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番外編
通りすがりの女
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駿里は今飲食店に来ている。飲食店と言っても寛也が選んだお店なので値段も施設内の設備も桁違いだ。全てにおいてピカピカで整っている。駿里はそこで今日寛也と食事をすることになっていた。だが寛也は仕事なので現地集合ということになっている。だから駿里は松下の車に乗ってここまで来た。もう楽しみで仕方がなかった。なんせ久しぶりのお出かけだから。しかも寛也とのデートだ。ワクワクしないはずがない。駿里は気持ちが高ぶって仕方がない気持ちを抑えて寛也が来るのを松下と共に待っていた。そこへ見知らぬ女性2人が近づいてきた。
「…駿里くん?」
「ほら見て!やっぱりそうだよ!」
そう言って女たちが騒いでいる。しかし駿里はその女性たちが誰だかわからなかった。思い出そうと必死になったもののそもそも女性との関わりが無さすぎる。思い出すにも材料がなく不可能だった。そんな困っている駿里とは裏腹に女性2人は駿里と会えたことが相当嬉しかったらしく周りの目など気にせずにはしゃいでいた。そのおかげで通り過ぎる人達はみんな駿里のことを見ている。駿里はどうしようもなくなって隣にいた松下に助けを求めるような目をして見ると松下は眉間に皺を寄せて駿里のことを見ていた。やばい。怒ってる。駿里は冷汗が出てきた。寛也が今、この瞬間に来ないことだけを祈って女性達がここから立ち去ってくれるように願うばかりだ。そんなことを駿里が思っているとは知らず女性2人は駿里の体をベタベタと触る。
「うわぁ久しぶりだね!元気だった?」
「…えっと、」
「やだなぁ~忘れちゃったの?美里よ!」
「うちは瑠璃奈(るりな)よ。同じ高校だったじゃん。」
そう言いながら女性2人は駿里の頬にキスをした。その瞬間駿里は後ろからとんでもない怒りオーラを感じた。そのオーラを出しているのは言うまでもない。松下だ。
「おい。誰だお前ら。黙って見てりゃあ好き勝手してくれんじゃねぇか。さっきからうちの駿里に何してんだ。」
松下がそう言って女たちから駿里を離させた。先程までは駿里の昔の知り合いだろうと思い我慢していた。だがキスまでされればたまったもんじゃない。さすがに気持ちを抑えられなくなった。そのため松下は駿里を引っ張る時少し乱暴気味になってしまった。
「誰よこのおっさん。」
「もしかして駿里くんが学校やめた理由ってこの人達なの?」
先程まで駿里と接していた態度とは打って変わり女性2人は松下に対して感じ悪かった。目付きは悪く見下すように松下を見ている。だがそんなことで腹が立つほど松下は馬鹿じゃない。顔色一つ変えずに女を見続けた。
「違ぇよ。」
いや違くはない。駿里が寛也や松下に強制的にやめさせられたのは事実だ。駿里は思わずそうツッコミをしたくなったがその考えが松下に伝わったらしく駿里の腕を掴んでいる松下の手の力が強くなった。駿里は思わず松下の手のひらを掴まれていないほうの手で握った。その行動に腹が立ち嫉妬した女達はますますヒートアップする。
「あんたに聞いてないわ。駿里くんに聞いてんのよ。邪魔しないでくれる?」
そう喚きながら女たちが駿里に抱きつこうとしてきた。すかさず松下はそれを避けるように駿里を自分の後ろに連れていく。そして女たちを鋭い目付きで睨んだ。
「あんまり大人を舐めんじゃねぇぞガキ。」
「うるさいわね。こっちは駿里くんと久しぶりに会えたのよ。」
「てゆうかあんた駿里くんとどういう関係なのよ。」
いつまでもガミガミと噛み付いてくるウザったらしい女たちに松下はため息をつく。呆れ顔で女らを見ると口を開いた。
「お前らなんかに言うわけねぇだろ。駿里帰るぞ。」
「う、うん。」
松下はその場からすぐにでも立ち去りたかったようで駿里を強い力で引っ張り歩き出そうとした。駿里は足がつっかかりそうになったが駿里は松下以上にこの場から離れたかった。だから足元をからませながらも松下について行こうとする…が。
「待ちなさいよ。」
