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松下康二と駿里のお話
侵入者
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「ほら駿里。出来たぞ。まだ熱いかもしれねぇからゆっくり飲めよ。」
「はーい。」
キッチンから出てきた松下から駿里はグラスを渡された。その中には温かい飲みのもが入っていた。駿里はそれをなんの警戒もなく飲み始める。
「あったかい…。」
「その顔たまんねぇな。こっち向け駿里。」
松下が駿里の隣に座り顔を掴んできた。飲み物自体はこぼれなかったが駿里が気を抜いていたらもしかするとこぼれていたかもしれない。だから駿里は当然怒った。
「もうこぼれるってば…!」
「ならグラス貸せ。」
「やだっ、冷めちゃうって…俺のグラス取るな!!」
「うるせぇ静かにしろ。」
松下は駿里からグラスを奪い取ると近くにあった机にそれを置き駿里を腕の中に閉じ込めた。そして離さなかった。
「…康二さん?」
松下のスキンシップがいつも異常なのは通常のこと。だけどやはり駿里は今日の松下の様子が気になった。松下は駿里を強く抱き締めた後に時よりキスをしてくるようになりその後また強く抱き締めてくる。そんなことが続いて駿里が解放されたのは数分後の事だった。
「まだ冷めてねぇだろうから全部飲めよ。残したら襲う。」
「言われなくても飲むし…っ!」
松下にそう言われて駿里は声を荒らげてそう言い返した。襲われるのは御免だしそもそも残すつもりなんてなかった。松下がせっかく作ってくれたものだから。だから絶対に駿里は残さない。それを松下は知っていた。
「いい子じゃねぇか。」
「子供扱いするな…っ!」
「はは、してねぇよ。子供にディープキスなんてしねぇよ。」
「そういうことじゃない…っ!!」
仕事があると言っていた松下だが何故か駿里のそばにいる。まるで駿里が全て飲み終えるのを待っているかのようにして…。
「そういえば仕事はいいの…?」
「ああ。お前がいるなら俺はお前のそばにいてぇからよ。」
「徹夜になっちゃうよ…。」
「それでもいい。俺は今お前のそばにいてぇからここにいるんだ。邪魔すんな。」
「わ、わかったから体触らないで…!」
「分かったならいい。」
松下はそう言うと駿里の体から手を離した。そして相変わらず駿里を見続ける。この時駿里はこの異変に気づけなかった。だって日常茶飯事の事だったから。
「康二さんごちそうさま。」
「お、全部飲んだんだな。偉いぞ駿里。」
松下はそういい駿里の頭を撫でてきた。その松下の行動に対して駿里は何か言いたげな顔をしていた。だがいえなかった。それはその時駿里は急な眠気に襲われていたからだ。それも猛烈な眠気に。
「…なに、これ、」
体がおかしい。どうにかなっちゃいそうだ。その不安から駿里は松下を見た。しかしその時悟った。そして昔の記憶が蘇った。この感じ。頭がふわふわして目の前が暗くなっていくこの感じ。間違えない。そう。松下は駿里に睡眠薬を飲ませたのだ。言うことを聞かない駿里を無理やり寝かせるために。やはり駿里の予想は当たっていたようだ。だから松下はこうしてこんなことをした。駿里はそんな松下を殴った。眠気に勝とうともがきながら涙目で松下を殴った。
「こう、じ、さん…の、ばかっ…、」
松下は全てを悟り泣き始めてしまった駿里を腕の中に閉じ込めた。そして優しく何度も何度も頭を撫でキスを落とす。
「悪いな駿里。お前を巻き込む訳にはいかねぇんだよ。」
「ばか…ば、か、こうじっ…ばかっ、ぁ…、」
「愛してる駿里。」
「ば、かっ、こ、ぅ…………。」
薬には勝てない。どんだけ眠気に勝とうと頑張ってもがいても勝てない。勝つことが出来なかった駿里。目をつぶってしまい夢の中へと入っていってしまった。そして松下がいれたこの睡眠薬はかなり強力なもので駿里はしばらく目を覚ますことはないだろう。
「悪い駿里。お前に見せたくない景色を見せるかもしれねぇから俺を許してくれ。それとありがとな。」
松下が駿里に言ったお礼の言葉には色んな意味が込められていた。それはきっと駿里にも伝わっているだろう。そして時間が無い松下はすぐさま駿里を抱きかかえて寝室へと連れていく。その後はずっと見張りだ。万が一侵入者が来てもすぐに対処ができるように準備を進めていった。心の底で来ないで欲しいと願いながらも…。しかし現実は違う。来てしまう。それは侵入者が内部の人間だったから。それを突き止めた松下は来ないで欲しいとそう強く望んでいたのだ。なのに…。
