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遅咲きの花は大輪に成る
言えないよ。だって寛也に迷惑かけたくない。*
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「話しかけるなっ、あっち行け…っ!」
「拗ねてんのも可愛いけどよ。あんまりトゲ生やしてっと俺何するかわかんねぇぞ。」
あれからいつもの如く気絶してしまったようで駿里が目を覚ますとかなりの時間が経っていた。それだけでも腹が立つのにそれに加えて身体が痛い。自由に動かせない。しかもそういう時に限って寛也は駿里にちょっかいを出してくる。駿里が動けないから抵抗できない分触り放題だからだ。お腹を撫でたり乳首を触ったりと寛也は起きたばかりの駿里を可愛がっていた。そんな寛也に駿里は結構本気で怒ったが寛也は何も気にすることなくそれを続けていた。
「もうやめろって…!!」
駿里がいい加減にしろという意味を込めて寛也にそう声を荒らげた時寝室のドアから音がした。誰かがドアノックをしたのだ。
「入ってきていいぞ。」
誰かが入ってきたことで寛也からのちょっかいは止まった。だが駿里は緊張した。なぜなら入ってきた人物は初めて見る人だったから。
「だれ…?」
「新しい幹部だ。おら、突っ立ってねぇで自己紹介でもしろや。」
「はい組長。俺は及川 悟だ。よろしくな駿里。」
そう言って彼はニカッと笑った。その笑顔がなんだか不気味で駿里はなぜかこの男に不信感を抱いてしまった。顔立ちが整いすぎて怖かった。この様子では女に困ることは無いだろう。幹部の中ではきっと及川が1番美形だ。そんなことを色々考えながら駿里は警戒心MAXで彼の顔を再び見て口を開いた。
「…お願いします。」
「そう警戒しなくてもいい。こいつは優秀なやつで俺が信頼する数少ない部下だからよ。」
寛也はそういったものの駿里はやはりこの男に対しての不信感は消えなかった。どこかおかしい。きっと力も能力もあるのだろう。だが何故か怖かった。駿里箱の予感が当たりませんようにと祈りながら寛也に隠れた。
「悪いな及川。あんまり外に出さねぇからこんな調子だが慣れたらよく喋る可愛い奴だ。仲良くしてやってくれ。普段外にあんま出ねぇ駿里からしてもお前はいい刺激になると思うから。」
「勿論ですよ組長。駿里のペースに合わせます。無理せず少しずつ距離を縮めていきますね。」
「有難い。じゃああとは頼んだぞ。」
「え…?」
あとは頼んだ…?寛也のその言葉に駿里は絶句した。ということは寛也に仕事に行くのか?昨日は休みって言ってたのに。急に決まったのか?そしたら駿里はこの男と2人っきりだ。それは絶対に嫌だった。
「寛也っ、仕事行くの?やだっ、行かないで…。休みって、言ってたじゃんか!」
「悪い。外せない用事が入ったんだ。夜には戻るから。」
「こ、こうじさん達もいないの?」
「あいつらは今外に行ってんだ。だから及川に頼んだんだぞ。こいつも忙しい中来てくれたんだ。感謝しろよ駿里。」
そう言って寛也は立ち上がった。やだ。行かないで。駿里の五感が感じとった。この男は危険だと。初めて会ったばかりで何も分からないがそれでも感じた。2人っきりになりたくない。行かないで。でも駿里はそれが言えなかった。松下達が来れないということは寛也も忙しいということだ。だから仕事に行かないでというのはわがままになってしまう。嫌で仕方がなかったし怖かったけれど駿里は1度寛也に伸ばした手を引っ込めた。その時及川が悪い笑みを浮かべた様子が駿里の目に入った。
「っ…!」
「どうしたんだお前。らしくねぇぞ?」
駿里の脅えている様子が気になったのだろう。寛也はそう言い駿里を抱きしめてきた。だがその原因が及川だとは分かっていない様子だった。駿里もまた、及川が原因だと言えなかった。寛也が信頼する部下だ。だからきっといい人だ。そう信じたかったから。
