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志方と島袋に連れ去られる話
それだれ?
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「うぅ…寒い。」
あれから駿里は本当に外に出れた。久々の玄関。久しぶりのエレベーター。そしてエントランス。全てが新鮮で駿里は嬉しさからずっと微笑んでいた。外に出るまでは…。
「手痛いっ、低体温症になりそう…。」
「はは、そりゃ冬だからな。特にお前はずっと外に出てなかったから余計に寒いだろうな。そろそろ年も開けちまうし。」
そうじゃん。もう年明けるじゃん。今日は12月28日だから…1週間も切ってる!!早いなぁ。去年寛也たちと一緒に初詣に行ったのが昨日のことのよう。
「早いなぁ。」
「だな。お前と過ごし始めてからは余計に早く感じる。」
寛也がそう言いながら駿里の頭を撫でた。その手の体温が心地よくて駿里は自ら寛也の手に顔を擦りつけた。そしたら寛也が笑ってくれた。それが嬉しかった駿里は寛也にギューっと抱きついた。そんな駿里に当然寛也は応える。だがそうしているうちに寛也が何かを思い出したようで駿里の方を向いた。
「駿里、そういやあのこと…………ん?」
「どうしたの寛也。」
普通に話していたはずの寛也が急に止まった。そのため駿里はすぐに寛也の顔を見た。すると寛也はどこか一点を見つめていたのだ。それも驚いた顔をして…。だから駿里がどうしたのかと聞こうとしたがその時誰かが2人に話しかけてきた。
「あれ組長と駿里じゃないですか!お疲れ様です!」
「あ、康二さん。」
「あってなんだよお前。」
いつもの如く駿里と松下が言い合いを始めた。だが寛也は二人を止めなかった。それどころか駿里のことを寛也は松下に預けたのだ。
「康二。悪いちょっとの間駿里を頼む。」
「…え?あ、いいですけどどうしました?」
「それは後で言う。」
「は、はい。」
「ちょ、ちょっと寛也!!」
寛也は駿里の言葉に耳も貸さず走り出してしまった。そんな寛也を追うように駿里も走り出そうとしたがそれを松下に止められてしまった。
「おっと、どこいくんだよ。」
「だって、寛也が行っちゃったんだもん。」
そういい駿里は松下の腕の中から抜け出そうとするも松下は離してくれない。だがそれは松下が寛也から言い渡されたことだから駿里は松下を攻めることも出来ない。
「だからなんだよ。お前組長に待ってろって言われたろ?」
「けど……うん。そうだよね。待ってる。でも寛也どうしたんだろ。」
「さぁな。つかそれよりもお前なんで外いんの?」
未だに駿里のことを腕の中に閉じ込めながら松下が駿里にそう聞いた。
「寛也が出てもいいよって。30分だけだけどね。」
「そーゆーことか。」
「なのに…どっか行った。」
「組長のあの顔見る限りはかなりやべぇ事だな。」
「そうなの?」
「ああ。そもそもお前以外のことで組長が顔色変えることないからな。」
「それほんと…?」
そんなの初耳だ…。駿里からすれば表情をコロコロ変える寛也の方をよく見ているのだから。冷静な寛也を逆に見た事が無いかもしれない。だから驚きが隠せないのだ。
「ほんとさ。だからお前からしたら仕事の組長の方が新鮮かもな。けどありゃまじで珍しいほどの狼狽えぶりだ。」
「何かあったのかな?」
「それなら俺を呼ぶだろ。でも呼ばなかったってことは組長が自分で解決できる範囲なんだろうよ。例えばずっと会っていない人を見つけたとかな。」
「それならいいんだけど…。」
「まぁ心配すんな。組長は大丈夫だからよ。」
松下はそう言ったが駿里は少し不安そうだ。そんな駿里の不安を少しでも無くしてやろうと松下は駿里の頭を撫でたりなんだりするがやはり不安そうだ。だがあるものを松下はその時見つけた。そのため松下は駿里に再び話しかけた。
「しゅーんーり。ほらこっち向け。」
「…ん?なに?」
「ほら、あそこ見てみろよ。あっちの細い道の方だ。」
松下はそう言ったが駿里は正直いうと乗り気じゃなかった。だって寛也がいないから。けれど松下がこの場を明るくしてくれようと言ってくれたこと。だから駿里は松下の言った方向を向いた。するとそこには…。
