極道の密にされる健気少年

安達

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松下康二と駿里のお話

解けない警戒心

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志方に安心しろと言われた駿里だが安心できていない様子だった。そんな駿里を見て志方は思った。駿里は自分たちにはかなり心を開いているんだな、と。こんなに警戒しているのに自分たちに対してはまるで緊張の欠けらも無い。それがなんだか嬉しくなった志方。だから腕の中にいる駿里を抱きしめてやった。


「どうしたの?志方さん。」

「いやお前が可愛いなぁって思ってよ。」

「…可愛くないし。」


いつもだったらこの時駿里はもっと声を荒らげてくる。しかしそれをしない。ということは駿里はやはり相当緊張している。いや緊張していると言うよりかは警戒していると言った方が正しいかもしれない。そんな駿里の警戒心を悟ったのだろう。啓司がまた笑ってきた。



「大丈夫だよ駿里くん。俺は何も悪いことしないから。」



笑いながら啓司はそう言っていたが少し寂しそうだった。こんなに警戒されれば無理もないだろう。そんな啓司を見て松下が口を開いた。



「啓司の言う通りだ。駿里、怖いかもしんねぇけどこいつは信頼していい。俺がここまで言うのって珍しいだろ?そんだけ良い奴だって事だ。だからそんなに警戒すんな。疲れるだろ。」

「…うん。」



松下の言うことは分かる。分かるけれど駿里は勝手に体がそうなってしまうのだ。緊張しちゃダメと思えば思うほどしてしまう。そんな駿里をみて再び啓司が口を開いてきた。



「康二、あんまりそんなことを言ってやるな。蛇を前にして警戒しないなんて無理だろ?それと同じなんだよ。駿里からすれば刺青も入れている俺がきっと怖いだろうね。お前らも入れてるけど長いこと時間を過ごしてきたからこそ大丈夫なんだ。だから無理に警戒心を解かなくていい。ね、駿里くん。」



この話を聞いただけで啓司がどれほどいい人物なのかよくわかった。初めから分かっていたが本当にいい人なんだろうなとこの啓司の発言を聞いて駿里は確信した。そして初めてあった駿里のことをちゃんと理解してくれてそう言ってくれたことが嬉しかった駿里は気づけば啓司にお礼を言っていた。



「え、っと……あ、ありがとうございます。」

「んだそれ。なんのお礼だよ。」

「だって…なんて言えばいいかわからなくてっ、」



自分でも変だとは思った。ここでお礼を言うなんて…。だから案の定志方にツッコまれてしまった。そんな風に混乱している駿里を見て啓司は微笑ましそうに駿里を見ていた。



「噂には聞いてたけど駿里くんはかなり可愛いのだね。何だか取って食べちゃいたくなるよ。」

「おい啓司。」

「分かってるって。そう怖い顔をしないでよ康二。寛也さんのものに手は出せないよ。」

「それならいい。」



なんで松下がそう言うのだろうかと駿里は思ったが何も言わないでおいた。本当は駿里にこれ程手を出している松下が言えることじゃない。そう言いたかったが言えばきっと喧嘩になるだろうから。そして駿里がそんなこと考えているうちに啓司は診察を終えたようで立ち上がっていた。



「よし、康二いいよ。あと3日ぐらいは様子を見たいから入院してもらうけどそれ以降は好きにして。痛ければここにいていいし帰りたければ帰りな。」

「おう。ありがとな。」



松下はそういった時仲間にしか見せない笑顔を啓司に向けた。その笑顔を見た駿里はここでやっと啓司に対する警戒心が解けた。



「じゃあ俺は仕事に戻るよ。まだ見なきゃいけない患者さんがいっぱいいるからね。」

「ああ。礼を言うぞ啓司。」



松下同様に志方も啓司に笑顔でそう言った。この志方の笑顔もビジネスではない。本心からの笑顔だ。やっぱりそうだ。啓司って人は松下らの仲間だ。だがこうして駿里が確信した時にはもう遅かった。これから啓司は仕事へ戻ってしまう。だからまた今度時間があればその時話そうと駿里は1人そう決心した。



「いいんだよこれぐらいのこと。じゃあ志方、あとは頼むね。」

「おう。」

「駿里くんじゃあね。」

「お、おつかれさまです…!」



じゃあねと言われてバイバイと言えばよかったのに駿里は咄嗟にそう言ってしまった。いつも松下らが寛也にそう言っているのを聞いて体が反射的にそう言ってしまったのかもしれない。そんな駿里を見て志方と松下か笑ってきた。いつも見れない駿里の姿だからこそ面白いのだろう。



「そんな笑わないでっ!」

「だっておもしれぇじゃん。お疲れ様ですってなんだよ。はは。」

「康二さんがいつも言ってんじゃんか…!」



駿里はそう言い返したけどそれさえも面白かったみたいで松下は更に笑ってきた。志方もツボっている。何だか恥ずかしくなってしまう駿里。だから話を変えて2人の気を引くことにした。



「あ、あのさ!あの人って司波さんのお友達?」



話を変えるのがなんて下手なんだと志方は思ったが駿里の質問なのでちゃんと答えることにした。それさえも可愛かったから。



「んーダチって言えばそうなのかもしれねぇけど同期って言った方が正しいかもな。あいつもあいつで組長に借りがあるからよ。だからこうして俺らの面倒も見てくれてんだ。」

「そうなんだ。」



志方の答えを聞いて駿里はなんだか納得した。松下ともこんなに親しいのはきっと寛也が信頼しているから。だから松下らもこうして信頼して体を預けられるのだ、と。そんな風に事を理解した駿里に志方は声をかけた。



「じゃあ駿里。お前はそろそろ帰ろうな。組長に電話するぞ。」

「あ…まって志方さん。俺自分でする。」

「そうか?ならしろ。俺らに内容聞かれたくなかったら廊下に出てやればいいさ。ここにはお前を襲う奴はいねぇからよ。」

「わかった。ありがとう。」
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