ガチャ
「くそ…くそ野郎が。」
玄関から音が聞こえた。やはり内部の人間だ。どうしてこうなったのだろうか。いや今はこんなことを考える余裕はない。駿里を守らなければならない。例え死んだとしても…。だから松下はリビングに入ってくるであろう人物を待った。そしてその瞬間は訪れる。
「…ん?康二か?なんでお前がいるんだ。」
入ってきた人物は松下の姿を捉えるとそう言った。それもそのはず。内部の人間なのだから今寛也らは外に行っていることを知っているのだ。だからここに松下がいることに驚いているのだ。
「こっちのセリフだ。お前一体何を考えてる。」
「その口ぶりからして俺の狙いは分かってるようだな。さすがは康二だ。」
「薄々感じてたんだ。最近のお前の行動はおかしいからな。」
「へぇほんとさすがだな康二。寛也が部下に選んだ男だけある。だが…お前には弱点がある。」
「んなもんねぇよ。」
松下はその男にそう言われ内心焦った。自分では気づかない弱点があるかもしれないから。その弱点のせいで駿里を危険に晒したりしたらもう耐えきれない。だから焦っていたがそれを悟られないよう強気でそう返した。
「いやある。それはお前が人を頼らねぇって事だ。だからどうせ俺がここに来る事を寛也にも志方にも言ってねぇんだ。それってどうなるか分かるか?お前は死ぬんだ康二。」
「俺は死なねぇ。」
「いや死ぬ。お前は俺に殺される。そんで駿里もこの組から消え去るんだ。いつもそうだなお前は。いい所まで来るのに1人でするからこうなる。仲間を守りたいがために自分で首を絞めるんだ。」
「…黙れ。」
これは駿里が言っていたことだった。あの時はあまり重く受け止めなかった。けれど松下はこの時やっと思った。寛也に連絡をすればよかったと。寛也らを殺させたくない。内部に裏切り者がいたと知らせたくない。その一心で黙ってここに来てしまった。その結果がこれだ。こいつの言う通りだ。このままでは駿里が危ない。この男と一体一でやったとして松下に勝ち目があるのか?いやないだろう。だってこの人物は…。
「図星かよ康二。まぁお前が招いた結果だ。受け入れるんだな。」
「はーい。」
キッチンから出てきた松下から駿里はグラスを渡された。その中には温かい飲みのもが入っていた。駿里はそれをなんの警戒もなく飲み始める。
「あったかい…。」
「その顔たまんねぇな。こっち向け駿里。」
松下が駿里の隣に座り顔を掴んできた。飲み物自体はこぼれなかったが駿里が気を抜いていたらもしかするとこぼれていたかもしれない。だから駿里は当然怒った。
「もうこぼれるってば…!」
「ならグラス貸せ。」
「やだっ、冷めちゃうって…俺のグラス取るな!!」
「うるせぇ静かにしろ。」
松下は駿里からグラスを奪い取ると近くにあった机にそれを置き駿里を腕の中に閉じ込めた。そして離さなかった。
「…康二さん?」
松下のスキンシップがいつも異常なのは通常のこと。だけどやはり駿里は今日の松下の様子が気になった。松下は駿里を強く抱き締めた後に時よりキスをしてくるようになりその後また強く抱き締めてくる。そんなことが続いて駿里が解放されたのは数分後の事だった。
「まだ冷めてねぇだろうから全部飲めよ。残したら襲う。」
「言われなくても飲むし…っ!」
松下にそう言われて駿里は声を荒らげてそう言い返した。襲われるのは御免だしそもそも残すつもりなんてなかった。松下がせっかく作ってくれたものだから。だから絶対に駿里は残さない。それを松下は知っていた。
「いい子じゃねぇか。」
「子供扱いするな…っ!」
「はは、してねぇよ。子供にディープキスなんてしねぇよ。」
「そういうことじゃない…っ!!」
仕事があると言っていた松下だが何故か駿里のそばにいる。まるで駿里が全て飲み終えるのを待っているかのようにして…。
「そういえば仕事はいいの…?」
「ああ。お前がいるなら俺はお前のそばにいてぇからよ。」
「徹夜になっちゃうよ…。」
「それでもいい。俺は今お前のそばにいてぇからここにいるんだ。邪魔すんな。」
「わ、わかったから体触らないで…!」
「分かったならいい。」