女達によって駿里が勢いよく引っ張られた。そのせいで駿里はよろけて転けそうになった。すかさず松下が駿里のことを受け止めたからいいものの怪我でもしていたかもしれない。乱暴極まりない。松下はさすがに怒りが抑えられなくなる。
「チッ、なんだよ。しつけぇ野郎だな。些事はどっかに行け。」
松下はそう言って女達を再び駿里から離れさせた。どれだけ強い力で駿里のことを掴んでいても松下にかかれば簡単にそれを外せられる。あまりにも簡単に外され女たちは一瞬フリーズしていたがすぐに怒りが込み上げてきたようで顔が真っ赤になっていた。
「は?些事ですって?私は駿里くんの元恋人なのよ。」
「…は?今なんつった?」
聞き間違えかと思い聞き返したがしっかりと松下には聞こえていた。また女達がわけも分からないことを言い出したのかと思ったがこれにはなにか訳がありそうだ。理由もなくこんなことまでは言わないはずだから。
「だから私は駿里くんの元彼女なの。でも私は別れたつもりは無いから今も恋人ね。」
別れたつもりは無い…?松下はその言葉を聞いた途端表情が無くなった。そしてそのまま駿里のことを見る。
「どういうことだ駿里。」
「いやいやっ、俺まずこの人達知らないしそもそも付き合ってないから…っ!」
駿里に嘘をついている様子はなかった。だが女たちも同じように嘘をついているそぶりをしていない。この状況で松下がどっちを信じるかなんて駿里に決まっている。きっと女たちの思い込みだ。そう確信した松下は駿里を女たちから守る体制に入った。そもそもこんな強面の松下に楯突くなんて普通ではない。きっとこいつらは権力者の子供であろう。そう思った松下は少しでも駿里からこの女たちを離したかったのだ。
「もう駿里くんったら恥ずかしがっちゃって。いいのよ照れなくても。」
「そうよ。まぁでも美里に久しぶりに会えたんだから無理もないわね。」
松下が女たちから駿里をどれだけ離しても着いてくる。どこまででも着いてくる。そして駿里に触れようとする。気持ちが悪い。今すぐに殴り倒したかったがここでは人目があるので松下はそれが出来なかった。
「おい勘違い女共。これ以上駿里に触れんじゃねぇ。」
松下は最後の忠告をする意味でそう言った。これ以上面倒を起こさせないでくれ…そう思い言ったのだが女たちには伝わらなかった。
「なによ。彼女なんだなら触れて当たり前でしょ。そっちが離しなさいよ。」
「…てめぇ。」
松下は我慢の限界だった。そしてついに松下が女たちに手を下そうとしたその時ーーー。
「何をしてる。」
寛也の声が聞こえた。松下の後ろにいた駿里も安心したようで息が少しずつゆっくりになっていく。駿里は怖かったようだ。それもそうだ。わけも分からない強気の女たちに体を触られまくったのだから。そんな駿里を見て寛也は何があったのかまでは分からなかったがこの女達が駿里に害を加えたことはすぐにわかった。
「…それがこの女どもが駿里にちょっかいかけてくるんですよ。」
「ちょっかい?ふざけんじゃないわよ。私は真剣よ!」
「お前は何を喚いてんだ。」
寛也が女に向かってそう言った。こいつは普通ではない。そう思った寛也は女に手加減せず鋭い声でそう言った。
「駿里くんは私の彼女なのにこの男がさっきから邪魔してくんのよ!喚いて当たり前でしょ。」
女がそう言うと寛也と共にこの場に来た志方と圷は駿里を見た。みんなの視線が刺さり駿里は松下に抱きつくようにして隠れた。その様子を見て志方は駿里の元に行きどういうことだと言わんばかりに無表情で駿里を見下ろす。だが寛也だけは表情を変えずに余裕な顔をしていた。
「彼女?おもしれぇ冗談言う奴らだな。」
「面白くないわよ!あんたらさっきから駿里くんにベタベタ触んないで!」
「それは無理だな。」
そう言って寛也は駿里を自分の元に引き寄せ唇を奪った。その様子を見て発狂するほど怒りが沸いた女達が寛也を殴ろうとする。しかしそんなもの寛也に効くはずがない。当たり前のように軽々と抑えられた。
「あんまり調子にのんなよ。女だからって手加減しねぇからな。」
「…もうどいつもこいつも邪魔ばっかり!ウザったらしいわ!あんた達駿里くんのなんなよ!」
「何って恋人だ。いや夫と言う方が正しいかもな。」
寛也がはっきりとそう言ってくれ駿里はこの状況であったがなんだか嬉しくなった。そんな駿里とは反対に女たちの顔はどんどん怒りに満ちていく。
