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冷血な極道
俺たちのお父さん
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「おいてめぇら、1回俺の部屋に来い。」
森廣は事務所に戻ると志方と松下にそう言った。松下らは急にドスの効いた声で森廣に言われ焦り始める。だがその焦りすら許さないと森廣は松下と志方を睨みつけ早く着いてこいと急かした。
「ここに座れ。」
急いで森廣の後を追ってきた松下と志方に森廣はそう言った。相変わらず怒っている声で…。松下らは何に怒っているのか検討もつかなくてただひたすらに焦っていた。そんな彼らに森廣はため息をついた。
「お前ら…ちょっと調子に乗りすぎだ。」
「な、なんのことでしょうか?」
「駿里の事だ。」
焦り発した言葉を噛んでしまった松下に呆れ顔をしながら森廣はそう答えた。そこでやっと2人は森廣がなぜ怒っているのかを察した。それは駿里にお仕置きをした件であろう。そして先程森廣がこの事務所を出ていっていたのは寛也のところにいったのだろうとここでやっとわかった。それが分かり冷や汗をダラダラと流しながら黙りこくる2人に対して森廣は口を開いた。
「ありゃいくらなんでもやりすぎだ。駿里に触れれたのが久しぶりだったからって。」
「「…すみません。」」
「陣がそんなに嫌いか?」
松下と志方はその森廣の問いかけに答えられずにいた。好きか嫌いで言えば断然嫌いだ。それはきっと寛也もそうであろう。だが森廣だけは違った。だから2人は正直に答えられなかったのだ。森廣の様子を伺いなんと答えるか頭をフル回転させていた。そんな2人をみて森廣は怒りに満ちた表情から優しい顔つきに変えた。
「正直に言え。仕事に関わることだからな。」
「…嫌いです。俺はあいつが嫌いです。そもそも他の組にいた奴だし、それに話も合わねぇし生意気なんすもん。」
「康二の言う通りです。なんで森廣さんは普通に接してるんですか。」
「あのなぁ、いい歳しといてそんな子供みてぇなこと言うなよ。あれだろ、お前らが嫌なのは駿里と陣が仲良いからだろ?たく、いつまで経ってもてめぇらは子供だな。」
森廣に痛いところをつかれてしまい2人は再び黙り込んだ。そんな2人とは裏腹に森廣は話し続ける。
「お前らがそんな調子だったら陣も居心地が悪いだろ?そりゃ生意気な態度をとっちまうよ。あれでも時期組長まで登り詰めた男だからな。お前らが幹部とはいえやられたらやり返すと思うぞ?龍吾に関してはもっとそうなっちまう。陣の補佐をしてる男だからな。」
「それは、俺も重々承知してます。だけどこの組はずっと子供ん時から一緒にいた奴らで成り立ってるようなもんだからどう接していいかわかんねぇ…です。康二に至っては組長に育てられたようなもんだし…。俺もそんな感じだから組長も森廣さんも慕ってるけどわけも分からず急に来て慕えなんて無理な話です。」
志方の言った言葉に森廣は少しだけではあるが納得をしてしまった。彼の言うとおり今の旭川組は寛也が作りあげたものだ。捨て子だった松下たちを拾い幹部になるまで育て上げた。だから幹部と森廣と寛也の信頼度は厚い。だが今はいきなりそこに陣と龍吾が来た。しかも陣に関しては幹部より上の立場。つまり森廣と同じような立場にいるのだ。志方らはそれが何よりも気に食わなかった。寛也の兄弟だからこの組に入れるのは分かる。だがそれでも嫌だったのだ。まだ出会って日も浅い奴らが組に入ってきて同じ仕事をするというのが。そんな思いを抱いている志方と松下らに森廣は喝を入れるべく立ち上がった。
「甘えんな。もうガキじゃねぇんだぞ。」
松下と志方は森廣にそう言われて目を丸くして驚いていた。志方の言ったことに納得してくれると思っていたのだろう。だが実際は反対だった。そのわけは1つ。もう松下らは子供では無いから。