「悪ぃけど俺はもう行かなきゃ行けねぇ。留守番出来るか?こいつと過ごすのが嫌なら事務所に下げるがどうする?」
長いこと決まった人としか接してこなかった接してこなかった駿里の事だから寛也はただ単に緊張している。そう思っていたのだ。実際は違うというのに。だがそのおかげで及川をこの家から追い出すことが出来そうだ。駿里はすぐに口を開こうとしたがそれよりも先に及川が口を開いてきた。
「組長。そうしたら駿里に何かあった時すぐに対処出来ません。駿里が緊張するというのなら俺は別室にいます。だからここにいさせてくだい。組長の大切な花を守る為に。」
「…そうだな。それでいいな?駿里。」
寛也にそう言われ駿里は頷いてしまった。だって寛也があんまりにも必死だったから。きっと時間が迫っているのだろう。仕事に行かなくてはならないのに自分のせいで遅れさせるわけにはいかない。だから駿里は我慢した。そんな駿里をみて寛也はどこか申し訳なさそうにしていた。本当なら松下が来ていたのだろう。だがそれも叶わない。だから及川を来させた。きっとそれは寛也にとっても究極の決断だったであろう。それを思うと駿里はわがままがいえなかった。
「…いってらっしゃい、寛也。」
「ああ。じゃああとは頼んだぞ及川。まぁそんな事はあるとは思ってねぇがもし駿里に何かあったら…ただじゃおかねぇからな。」
「肝に銘じます。では、お気を付けて。」
及川がそういったのを聞いて寛也は駿里の頭を撫でると寝室出ていった。ちらりと駿里が及川を様子を伺うように見るとやはり彼の顔は怖かった。それは絶対に顔が整っているから。だから怖く見える。駿里はそう自分に言い聞かせて寛也を引きつった笑顔で見送った。そしてその及川は寛也を追いかけるようにして寝室を出ていった。別室にいるというのはどうやら本当であったようで駿里は心から安心した。だがその安心はどうやら間違いだったようだ。なぜなら寝室を出ていった及川が帰ってきたのだから。
「な、んで…。」
やっぱり駿里の予感は合っていた。その証拠に及川の顔つきが変わった。まるで獲物を見るような顔だ。お腹を空かせた獣のようにも見えた。駿里は怖くて怖くて毛布を握りしめて震えていた。そんな駿里に及川はどんどん近づいてくる。そしてなんの躊躇もなく及川はベットの上に上がってきた。
「さぁ、宴の時間だ。」
ベットに上がってきた及川はそういい駿里の顔を鷲づかんだ。その時駿里が抵抗しなかった為及川は鼻で笑った。
「あんまり驚いてねぇな。初めから分かってたのか?」
「分かってましたよ。行動がおかしすぎる。不信感を抱かない方が無理な話です。」
駿里は脅えていた。だがそれを出さないように及川にそう言った。寛也に助けを求めればすぐにきっと助けてくれただろう。だがそれをしなかった。だから腹を括るしかない。駿里は及川に負けずそう言い返した。そんな駿里をみて及川は再び鼻で笑った。
「はは、肝が据わってんなぁ。益々気に入った。」
「何が望みですか…。」
「望み?そんなの決まってんだろ。お前以外に何があるんだよ。」
「おれ…?」
駿里はそう言い目の前にいる短髪で絵に書いたようなヤクザの姿をしている及川を見た。彼が怖いのはきっとそれだ。松下達はヤクザであるのに怖くない。それは彼らが駿里を怯えさせない為に極力隠しているからだ。ヤクザの姿を。だが及川は違う。隠していない。だから余計に駿里を怯えさせることが出来たのだ。そんな怯えきっているのに頑張って負けじと言い返してくる駿里に及川は顔を近づけ壁際まで追い詰めた。
