極道の密にされる健気少年

安達

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誘拐

ボス

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「あ?凪、お前今なんつった?」


凪がそんな事を言うと真は思わなかったんだろう。まぁそりゃそうだ。凪はこれまで男はおろか女にすら興味がなかったのだから。



「だからこいつを抱こうぜって言ったんだ。おい真。てめぇ耳くそでも詰まってんのか?」

「詰まってねぇよ。」

「ならなんで聞こえねぇんだよ。」

「いやそういう事じゃねぇだろ。何抱こうとか言い出してんだ。もう事務所着いてんだろ。」

「…は?」



事務所に…?着いてる…?何を言い出しているだ真はという顔で凪は外を見た。するとまぁ驚くことに事務所に着いていた。凪は多分駿里に集中するあまりに外の事を見ていなかったのだろう。



「最悪だ。もっと楽しみたかったのによぉ。」



そう言いながら凪は駿里の頭にキスをした。その瞬間駿里はとんでもない嫌悪感に襲われる。気持ち悪い。触るな。触られるだけでも嫌なのにキスまでもしてくる。やめろ。逃げたい。でも…逃げ道が…ない。



「そう言うなって凪。今からいくらでも楽しめるだろ。」

「確かにそうだな。よし、とりあえず降りるか。おら駿里。降りるぞ。」

「や、だ…っ!!」



駿里は凪によって一瞬で服を着せられた。その後凪に腕を引かれ車の外に無理やり出されそうになったが駿里は足を踏ん張ってそれを拒んだ。そんな駿里を見て凪は表情をなくした。そして…。



「また乳首抓られたいのか?」

「…………っ。」



低く鋭い声で凪は駿里の耳元でそう言った。その凪が怖くて駿里は思わず震えてしまう。震えたくないのに身体が勝手に震える。



「おい凪。脅しすぎだろ。」



あまりにも駿里が震えていたので真が笑いながらそう言った。だがそれは駿里を庇ったのでは無い。真は面白がっているのだ。駿里が怯えながらも凪に抵抗している姿を見て…。



「いやいやこいつが生意気な態度取るのが悪いだろ。なぁ駿里。言うこと聞けねぇなら死ぬほうがマシって思うほどの事すんぞ。」

「やめろって凪。もっと車から出てこなくなっちまうだろ。」



真はそう言いながらもやはり笑っていた。2人は楽しんでいる。駿里を見て。そんな2人を前にしても駿里は何も出来なかった。力もない。頭脳も持ち合わせていない。体力もないし逃げるすべもない。だから駿里はどれだけ腹が立っても抵抗することしか出来なかったのだ。



「おい駿里。いい加減出て来いよ。無駄な手間をかけさせんじゃねぇ。」



笑いながら凪がそう言ってくる。だから駿里は心底腹が立った。馬鹿にするのもいい加減にしろ…と。



「…いやだっ、」

「あ?なんだって?」



と、真はいいながら駿里に顔を近づけてきた。その真の顔が怖くて駿里は思わず縮こまってしまう。それほどまでに真は怖かった。どうやらこの2人は駿里の事を本気で調教するつもりなのだろう。



「…………っ。」



怖い。帰りたい。ここから逃げたい。でも逃げられない。どうしようもない。その感情が要り混ざり駿里は拳を握りしめた。そんな駿里を見た凪は…。



「真、邪魔だ退け。」

「おい。」

「俺がやる。だから下がってろ。」

「へいへい。」



そう言うと真は場所を凪に譲った。そして駿里の近くに入れ替わりで凪が来て駿里はさらに震えてしまう。そんな駿里の頬を優しく凪は撫でた。



「駿里。いいから早く来い。どうせお前は俺らの力には勝てねぇんだから。」

「………っ。」



駿里は凪にそう言われて動き出そうとした。あまりにも怖くてこれ以上逆らったらろくなことにならない。そう思ったから。だが足が動かなかった。怖さのあまり硬直してしまったようだ。



