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松下康二と駿里のお話
覚悟
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「悪い寛也。呆れて当然だ。けど罰は後で受けるから今は駿里と話してやってくれ。頼む。」
司波に預けたはずの駿里がここにいる。その事に激怒した寛也が司波を睨みつけていた。そんな寛也に対して司波はそう言ったのだ。その様子を見て寛也は仕方ないかと割り切ることにした。松下の事を1番駿里が気にしているだろうから。
「お前はいつも無茶ばかりするな駿里。」
「だって…っ、それより康二さんは…?」
「今は緊急の手術をしている。」
そういい寛也は手術室の方を指さした。だがそれをみた駿里は更に不安に襲われる。それは松下が長時間手術をしているということに気がついたからだ。駿里が眠らされしばらくの時間が経っていた。なのにまだ手術が終わっていない。松下はどれほど重篤なのだろうか。駿里は松下に早く会いたかった。会いたくて仕方がなかった。そして言ってやりたかった。1人で戦うなって。もう絶対1人で行動しないでって。
「ずっと康二さんはあそこにいるの…?」
「ああ。そうだ。」
寛也がそう言うと駿里の目に涙が溜まり始めた。駿里なりにこらえていたはずなのに我慢できず涙を零してしまう。そんな駿里を寛也は抱きしめた。
「そんな顔をするな駿里。希望はあるから。康二は手術ができる状態まで戻ったからな。」
寛也がそう言うってことは松下は一度死にかけたということだと駿里は理解した。そんな松下のことを考えると駿里は余計に涙が溢れてしまう。駿里との約束をちゃんと守ってくれたから。そんな松下のところに少しでも近づきたいと思った駿里は寛也の腕の中から出て手術室の前に立った。そんな駿里をみて志方が動き出す。
「おい駿里。座ってろ。お前康二に睡眠薬飲まされたんだろ?」
「…そうだけど大丈夫。今は康二さんが心配だから。」
駿里は責任を感じている。だからこうして誰よりも心配しているのだ。それはきっと松下が撃たれた時駿里はあの場にいたから。なのに何も出来なかった。そのためそうなるのは無理もないと志方は分かっている。しかしこのまま駿里を立たせるわけにはいかなかった。それは…。
「駄目だぞ駿里。もし康二が起きた時お前が体調崩して寝てたりしたらあいつは悲しんじまう。だから身体を休めるんだ。あいつが起きた時必ずお前に合わせたいからな。ほら、組長んとこ戻れ。」
「…わかった。」
志方の言う通りだ。そう思った駿里は素直に頷いて寛也のところに向かった。そんな駿里を寛也は優しく迎え入れた。
「不安か?」
「…ちょっとだけ。でも康二さんのこと信じてるから。」
「そうだな。」
寛也は駿里が松下のことを信じていると言ってくれたことが嬉しかった。だから頭を優しく撫でた。そしてそこから静かに待った。誰一人として声を出さなかった。松下が帰ってくるのをずっと待つために…。そしてその瞬間は訪れる。
「……あ。」
手術室のライトが消えた。手術が終わった合図だ。駿里は結果が気になって仕方がないのだろう。その場に立ち尽くしている。だが寛也は駿里を中に入れたくなかった。もしかしたらがあるから。だから寛也は駿里の肩を抱くと司波に目配せをした。
「駿里。あっち行ってろ。こっからは俺らの仕事だ。仕事の事にお前を関与させるわけにはいかねぇからな。だからいい子に待ってろ。司波、頼む。」
「おう。駿里行くぞ。」
そう言った司波に駿里を受け渡し寛也は駿里を見送った。そして駿里の姿が見えなくなったのを確認して中から出てきた医者と話し始める。手術室前でそんなことが行われていた時駿里は司波と椅子に座り話し込んでいた。
「…司波さん。」
「おい駿里。自分のせいとか思うなよ。あいつはどうでもいい奴を守ったりなんてしねぇからな。お前を大切に思ってるからこそあの行動をしたんだ。だから自分を責めることも1人で戦った康二の事も責めたら駄目だ。分かったな?」
「うん…わかった。」
「ならいい。あとはあいつが回復するのを待とうな。」
「…うん。」
駿里は頷いたものの顔から不安が隠せていない。司波がなんとかして駿里の気を逸らそうと話題を振っているが駿里はそれどころじゃない。だから司波はもう話題を振るのをやめた。そして駿里に我慢することをやめさせようとする。
「やっぱ不安だよな。」
「…え?」
「強がらなくていい。今は俺しかいねぇ。寛也も志方も圷もいない。俺の前でしか言えないこと言ってみろ。抱え込むな駿里。」
司波にそう言われた駿里は歯止めが効かなくなってしまった。壊れたように涙が溢れ出てきた。声だって我慢できない。色んな感情が…我慢していたことが爆発してしまった。
「……っ、ふっ、ぅ、うっ、」
「そうだ。それでいいんだ駿里。そうやって泣いてろ。我慢してんじゃねぇよ馬鹿。」
「どうしよっ…ぅ、こ、うじさんがっ、死んじゃったら、おれどうしよう…っ、」
「あいつは約束を守る男だ。お前言ってたじゃねぇか。康二と約束したんだろ?だから大丈夫だ。あいつを信じてやれ。」
嗚咽を漏らしながら泣き続ける駿里に司波はそう言った。そして駿里を抱きしめ頭を撫でる。司波がずっとそうしていてくれたおかげで駿里は少しだけ落ち着くことが出来た。そしてそのタイミングで誰かの足音が聞こえてきた。その足音を聞いた駿里は立ち上がる。
