、」



そうやってどんどん壊れていく駿里。寛也に嫌われなくない。そう思えば思うほど駿里はヒートアップしていく。そんな駿里をみて寛也はただひたすらに駿里を抱きしめ続けた。



「駿里。お前は一体何から脅えてんだ。」

「おびえてないっ、怯えてないからさわっ、てよっ、何回でも、やっていいから…っ!」

「駄目だ。お前自分が震えてんの分かってねぇだろ。」

「…ふるえてないっ、できるっ、俺できるよ!」

「駿里。」

「ちかやっ、抱いてよっ、俺のこと嫌いになっちゃったの…?」

「駿里!!!」



駿里が嫌いというワードを出した途端寛也は耐えきれずに大声を出してしまった。だってそんなことあるわけが無いから。寛也が駿里を嫌うはずがない。こんなにも愛しているのだから。だからこれ以上駿里が苦しむのはやめさせたかったのだ。そのために寛也は大声を出した。そうすれば必然的に話の主導権を握れるから。



「悪い。大きな声を出してしまった。怯えさせるつもりはなかったんだ。すまないな。」

「……………っ。」



寛也はそう言っている最中も駿里を抱きしめ続けた。その寛也の腕の中で駿里はまだ震えている。だからこそ寛也は話し始めた。駿里に分かってもらうために。



「お前今顔真っ青なんだよ。そんな状態で大切なお前に無理させられるわけねぇだろ。けど勘違いすんなよ。何度も言うが俺はお前を愛してんだ。だからこそ心配してんだよ。だからお前も自分を大切にしてくれ、な?」

「……………っ。」

「駿里。お前は一体何が不安なんだ。何から怯えてる。それとも俺が怖いか?」

「…ちがうっ、」

「そうか。それは良かった。なら教えてくれるか?何が嫌で何が怖いのか全部教えてくれ。頼む。」



寛也がそう言うと駿里は不安そうに寛也の顔を見上げた。その時すかさず寛也は優しい表情を浮かべる。駿里が不安なく話せるように。そんな寛也の行動があってか駿里はゆっくりとではあったが話し始めてくれた。



「……………おれが、」



駿里はやはり自信が無い。自信をなくしている様子だった。だから寛也は駿里のことを強く抱き締めて声をかけた。大丈夫だ…って。



「大丈夫。何も怖くねぇよ。 だからなんでも言ってみろ。」

「おれ……がっ、」

「うん。ゆっくりでいいぞ。」

「…………おれが、汚いから寛也は俺を抱きたくないの…?」

「は?」



何を言い出すのかと思えば的違いすぎることを駿里が言い始めた。そんな駿里をみて寛也は自分を恨んだ。自分の行動が駿里をこんなにも不安にさせてしまったから。



「汚い?何をほざいてんだてめぇは。んな事あるわけねぇだろうが。」

「だっ、ておれっ、あの人たちに、抱かれて…だからっ、」

「たく、お前は馬鹿だな。んな事思ってたら俺がこうしてお前を抱きしめると思うか?お前にキスをすると思うか?思わねぇだろうが。」

「……で、も………っ。」

「あのな駿里、そんなに俺に抱いて欲しいなら今すぐに抱いてやる。だがそれは体調が良くなってからだ。それまで俺が鬱陶しいほど抱きしめててやるから今はそれで我慢しろ。それとすまないな。俺のせいで余計な不安を与えちまった。本当にすまない。だが安心しろ。俺は隕石が落ちてもお前を愛し続けるから。重い重い愛でな。」
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