極道の密にされる健気少年

安達

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遅咲きの花は大輪に成る

久々の名前

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あれから1回戦で終わるはずもなく寛也に抱き潰されてしまった駿里は寛也の横で眠っていた。そんな駿里の頭を撫でながら寛也はある人物に電話をかける。その人物というのは圷だ。松下のおかげで解決したのはしたがそれでもやはり心配だったのだ。



『お疲れ様です組長。なにかご用ですか?』

 「よう圷。今少し話せるか?」

『勿論です。』



寛也の答えになんの迷いもなくそういう圷に寛也は安心した。どうやらあれから海斗となんの問題もなく過ごせているようだったから。



 「海斗との事を聞こうとしたんだが…心配は無用だったみたいだな。」

 『わざわざお電話までありがとうございます。そうですね。組長にあれだけ叱られて目が覚めました。』

 「そりゃ良かった。」



寛也はそう言い電話を切ろうとした。海斗との時間を邪魔してしまうと思ったからだ。だが圷は電話を切ろうとした寛也をとめた。



 『…あの組長凄い烏滸がましいことは分かっているのですが頼み事をしてもいいですか?』

 「なんだ。」

『康二の事です。俺はあいつが少し心配です。』



圷が心配しているのは松下が駿里に依存をしているということだ。だがそれは寛也が前々から心配していたことだ。だからこの機に寛也は松下と話すことにする。



 「そうだな。後で電話をかけてみる。あいつの事は俺に任せろ。だからお前は海斗との時間を大切にしてやれ。」

『ありがとうございます。では失礼します。』

 「ああ。」



そう言い圷との電話を着ると寛也はすぐに松下へと電話をかけた。だが数コールしても松下は電話に出なかった。これは珍しいことだ。いや初めてかもしれない。大抵松下は寛也からのコールに直ぐに出る。だが3コールしても出ない。トイレか?寛也はそう思い電話を切ろうとしたがその時松下が着信を受け取った。



『すみません、取り込んでて取れませんでした。お疲れ様です組長。どうかされましたか?』

 「康二。今から家に来れるか?」

『今からですか!?』



寛也の言葉に松下は驚き声を荒らげた。電話越しでも伝わる焦りように寛也はどうしたものかと心配になる。



 「取り込んでいたと言っていたが急用なのか?」

『あ、いえ違います。今俺の家に志方と島袋と北風さんと天馬が来てるんですよ。』

「天馬だと…!?」


久しいその名に寛也は思わず声を荒らげた。天馬はずっと海外に行っており留守にしていた。その天馬がどうやら帰ってきたようだ。しかも寛也に気を使ってそれを言わなかったらしい。寛也が今駿里とお取り込み中だと思ったのだろう。



『ですが組長の指示となれば話は別です。なので必要であれば今すぐに行きます。』

「いや大丈夫だ。お前には息抜きも必要だからな。またかけ直すから楽しむといい。だが羽目は外しすぎるなよ。」

『はい。ありがとうございます。では失礼しますね。』

 「ああ。」



結局松下と話すことは出来なかったがこうして仲間が集まってくれるのはいい事だ。松下のことを大切に思っているからこそ皆集まってくれたのだろう。だから寛也は天馬らに松下を任せることにした。そして寛也も休もうと駿里の隣に横になろうとしたがその時駿里の目が開いていることに気づく。



「お前な…。」

「康二さん大丈夫そうで良かったね。」

「お前は狸寝入りが癖付いてしまったな。」



寛也が駿里の髪を弄りながらそう言うと駿里は寛也の首元に顔を埋めてきた。髪をいじられた時少しくすぐったかったからだ。それから逃げるために駿里は寛也に抱きついたのだが寛也からすればそれは可愛い行為だ。なので寛也はたまらず駿里を抱き締め返す。



「寛也がおっきい声出すから起きちゃったんだよ。」

「そうだな。悪かった。」

「ううん。ゆっくり寝られたから大丈夫。それより寛也は寝なくていいの?」

「俺も仮眠を少しとった。だから大丈夫だ。」

「そっか。なら良かった。」



駿里がそう言うと会話が一段落した。だがこの時駿里はあることを話そうと時期をさぐっていた。そして今しかないと思いそれを口にすることにした。



「あとさ…あのっ、」

「天馬か?」



駿里の考えていることなど全てお見通しというように寛也がそう言ってきた。そこまで分かってるいのなら話は早い。先程寛也の電話を聞いている時に天馬という名を聞いた駿里は会いたくて仕方がなかった。だが天馬は距離が近いし久しくあっていない。だから寛也が許してくれるかどうか分からず駿里は恐る恐る聞いてみた。



「会いに行きたい…いい?」

「…………。」



駿里がそう言うと寛也は露骨に嫌な顔をする。会わせたくない気持ちが大きいのだ。だがそれを否定して駿里に嫌われることも嫌らしい。寛也なりに葛藤している姿を見て駿里はもう一押しだ…そう思いオネダリ作戦を決行する。



「お願い寛也。寛也の傍から離れないって約束するから。」

「…………。」



駿里は一生懸命にそう言った。だが相変わらず寛也からの返事はかえってこない。こうなればもうこの手しかない…。そう思い駿里は寛也の顔に近づくと唇が当たるだけの軽いキスをした。



 
「…お願い。」

「お前はどこでそんな事を覚えてきたんだ。」

「だめ…?」

「はぁ、たくもう仕方ねぇな。分かった。でも今日は駄目だ。」

「いつならいいの?」

「俺の気分がいい時だ。」

「…わかった。」



その日が来るかは分からないけどいざとなったら自分で出会いに行けばいい。そう思い駿里はこれ以上何も言わなかった。ここで言い合いになるのも嫌だったから。駿里は今、寛也とゆっくりしたい気分なのだ。そんな駿里をみて寛也は何かを思ったらしく口を開き話し始めた。



「駿里。」

「ん?」

「明日行くか。」



寛也に抱き締められた駿里はされるがままにキスやら色々なことをされていた。そんな時寛也がそう言った。その言葉に駿里は思わず飛び上がる。



「急に動くな。」

「明日行きたい…!」

「分かったから寝ろ。明日身体が回復しねぇと出かけらんねぇんだから。」

「うん…!」



まさかこんなに早く寛也のお許しが出ると思わなかった駿里は嬉しさのあまり上がった口角が下がらない。だがこんな顔を寛也に長く見せてしまえば嫉妬され抱き潰される。だから駿里はそれを寛也に抱きつくことで隠した。明日みんなに会うために。



「まぁ分かってはいると思うが羽目は外すなよ。」

「分かってるよ。」

「どうだか…。お仕置きされねぇようにせいぜい頑張れよ。」



寛也のその言葉を駿里は重く受け止めなかった。今はそれよりも天馬らに会えることが嬉しくてたまらない。島袋にも久しぶりに会える。かれこれどのくらいあっていないだろう。それさえも分からないぐらいに会っていない。駿里はその分ウキウキが止まらない。そんな駿里をみて寛也はやはり会わせないようにするか…と考えたがあまりにも嬉しそうなのでそれを言い出せず明日を迎えてしまう事になるのは言うまでもないだろう。

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