「そうだ。俺はあの組長が手元に置いて絶対に離さないお前が俺はずっと気になっていた。だが簡単に近づけない。だから俺は調べまくったんだ。お前の事をな。それと同時に組長への距離も縮め始めた。下っ端だったから怪しまれないように時間をかけてゆっくりと…な。それでやっとここまで来たんだ。長かったぞここまで来るのは。」
「…俺をどうするつもりですか。」
「あわよくば俺のものにしてやるよ。」
そう言うと及川は駿里を仰向けにベットの上に押し倒しその上に馬乗りになった。
「やめろ…っ。」
「そりゃ無理な話だぜ、駿里。」
そう言いながら及川は駿里の身体を服の上から撫でまくってきた。足からお腹、そして首元から顔まで全身隈無く撫でてきた。その度に駿里は脅えからビクビクと体が震える。攻めてもの抵抗として駿里はずっと及川を睨んでいた。だがそんな抵抗も及川にとってはなんの意味もない。
「可愛い奴だ。怖いのか?大丈夫だ。お前が暴れなけりゃ優しくしてやるから。」
「寛也が知ったら、ただじゃ済まない…!」
「そうだな。別にいい。俺はその覚悟でここにいるんだから。どれくらいだと思う?ここにたどり着くまでに費やした時間は…。とんでもねぇ努力の末にたどり着いた獲物が目の前にいんのに襲わねぇはずねぇよな。」
「やめろっ、はなせ…っ!!」
「やっぱ拘束した方が良さそうだな。」
及川が駿里の腕を頭上で縛り上げ足も拘束するとその拘束具をベットに縛り付けた。そして待ちきれないというように駿里の身体を再び触り始めた。太腿やお腹胸、そして顔までも全てを堪能するように触る。しかも今度は服の中に手を入れられ直接触られていた。寛也の帰りが遅くなることを知っているのだろう。及川は駿里の反応を楽しみながらゆっくりと触り続けた。ただ撫でられているだけなのに擽ったさと快楽が襲ってきて駿里は身を捩った。反応すればするほど及川を興奮させるだけなのに声が漏れる。
「躾られてんなぁ。どこもかしこも感じてんじゃねぇか。ここはどうだ?」
「やだっ!」
そう言って及川は駿里の乳首を軽く触った。それだけなのに駿里は反応してしまった。おかしい。おかしすぎる。絶対になにか…。駿里がそう考えているとやっとここで気がついた。及川が異様に駿里の体を触ってきていた理由に。そう。あの時及川はオイルを微量手につけて駿里の体に塗りたくっていたのだ。しかも媚薬入りの。そうでなければ好きでもない相手にここまで反応するはずがない。撫でられるだけで感じるはずがない。駿里は躊躇なく薬まで使ってくる及川により恐怖心を抱いてしまった。怖くて仕方がない。この先何をされるのかも分からない。計り知れない。このままではマズいと思った駿里は拘束具を何とかしてでも取ろうと暴れまくった。だが薬を使われて感じやすい体になっている今、乳首をいじられながらでは力を振り絞れなかった。いやでも感じでしまう。
「うく゛っ、やめっ、やめろっ、はなせ、よっ!」
「お、いい反応。」
及川は駿里の反応を見ながら攻め方を変えていた。そして擦った時より大きく反応した駿里を見てそれを続け出した。
「あぁっ、やめっ、くそっ、やめろっ、て!」
「やめるわけねぇだろ。ん?ああ、そうだ。理性が飛んじまう前に一つだけ話しておくことがある。忘れちまうところだった。耳の穴かっぽじってよく聞けよ。一旦手は止めてやるから。」
そう言って及川は一旦手を止めてくれた。駿里はすぐさま及川を睨みつけ抵抗をする。縛られて逃げられない代わりにせめてもの抵抗をしているのだ。
「っ…はぁ っ………はぁっ、だれが、きくかよ…っ、」
「そう言ってられんのも今のうちだからな。まぁいい。本題に入るぞ。でもその前に…このことを組長に言うつもりかどうか先に聞かせろ。」
「いうに、きまってんだろっ…、ここには、カメラもあるっ、ぜったい寛也がすぐに助けに来る…!」
「はは、馬鹿なやつ。」
