極道の密にされる健気少年

安達

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誘拐

理由

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「組長。駿里はどうですか?」



車を運転しながら志方は寛也にそう聞いた。それは聞かずにはいられないほど駿里が悶え苦しんでいたから。



「興奮作用のあるやつを盛られてる。」



と、寛也はそうただ答えた。そう。答えただけ。だから寛也に志方は単刀直入に聞くことにした。



「駿里を抱いてやらないんですか?」

「……………。」

「組長…?」




志方の問いかけに黙り込んでしまった寛也。だがそれにはちゃんとした理由があった。寛也は一度、理由があったと言えども駿里を置いて帰ってしまった。だから寛也は怖かったのだ。駿里の許可無しで駿里のことを抱いてしまえばどうなるのか…と。



「組長。俺は組長の気持ちは承知の上です。それを承知の上で言っています。駿里を抱くことが出来るのは組長だけですから。」

「………とりあえず抜いてやる。抱くのはこいつの合意が貰えてからだ。」

「そうですね。」



駿里が一先ず楽になるのならそれでいい。そう思った志方は色々思うことがあったがそう答えた。そしてそこから寛也は駿里が楽になるまでイカせてやった。それはつまり駿里が気絶するまでだ。そんなことがあって車は事務所に到着した。



「組長、着きましたよ。」

「…ああ。」



事務所に到着しても尚寛也は元気がなかった。まぁそれは仕方ないだろう。寛也はあの時の駿里の顔が忘れられないから。やむを得ず置いて帰ってしまった時のあの顔が…。



「あの、組長。」



志方は気になることがあった。それは今から寛也は駿里をどこに連れて行くのかということだ。



「どうした志方。」

「組長は、今から駿里はどこに連れて行かれるおつもりですか?」

「事務所だ。」

「…家じゃ、ないんですか?」

「ああ。一旦事務所に連れていく。」

「承知しました。」



寛也がそう言うということはきっと意味がある。そう思った志方はただそう答えた。多分…いや確実に事務所ではなく家の方が駿里的にはいい。だがそれを志方は言わないでおくことにした。



「志方、事務所に着いたらお前もそこにいろ。」



寛也がそう言って志方はやっとわかった。寛也が駿里を家ではなく事務所に連れていくわけを。多分寛也は怖いんだ。駿里と二人きりになるのが怖いのだろう…。



「はい。もちろんです。組長と駿里のそばに居ます。」



と、志方が言うと少しだけ寛也は安心した顔をした。そんな寛也を見て志方は自分の判断は間違っていなかった。そう思えた。そして寛也らは事務所に着いた。そこで寛也は駿里をソファに寝かせて寛也自身もソファに座った。志方はというと2人から少し離れたところに座った。そこから数時間経った頃だろう。駿里がやっと目を覚ました。



「…………ん…………。」



駿里は余程体が痛むのだろう。少し体を動かしただけで駿里は顔をしかめた。そんな駿里の頭を優しく撫でて寛也は口を開いた。



「おはよう駿里。」



と、寛也はそう言った。ただ一言。そう言った。そんな駿里に続くように松下も…。



「駿里、おはよう。」



と、言った。怪我をしていた松下は今回事務所で待機していた。だから駿里が戻ってきてからというもの松下も駿里のそばにいられたのだ。そんな松下の声を聞いた駿里はゆっくりと目を開けた。だがまだ完全に起きていない様子だった。



「まだ完全に起きてなさそうだな。」

「はい。組長、俺濡れタオルかなんか持ってきますね。」

「頼む、礼を言うぞ康二。」

「いえ。任せてください。」



松下の声に駿里は反応する。多分目の前で松下が撃たれてしまったことも関係しているのだろう。だから駿里は頭の中で必死に考えていた。松下の声…。なんで?どうして?だって俺さっきまで…。



「駿里。起きれそうか?痛いとこねぇか?大丈夫か?」



今度は志方さん…。これって夢なのかな。ああ、神様って残酷だな。こんな夢見たら余計に苦しくなるのに…。



「駿里。」



あ…。寛也だ…。寛也の声…。俺はずっと会いたかった。涙出る…。服濡らしちゃった………ん?服が、濡れた?え、これって夢じゃない…?



「駿里。遅くなっちまってすまない。」



そうだよ。なんであの時寛也は俺を見捨てたの…?え、まって俺がここにいるってことは凪さん達が殺された…?駿里は勝手にそう解釈してしまった。だって駿里は寛也に捨てられて凪らによって励まされていたのだから。だから駿里は飛び起きて思わず寛也を睨んでしまう…。



「おい駿里!起きたばっかでそんな急に飛び起きるな!」



と、言いながら松下が駿里を抱きしめてくる。駿里が混乱して暴れないようにしているのだろう。だがそんな松下の手を駿里は振り払った。



「…駿里?」

「なんでっ、なんで今更、なんで寛也がここにいるの…っ!」

「おい駿里!組長になんてこと言うんだ!」

「康二さんは黙ってて!!」



違う。駿里はそんなことが言いたかったんじゃない。駿里は寛也に会ったら会えて嬉しかった…って。迎えに来てくれてありがとうって言うつもりだったのに…。けど駿里の口から出るのは逆のこと。凪らのことも気がかりだしそもそも…。




「あの時俺のことをあんな風に見捨てたくせになんで今更っ…!!」



と、駿里が言うと誰も答えなかった。寛也も松下も志方も…みんな下を向いた。だから駿里は余計に怒った。



「俺のこと捨てたのに次は凪さん達にまで手を出すの…!?」

「駿里。それは違う。組長はお前を見捨てたんじゃない。」

「康二の言う通りだ。組長はあんな風にするしか方法がなかったんだ。」

「志方さんには聞いてないっ、俺は寛也に聞いてるの…っ!」



駿里が益々ヒートアップしていく。そんな駿里をどう抑えればいいのか松下も志方も分からず黙り込むしか無かった。だが寛也は違った。寛也は混乱し興奮している駿里を半無理やり抱きしめた。



「や、だっ、はなして寛也…!」

「駿里。置いて帰ってしまってすまなかった。」



と、寛也が言うと駿里は涙が溢れ出した。あの時のことがフラッシュバックしてしまったから。



「…っ、ふっ、ぅ、なんで、なのっ、」

「俺が無力だったんだ。だがこれだけは分かってくれ。お前をあんな風に置いて帰ったがその間お前のことを忘れたことは無い。言い訳がましいがお前をずっと愛していた。だからこうして迎えに来た。それとお前を攫ったヤツらのこと、そいつらに何もして欲しくなければその通りにする。だから今は少しだけ抱きしめさせてくれ。」
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