「…はぁ?馬鹿じゃないの?駿里くんは私の彼氏なのよ。あんたみたいなおっさんと付き合うわけないでしょ。」
「馬鹿はどっちだ。」
「あたしに楯突く気!?」
「ああ、そうだ。」
寛也と松下の思った通りだ。楯突くという言葉を聞いて確信した。この女達の親は権力者であると。しかしだからといって怖くもなんともない。なぜなら寛也はあの旭川組の組長なのだから。
「後悔するわよ。私のパパはすごい人なんだから!」
「そうやっていつまでも親の権力に頼ってる奴なんぞなんも怖くねぇよ。これまで父親のおかげでなんでも手に入ってきたようだが駿里だけは違う。何があっても渡さねぇ。例え死んでもな。行くぞ駿里。」
喚きまくっている女たちを無視して寛也は駿里の腕を引き車まで戻って行った。せっかくの寛也との食事会だったのに中止になり駿里は気分が落ち込んだ。だがそれは駿里だけではない。寛也も同じだ。そんな2人のあとを追うように松下らも着いてくる。そして全員が車に乗ると松下が車を発進させた。これでやっと女たちから逃げられた。しかしそれはいいものの駿里の隣には寛也と志方が座っており今、駿里は違う意味で息苦しかった。
「話は聞かせてもらうからな駿里。」
「俺は何もやましいことしてない…!」
「だったならなんであんな女どもにつっかかられてんだよ。」
寛也に頬を掴まれ顔を近づけられた。駿里は思わず怖気付いて後ろに下がろうとしたが後ろには志方がいる。これでは下がることも出来なかった。
「お、俺だって知りたいよ…!」
「まぁお仕置きした後でたっぷり詳細を聞かせてもらおうか。」
「なんでっ!」
そう言って駿里が隣に座っている寛也の腕を掴もうとしたその時ーーー。
「俺も参加しますよ組長。」
「志方がすんなら俺もさせてください。あの女達に大分頭きてるんで。」
松下が志方に続くようにそう言ってきた。圷も同じように参加する気らしい。どうしてこうなる。頭が着いていかない。そもそもなんでお仕置きされるのが前提になってるんだ…!ああもう意味がわからない。駿里は考え始めたら余計に腹が立ってついに爆発した。
「理不尽だっ…!」
「うるせぇな。子供じゃあるまいし騒ぐんじゃねぇ。」
え?なんで俺が怒られてんの…?俺何も悪いことしてないのに!もう家に着いたら絶対逃げ出してやる。全力疾走すればさすがに逃げられるはずだからね。黙ってやられると思うなよ。駿里はそう思いながら車の中で1人そう決心した。
「…駿里くん?」
「ほら見て!やっぱりそうだよ!」
そう言って女たちが騒いでいる。しかし駿里はその女性たちが誰だかわからなかった。思い出そうと必死になったもののそもそも女性との関わりが無さすぎる。思い出すにも材料がなく不可能だった。そんな困っている駿里とは裏腹に女性2人は駿里と会えたことが相当嬉しかったらしく周りの目など気にせずにはしゃいでいた。そのおかげで通り過ぎる人達はみんな駿里のことを見ている。駿里はどうしようもなくなって隣にいた松下に助けを求めるような目をして見ると松下は眉間に皺を寄せて駿里のことを見ていた。やばい。怒ってる。駿里は冷汗が出てきた。寛也が今、この瞬間に来ないことだけを祈って女性達がここから立ち去ってくれるように願うばかりだ。そんなことを駿里が思っているとは知らず女性2人は駿里の体をベタベタと触る。
「うわぁ久しぶりだね!元気だった?」
「…えっと、」
「やだなぁ~忘れちゃったの?美里よ!」
「うちは瑠璃奈(るりな)よ。同じ高校だったじゃん。」
そう言いながら女性2人は駿里の頬にキスをした。その瞬間駿里は後ろからとんでもない怒りオーラを感じた。そのオーラを出しているのは言うまでもない。松下だ。
「おい。誰だお前ら。黙って見てりゃあ好き勝手してくれんじゃねぇか。さっきからうちの駿里に何してんだ。」
松下がそう言って女たちから駿里を離させた。先程までは駿里の昔の知り合いだろうと思い我慢していた。だがキスまでされればたまったもんじゃない。さすがに気持ちを抑えられなくなった。そのため松下は駿里を引っ張る時少し乱暴気味になってしまった。
「誰よこのおっさん。」
「もしかして駿里くんが学校やめた理由ってこの人達なの?」