松下はそう言うと駿里の体から手を離した。そして相変わらず駿里を見続ける。この時駿里はこの異変に気づけなかった。だって日常茶飯事の事だったから。
「康二さんごちそうさま。」
「お、全部飲んだんだな。偉いぞ駿里。」
松下はそういい駿里の頭を撫でてきた。その松下の行動に対して駿里は何か言いたげな顔をしていた。だがいえなかった。それはその時駿里は急な眠気に襲われていたからだ。それも猛烈な眠気に。
「…なに、これ、」
体がおかしい。どうにかなっちゃいそうだ。その不安から駿里は松下を見た。しかしその時悟った。そして昔の記憶が蘇った。この感じ。頭がふわふわして目の前が暗くなっていくこの感じ。間違えない。そう。松下は駿里に睡眠薬を飲ませたのだ。言うことを聞かない駿里を無理やり寝かせるために。やはり駿里の予想は当たっていたようだ。だから松下はこうしてこんなことをした。駿里はそんな松下を殴った。眠気に勝とうともがきながら涙目で松下を殴った。
「こう、じ、さん…の、ばかっ…、」
松下は全てを悟り泣き始めてしまった駿里を腕の中に閉じ込めた。そして優しく何度も何度も頭を撫でキスを落とす。
「悪いな駿里。お前を巻き込む訳にはいかねぇんだよ。」
「ばか…ば、か、こうじっ…ばかっ、ぁ…、」
「愛してる駿里。」
「ば、かっ、こ、ぅ…………。」
薬には勝てない。どんだけ眠気に勝とうと頑張ってもがいても勝てない。勝つことが出来なかった駿里。目をつぶってしまい夢の中へと入っていってしまった。そして松下がいれたこの睡眠薬はかなり強力なもので駿里はしばらく目を覚ますことはないだろう。
「悪い駿里。お前に見せたくない景色を見せるかもしれねぇから俺を許してくれ。それとありがとな。」
松下が駿里に言ったお礼の言葉には色んな意味が込められていた。それはきっと駿里にも伝わっているだろう。そして時間が無い松下はすぐさま駿里を抱きかかえて寝室へと連れていく。その後はずっと見張りだ。万が一侵入者が来てもすぐに対処ができるように準備を進めていった。心の底で来ないで欲しいと願いながらも…。しかし現実は違う。来てしまう。それは侵入者が内部の人間だったから。それを突き止めた松下は来ないで欲しいとそう強く望んでいたのだ。なのに…。
ガチャ
「くそ…くそ野郎が。」
玄関から音が聞こえた。やはり内部の人間だ。どうしてこうなったのだろうか。いや今はこんなことを考える余裕はない。駿里を守らなければならない。例え死んだとしても…。だから松下はリビングに入ってくるであろう人物を待った。そしてその瞬間は訪れる。
「…ん?康二か?なんでお前がいるんだ。」
入ってきた人物は松下の姿を捉えるとそう言った。それもそのはず。内部の人間なのだから今寛也らは外に行っていることを知っているのだ。だからここに松下がいることに驚いているのだ。
「こっちのセリフだ。お前一体何を考えてる。」
「その口ぶりからして俺の狙いは分かってるようだな。さすがは康二だ。」
「薄々感じてたんだ。最近のお前の行動はおかしいからな。」
「へぇほんとさすがだな康二。寛也が部下に選んだ男だけある。だが…お前には弱点がある。」
「んなもんねぇよ。」
松下はその男にそう言われ内心焦った。自分では気づかない弱点があるかもしれないから。その弱点のせいで駿里を危険に晒したりしたらもう耐えきれない。だから焦っていたがそれを悟られないよう強気でそう返した。
「いやある。それはお前が人を頼らねぇって事だ。だからどうせ俺がここに来る事を寛也にも志方にも言ってねぇんだ。それってどうなるか分かるか?お前は死ぬんだ康二。」
「俺は死なねぇ。」
「いや死ぬ。お前は俺に殺される。そんで駿里もこの組から消え去るんだ。いつもそうだなお前は。いい所まで来るのに1人でするからこうなる。仲間を守りたいがために自分で首を絞めるんだ。」
「…黙れ。」
これは駿里が言っていたことだった。あの時はあまり重く受け止めなかった。けれど松下はこの時やっと思った。寛也に連絡をすればよかったと。寛也らを殺させたくない。内部に裏切り者がいたと知らせたくない。その一心で黙ってここに来てしまった。その結果がこれだ。こいつの言う通りだ。このままでは駿里が危ない。この男と一体一でやったとして松下に勝ち目があるのか?いやないだろう。だってこの人物は…。
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