「寛也…!」
なんといなくなったはずの寛也が戻ってきていた。だから駿里は松下の腕の中から飛び出して寛也目掛けて走り出した。そして寛也の腕の中にダイブした。
「おかえり…っ!」
「ごめんな急にどっか行っちまって。」
「ううん、それよりどうしたの?」
「昔の話になるんだが俺が目をかけていた奴がいたんだ。そいつが今居た気がしてな。」
「むかし?てことは今はあってない人…?」
「ああ。連絡先は渡していたんだが連絡が取れなくてな。そいつは康二と同年代ぐらいのやつで引き取ろうともしていたんだがある日を境に姿をくらませちまってよ。」
そんな過去があったとは知らなかった。寛也が松下のような身寄りのない子供を引き取り育てていたことは知っていたが他にもそんな子供がいたことは駿里は知らなかった。
「…それで、その人がいたの?」
「そんな気がしただけだ。どうやら勘違いだったようだ。」
「へぇ、そんな奴いたんですか。」
会話が一段落したところで松下がそう言ってきた。その時の松下の顔が駿里からは少しいじけているように見えた。どうしてだろうか…。
「そういやお前にはこの事を言ってなかったな康二。」
「はい。俺は聞いてませんね。」
「そう牙を向けるな。いい加減お前も大人なんだから部外者を受け入れない癖を治せ。」
「…すんません。」
ああ、そうか。駿里はここでやっとわかった。松下は嫉妬していたんだって。松下からすれば寛也は上司でもありが父親のような存在だ。だから寛也を取られたくないという気持ちもあるのだろう。普段こんな松下を見れないから駿里は不思議な気持ちになった。だが今はそれよりも駿里は寛也が探そうとしていたその人が気になる。だから寛也にそれを聞くことにした。
「寛也。」
「ん?どうした?」
「その人の名前はなんて言うの?」
「確か名前は…。」
名前と聞かれて咄嗟に思い出せなかった寛也。そりゃそうだろう。だいぶ前のことなのだから。そして寛也はそのまましばらく考え込んでいた。その後思い出せたのだろう。寛也が顔を上げた。
「ああ、そうそう。そいつの名は羽田 亮だ。」
あれから駿里は本当に外に出れた。久々の玄関。久しぶりのエレベーター。そしてエントランス。全てが新鮮で駿里は嬉しさからずっと微笑んでいた。外に出るまでは…。
「手痛いっ、低体温症になりそう…。」
「はは、そりゃ冬だからな。特にお前はずっと外に出てなかったから余計に寒いだろうな。そろそろ年も開けちまうし。」
そうじゃん。もう年明けるじゃん。今日は12月28日だから…1週間も切ってる!!早いなぁ。去年寛也たちと一緒に初詣に行ったのが昨日のことのよう。
「早いなぁ。」
「だな。お前と過ごし始めてからは余計に早く感じる。」
寛也がそう言いながら駿里の頭を撫でた。その手の体温が心地よくて駿里は自ら寛也の手に顔を擦りつけた。そしたら寛也が笑ってくれた。それが嬉しかった駿里は寛也にギューっと抱きついた。そんな駿里に当然寛也は応える。だがそうしているうちに寛也が何かを思い出したようで駿里の方を向いた。
「駿里、そういやあのこと…………ん?」
「どうしたの寛也。」
普通に話していたはずの寛也が急に止まった。そのため駿里はすぐに寛也の顔を見た。すると寛也はどこか一点を見つめていたのだ。それも驚いた顔をして…。だから駿里がどうしたのかと聞こうとしたがその時誰かが2人に話しかけてきた。
「あれ組長と駿里じゃないですか!お疲れ様です!」
「あ、康二さん。」
「あってなんだよお前。」
いつもの如く駿里と松下が言い合いを始めた。だが寛也は二人を止めなかった。それどころか駿里のことを寛也は松下に預けたのだ。
「康二。悪いちょっとの間駿里を頼む。」
「…え?あ、いいですけどどうしました?」
「それは後で言う。」
「は、はい。」
「ちょ、ちょっと寛也!!」
寛也は駿里の言葉に耳も貸さず走り出してしまった。そんな寛也を追うように駿里も走り出そうとしたがそれを松下に止められてしまった。
「おっと、どこいくんだよ。」
「だって、寛也が行っちゃったんだもん。」