先程まで駿里と接していた態度とは打って変わり女性2人は松下に対して感じ悪かった。目付きは悪く見下すように松下を見ている。だがそんなことで腹が立つほど松下は馬鹿じゃない。顔色一つ変えずに女を見続けた。
「違ぇよ。」
いや違くはない。駿里が寛也や松下に強制的にやめさせられたのは事実だ。駿里は思わずそうツッコミをしたくなったがその考えが松下に伝わったらしく駿里の腕を掴んでいる松下の手の力が強くなった。駿里は思わず松下の手のひらを掴まれていないほうの手で握った。その行動に腹が立ち嫉妬した女達はますますヒートアップする。
「あんたに聞いてないわ。駿里くんに聞いてんのよ。邪魔しないでくれる?」
そう喚きながら女たちが駿里に抱きつこうとしてきた。すかさず松下はそれを避けるように駿里を自分の後ろに連れていく。そして女たちを鋭い目付きで睨んだ。
「あんまり大人を舐めんじゃねぇぞガキ。」
「うるさいわね。こっちは駿里くんと久しぶりに会えたのよ。」
「てゆうかあんた駿里くんとどういう関係なのよ。」
いつまでもガミガミと噛み付いてくるウザったらしい女たちに松下はため息をつく。呆れ顔で女らを見ると口を開いた。
「お前らなんかに言うわけねぇだろ。駿里帰るぞ。」
「う、うん。」
松下はその場からすぐにでも立ち去りたかったようで駿里を強い力で引っ張り歩き出そうとした。駿里は足がつっかかりそうになったが駿里は松下以上にこの場から離れたかった。だから足元をからませながらも松下について行こうとする…が。
「待ちなさいよ。」
女達によって駿里が勢いよく引っ張られた。そのせいで駿里はよろけて転けそうになった。すかさず松下が駿里のことを受け止めたからいいものの怪我でもしていたかもしれない。乱暴極まりない。松下はさすがに怒りが抑えられなくなる。
「チッ、なんだよ。しつけぇ野郎だな。些事はどっかに行け。」
松下はそう言って女達を再び駿里から離れさせた。どれだけ強い力で駿里のことを掴んでいても松下にかかれば簡単にそれを外せられる。あまりにも簡単に外され女たちは一瞬フリーズしていたがすぐに怒りが込み上げてきたようで顔が真っ赤になっていた。
「は?些事ですって?私は駿里くんの元恋人なのよ。」
「…は?今なんつった?」
聞き間違えかと思い聞き返したがしっかりと松下には聞こえていた。また女達がわけも分からないことを言い出したのかと思ったがこれにはなにか訳がありそうだ。理由もなくこんなことまでは言わないはずだから。
「だから私は駿里くんの元彼女なの。でも私は別れたつもりは無いから今も恋人ね。」
別れたつもりは無い…?松下はその言葉を聞いた途端表情が無くなった。そしてそのまま駿里のことを見る。
「どういうことだ駿里。」
「いやいやっ、俺まずこの人達知らないしそもそも付き合ってないから…っ!」
駿里に嘘をついている様子はなかった。だが女たちも同じように嘘をついているそぶりをしていない。この状況で松下がどっちを信じるかなんて駿里に決まっている。きっと女たちの思い込みだ。そう確信した松下は駿里を女たちから守る体制に入った。そもそもこんな強面の松下に楯突くなんて普通ではない。きっとこいつらは権力者の子供であろう。そう思った松下は少しでも駿里からこの女たちを離したかったのだ。
「もう駿里くんったら恥ずかしがっちゃって。いいのよ照れなくても。」
「そうよ。まぁでも美里に久しぶりに会えたんだから無理もないわね。」
松下が女たちから駿里をどれだけ離しても着いてくる。どこまででも着いてくる。そして駿里に触れようとする。気持ちが悪い。今すぐに殴り倒したかったがここでは人目があるので松下はそれが出来なかった。
「おい勘違い女共。これ以上駿里に触れんじゃねぇ。」
松下は最後の忠告をする意味でそう言った。これ以上面倒を起こさせないでくれ…そう思い言ったのだが女たちには伝わらなかった。
「なによ。彼女なんだなら触れて当たり前でしょ。そっちが離しなさいよ。」
「…てめぇ。」
松下は我慢の限界だった。そしてついに松下が女たちに手を下そうとしたその時ーーー。
「何をしてる。」