「いいか、よく聞け。組長がこの組に入れたからにはそれに従う他ねぇんだよ。それに入れたってことは安全ってわかったってことだ。お前らの今やってる事は組長に反発してんのと同じなんだよ。組長自身も陣の事が嫌いかもしれねぇ。だがそれでもこの組に入れたんだ。見捨てることが出来ずにな。だからお前らもそれに従え。いつまでも甘えたこと言ってんじゃねぇぞ。その甘ったれた根性を叩き直すまでこの部屋から出るな。俺は先に行くからな。」
森廣はそう言い終わるとオフィスに松下と志方を残して出ていった。そして残された松下と志方はしばらくの間唖然としていた。久しぶりだったから。森廣に仕事のこと以外で怒られたことが。小さい頃はよく怒られていた。思春期に入った時に物を壊したり寛也に反発したり…その度に森廣に怒られていた。だが最近は仕事のことに関して少し注意されるだけだった。だからかもしれない。森廣に怒られた2人は少し嬉しくてなんだか昔を思い出してしまった。
「森廣さんって…ずっと昔っから変わんねぇよな。」
「そうだな。俺たちのお父さんって感じだ。」
裏社会に生まれてしまった子供は幸せになれる確率が低い。松下と志方もそうだった。親に捨てられそれでも必死に生きていた。だからこそその境遇から助けてくれた寛也と森廣には命をも差し出す覚悟がある。ここまで育ててくれたのだから。森廣に関しては色んなことを教えてくれた。家事や料理、絶対に裏社会で生きぬくために必要では無いことまで教えてくれた。叱る時は叱ってくれ褒める時はとことん褒める。血は繋がっていないのに本当の家族のようなものだった。だからなのか森廣は誰に対しても優しかった。ヤクザの卵にも。そして陣にも龍吾にも優しかった。入院してる時1番お見舞いに言っていた回数も多い。その時たくさんのことを話していたのだろう。森廣がそこまで気にかけるにはきっと訳がある。
「なぁ、康二。」
「なんだ。」
「俺達、幼稚だな。」
「そうだな。」
よく考えれば陣も龍吾も大変な思いをしている。それは松下ら以上に。松下らは寛也に拾われそこからは幸せな日々を送っていた。だが陣は違う。拾われてからも地獄であっただろう。あの橘鷹組に所属していたのだから。考えを改めた松下は行動すべく立ち上がり志方を見た。
「話してみるか。陣さんと。」
「そうだな。だがまずは森廣さんとこに行かねぇとな。」
「ああ。」
そう志方に返事をして歩き出した松下に続いて志方も足を進めていった。そしてそれを待っていたのだろう。森廣はオフィスの出口のドアの前に立っていた。
「遅い。」
「すみません。でも俺達ちゃんと考えを改めました。」
松下がそう言うと森廣は本当かと確かめるべく2人を重視した。そして彼らが嘘をついていないことを確認すると顔の筋肉をやわらげ近くにあった椅子に座った。
「これで陣とも仲良く出来そうだな。」
「「はい。」」
「ならまずこれをやれ。」
「「…?」」
森廣がパソコンを開き松下らに見せるようにそう言った。その中身を見ようと2人はパソコンに近づき内容を見た。何が書いてあるのだろうか…と。だが森廣の事だ。きっといいことが書いてある。そう確信していた2人だが現実は違った。
「っ、森廣さん!なんですかこれは!」
パソコンに書いてあった内容を見るやいなや松下がそう叫んだ。それもそのはず。そこには何日分かの仕事が記載されていたのだから。しかも担当名は松下と志方。だから彼らはこれはどういうことかと猛抗議したのだ。
「お前らの追加の分の仕事だ。いい歳して恥ずかしまねしてくれやがって。その罰だ。受け入れてやれ。じゃあな。俺は外の仕事があるから帰ってくるまでに終わらせておけよ。」
「「森廣さん…!」」
そう叫んだ2人だったが森廣が戻ってくることは無かった。陣のところに行って話し合おうとしたのにそれが出来なくなってしまった。いや…今はそれよりもこれを終わらせなければならない。2人は森廣に許してもらいたかったから。
「くそ…無茶だろこんなの。」
「何事を言うな康二。そんな暇があんなら手を動かせ。」