駿里の言葉を聞くやいなや大笑いをし始めた及川に駿里は首を傾げた。何を言っているんだこいつは…と。何も面白くはない。カメラだって盗聴器だって沢山ある。だから及川はすぐに寛也に見つかって殺される。なのになにをわらっているのだと駿里は意味がわからなかったのだ。
「どういう意味だ…っ!」
「俺はな、誰よりも早く出世したんだ。俺以外の幹部は皆、組長に育てられ信頼されている奴ら。だから他の奴らは諦めてたんだ。どう足掻いても幹部にはなれないってな。だが俺は違う。地道に信頼を得てここまで来た。しかも短い時間で。そんな俺が監視カメラの映像を加工できないとでも思ってんのか?盗聴器も弄れねぇとでも?そもそもここに来る前からカメラは弄ってある。だから助けにも来ねぇよ。」
「そ、んなっ…うそだっ!」
「嘘じゃねぇよ。あともう一ついい事を教えてやる。俺はな、今幹部の中で1番上にいるんだ。意味が分かるか?森廣さんよりは下、だが松下よりは上なんだよ。しかも松下からも信頼されている。それが今日決まったんだ。幹部の中の順位がな。だから組長もそれなりに俺を信頼しているってこと。分かりやすく言えばこの組の中で二番目に信頼されてるって事だ。そんな俺がこんな事をしてるって知ったら組長はどうなるか…考えたらわかるよな?駿里。」
「く、そっ…やろぅ、」
「さぁ、どうする?言うか、言わねぇかどっちなのか答えろ。」
そんなのもう答えは決まってるようなもんではないか。寛也のことを愛している駿里の心に漬け込んでそんなことを言うなんてとても卑怯な奴だ。でもここまで卑怯でなければきっと幹部まで登り詰めてこなかっただろう。駿里は目をつぶった。そして寛也のことを思い浮かべた。寛也は誰よりも部下思いであんな見た目だけど優しいんだ。人一倍駿里の事が好きで独占欲が強くて…でも大切にしてくれる。そんな寛也に駿里は恩返しがしたかった。もしかしたらそれが今なのかもしれない。寛也を守らなくては…。そして駿里は閉じていた目を開け及川を睨みつけた。
「…っ、ひきょう、ものっ、」
「はは、その顔堪んねぇな。そんでもって賢明な判断だ。じゃあじっくりと楽しませてもらおうか。」
「拗ねてんのも可愛いけどよ。あんまりトゲ生やしてっと俺何するかわかんねぇぞ。」
あれからいつもの如く気絶してしまったようで駿里が目を覚ますとかなりの時間が経っていた。それだけでも腹が立つのにそれに加えて身体が痛い。自由に動かせない。しかもそういう時に限って寛也は駿里にちょっかいを出してくる。駿里が動けないから抵抗できない分触り放題だからだ。お腹を撫でたり乳首を触ったりと寛也は起きたばかりの駿里を可愛がっていた。そんな寛也に駿里は結構本気で怒ったが寛也は何も気にすることなくそれを続けていた。
「もうやめろって…!!」
駿里がいい加減にしろという意味を込めて寛也にそう声を荒らげた時寝室のドアから音がした。誰かがドアノックをしたのだ。
「入ってきていいぞ。」
誰かが入ってきたことで寛也からのちょっかいは止まった。だが駿里は緊張した。なぜなら入ってきた人物は初めて見る人だったから。
「だれ…?」
「新しい幹部だ。おら、突っ立ってねぇで自己紹介でもしろや。」
「はい組長。俺は及川 悟だ。よろしくな駿里。」
そう言って彼はニカッと笑った。その笑顔がなんだか不気味で駿里はなぜかこの男に不信感を抱いてしまった。顔立ちが整いすぎて怖かった。この様子では女に困ることは無いだろう。幹部の中ではきっと及川が1番美形だ。そんなことを色々考えながら駿里は警戒心MAXで彼の顔を再び見て口を開いた。
「…お願いします。」
「そう警戒しなくてもいい。こいつは優秀なやつで俺が信頼する数少ない部下だからよ。」
寛也はそういったものの駿里はやはりこの男に対しての不信感は消えなかった。どこかおかしい。きっと力も能力もあるのだろう。だが何故か怖かった。駿里箱の予感が当たりませんようにと祈りながら寛也に隠れた。