そういい駿里は松下の腕の中から抜け出そうとするも松下は離してくれない。だがそれは松下が寛也から言い渡されたことだから駿里は松下を攻めることも出来ない。
「だからなんだよ。お前組長に待ってろって言われたろ?」
「けど……うん。そうだよね。待ってる。でも寛也どうしたんだろ。」
「さぁな。つかそれよりもお前なんで外いんの?」
未だに駿里のことを腕の中に閉じ込めながら松下が駿里にそう聞いた。
「寛也が出てもいいよって。30分だけだけどね。」
「そーゆーことか。」
「なのに…どっか行った。」
「組長のあの顔見る限りはかなりやべぇ事だな。」
「そうなの?」
「ああ。そもそもお前以外のことで組長が顔色変えることないからな。」
「それほんと…?」
そんなの初耳だ…。駿里からすれば表情をコロコロ変える寛也の方をよく見ているのだから。冷静な寛也を逆に見た事が無いかもしれない。だから驚きが隠せないのだ。
「ほんとさ。だからお前からしたら仕事の組長の方が新鮮かもな。けどありゃまじで珍しいほどの狼狽えぶりだ。」
「何かあったのかな?」
「それなら俺を呼ぶだろ。でも呼ばなかったってことは組長が自分で解決できる範囲なんだろうよ。例えばずっと会っていない人を見つけたとかな。」
「それならいいんだけど…。」
「まぁ心配すんな。組長は大丈夫だからよ。」
松下はそう言ったが駿里は少し不安そうだ。そんな駿里の不安を少しでも無くしてやろうと松下は駿里の頭を撫でたりなんだりするがやはり不安そうだ。だがあるものを松下はその時見つけた。そのため松下は駿里に再び話しかけた。
「しゅーんーり。ほらこっち向け。」
「…ん?なに?」
「ほら、あそこ見てみろよ。あっちの細い道の方だ。」
松下はそう言ったが駿里は正直いうと乗り気じゃなかった。だって寛也がいないから。けれど松下がこの場を明るくしてくれようと言ってくれたこと。だから駿里は松下の言った方向を向いた。するとそこには…。
「寛也…!」
なんといなくなったはずの寛也が戻ってきていた。だから駿里は松下の腕の中から飛び出して寛也目掛けて走り出した。そして寛也の腕の中にダイブした。
「おかえり…っ!」
「ごめんな急にどっか行っちまって。」
「ううん、それよりどうしたの?」
「昔の話になるんだが俺が目をかけていた奴がいたんだ。そいつが今居た気がしてな。」
「むかし?てことは今はあってない人…?」
「ああ。連絡先は渡していたんだが連絡が取れなくてな。そいつは康二と同年代ぐらいのやつで引き取ろうともしていたんだがある日を境に姿をくらませちまってよ。」
そんな過去があったとは知らなかった。寛也が松下のような身寄りのない子供を引き取り育てていたことは知っていたが他にもそんな子供がいたことは駿里は知らなかった。
「…それで、その人がいたの?」
「そんな気がしただけだ。どうやら勘違いだったようだ。」
「へぇ、そんな奴いたんですか。」
会話が一段落したところで松下がそう言ってきた。その時の松下の顔が駿里からは少しいじけているように見えた。どうしてだろうか…。
「そういやお前にはこの事を言ってなかったな康二。」
「はい。俺は聞いてませんね。」
「そう牙を向けるな。いい加減お前も大人なんだから部外者を受け入れない癖を治せ。」
「…すんません。」
ああ、そうか。駿里はここでやっとわかった。松下は嫉妬していたんだって。松下からすれば寛也は上司でもありが父親のような存在だ。だから寛也を取られたくないという気持ちもあるのだろう。普段こんな松下を見れないから駿里は不思議な気持ちになった。だが今はそれよりも駿里は寛也が探そうとしていたその人が気になる。だから寛也にそれを聞くことにした。
「寛也。」
「ん?どうした?」
「その人の名前はなんて言うの?」
「確か名前は…。」
名前と聞かれて咄嗟に思い出せなかった寛也。そりゃそうだろう。だいぶ前のことなのだから。そして寛也はそのまましばらく考え込んでいた。その後思い出せたのだろう。寛也が顔を上げた。
「ああ、そうそう。そいつの名は羽田 亮だ。」
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