寛也の声が聞こえた。松下の後ろにいた駿里も安心したようで息が少しずつゆっくりになっていく。駿里は怖かったようだ。それもそうだ。わけも分からない強気の女たちに体を触られまくったのだから。そんな駿里を見て寛也は何があったのかまでは分からなかったがこの女達が駿里に害を加えたことはすぐにわかった。
「…それがこの女どもが駿里にちょっかいかけてくるんですよ。」
「ちょっかい?ふざけんじゃないわよ。私は真剣よ!」
「お前は何を喚いてんだ。」
寛也が女に向かってそう言った。こいつは普通ではない。そう思った寛也は女に手加減せず鋭い声でそう言った。
「駿里くんは私の彼女なのにこの男がさっきから邪魔してくんのよ!喚いて当たり前でしょ。」
女がそう言うと寛也と共にこの場に来た志方と圷は駿里を見た。みんなの視線が刺さり駿里は松下に抱きつくようにして隠れた。その様子を見て志方は駿里の元に行きどういうことだと言わんばかりに無表情で駿里を見下ろす。だが寛也だけは表情を変えずに余裕な顔をしていた。
「彼女?おもしれぇ冗談言う奴らだな。」
「面白くないわよ!あんたらさっきから駿里くんにベタベタ触んないで!」
「それは無理だな。」
そう言って寛也は駿里を自分の元に引き寄せ唇を奪った。その様子を見て発狂するほど怒りが沸いた女達が寛也を殴ろうとする。しかしそんなもの寛也に効くはずがない。当たり前のように軽々と抑えられた。
「あんまり調子にのんなよ。女だからって手加減しねぇからな。」
「…もうどいつもこいつも邪魔ばっかり!ウザったらしいわ!あんた達駿里くんのなんなよ!」
「何って恋人だ。いや夫と言う方が正しいかもな。」
寛也がはっきりとそう言ってくれ駿里はこの状況であったがなんだか嬉しくなった。そんな駿里とは反対に女たちの顔はどんどん怒りに満ちていく。
「…はぁ?馬鹿じゃないの?駿里くんは私の彼氏なのよ。あんたみたいなおっさんと付き合うわけないでしょ。」
「馬鹿はどっちだ。」
「あたしに楯突く気!?」
「ああ、そうだ。」
寛也と松下の思った通りだ。楯突くという言葉を聞いて確信した。この女達の親は権力者であると。しかしだからといって怖くもなんともない。なぜなら寛也はあの旭川組の組長なのだから。
「後悔するわよ。私のパパはすごい人なんだから!」
「そうやっていつまでも親の権力に頼ってる奴なんぞなんも怖くねぇよ。これまで父親のおかげでなんでも手に入ってきたようだが駿里だけは違う。何があっても渡さねぇ。例え死んでもな。行くぞ駿里。」
喚きまくっている女たちを無視して寛也は駿里の腕を引き車まで戻って行った。せっかくの寛也との食事会だったのに中止になり駿里は気分が落ち込んだ。だがそれは駿里だけではない。寛也も同じだ。そんな2人のあとを追うように松下らも着いてくる。そして全員が車に乗ると松下が車を発進させた。これでやっと女たちから逃げられた。しかしそれはいいものの駿里の隣には寛也と志方が座っており今、駿里は違う意味で息苦しかった。
「話は聞かせてもらうからな駿里。」
「俺は何もやましいことしてない…!」
「だったならなんであんな女どもにつっかかられてんだよ。」
寛也に頬を掴まれ顔を近づけられた。駿里は思わず怖気付いて後ろに下がろうとしたが後ろには志方がいる。これでは下がることも出来なかった。
「お、俺だって知りたいよ…!」
「まぁお仕置きした後でたっぷり詳細を聞かせてもらおうか。」
「なんでっ!」
そう言って駿里が隣に座っている寛也の腕を掴もうとしたその時ーーー。
「俺も参加しますよ組長。」
「志方がすんなら俺もさせてください。あの女達に大分頭きてるんで。」
松下が志方に続くようにそう言ってきた。圷も同じように参加する気らしい。どうしてこうなる。頭が着いていかない。そもそもなんでお仕置きされるのが前提になってるんだ…!ああもう意味がわからない。駿里は考え始めたら余計に腹が立ってついに爆発した。
「理不尽だっ…!」
「うるせぇな。子供じゃあるまいし騒ぐんじゃねぇ。」
え?なんで俺が怒られてんの…?俺何も悪いことしてないのに!もう家に着いたら絶対逃げ出してやる。全力疾走すればさすがに逃げられるはずだからね。黙ってやられると思うなよ。駿里はそう思いながら車の中で1人そう決心した。
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