「なんだお前。足固まっちまったか?」

「凪が脅しすぎるからだろ。」

「はぁ?てめぇもだろうがよ真。」

「どっちもどっちですよ。とりあえず早く行きましょう。ボスがお待ちです。」



と、運転席にいた男が2人にそう言った。そのためだろう。凪が無理やり駿里を車の中から引きずり出した。



「や、やめ…っ!」

「組長が待ってんだよ。これ以上時間を食えねぇ。早く行くぞ。」



そう言って凪は駿里の腕を強引に引いて無理やり歩かせた。だから駿里は必死に抵抗していた。だがまるで歯が叩かなかった。もしかしたら…いやもしかしたらじゃない。確実に凪は寛也より力が強かった。



「おら歩け。抵抗すんな無駄だから。」



今度は真にそう言われた駿里。今駿里は凪と真に挟まれるようにして歩かされている。だからもちろん逃げられないしそれを駿里は分かっていた。だからせめてここがどこなのかを知りたかった駿里は…。



「…あ、あの、ここどこ、ですか?」

「あ?ここか?俺らの事務所。」



と、凪が案外簡単に答えてくれた。だから駿里はもっと聞けることは聞いておこうと思った。そしたら逃げる時に役立つかもしれないから。



「じむ、しょ…?この、屋敷がですか…?」

「そうだ。俺達はヤクザでもありマフィアでもある。だからここは日本の事務所って感じだ。本拠地ではない。言ってる意味が分かるか?」

「…………っ。」



真がマフィアという言葉を出した途端駿里はとんでもない焦りに包まれた。この人たちは…やばい。相手にしては行けない人だ…と分かったから。そしてそんな人によりにもよって駿里は捕まってしまったのだ。



「ま、簡単に言うとお前の旭川寛也よりも権力があるって事。」

「そ、そんなわけないっ、寛也は1番強いんだから…っ!!」



真が寛也よりも強いということを言って駿里は思わず声を荒らげた。そんな事…そんな事あってはいけないから。寛也よりも強い?そんなの勝てるわけが無い。逃げられるわけが無い。だから駿里はその現実を受け入れたくなくてそう叫んだのだ。



「はは、笑わてくれんじゃねぇか。なぁ凪。」

「そうだな。」



必死な駿里をみてまた真と凪が笑ってきた。駿里は本気なのに。2人はいつも余裕で駿里を小馬鹿にしてくる。



「駿里。確かにお前の言う通り旭川寛也は日本では1番強いかも知らない。だがそれは日本ではの話だろ?俺らはマフィアって言ったんだぞ。人の話はよく聞かなきゃ駄目だろうが駿里くんよぉ。」



真がそういったのを聞いて駿里は確信した。この人たちは本当にやばい人だ、と。



「…マフィア、ってがい、こく?」

「そうだ。俺らは他の国の連中とも繋がってる。だからお前は覚悟しとけよ。ここからもう二度と出れねぇんだから。最悪太陽を見ることも出来なくなるかもな。」



…そんな。いやだ。そんなのいやだ。二度と寛也に会えないなんて嫌だ。松下にも志方にもみんなにも会えない?そんなのそんなの嫌に決まってる。



「…や、やだっ、はなせっ!!」

「おいおい無駄な抵抗すんなって。どうすんだよ怪我したら。殺されんの俺らなんだからな。」



少し凪が焦ったようにそう言って駿里の事を腕の中に閉じ込めた。そうすれば駿里が怪我をすることは無いから。だが駿里からすればそれは最悪だ。そのため当然駿里はもっと暴れる。



「知らないっ、そんなの知らないっ、離せよっ、帰るんだ俺は…っ!!」

「帰れねぇって。お前はもう俺らに捕まってんだから。二度と旭川には会えねぇぞ。」



駿里はこんなにも必死なのに…凪は駿里を馬鹿にするようにそう言って笑ってくる。それが駿里は悔しくて仕方がない。だからせめてもの抵抗としてずっと暴れ続けていた。



「はなっ、せっ、はなせよっ!!!」

「おい凪。お前が余計な事言うからこいつが暴れまくっちまったじゃねぇか。」

「いやぁ、だって面白いじゃねぇか。ちょっと煽るだけでこんな可愛い反応すんだからよ。」



と、言いながら凪と真は笑い続けた。駿里をみて…。だがその時2人は足音に気づいた。背後から来る何者かの足音…。そのため2人は後ろを振り返った。するとそこには…。



「おい凪、真。チンたらすんなっていつも言ってんだろ。」



背の高い強面の男がいた。だから駿里は思わず固まってしまった。この男が誰なのかは駿里は当然知らない。だけど身体が言う。この人はやばいって。そんな直感が駿里はしたのだ。



