極道の密にされる健気少年

安達

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誘拐

絶望

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「ボスー。戻りましたーってなんで真がいんだよ。」



凪が駿里を優しく抱き抱えながら部屋に入ってきた。そして凪は部屋に真がいることに気づくと少し嫌な顔をしてそう言った。



「んだよその言い方は。俺がいちゃ悪いかよ。」

「いいや。そんなこと言ってねぇだろ。ただ思ったんだよ。お前がここにいるってことはなんかあったんだろうなって。」



凪はそう言いながら駿里の様子を伺っていた。疲れきっているとはいえいつ駿里が起きるか分からないから。そして駿里が起きた時は必ず暴れるだろうから。そのため駿里を落とすことがないように凪はちょくちょく駿里を見ているのだ。



「正解だ。さすが凪だな。」

「あったりめぇだろ。俺をなめんなよ馬鹿真が。」



ただ真がなんの理由もなくここにいるはずがかない。それを分かっている凪は真に少しキメ顔をしながらそう言った。



「んで、真。お前はどうしたんだ。」

「凪、その前にとりあえず駿里を寝かせてやれよ。疲れきってんじゃねぇか。」

「あ、そうだな。」



凪はとりあえず真に言われるがまま駿里をベットの上に寝かせた。そして凪は駿里の頭を優しく撫でて微笑んだ。あまりにも駿里が可愛かったから。



「寝顔くそかわいいな。」



と、凪。



「ほんとだな。食いたくなっちまう。」



と、真が言った。そんな2人の後ろの椅子に座りながら暉紘はことの成り行きを見ていた。



「だろ?風呂入れてる時もキスしまくった。」

「は?気持ち悪い事を言うな。」 



凪がキスをしまくったという事実を知った途端真はあからさまに嫌な顔をした。多分真は嫌だったのだろう。駿里の顔中に凪がキスをしたことが。



「うるせぇな。それよりもさっさと話せよ真。お前がここにいる訳を。」

「あーそれはハッキングされたからだ。」

「何を?」

「GPS阻害装置を。」

「は?まじで言ってんのか?」



GPS阻害装置をハッキングされたとなれば駿里の居場所がバレてしまう。そのため凪は真面目な顔をして真を見た。



「ああ。まじだ。」

「へぇ。おもしれぇ展開になったな。てことは旭川はここに来んのか?」



凪は全く焦っていなかった。それどころか逆に楽しんでいるようにすら見えた。そう。その通りなのだ。凪は旭川との直接対決を密かに望んでいた。そのためこんなに楽しそうな顔をしているのだろう。



「ああ。多分な。」

「どうしますかボス。殺します?」



凪はずっと黙って事の成り行きを見ていた暉紘にそう問うた。全ての決定権は誰がなんといおうと暉紘にあるから。



「いや、それだと面白くねぇだろ。」

「はは、やっぱりボスは最強ですね。」



ただ殺すよりも暉紘はもっと酷いことをする。それを悟った凪は声を出して笑い始めた。



「殺すだけだとつまらないからな。そんでそれを駿里にも見せてやる。こいつにも絶望をさせれば本当に俺達のもんになるからな。」

「やっぱボスはおもしれぇです。俺、一生ついて行きます。」



凪は人の不幸が大好物。だから暉紘の下にいるのが楽しいのだ。楽しくて仕方がない。退屈をしないから。



「それで、ボスはどうするつもりなんです?」



殺しはしないにしてもどんなやり方で寛也を苦しめるのか…。それを知りたかった真は暉紘にそう聞いた。



「駿里を見棄てさせてやるよ。」

「はい?」



あまりにも変なことを暉紘を言うので真は思わず声を荒らげた。そんなこと不可能だから。寛也は当然駿里をどうにかしてでも奪おうとしてくるだろう。そんな寛也に駿里を見捨てさせる?そんな事できるわけが無い。



「何言ってるんですかボス。そんな事出来るわけないじゃないですか。」

「馬鹿だな真は。」

「は?」



真にはやり方がまるで分からなかった。だって寛也に駿里を見棄てさせるなんてそんなの不可能だから。しかし凪は違ったようだ。どんなやり方をすれば寛也が駿里を見捨てることが出来るのかを理解出来たらしい。



「どういう意味だ凪。」

「そのままだよ。つか理解しろや馬鹿真。旭川の弱点をお前にこの前教えてやったろうが。」

「…弱点?」

「そうだ。」



凪にそう言われて真は考えた。凪に何を言われたのか…。弱点…。旭川の…。弱み…。



「…思い出せねぇ。」

「お前はとことん馬鹿かよ。」

「うるせぇ…。」



思い出せない自分が確実に悪いので真は凪にそう言い返すことしか出来なかった。そんな真に凪は教えてやった。寛也の弱点を。



「旭川は仲間思いだって言ったじゃねぇか。」

「あー確かにそう言ってたなお前。」



凪に言われてやっと思い出した真。しかし真はそれが何に使えるのか全く合点が合わなかった。



「けどそれがなんだよ。何に使えんだよ。」

「…ちょっとボス。真がうぜぇんですけど。」

「お前が説明下手なんだよ凪。」

「えー俺のせいですか?」

「そうだ。いいか真、旭川は仲間思いだろ?てことはあいつの仲間にでも銃口を当ててればどうなると思う?」



暉紘にそこまで言われれば流石の真も理解できる。そのため真はああ、そういう事かと悪い笑みを浮かべた。



「なるほど…。」

「理解出来たか?」

「はい。ボスのおかげです。」

「なら良かった。」



暉紘はそう言うと立ち上がり駿里の近くまで歩いてきた。そして暉紘はその後ベットに上がって駿里の頭を撫でる。



「ボス。そういうことなら銃口を向けるのは松下 康二がいいと思います。」



やっと事が理解出来た真は楽しそうにそう言った。もしかしたら三人の中で一番惨いのは真かもしれない。



「あ?なんでだ?」

「松下康二は旭川が1番信頼を置いていて可愛がっている部下だからですよ。だから効果抜群です。」



真がそう言うと暉紘も凪も笑った。そしてその後のことが楽してならないというように三人は駿里の顔を見た。



「ボス。実際に松下康二を殺しますか?」

「いや。殺さねぇ方がいいだろ。」



凪の問いかけに暉紘はそう答えた。松下を殺さない方が殺すよりも寛也を苦しめることができるから。



「はい。そうですね。銃口も旭川にしか見えない位置から向けときましょ。そしたら松下康二はわけも分からず旭川を責めるでしょうから。」



と、真。



「そうだな。そうなれば旭川に味方はいない。仲間からは責められ駿里を救えなかった自分を憎む。ああ、最高だな。」



と、暉紘が悪い笑みを浮かべながら言った。そんな暉紘を見て凪は意味深そうに笑う。



「ほんとボスって若いのに頭が良く働きますよね。」

「それはお互い様だろう。」



暉紘はまだ20代。だが凪も真も同じく20代である。そのため暉紘は凪にそう言ったのだ。



「えー嬉しいです。ボス、ありがとうございます。」



と、凪が多少棒読みではあったものの嬉しそうに暉紘にそう言った。



「別に褒めてねぇよ。」

「そうですか?てか駿里をそろそろ起こさないとですね。旭川がもう時期来るでしょうから。」



凪はそう言いながら駿里の髪を触った。これから駿里に起こる絶望を想像しながら…。



「ああ。そうだな。」

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