嫌なら放り出せばいいのになんだかんだ言ってちゃんと仕事をする律儀な2人をみて森廣は微笑んでいた。幼い頃から2人は森廣に怒られていじけることはあったが決して反発はしなかった。それどころか罰をちゃんと受け入れて森廣に謝りに行った。それは褒めてもらいその後に抱きしめて欲しかったから。頭を撫でてよくやったと森廣に言われるのが何よりも嬉しかった。その名残が今でも残っているのだろう。2人は事務所にパソコンの音を響かせながら作業を死に物狂いでやり始めた。そんな彼らをずっと事務所の前で見ている森廣もまた、彼らの事が大切で仕方ないのだろう。そんな森廣の近くに誰かが近づいてきた。
「森廣さん。お疲れ様です。」
「陣か。それよりも敬語使うのやめろ。最初は使ってなかっただろうが。」
「それはあたなのことをちゃんと知らなかったからです。今は敬意を表したいので使わせてください。」
「お前がそうしたいのならそうすればいい。」
「はい。」
陣も決して悪い奴ではない。尊敬する相手にはそれなりの態度を示す。あれだけ荒れ狂った組にいたのに精神も肉体的にも壊れなかった強く、そして我が強い男に敬意を示されることは森廣にとっても嬉しいものだった。
「今日はあいつと一緒じゃねぇのか?」
「龍吾は今日休みです。それよりも何をされてたのですか?」
「あれを見ろ。」
森廣の指を指した方向を見て陣はそこをじっと見つめて黙り込んだ。色々思うことがあるのだろう。松下たちと上手く関係が作れないことは陣自身も気にしている。それを知っている森廣はこのチャンスを逃さまいと陣に再び語りかけた。
「お前も参加するか?もうあいつらと揉める心配をしなくていいからよ。」
「それはどういう意味ですか?」
「自分の目で確かめろ。ほら、行ってこい。」
そういい森廣は陣の背中を押して事務所の中へと入れた。そこに入ってしまえば必然的に松下らと目が合う。一瞬戻ろうかと躊躇った陣だったが松下と志方の目を見てそれを辞めた。そして2人の元へと足を進めていった。そんな陣を見て森廣は安心したのだろう。3人からは死角になっている所から見守りながら微笑んでいた。
森廣は事務所に戻ると志方と松下にそう言った。松下らは急にドスの効いた声で森廣に言われ焦り始める。だがその焦りすら許さないと森廣は松下と志方を睨みつけ早く着いてこいと急かした。
「ここに座れ。」
急いで森廣の後を追ってきた松下と志方に森廣はそう言った。相変わらず怒っている声で…。松下らは何に怒っているのか検討もつかなくてただひたすらに焦っていた。そんな彼らに森廣はため息をついた。
「お前ら…ちょっと調子に乗りすぎだ。」
「な、なんのことでしょうか?」
「駿里の事だ。」
焦り発した言葉を噛んでしまった松下に呆れ顔をしながら森廣はそう答えた。そこでやっと2人は森廣がなぜ怒っているのかを察した。それは駿里にお仕置きをした件であろう。そして先程森廣がこの事務所を出ていっていたのは寛也のところにいったのだろうとここでやっとわかった。それが分かり冷や汗をダラダラと流しながら黙りこくる2人に対して森廣は口を開いた。
「ありゃいくらなんでもやりすぎだ。駿里に触れれたのが久しぶりだったからって。」
「「…すみません。」」
「陣がそんなに嫌いか?」
松下と志方はその森廣の問いかけに答えられずにいた。好きか嫌いで言えば断然嫌いだ。それはきっと寛也もそうであろう。だが森廣だけは違った。だから2人は正直に答えられなかったのだ。森廣の様子を伺いなんと答えるか頭をフル回転させていた。そんな2人をみて森廣は怒りに満ちた表情から優しい顔つきに変えた。
「正直に言え。仕事に関わることだからな。」
「…嫌いです。俺はあいつが嫌いです。そもそも他の組にいた奴だし、それに話も合わねぇし生意気なんすもん。」
「康二の言う通りです。なんで森廣さんは普通に接してるんですか。」
「あのなぁ、いい歳しといてそんな子供みてぇなこと言うなよ。あれだろ、お前らが嫌なのは駿里と陣が仲良いからだろ?たく、いつまで経ってもてめぇらは子供だな。」
