極道の密にされる健気少年

安達

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志方と島袋に連れ去られる話

約束だよ *

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「意味わかんない…っ、」



落ち着くまでってなんだよ…と駿里は肩を落とした。少し違う部屋に行って気持ちの整理をしたかっただけなのにそれさえも松下はさせてくれないのか…。それともなにか松下には思うことがあるのだろうか。駿里は怒りよりも疑問が生まれてきた。そんな駿里を相変わらず掴まえながら松下は口を開いた。



「分かんなくていい。どっちにしろ俺はお前を離さねぇから。」

「なんなんだよもう…っ、」



わかんないよ康二さん…と駿里は困り果ててしまった。だけど駿里の予想通り松下は思うことがあったのだ。それは今の落ち着きのない駿里を一人で行かせてしまえば悪いことが起こるかもしれないということだ。ただでさえ寂しがり屋の駿里だ。怒りに任せて別のところに行ったところできっと寂しくなってしまう。その場合なにかしでかすかもしれない。だから松下は駿里が落ち着くまで自分の目の届く範囲にとどめようとしているのだ。その松下の行動のかいもあってか駿里は時間をかけたものの落ち着くことが出来た。



「お、だいぶ落ち着いたか?」

「…うん。」

「なら良かった。」



松下はそう言いながらニカッと笑った。けれど駿里は疑問しか生まれなかった。どうして松下はそこまで尽くしてくれるのだろうか…と。



「なんで康二さんはそこまで俺のこと気にかけてくれるの…。」

「あ?嫌なのか?」

「そうじゃないっ、そうじゃなくて…。」



自分のことをもっと優先にしたらきっと松下は大変じゃなくなる。仕事だって早く終わるし寝る時間だって確保できる。なのにその時間を割いてまでどうして気にかけてくれのか駿里は松下が分からなかったのだ。



「別に理由なんてねぇよ。俺がそうしたいからしてるだけ。つかそれを言うならお前もだろ。」

「え?」



駿里がそういい首を傾げると松下は駿里の上から退いた。そしてその後松下は駿里を起こして自分の膝に向かい合わせになるようにして乗せた。



「俺に嫌ってほど意地悪されてんのにお前俺の事嫌いになんねぇんだから。」



松下がそう言いながら駿里の頬をムニムニと揉んできた。確かに松下の言う通りだ。駿里は松下のことが大好きなのだから。けれど直接そうやって言われるとなんだか恥ずかしい。だから駿里は…。



「…嫌いだし。」

「嘘つけ。」

「康二さんなんて嫌いだから…。」

「ふーん。」



普段『嫌い』なんて言葉を松下に言ってしまえば駿里は酷い目に遭う。だから禁句ワードなのだが今は違った。今の松下には何を言っても怒られない。ただの駿里の勘だけどそう思ったから駿里は嘘だけどそういったのだ。そして駿里の予想通り松下は怒らなかった。



「嫌いな奴に抱きしめられて落ち着いてんのはどこの誰だろうな。」

「…知らない。」

「はは、知らないか。」



知らないといいつつも駿里は松下から離れようとしない。松下の体温が落ち着くのだろう。だから松下も駿里を抱きしめ続ける。そんな駿里が愛おしくて松下は…。



「なぁ駿里。」

「…なに。」

「1回だけ抱かせてくれ。」



松下がそう言うと駿里は固まった。なんて返事をしようか迷っている様子だった。きっといつもの松下なら駿里がなんて言おうと問答無用で襲ってくる。だから今回松下がそう聞いてきたことで駿里は迷っているのだ。 もしかしたら抱かれることなく事が済むかもしれないから。けれどやっぱり回りくどく言うよりも正直に言うのがいいと思ったので…。



「いやだ。」

「はは、即答かよ。」

「嫌なものは嫌なんだもん…。」

「それは俺が虐めすぎたからか?」

「…それもあるけど、そうじゃない。」

「ならなんでだよ。」



松下がそう言うと駿里は困った顔をした。そりゃそうだろう。聞かなくてもわかって欲しいことなのだから。駿里には寛也がいる。寛也と愛し合っている。だからダメなのだ。もちろん駿里は寛也以外としたくないしするつもりもない。けれどいつも力では勝てず結局無理やりやられて寛也に怒られ喧嘩をしてしまう。だからやりたくないという気持ちが1番だがここで松下にそう言ってしまえば松下が暴走しかねない。そのため駿里は松下の顔色を伺いながら答えることにした。



「おれには寛也がいるから…。」

「まぁそうだな。でも今日こと言ったら多分組長も許してくれるだろうし…。」

「…どういう意味?」



今日のこと?松下に何かされたっけ?と駿里は考えよどうしたがそれよりも先に松下が行動してしまった。



「うわっ、」

「こういう意味。」



松下によって再びソファに押し倒されてしまった駿里。そのためいち早く起き上がろうとするも松下が全身で覆いかぶさってきたがために出来なかった。



「お、おれいやって言ったじゃんかっ!」

「そうだなぁ。でも俺がそれで引いたこと今まであったか?」

「け、けど…っ、」



寛也が悲しんじゃう。出来ない。やりたくない。けれどそれを言ったら松下も傷つくかな…。駿里はどうすればいいのか分からなくなって混乱し始めてしまう。そんな駿里をみて松下は優しく微笑んだ。



「1回だけ。優しくするから。」

「そういう問題じゃないんだ…っ!」

「気持ちよくするから。」

「だ、だから…っ、」



ダメなんだ絶対。やれない。けど松下も傷つけたくない…。もう駿里はどうしたらいいか分からなくなった。そんな風に思いながらも1歩も引かない駿里をみて松下が駿里の耳元に口を近づけてきた。



「これ以上嫌って言うなら問答無用で3回やるぞ。」

「うぅ………っ。」



この松下の言葉は冗談ではないだろう。本当にやられてしまう。それにどの道逃げられない。松下と駿里では持っている腕力の差が違いすぎるのだから。だから暴れたところで駿里の体力が減るだけ。でも出来ない。やれない…と駿里が葛藤していると松下が急かしてきた。



「どうするんだ駿里。」



ああもうそんなふうに急かさないでよ。松下の顔を見て駿里はさらに焦る。この顔をした松下を待たせるとろくな事がないから。そのため…。



「康二さん…ほんとに、1回?」

「ああ。」

「…1回だけね。」

「おう。」

「…絶対だよ。」

「約束する。」



松下はそう言うと駿里に噛み付くようにキスをした。この瞬間をずっと待っていた松下。やっと駿里が抱ける。たとえ二番目でもいい。二番目にならなくてもいい。ただ松下は駿里の中に少しでも自分がいればいいのだ。それだけで十分。正直少し寂しいし悔しいけれどそれでいいのだ。こうして駿里に触れることができるから。



「んんっ、ふ…っ、ぅ、」



駿里は松下の長いキスに耐えきれなくなったようで松下の胸元を叩き始めた。だが松下はやめない。もう少し…もう少しだけ駿里を感じていたいから。
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