極道の密にされる健気少年

安達

文字の大きさ
上 下
285 / 579
松下康二と駿里のお話

生意気

しおりを挟む
「康二を撃った奴は…。」



志方その言葉に駿里は唾を飲んだ。志方が教えてくれる希望は少なかったと思っていたので駿里は身構えたのだ。まさか教えてくれると思ってもいなかったから。だから駿里は次に志方が言う言葉を予想しながら待っていた。そしてその瞬間は訪れることになる。



「耳の穴かっぽじってよく聞いとけよ。あのな、犯人は俺らの世界の奴だったんだ。」

「……ん?」

「だから俺らの世界の奴だって言ってんだ。」



2度志方にそう言われたが駿里はよく分からなかった。というかそんなざっくり言われてもわかるわけがない。え?どいうことだ。志方は誤魔化したいのだろうか?いやそれならば初めから言わなければいいのに何故か志方は選択肢を広げてそう言った。そんな志方に駿里は唖然とする。



「…そんなの俺だって分かってるよ。ヤクザじゃなくて一般人がこんなことしたら大事件だからさ。今頃ニュースで取り上げられてるよ。」

「おぉ、さすがじゃねぇか駿里。関心だ。すげぇ成長だな。」



寛也と過ごしてこの世界の掟を嫌でも知った駿里からしたらそんなの朝飯前だ。もちろんそれは志方も知っているはず。なのにそう言った。そんな志方をみて駿里は思った。やっぱり志方はこの件についてちゃんと…正確に答えたくないのだと。だからこうして褒めたりして駿里の気を逸らしているのだろう。



「さすがの俺でもこのぐらい分かるよ…っ!」

「まぁそうだな。俺らとずっと一緒に過ごしてる訳だしよ。」



やっぱり志方はさりげなく誤魔化してくる。駿里の言った問いかけにはまるで答えることはせずにそう話してくる。だから駿里は直接志方に聞いてみることにした。これ以上志方を困らせるのも嫌だったから。



「…ごめん志方さん。やっぱ俺聞かない方が良かった?」

「おいおいなんでそんなこと言うんだよ駿里。気になったんだろ?だったら聞いて正解だ。我慢しなくていい。聞きたいことは聞け。結果はどうであろうと聞くことに意味があるんだ。行動すればモヤモヤは無くなるしそれで何か解決することだってある。だからお前の判断は間違ってねぇよ駿里。」

「あ、ありがとう…。」



志方はそう言ったがきっと聞かれたくなかったことだろう。だからこうして言うことを渋っている。なのに駿里を責めることは一切せず逆にそう褒めてくれた。駿里はその志方の言葉に少し…ほんの少しだけ感動した。



「おい駿里。なんだよその顔はよ。」

「志方さんって時々凄いいいこと言うなぁって思ってさ。」

「時々ってなんだよ。いつもの間違えだろ。」



こういう時の志方は本気で言っているのかそうじゃないのかよく分からない。まぁどっちにしても駿里が言うことは決まっている。



「いや絶対にいつもじゃない。」

「お前ほんと生意気になったよな。」

「志方さんにだけは言われたくない。」

「はぁ?なんでだよ。」



そう言って志方が駿里の顔を掴んでキスをしようとしてきた。少し駿里が気を抜いてしまえばすぐにこうなる。いつもそうだ。だから駿里は気を張っていたのにちょっとしたことで緩ませてしまう。その隙を志方は見逃さないのだ。そして志方はそんな駿里の口の中に自身の舌をねじ込んだ。



「んふ゛っ、ぅ…!!」



舌まていれられた駿里は逃げようと顔を背けようとした。しかし志方に捕まってしまえば逃げることはもう出来ないので駿里は大人しくすることにした。しかし…。



「っ、やだ、もういいでしょ…っ!」



駿里は唇を噛まれたり舐められたり舌を吸われたりと志方が飽きずに色々なことをしてきたので耐えきれずそう言った。そして志方を押し返そうとする。



「まだだ。」

「やめっ、そんなんだから生意気だって言われるんだ!」

「はぁ?何の話だよ。」



駿里にかまわずキスをしようとしていた志方だったが駿里の言葉が気になったのであろう。動きを止めた。駿里はその隙を逃さずすぐさま話し始めた。



「こ、この前寛也が言ってたよ。康二さんと志方さんは誰よりも子供で生意気な奴に育ってしまったって。」

「俺そんなこと言われたことねぇぞ。なんだよそれ。」

「寛也が言ってたって言ってんじゃんか…っ!!」



志方は自分の耳で聞いた事や実際に見た事しか信じない。それが例え身内だとしても…。だから駿里がそういった事を信じなかった。いやもしかしたら信じたかもしれないが志方からすればだからなんだと言う話だ。駿里は志方にダメージを与えるためにそう言ったが志方は毎日のように寛也に生意気と怒られているので驚きもしなかったのだ。それどころかポジティブに考え始める。



「まぁ逆に言えば生意気でも俺を見棄てずそばにおきたいと思うほど俺は優秀ってことだな。」

「…あはは、志方さんってほんとポジティブだね。」



駿里がそう言うと志方が声を出して笑い始めた。志方のツボは駿里もよく分からない。だけど目の前で声を出して笑われたらつられてしまうものでなんにも面白くないと思っていたのに駿里も笑い出してしまった。その為後ろのベットの方で動きがあったことに2人は気づかなかった。そしてその動きがあったことで大笑いしていた2人の顔が一瞬にして硬直することになる。そのわけとは…。



「うるせぇぞお前ら…静かにしろ。」

「…え?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヤクザに囚われて

BL
友達の借金のカタに売られてなんやかんやされちゃうお話です

アダルトショップでオナホになった俺

ミヒロ
BL
初めて同士の長年の交際をしていた彼氏と喧嘩別れした弘樹。 覚えてしまった快楽に負け、彼女へのプレゼントというていで、と自分を慰める為にアダルトショップに行ったものの。 バイブやローションの品定めしていた弘樹自身が客や後には店員にオナホになる話し。 ※表紙イラスト as-AIart- 様(素敵なイラストありがとうございます!)

冷酷組長の狂愛

さてぃー
BL
関東最大勢力神城組組長と無気力美男子の甘くて焦ったい物語 ※はエロありです

少年ペット契約

眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。 ↑上記作品を知らなくても読めます。  小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。  趣味は布団でゴロゴロする事。  ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。  文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。  文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。  文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。  三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。  文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。 ※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。 ※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

変態村♂〜俺、やられます!〜

ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。 そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。 暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。 必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。 その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。 果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?

BL 生徒会長が怖い

かのほ
BL
絶大な権力を持つ生徒会執行部。みんな怯えて生活をしている。主人公は大人しく生活してたのに目をつけられてしまって...

ヤクザと捨て子

幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子 ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。 ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。

処理中です...