森廣に痛いところをつかれてしまい2人は再び黙り込んだ。そんな2人とは裏腹に森廣は話し続ける。
「お前らがそんな調子だったら陣も居心地が悪いだろ?そりゃ生意気な態度をとっちまうよ。あれでも時期組長まで登り詰めた男だからな。お前らが幹部とはいえやられたらやり返すと思うぞ?龍吾に関してはもっとそうなっちまう。陣の補佐をしてる男だからな。」
「それは、俺も重々承知してます。だけどこの組はずっと子供ん時から一緒にいた奴らで成り立ってるようなもんだからどう接していいかわかんねぇ…です。康二に至っては組長に育てられたようなもんだし…。俺もそんな感じだから組長も森廣さんも慕ってるけどわけも分からず急に来て慕えなんて無理な話です。」
志方の言った言葉に森廣は少しだけではあるが納得をしてしまった。彼の言うとおり今の旭川組は寛也が作りあげたものだ。捨て子だった松下たちを拾い幹部になるまで育て上げた。だから幹部と森廣と寛也の信頼度は厚い。だが今はいきなりそこに陣と龍吾が来た。しかも陣に関しては幹部より上の立場。つまり森廣と同じような立場にいるのだ。志方らはそれが何よりも気に食わなかった。寛也の兄弟だからこの組に入れるのは分かる。だがそれでも嫌だったのだ。まだ出会って日も浅い奴らが組に入ってきて同じ仕事をするというのが。そんな思いを抱いている志方と松下らに森廣は喝を入れるべく立ち上がった。
「甘えんな。もうガキじゃねぇんだぞ。」
松下と志方は森廣にそう言われて目を丸くして驚いていた。志方の言ったことに納得してくれると思っていたのだろう。だが実際は反対だった。そのわけは1つ。もう松下らは子供では無いから。
「いいか、よく聞け。組長がこの組に入れたからにはそれに従う他ねぇんだよ。それに入れたってことは安全ってわかったってことだ。お前らの今やってる事は組長に反発してんのと同じなんだよ。組長自身も陣の事が嫌いかもしれねぇ。だがそれでもこの組に入れたんだ。見捨てることが出来ずにな。だからお前らもそれに従え。いつまでも甘えたこと言ってんじゃねぇぞ。その甘ったれた根性を叩き直すまでこの部屋から出るな。俺は先に行くからな。」
森廣はそう言い終わるとオフィスに松下と志方を残して出ていった。そして残された松下と志方はしばらくの間唖然としていた。久しぶりだったから。森廣に仕事のこと以外で怒られたことが。小さい頃はよく怒られていた。思春期に入った時に物を壊したり寛也に反発したり…その度に森廣に怒られていた。だが最近は仕事のことに関して少し注意されるだけだった。だからかもしれない。森廣に怒られた2人は少し嬉しくてなんだか昔を思い出してしまった。
「森廣さんって…ずっと昔っから変わんねぇよな。」
「そうだな。俺たちのお父さんって感じだ。」
裏社会に生まれてしまった子供は幸せになれる確率が低い。松下と志方もそうだった。親に捨てられそれでも必死に生きていた。だからこそその境遇から助けてくれた寛也と森廣には命をも差し出す覚悟がある。ここまで育ててくれたのだから。森廣に関しては色んなことを教えてくれた。家事や料理、絶対に裏社会で生きぬくために必要では無いことまで教えてくれた。叱る時は叱ってくれ褒める時はとことん褒める。血は繋がっていないのに本当の家族のようなものだった。だからなのか森廣は誰に対しても優しかった。ヤクザの卵にも。そして陣にも龍吾にも優しかった。入院してる時1番お見舞いに言っていた回数も多い。その時たくさんのことを話していたのだろう。森廣がそこまで気にかけるにはきっと訳がある。
「なぁ、康二。」
「なんだ。」
「俺達、幼稚だな。」
「そうだな。」
よく考えれば陣も龍吾も大変な思いをしている。それは松下ら以上に。松下らは寛也に拾われそこからは幸せな日々を送っていた。だが陣は違う。拾われてからも地獄であっただろう。あの橘鷹組に所属していたのだから。考えを改めた松下は行動すべく立ち上がり志方を見た。
「話してみるか。陣さんと。」
