極道の密にされる健気少年

安達

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志方と島袋に連れ去られる話

屋敷

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「承知しました。あ、そうだ組長。駿里にはこの事を伝えますか?」

「いや伝えないでくれ。あいつには余計なストレスを与えたくないからな。俺はまだ電話中だと駿里には伝えといてくれ。」

「承知しました。それではお気をつけて。」

「ああ。」



寛也はそういい電話を切った。本当は今すぐに駿里に会いに行きたい。だがそうもいかない。何せ可愛い亮の頼み事だから。だからこれが終わったらめいいっぱい可愛がってやろう。そう思いながら寛也は森廣に電話をかけた。すると森廣はワンコールもせずに電話に出た。



「お疲れ様です組長。どうされましたか?」

「お前は今どこにいる?」

「事務所です。」

「そうか。ちょうど良かった。事務所には志方もいるか?」

「いますよ。今から外に出ますか?」

「ああ。志方と一緒に外に来てくれ。行くべき場所が出来た。」

「承知しました。直ぐに行きます。」



と、森廣が言うと寛也は電話を切った。そして2人のことを待ちながら考えていた。どうすれば迅速に物事を終えることが出来るだろう、と。それは紛れもなく駿里に早く会いたいからだ。そんなこんなで寛也が考え事をしていると後ろから足音が聞こえてきた。



「お待たせしました組長。」

「寒い中待たせてしまってすみません。森廣さんは準備早かったんですけど俺が遅くなっちまって…。」

「いや俺も考え事があったから大丈夫だ。それより急に言って悪いな。」

「いえ。それはそうとどこに行きますか?」



志方とは違い森廣は落ち着いている。そのためいつも寛也を助けてくれる。そんな森廣の問いかけに対して寛也は答えた。



「栗濱の所だ。」

「…栗濱ですか?」



寛也がどこに行くのか言った途端志方がものすごい嫌な顔をした。そしてあからさまに後退りをする。そんな志方を見て寛也は…。



「おい志方。お前分かりやすく嫌な顔してんじゃねぇよ。」



と、言った。だがそんな寛也とは裏腹に森廣は意外にも志方を庇ってくれた。



「仕方ないですよ組長。志方は栗濱に気にいられてちょっと嫌な思いしてましたからね。」

「そうだったか?」



寛也の記憶の中にそもそも栗濱はあまり印象深く残っていない。だから寛也は志方が栗濱にされたことを覚えていないのだ。そもそも興味もないから。そんな寛也に志方はあんまりだと言わんばかりに声を荒らげ始めた。



「そうですよ組長!!ていうか組長も組長で俺の事助けないから散々な思いしたんですからね。」

「そりゃ悪い事をしたな志方。お前が嫌というなら来なくていいぞ。」

「…いえ行きます。組長との仕事なので。」



どれだけ嫌でも寛也と仕事をすることが好きな志方。そのためそういったのだ。そんな志方をみて寛也は少し嬉しそうだった。



「そうか。なら行こう。志方、お前が車を出せ。その間に森廣に内容を簡単に伝えるからよ。」

「…承知しました組長。」

「おい志方。お前その顔やめろっつってんだろ。嫌な顔すんなって。」

「…すんません組長。」



と、志方は言っているもののやはり嫌そうだった。そのため寛也と森廣は顔を見合せて志方には見えないように笑った。いつまで経っても昔と変わらない志方の姿に…。



「ほら志方、歩け。組長を待たせるな。」

「は、はい。」



志方は森廣の発言に対して少し焦ったようにそういい歩き始めた。そして車に3人は乗り込んだ。その後車の中で寛也が端的に説明をしながら志方の運転で栗濱の事務所まで到着した。


 
「着きましたよ組長。」

「よし行くか。志方、お前は俺の後ろにいろ。」

「はい。」

「森廣、お前は裏口に回れ。万が一があるからな。」

「はい。」



寛也はそれぞれに指示を出して車から出た。そして寛也は志方と共に栗濱の立派な屋敷へと足を踏み入れた。その時舎弟だろうか…。玄関前に2人ほどの男が立っていた。その男に寛也は歩み寄り…。



「おいお前。栗濱に俺が来たと伝えろ。」

「…あ、あさひかわ、さん!?」



門の前にたっていた男は寛也だと気付くまで警戒心マックスでいたが寛也だと分かった瞬間に驚きそして焦ったようにそう言った。そんな男に対して寛也は目を釣りあげ睨んだ。動きがあまりにもとろいからだ。



「いいから早くしろ。」

「は、はい!!」



そう言って門番をしていた2人ともが屋敷の中に入っていった。2人とも行ったのは寛也と同じ空間にいたくなかったからだろう。それだけ寛也は他のヤクザにとって脅威なのだ。それを目の当たりにした志方はなんだか誇り高くなった。



「組長も有名になりましたねぇ。俺は嬉しいです。」

「そうか?言うほどでもないだろ。」

「俺からすれば組長のその自覚のない所がまた面白いです。」



そんなふうに2人が呑気に話していると屋敷の中に入っていった男が顔を真っ青にしながら戻ってきた。

そしてーーー。



「あの、旭川さ、ん。」

「なんだお前。まぁいいか。はぁ…いいから要件を話せ。」



あまりにも焦っていたので寛也は不審がったのだろう。だがそれよりも中に入ることが今は最優先なのでこの男の始末は話を聞いたあとですることにした。



「今組長はその…その外に出ておりまして、、」

「ほぅ…。」



ここにいることは調べが着いているのに栗濱は嘘をついた。きっと寛也に知られてはまずい事があるのだろう。だが寛也は栗濱がここにいることを知っている。それは調べてきたからだ。というか寛也ほどの男が調べずにここに来るわけが無い。だから寛也は…。



「そうか。なら上がらせてもらう。嘘までついて隠したいものがお前らにはあるようだからな。」

「ちょ、ちょっと旭川さん!!こ、困ります!!」

「知ったこっちゃねぇよ。おい志方、こいつを黙らせろ。」

「はい。」



志方はそう返事をするとビビりまくっている男に大股で近づいて行った。そして…。



「あ、あの、ま、まってくださぃ…っ、う゛っ!!」

「上出来だ志方。」

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