極道の密にされる健気少年

安達

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遅咲きの花は大輪に成る

りくの力 *

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「抵抗すんな。余計に興奮する。」



手やら足やら拘束されて暴れられない代わりに駿里は腰をくねって何とかして寛也からね激しいピストンから逃げようとしていた。だがそれがどうやら逆効果だったようで寛也は止めるどころかより激しくそして奥まで突き続けた。もう何度気絶したのかも分からない。イった後も弱点ばかり攻められる。そして駿里が何度目かの気絶をしそうになったその時ーーー。



コンコン



「あ?」



寝室のドアからそう音がした。それと同時に寛也は動きを止める。だがそのせいで駿里は気絶することが出来なかった。気絶すれば逃げられる。楽になるのに音がしたせいで休めなかった。駿里は恨めしい目を向けながら音のした方を見た。その音の主は一人しかいない。それは今リビングにいる松下だ。彼は寝室から聞こえてくる駿里の聞いた事のない叫び声に堪らず寛也に殺される覚悟で止めに入ったのだ。



「誰だ。」

「松下です。それよりも組長…。」



扉の向こうにいる松下が歯切れ悪くそう言ったので寛也はイラついた様子でそう言った。ただでさえ邪魔されたことで腹が立っているのに松下が時間を稼ぐようにそう行ってきたことで余計に怒りが募ったのだ。



「あ?なんだ。用があるならさっさと言え。」

「入ってもよいでしょうか?」

「なんでだ。」

「…少々やりすぎかと。」



その松下の言葉を聞いた寛也と駿里は耳を疑った。未だかつて彼が寛也をセックスのことに関して止めたことがあっただろうか。いやきっとない。過去に森廣に揉められたことは何度もある。だが松下に止められたことはなかった。その事もあり寛也はフリーズし、息を整えることに必死になっていた駿里もポカンとした顔をしていた。だが逆に言えばそんな松下が止めるほどに寛也は暴走していたということだ。寛也は1度我に返り目の前の駿里に目線を移した。そこでやっと我を取り戻した。そして自分のした過ちにやっと気づいた。



「おい康二。入ってこい。」

「…良いのですか?」

「いいから来い。」



寛也に言われるがままに寝室の中に入ってきた松下はその光景を見て目を疑った。中に入ると拘束され身動きの取れない状態で仰向けに寝ている駿里の姿があった。その顔は涙でぐちゃぐちゃだ。今も息を整えるのに必死になっている。拘束されているところも痛むであろう。駿里の失言に嫉妬したとはいえいくらなんでもやりすぎだった。



「…組長。いくらなんでもやりすぎです。」

「りくはどうした。」



寛也は松下の言ったことをまるで聞こえないようにそう言った。要は話を逸らしたのだ。そんな寛也に松下は呆れ顔をして再び口を開いた。



「あいつはいい子なのでリビングに置いてきてます。それより俺の話聞いてますか?」

「そうだな。確かにりくはいい子だ。」



2度も話をそらされた。さすがにここまで来れば松下も怒らないはずがない。これ以上言い逃れすることは許さないと言わんばかりに松下は寛也に近づき顔を鬼のように怖い顔をした。寛也の近くにいた駿里もその顔を見ざるを得ない状況のため見てしまったのだがそれを後悔するほどに背筋が凍った。きっとこれは仕事の時の松下の顔だ。その顔で松下が寛也に再び寛也に言葉を発した。



「組長…。」

「そう怒るな。もうしない。お仕置きも終わりだ。康二に感謝するんだな駿里。」



さすがの寛也もここまで松下を怒らせてしまうと対処出来なくなるようで松下の言うことに答えた。



「…ほんとに、おわり?」

「ああ。終わりだ。やりすぎてしまった。ほんとに悪かった。」



寛也はそう言いながら駿里につけていた拘束具を全て取り抱き上げた。その様子を松下はまだ警戒しながら見ていた。まだ寛也が駿里に何かをすると思っているのだろう。そんな警戒心マックスの松下に駿里は言いたいことがあった。それは…。



「こうじ、さん。」



言いたいことを伝えようとした駿里だったがあれだけ泣き叫んだ後ということもあり声がガラガラになってしまっていた。松下は一瞬寛也のことを睨みそうになったがそれを堪えて優しい表情をしたまま駿里の頭に手を置いた。



「ん?どうした。」

「…ありがとう。」

「いや…礼を言われる程のことをしてねぇよ。ただ心配になっただけだ。それで組長…。分かってますよね。次はないですよ組長。」



駿里への態度とは打って変わり寛也への態度を変えた松下に寛也は鼻で笑った。



「はっ…言うようになったじゃねぇか康二。」

「当たり前です。駿里の事に関しては立場とかないです。言わせてもらいます。」

「はは、そうかよ。」



少し空気がピリついてきたこの部屋に駿里は少し焦った。このままでは本当に喧嘩になってしまうのではないか…と。そんな空気を変えようと何とかしようとした駿里だったがそれよりも先に助け舟が来た。それはりくだった。りくが寝室のドアをまるで開けてと言うように引っ掻き始めたのだ。



「りくが、喧嘩しないでって…。」

「喧嘩?してねぇよ。だが怖がらせちまったみたいだな。悪い駿里。おい、お前も謝れ康二。」

「うっす。すまん、駿里。」

「うん。いいよ…?」



駿里は別に寛也たちが怖かったわけではなかったが喧嘩が治まったので結果オーライだ。事の発端となった原因のりくは喧嘩を収め駿里を助けてくれた。今すぐに感謝の気持ちをりくに伝えたかった駿里は寛也にリビングへと行きたいと言いたかったが言えなかった。何せ今はそのりくのことでお仕置きをされたばっかりだったから。そんな駿里の思考が分かったのだろう。寛也が駿里に声をかけた。



「りくのとこ行くか?」

「…いいの?」

「ああ。行こう。お前も行くだろ?康二。」

「はい。行きます。」



松下のその返事を聞くと寛也は駿里を優しく抱きかかえてベットからおりると寝室を出た。すると寝室を出た瞬間りくが飛びついてきた。その時少しりくは寛也に怒っているような表情をした。だが駿里が無事なことを確認したのだろう。りくはそこから怒ることをせずソファに戻って行った。なんと賢い子なのだろうか。今は寛也と駿里の邪魔をしてはいけないと感じたのだろう。そんなりくと同様に松下はソファに座り風呂場に行った2人を見送った。



「お前がいたら俺は安心だ、りく。だから今日はこれで帰るからな。あとは頼んだぞ。」
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