「そうだな。だがまずは森廣さんとこに行かねぇとな。」
「ああ。」
そう志方に返事をして歩き出した松下に続いて志方も足を進めていった。そしてそれを待っていたのだろう。森廣はオフィスの出口のドアの前に立っていた。
「遅い。」
「すみません。でも俺達ちゃんと考えを改めました。」
松下がそう言うと森廣は本当かと確かめるべく2人を重視した。そして彼らが嘘をついていないことを確認すると顔の筋肉をやわらげ近くにあった椅子に座った。
「これで陣とも仲良く出来そうだな。」
「「はい。」」
「ならまずこれをやれ。」
「「…?」」
森廣がパソコンを開き松下らに見せるようにそう言った。その中身を見ようと2人はパソコンに近づき内容を見た。何が書いてあるのだろうか…と。だが森廣の事だ。きっといいことが書いてある。そう確信していた2人だが現実は違った。
「っ、森廣さん!なんですかこれは!」
パソコンに書いてあった内容を見るやいなや松下がそう叫んだ。それもそのはず。そこには何日分かの仕事が記載されていたのだから。しかも担当名は松下と志方。だから彼らはこれはどういうことかと猛抗議したのだ。
「お前らの追加の分の仕事だ。いい歳して恥ずかしまねしてくれやがって。その罰だ。受け入れてやれ。じゃあな。俺は外の仕事があるから帰ってくるまでに終わらせておけよ。」
「「森廣さん…!」」
そう叫んだ2人だったが森廣が戻ってくることは無かった。陣のところに行って話し合おうとしたのにそれが出来なくなってしまった。いや…今はそれよりもこれを終わらせなければならない。2人は森廣に許してもらいたかったから。
「くそ…無茶だろこんなの。」
「何事を言うな康二。そんな暇があんなら手を動かせ。」
嫌なら放り出せばいいのになんだかんだ言ってちゃんと仕事をする律儀な2人をみて森廣は微笑んでいた。幼い頃から2人は森廣に怒られていじけることはあったが決して反発はしなかった。それどころか罰をちゃんと受け入れて森廣に謝りに行った。それは褒めてもらいその後に抱きしめて欲しかったから。頭を撫でてよくやったと森廣に言われるのが何よりも嬉しかった。その名残が今でも残っているのだろう。2人は事務所にパソコンの音を響かせながら作業を死に物狂いでやり始めた。そんな彼らをずっと事務所の前で見ている森廣もまた、彼らの事が大切で仕方ないのだろう。そんな森廣の近くに誰かが近づいてきた。
「森廣さん。お疲れ様です。」
「陣か。それよりも敬語使うのやめろ。最初は使ってなかっただろうが。」
「それはあたなのことをちゃんと知らなかったからです。今は敬意を表したいので使わせてください。」
「お前がそうしたいのならそうすればいい。」
「はい。」
陣も決して悪い奴ではない。尊敬する相手にはそれなりの態度を示す。あれだけ荒れ狂った組にいたのに精神も肉体的にも壊れなかった強く、そして我が強い男に敬意を示されることは森廣にとっても嬉しいものだった。
「今日はあいつと一緒じゃねぇのか?」
「龍吾は今日休みです。それよりも何をされてたのですか?」
「あれを見ろ。」
森廣の指を指した方向を見て陣はそこをじっと見つめて黙り込んだ。色々思うことがあるのだろう。松下たちと上手く関係が作れないことは陣自身も気にしている。それを知っている森廣はこのチャンスを逃さまいと陣に再び語りかけた。
「お前も参加するか?もうあいつらと揉める心配をしなくていいからよ。」
「それはどういう意味ですか?」
「自分の目で確かめろ。ほら、行ってこい。」
そういい森廣は陣の背中を押して事務所の中へと入れた。そこに入ってしまえば必然的に松下らと目が合う。一瞬戻ろうかと躊躇った陣だったが松下と志方の目を見てそれを辞めた。そして2人の元へと足を進めていった。そんな陣を見て森廣は安心したのだろう。3人からは死角になっている所から見守りながら微笑んでいた。
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