「…志方さん。」
「駿里。覚悟ができているなら俺と一緒に来い。」
「…………。」
司波に預けたはずの駿里がここにいる。その事に激怒した寛也が司波を睨みつけていた。そんな寛也に対して司波はそう言ったのだ。その様子を見て寛也は仕方ないかと割り切ることにした。松下の事を1番駿里が気にしているだろうから。
「お前はいつも無茶ばかりするな駿里。」
「だって…っ、それより康二さんは…?」
「今は緊急の手術をしている。」
そういい寛也は手術室の方を指さした。だがそれをみた駿里は更に不安に襲われる。それは松下が長時間手術をしているということに気がついたからだ。駿里が眠らされしばらくの時間が経っていた。なのにまだ手術が終わっていない。松下はどれほど重篤なのだろうか。駿里は松下に早く会いたかった。会いたくて仕方がなかった。そして言ってやりたかった。1人で戦うなって。もう絶対1人で行動しないでって。
「ずっと康二さんはあそこにいるの…?」
「ああ。そうだ。」
寛也がそう言うと駿里の目に涙が溜まり始めた。駿里なりにこらえていたはずなのに我慢できず涙を零してしまう。そんな駿里を寛也は抱きしめた。
「そんな顔をするな駿里。希望はあるから。康二は手術ができる状態まで戻ったからな。」
寛也がそう言うってことは松下は一度死にかけたということだと駿里は理解した。そんな松下のことを考えると駿里は余計に涙が溢れてしまう。駿里との約束をちゃんと守ってくれたから。そんな松下のところに少しでも近づきたいと思った駿里は寛也の腕の中から出て手術室の前に立った。そんな駿里をみて志方が動き出す。
「おい駿里。座ってろ。お前康二に睡眠薬飲まされたんだろ?」
「…そうだけど大丈夫。今は康二さんが心配だから。」
駿里は責任を感じている。だからこうして誰よりも心配しているのだ。それはきっと松下が撃たれた時駿里はあの場にいたから。なのに何も出来なかった。そのためそうなるのは無理もないと志方は分かっている。しかしこのまま駿里を立たせるわけにはいかなかった。それは…。
「駄目だぞ駿里。もし康二が起きた時お前が体調崩して寝てたりしたらあいつは悲しんじまう。だから身体を休めるんだ。あいつが起きた時必ずお前に合わせたいからな。ほら、組長んとこ戻れ。」
「…わかった。」
志方の言う通りだ。そう思った駿里は素直に頷いて寛也のところに向かった。そんな駿里を寛也は優しく迎え入れた。
「不安か?」
「…ちょっとだけ。でも康二さんのこと信じてるから。」
「そうだな。」
寛也は駿里が松下のことを信じていると言ってくれたことが嬉しかった。だから頭を優しく撫でた。そしてそこから静かに待った。誰一人として声を出さなかった。松下が帰ってくるのをずっと待つために…。そしてその瞬間は訪れる。
「……あ。」
手術室のライトが消えた。手術が終わった合図だ。駿里は結果が気になって仕方がないのだろう。その場に立ち尽くしている。だが寛也は駿里を中に入れたくなかった。もしかしたらがあるから。だから寛也は駿里の肩を抱くと司波に目配せをした。
「駿里。あっち行ってろ。こっからは俺らの仕事だ。仕事の事にお前を関与させるわけにはいかねぇからな。だからいい子に待ってろ。司波、頼む。」
「おう。駿里行くぞ。」
そう言った司波に駿里を受け渡し寛也は駿里を見送った。そして駿里の姿が見えなくなったのを確認して中から出てきた医者と話し始める。手術室前でそんなことが行われていた時駿里は司波と椅子に座り話し込んでいた。
「…司波さん。」
「おい駿里。自分のせいとか思うなよ。あいつはどうでもいい奴を守ったりなんてしねぇからな。お前を大切に思ってるからこそあの行動をしたんだ。だから自分を責めることも1人で戦った康二の事も責めたら駄目だ。分かったな?」
「うん…わかった。」
「ならいい。あとはあいつが回復するのを待とうな。」
「…うん。」
駿里は頷いたものの顔から不安が隠せていない。司波がなんとかして駿里の気を逸らそうと話題を振っているが駿里はそれどころじゃない。だから司波はもう話題を振るのをやめた。そして駿里に我慢することをやめさせようとする。
「やっぱ不安だよな。」
「…え?」
「強がらなくていい。今は俺しかいねぇ。寛也も志方も圷もいない。俺の前でしか言えないこと言ってみろ。抱え込むな駿里。」
司波にそう言われた駿里は歯止めが効かなくなってしまった。壊れたように涙が溢れ出てきた。声だって我慢できない。色んな感情が…我慢していたことが爆発してしまった。
「……っ、ふっ、ぅ、うっ、」
「そうだ。それでいいんだ駿里。そうやって泣いてろ。我慢してんじゃねぇよ馬鹿。」
「どうしよっ…ぅ、こ、うじさんがっ、死んじゃったら、おれどうしよう…っ、」
「あいつは約束を守る男だ。お前言ってたじゃねぇか。康二と約束したんだろ?だから大丈夫だ。あいつを信じてやれ。」
嗚咽を漏らしながら泣き続ける駿里に司波はそう言った。そして駿里を抱きしめ頭を撫でる。司波がずっとそうしていてくれたおかげで駿里は少しだけ落ち着くことが出来た。そしてそのタイミングで誰かの足音が聞こえてきた。その足音を聞いた駿里は立ち上がる。
「…志方さん。」
「駿里。覚悟ができているなら俺と一緒に来い。」
「…………。」
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