「悪いな及川。あんまり外に出さねぇからこんな調子だが慣れたらよく喋る可愛い奴だ。仲良くしてやってくれ。普段外にあんま出ねぇ駿里からしてもお前はいい刺激になると思うから。」
「勿論ですよ組長。駿里のペースに合わせます。無理せず少しずつ距離を縮めていきますね。」
「有難い。じゃああとは頼んだぞ。」
「え…?」
あとは頼んだ…?寛也のその言葉に駿里は絶句した。ということは寛也に仕事に行くのか?昨日は休みって言ってたのに。急に決まったのか?そしたら駿里はこの男と2人っきりだ。それは絶対に嫌だった。
「寛也っ、仕事行くの?やだっ、行かないで…。休みって、言ってたじゃんか!」
「悪い。外せない用事が入ったんだ。夜には戻るから。」
「こ、こうじさん達もいないの?」
「あいつらは今外に行ってんだ。だから及川に頼んだんだぞ。こいつも忙しい中来てくれたんだ。感謝しろよ駿里。」
そう言って寛也は立ち上がった。やだ。行かないで。駿里の五感が感じとった。この男は危険だと。初めて会ったばかりで何も分からないがそれでも感じた。2人っきりになりたくない。行かないで。でも駿里はそれが言えなかった。松下達が来れないということは寛也も忙しいということだ。だから仕事に行かないでというのはわがままになってしまう。嫌で仕方がなかったし怖かったけれど駿里は1度寛也に伸ばした手を引っ込めた。その時及川が悪い笑みを浮かべた様子が駿里の目に入った。
「っ…!」
「どうしたんだお前。らしくねぇぞ?」
駿里の脅えている様子が気になったのだろう。寛也はそう言い駿里を抱きしめてきた。だがその原因が及川だとは分かっていない様子だった。駿里もまた、及川が原因だと言えなかった。寛也が信頼する部下だ。だからきっといい人だ。そう信じたかったから。
「悪ぃけど俺はもう行かなきゃ行けねぇ。留守番出来るか?こいつと過ごすのが嫌なら事務所に下げるがどうする?」
長いこと決まった人としか接してこなかった接してこなかった駿里の事だから寛也はただ単に緊張している。そう思っていたのだ。実際は違うというのに。だがそのおかげで及川をこの家から追い出すことが出来そうだ。駿里はすぐに口を開こうとしたがそれよりも先に及川が口を開いてきた。
「組長。そうしたら駿里に何かあった時すぐに対処出来ません。駿里が緊張するというのなら俺は別室にいます。だからここにいさせてくだい。組長の大切な花を守る為に。」
「…そうだな。それでいいな?駿里。」
寛也にそう言われ駿里は頷いてしまった。だって寛也があんまりにも必死だったから。きっと時間が迫っているのだろう。仕事に行かなくてはならないのに自分のせいで遅れさせるわけにはいかない。だから駿里は我慢した。そんな駿里をみて寛也はどこか申し訳なさそうにしていた。本当なら松下が来ていたのだろう。だがそれも叶わない。だから及川を来させた。きっとそれは寛也にとっても究極の決断だったであろう。それを思うと駿里はわがままがいえなかった。
「…いってらっしゃい、寛也。」
「ああ。じゃああとは頼んだぞ及川。まぁそんな事はあるとは思ってねぇがもし駿里に何かあったら…ただじゃおかねぇからな。」
「肝に銘じます。では、お気を付けて。」
及川がそういったのを聞いて寛也は駿里の頭を撫でると寝室出ていった。ちらりと駿里が及川を様子を伺うように見るとやはり彼の顔は怖かった。それは絶対に顔が整っているから。だから怖く見える。駿里はそう自分に言い聞かせて寛也を引きつった笑顔で見送った。そしてその及川は寛也を追いかけるようにして寝室を出ていった。別室にいるというのはどうやら本当であったようで駿里は心から安心した。だがその安心はどうやら間違いだったようだ。なぜなら寝室を出ていった及川が帰ってきたのだから。
「な、んで…。」
