極道の密にされる健気少年

安達

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志方と島袋に連れ去られる話

理由

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「…なんだよそれっ、意味わかんないっ、外すらまともに出してくれないなんて酷い!」



駿里は寛也に言われたことが衝撃だったあまりずっと思っていたことを口走ってしまった。それだけは絶対言わないようにしよう。そう思っていたのに…。その理由は紛れもなく寛也のためだ。寛也だって駿里を閉じ込めたくてそうしてる訳じゃない。そうしなければならないから家に閉じ込めている。いくら寛也が組長の座に着いているとはいえ外の世界は危険だから。駿里はそれがわかっていたはずなのに寛也にそう言ってしまった。すると寛也は案の定…。



「お前それ本気で言ってんのか?」

「ちかやっ、いたい…っ。」

「俺の問いに応えろ。」



決して激痛が走ったわけじゃない。寛也が駿里を痛めつけたりするわけが無いから。例え怒り狂っていたとしても。だから駿里は多少痛かっただけなのだがそう言った。それは寛也が怖かったから。痛いと言えば大体寛也は退いてくれる。やめてくれる。なのにやめてくれなかった。だから駿里の中でどんどん恐怖が膨れ上がっていく。



「何黙りこくってんだよお前。」

「あ、あの…組長。」



車は止めたものの口を挟むことのなかった志方がついにそう言った。それほどまでには寛也が興奮していたということだ。



「なんだ。」

「駿里は興奮のあまりに言い過ぎちまってるだけです。大目に見てやってください…。」

「大目に?俺から離れようとしてるこいつにそんなこと出来るかよ。」

「組長。落ち着いてください。駿里もきっと訳があったんです。普段は組長の言うこと全部聞いてるじゃないですか。」



志方の言う通りだ。駿里はいくら寛也の帰りが遅くてもずっと待っている。文句も言わずに待っているんだ。朝は抱き潰されているから起きるのが遅いがそこからはずっとひとりぼっち。そんな毎日だ。それに耐えている駿里の姿を知っている志方は寛也にそう言った。すると寛也が…。



「はぁ…。」



そうため息をついた。それは自分を落ち着かせるためについたため息だったらしく寛也の顔つきがみるみるうちに優しくなっていった。



「駿里。」

「………。」



寛也は怒りが消え去ったのだろう。駿里の名を優しくそう呼んだ。だけど駿里はまだ警戒している様子だった。そして冷静になった寛也とは真逆に駿里はまだ沸騰していた。そのため駿里は寛也から顔をそっぽ向けた。



「おい駿里。こっち見ろって。」

「いや…!」

「いいから見ろ。」



と、寛也は言って無理やり駿里の顔を掴み自分の顔を向かせた。その時初めは嫌がった駿里だったが寛也の表情を見てすぐ体の力を抜いて寛也を見た。



「確かに俺も悪かった。お前に嘘をついちまった事は事実だからな。それは謝る。けどそれ以前に俺達約束したよな。勝手に外に出ねぇって。康二と出る時も必ず俺に報告しろってよ。なのにお前は何をした?」

「…………っ。」



寛也にもっともな事を言われて駿里は何も言い返せなくなった。それは意地だったのかもしれない。もちろん駿里は自分が悪いことは自覚している。だけど寛也のことが心配で外に出たのにこんなことになってしまったから。そんな駿里に志方が…。



「駿里。意地張ってねぇで謝れって。」

「…違うもん。」

「は?」



志方は駿里の言った事がよく分からなかったようで首を傾げるようにそう言った。そんな志方とは裏腹に寛也は…。



「駿里。言ってくれ。お前の思っていることが知りたい。」



寛也がそう言うと駿里は黙り込んだ。きっと寛也がそう言ったから駿里は自分の思いを言おうとしてくれているんだ。それを悟った寛也は静かに待った。時より駿里の頬にキスをしたり頭を撫でたりしながら寛也が駿里を促すことなく待っていた。そんな寛也のおかげもあってか駿里はゆっくりとではあったが話し始めた。



「…俺ずっと家の中でしか生活出来てないんだよ。それが変わって外に出れるってことになって嬉しかった。なのに寛也は帰って来ないしそれも1人で外に行ったから俺は心配で寛也の所に行こうとしたんだ。」




寛也はその駿里の思いを聞いて先程の自分を責めた。確かに駿里がしたことは良くないことだ。約束を破ったのだから。でもそれにはちゃんと訳があった。それもその訳には寛也が関わっていた。それを知った寛也はいたたまれなくなってしまう。



「それなのに外に出ても寛也がいなかったから俺心配で泣いちゃって…。そしたら康二さんが車を出してくれたんだ。それで寛也がいなかったら戻ろうって約束で…。でも庵くんと出会ったから家に帰らずにあの屋敷に言ったんだ。」



駿里を泣かすまで心配させてしまった。それを知った寛也。それに加え駿里はちゃんと家に戻ろうとしていた。だが自分が栗濱組に関わってしまったがために駿里にこんな思いまでさせてしまった。もちろん亮に手を貸したことには後悔していない。だがやり方を間違えしまった。寛也は耐えきれなくなり駿里を強く抱き締めた。



「そうか。すまなかった駿里。俺はお前に理由も聞かずに酷い事をしてしまった。」

「ううん、俺の方こそ約束破っちゃってごめんなさい…。」
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