「お、ボスのお出ましですね。お疲れ様です組長。」

「凪。その呼び方はやめろ。」




組長…。凪がそういったのを聞いて駿里はやっとこの人が誰なのか分かった。そしてそれと同時に震え上がった。だってこの人はこのやばい2人の上司だから。



「えーでもここ日本ですよ。日本ではボスの事を組長って呼ぶらしいんでそう呼びたいんですよ俺は。」



と、凪はお気楽に答える。そんな凪をみてボスと呼ばれた男はため息をついた。



「そうか。勝手にしろ。どうせお前のことだから何を言っても聞かねぇだろ。」

「さすがですね組長。」



凪はそう満足そうに言った。その間ももちろん駿里を逃がさないようにと腕の中に閉じ込めていた。



「おい凪。こいつが漲駿里か?」

「はい。写真よりも可愛いですよね。」

「これは驚いたな。凪が男に興味を示したのは初めてじゃねぇか?」

「あーそれ真にも言われました。そんだけこいつが可愛んですよね。」



そう言って凪は駿里をボスと呼ばれていた男に見せびらかすようにした。するとその瞬間ボスと呼ばれていた男の顔が変わった。



「……おい。お前ら。」

「はい。なんでしょう?」



凪は何やらボスが怒っていることは察したが特に気にしていない様子でそう言った。そんな凪の頭をボスは思い切り殴った。



「い゛っ、痛いじゃないですか!」

「…うるせぇ。お前らこいつとやったな?」

「はい。やりましたけど?」



バカ正直に答える凪にボスはため息しか出ない。真もまさかそれを普通に言うと思わなかったようで真も凪にため息をついた。



「はいじゃねぇよ馬鹿野郎。幹部として恥ずかしくねぇのかよ。」

「ちょっと組長…。いったいじゃないですか。俺の頭大切にしてください。あなたの右腕ですよ。」

「黙れ。そのくせお前は俺の指示1つとして守れねぇのか?」



ボスは凪を甘やかさない。まぁ当然だろう。ボスは駿里が欲しくてこの2人に誘拐を命令した。なのに先に手を出されては溜まったもんではないだろう。



「違いますよ組長。俺じゃないです。真が言い出したんです元は。でも俺も乗ってきちゃったんです。だから仕方ないでしょ。」

「たく…。まぁいい。とりあえずそいつを渡せ。」

「はい。」



これ以上凪と話しても何も解決しない。そう思ったのだろう。ボスはそう言って駿里を渡すように凪に言った。そのため凪は駿里の事をボスにすぐに渡した。



「や、やめろ…っ!!」

「抵抗する元気があんなら多少無理させても大丈夫そうだな。」



叫んで逃げようともがいている駿里の腕を掴みながらボスはそう言う。そのボスの顔を見て駿里はまた震える。だってまだ若いから…。下手したら寛也よりも若いかもしれない。そして日本人…?ハーフ…?いや分からない。けれどどちらにしても美形の顔だ。そんな男がマフィアのボス。相手には困らないだろうに何故自分を選んだのか駿里はまるで分からなかった。



「そうですね。けどその後で俺もやりたいんで気絶させないようにお願いします。」



と、真が言うとボスは呆れ顔を浮かべた。



「相変わらず生意気なやつだ。お前は明日にしろ。」

「…はーい。」



軽くボスに怒られたが真は軽くそう返した。そしてそんな真を見たあとボスは視線を駿里に戻した。



「お前は俺と行くぞ。着いてこい。」

「いや、だっ、やめろ…っ!!」



凪の力とは比べものにならないぐらいボスの力は強かった。だからどれだけ駿里が抵抗しても無駄。しかしそれでも逃げたかった駿里は懸命に抵抗を続けた。だが…。



「その態度も躾てやる。来い。」

「やめっ、はなせ…っ!!」

「お前の力じゃ俺には適わねぇよ。いいから大人しく着いてこい。その間お前らはやれる仕事片付けておけ。」

「「承知。」」


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