やっぱり駿里の予感は合っていた。その証拠に及川の顔つきが変わった。まるで獲物を見るような顔だ。お腹を空かせた獣のようにも見えた。駿里は怖くて怖くて毛布を握りしめて震えていた。そんな駿里に及川はどんどん近づいてくる。そしてなんの躊躇もなく及川はベットの上に上がってきた。
「さぁ、宴の時間だ。」
ベットに上がってきた及川はそういい駿里の顔を鷲づかんだ。その時駿里が抵抗しなかった為及川は鼻で笑った。
「あんまり驚いてねぇな。初めから分かってたのか?」
「分かってましたよ。行動がおかしすぎる。不信感を抱かない方が無理な話です。」
駿里は脅えていた。だがそれを出さないように及川にそう言った。寛也に助けを求めればすぐにきっと助けてくれただろう。だがそれをしなかった。だから腹を括るしかない。駿里は及川に負けずそう言い返した。そんな駿里をみて及川は再び鼻で笑った。
「はは、肝が据わってんなぁ。益々気に入った。」
「何が望みですか…。」
「望み?そんなの決まってんだろ。お前以外に何があるんだよ。」
「おれ…?」
駿里はそう言い目の前にいる短髪で絵に書いたようなヤクザの姿をしている及川を見た。彼が怖いのはきっとそれだ。松下達はヤクザであるのに怖くない。それは彼らが駿里を怯えさせない為に極力隠しているからだ。ヤクザの姿を。だが及川は違う。隠していない。だから余計に駿里を怯えさせることが出来たのだ。そんな怯えきっているのに頑張って負けじと言い返してくる駿里に及川は顔を近づけ壁際まで追い詰めた。
「そうだ。俺はあの組長が手元に置いて絶対に離さないお前が俺はずっと気になっていた。だが簡単に近づけない。だから俺は調べまくったんだ。お前の事をな。それと同時に組長への距離も縮め始めた。下っ端だったから怪しまれないように時間をかけてゆっくりと…な。それでやっとここまで来たんだ。長かったぞここまで来るのは。」
「…俺をどうするつもりですか。」
「あわよくば俺のものにしてやるよ。」
そう言うと及川は駿里を仰向けにベットの上に押し倒しその上に馬乗りになった。
「やめろ…っ。」
「そりゃ無理な話だぜ、駿里。」
そう言いながら及川は駿里の身体を服の上から撫でまくってきた。足からお腹、そして首元から顔まで全身隈無く撫でてきた。その度に駿里は脅えからビクビクと体が震える。攻めてもの抵抗として駿里はずっと及川を睨んでいた。だがそんな抵抗も及川にとってはなんの意味もない。
「可愛い奴だ。怖いのか?大丈夫だ。お前が暴れなけりゃ優しくしてやるから。」
「寛也が知ったら、ただじゃ済まない…!」
「そうだな。別にいい。俺はその覚悟でここにいるんだから。どれくらいだと思う?ここにたどり着くまでに費やした時間は…。とんでもねぇ努力の末にたどり着いた獲物が目の前にいんのに襲わねぇはずねぇよな。」
「やめろっ、はなせ…っ!!」
「やっぱ拘束した方が良さそうだな。」
及川が駿里の腕を頭上で縛り上げ足も拘束するとその拘束具をベットに縛り付けた。そして待ちきれないというように駿里の身体を再び触り始めた。太腿やお腹胸、そして顔までも全てを堪能するように触る。しかも今度は服の中に手を入れられ直接触られていた。寛也の帰りが遅くなることを知っているのだろう。及川は駿里の反応を楽しみながらゆっくりと触り続けた。ただ撫でられているだけなのに擽ったさと快楽が襲ってきて駿里は身を捩った。反応すればするほど及川を興奮させるだけなのに声が漏れる。
「躾られてんなぁ。どこもかしこも感じてんじゃねぇか。ここはどうだ?」
「やだっ!」
