極道の密にされる健気少年

志方と島袋に連れ去られる話

2人の秘密

＊松下視点







｢駿里。組長と何があった？｣

｢…………っ。｣



まぁ答えねぇよな。分かってはいたが駿里は今多分、相当精神的に来ている。だから俺はとりあえず駿里の拘束を解いた。組長に怒られたとしても今はそれをすべきだと思ったから。



｢答えたくねぇの？｣

｢…………っ。｣

｢なぁ駿里。俺の前では変な意地を張らなくていい。｣

｢…………っ。｣



俺は駿里には自由に生きて欲しいと思ってる。ただそれはあくまで思っているだけ。実際には自由にしてやれない。だからその分俺はこいつの不満や不安を取り除いてやりたいんだ。



｢駿里。｣

｢…………っ。｣

｢なぁこっち向けって。｣

｢…………っ。｣



何を言っても駿里は俺の方を向かない。多分今駿里は泣いてる。それを俺にバレないようにしてるんだろうな。なんでだよ。今更じゃねぇか。俺が全部受け止めてやるのに…馬鹿なやつだな。そんなとこも愛おしいんだけどな。




｢ほら来い。｣



俺はそう言って駿里の顔を無理やり上げさせた。そしたら案の定駿里は顔中が涙で溢れ出るほど泣いていた。



｢ひでぇ顔だな。可愛い顔が台無しだぞ。｣



俺はそう言い駿里の頭を撫でた。そんでその後駿里の唇や頬にキスを落としながら駿里を慰めるように背中をさすった。



｢…ぅ、っ、ふっ…、ぅっ、うぅ゛っ、｣

｢たく、お前はいつまで経ってもガキだな。｣



いつまで経っても可愛いやつ。ほんとにお前はそうだよ。どんな顔しても可愛い。泣き顔すらな。けど今は違う。駿里は本当に嫌で泣いてんだから。でもだったら俺が受止めてやる。これは組長には出来ないことだ。だから俺はちょっと…ほんの少しだけ組長に勝てた気がした。今だけは…。



｢ちがうも…っ、ん、ガキじゃなっ、ぃ、｣

｢へーへー。泣いててもそこはちゃんと否定すんだな。可愛いやつ。｣

｢だって、っ、ぇ、｣

｢分かったから。落ち着いてから喋れ。それまで待ってやるから。｣



俺はそう言って駿里が落ち着くまで待った。だが今回は長かった。中々駿里は泣き止まなかった。まぁそれだけ駿里は悔しかったんだろうな。駿里はちゃんと組長のことを愛してるから。前とは違う。ただ監禁されてた時とは違う。だからこうして組長と喧嘩になるとどうしたらいいのか分かんなくなっちまうのかもな。



｢…落ち着いた。康二さん。｣

｢そうか。なら顔見せてみろ。｣

｢…うん。｣



俺が顔を見せろと言うと駿里は拒否することなく言うことを聞いた。ああ…ほんとにこいつは。可愛いな。素直に俺の言うことを聞く駿里が可愛くてたまらない。


｢泣きすぎだろお前。これ明日目腫れちまうぞ。｣

｢…だって寛也が。｣

｢組長がどうしたんだ？｣

｢俺のこと無視するんだもん。｣

｢あ？無視？そんなわけねぇだろ。｣

｢無視っていうか…俺のこと考えてくれないの。｣



ああ…そういう事な。俺はなんとなく察した。多分駿里が言いたいのは組長が駿里のことを無視してやりたい放題してくるってことだろうな。けどまぁ組長の気持ちも分かる。でもそれは駿里からしたら意味がわからないよな。俺たちがお前に執着してんのは俺らの勝手なんだから。



｢そうか。それは嫌だったな。｣

｢俺だって寛也と喧嘩したいわけじゃないのに…。｣

｢そうだよな。｣



なんか俺…あまりにも可哀想だな。愛してるやつの相談を聞いてんだから。ああ…なんて人生だ。こいつが俺のもんになってくれればとどれだけ思っただろうか。叶うはずもないと分かっていながらも心のどこかで願うんだよなぁ。



｢なぁ駿里。｣

｢ん？｣

｢お前はどうしたいんだ？｣

｢俺は…っ、｣

｢それが分かんねぇなら俺のもんになれば？｣

｢…え？｣

｢だから組長から一旦離れて俺のとこに来ればって言ってんだよ。｣