そう言って及川は駿里の乳首を軽く触った。それだけなのに駿里は反応してしまった。おかしい。おかしすぎる。絶対になにか…。駿里がそう考えているとやっとここで気がついた。及川が異様に駿里の体を触ってきていた理由に。そう。あの時及川はオイルを微量手につけて駿里の体に塗りたくっていたのだ。しかも媚薬入りの。そうでなければ好きでもない相手にここまで反応するはずがない。撫でられるだけで感じるはずがない。駿里は躊躇なく薬まで使ってくる及川により恐怖心を抱いてしまった。怖くて仕方がない。この先何をされるのかも分からない。計り知れない。このままではマズいと思った駿里は拘束具を何とかしてでも取ろうと暴れまくった。だが薬を使われて感じやすい体になっている今、乳首をいじられながらでは力を振り絞れなかった。いやでも感じでしまう。
「うく゛っ、やめっ、やめろっ、はなせ、よっ!」
「お、いい反応。」
及川は駿里の反応を見ながら攻め方を変えていた。そして擦った時より大きく反応した駿里を見てそれを続け出した。
「あぁっ、やめっ、くそっ、やめろっ、て!」
「やめるわけねぇだろ。ん?ああ、そうだ。理性が飛んじまう前に一つだけ話しておくことがある。忘れちまうところだった。耳の穴かっぽじってよく聞けよ。一旦手は止めてやるから。」
そう言って及川は一旦手を止めてくれた。駿里はすぐさま及川を睨みつけ抵抗をする。縛られて逃げられない代わりにせめてもの抵抗をしているのだ。
「っ…はぁ っ………はぁっ、だれが、きくかよ…っ、」
「そう言ってられんのも今のうちだからな。まぁいい。本題に入るぞ。でもその前に…このことを組長に言うつもりかどうか先に聞かせろ。」
「いうに、きまってんだろっ…、ここには、カメラもあるっ、ぜったい寛也がすぐに助けに来る…!」
「はは、馬鹿なやつ。」
駿里の言葉を聞くやいなや大笑いをし始めた及川に駿里は首を傾げた。何を言っているんだこいつは…と。何も面白くはない。カメラだって盗聴器だって沢山ある。だから及川はすぐに寛也に見つかって殺される。なのになにをわらっているのだと駿里は意味がわからなかったのだ。
「どういう意味だ…っ!」
「俺はな、誰よりも早く出世したんだ。俺以外の幹部は皆、組長に育てられ信頼されている奴ら。だから他の奴らは諦めてたんだ。どう足掻いても幹部にはなれないってな。だが俺は違う。地道に信頼を得てここまで来た。しかも短い時間で。そんな俺が監視カメラの映像を加工できないとでも思ってんのか?盗聴器も弄れねぇとでも?そもそもここに来る前からカメラは弄ってある。だから助けにも来ねぇよ。」
「そ、んなっ…うそだっ!」
「嘘じゃねぇよ。あともう一ついい事を教えてやる。俺はな、今幹部の中で1番上にいるんだ。意味が分かるか?森廣さんよりは下、だが松下よりは上なんだよ。しかも松下からも信頼されている。それが今日決まったんだ。幹部の中の順位がな。だから組長もそれなりに俺を信頼しているってこと。分かりやすく言えばこの組の中で二番目に信頼されてるって事だ。そんな俺がこんな事をしてるって知ったら組長はどうなるか…考えたらわかるよな?駿里。」
「く、そっ…やろぅ、」
「さぁ、どうする?言うか、言わねぇかどっちなのか答えろ。」
そんなのもう答えは決まってるようなもんではないか。寛也のことを愛している駿里の心に漬け込んでそんなことを言うなんてとても卑怯な奴だ。でもここまで卑怯でなければきっと幹部まで登り詰めてこなかっただろう。駿里は目をつぶった。そして寛也のことを思い浮かべた。寛也は誰よりも部下思いであんな見た目だけど優しいんだ。人一倍駿里の事が好きで独占欲が強くて…でも大切にしてくれる。そんな寛也に駿里は恩返しがしたかった。もしかしたらそれが今なのかもしれない。寛也を守らなくては…。そして駿里は閉じていた目を開け及川を睨みつけた。
「…っ、ひきょう、ものっ、」
「はは、その顔堪んねぇな。そんでもって賢明な判断だ。じゃあじっくりと楽しませてもらおうか。」
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