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番外編
〜オメガバース〜 打ち明け
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「駿里、俺と約束して欲しい。」
松下はそう言うと駿里が顔を上げるまで暫く待った。何10分でも何時間でも待つつもりだったが駿里は思ったよりも早く松下の顔を見上げた。それが嬉しくて松下は思わず笑みがこぼれる。
「これからは何があっても俺に相談しろ。組長と喧嘩した時もちょっとでもなんか嫌なことがあった時も些細なことで俺に全部言え。吐き出せ。人に話すと自覚はなくとも心がスッキリするらしいからよ。」
松下が言い終わると駿里は先程上げた顔を再び顔を下げた。この状況なのでそうなるのも無理もないかと松下は何も言わずに駿里の頭を撫でようとしたその時ーーー。
「…ありがとう。」
とても小さい声だった。静まり返ったこの空間でなければ聞こえなかったであろう。それでも頑張って駿里がそう言ってくれたことが松下にはわかった。それがなによりも嬉しかった。自分の話したことに反応してくれた。聞いていてくれた。それが嬉しくて松下は優しく頭を撫で駿里を抱きしめた。
「なんで誰にも相談してくれなかったんだ。」
そう言って松下は泣いていた。駿里にバレないように隠れるようにして。嗚咽を漏らすことなく静かに涙を流していた。しかし駿里は目と鼻の先にいる。気づかないはずがなかった。そんな松下を見て駿里は気づけば自然と口を開いていた。そしてーーー。
「………寛也達と出会う前ね、俺こんな風に死にたいって思ったことが1回だけあったんだ。その時色んなことが重なってさ。親は死んじゃうし、レイプされちゃうしでもう心はズタボロだった。それで…俺その時親戚の家に居させてもらってたから勇気を振り絞って相談して…。」
そこまで言うと駿里は黙り込んだ。話すことを格闘していたのだ。それも無理はない。自分の悩みを打ち明けることだけでもかなり勇気がいることだ。恥ずかしがっていえなかったりプライドが許さなかったりと中々口に出すことが出来ない。駿里は今、それをしてくれようとしている。松下はこの気を逃すわけにはいかなかった。どうしようか、と考えたが余計に口出しをして駿里の気を逸らしたりしてもいけない。だから黙ってただただ待つことにした。するとそんな松下の思いが伝わったのか駿里は再び話し始めた。
「…………死にたい、もう生きたくないって言った。そしたら『なんでそんな事言うの?そんな悲しいこと言わないでよ。』って言われたんだ。それはちゃんと俺のことを思って生きて欲しいからその言葉を選んだって分かってるよ。でも追い詰められた俺からしたら余計に苦しくなっちゃって。俺は辛いことを吐き出すのも許されないのってネガティブに考えちゃったんだ。それから人に相談することっていけないことなんだって思って中々自分の悩みを言えなかった。」
「そうか。そうだよな。」
駿里の言う通りだ。死ぬほど辛い思いをしている人に死なないでと言えば余計に追い詰めてしまうことになる。だがそれはその立場にならないと分からないことだ。相談される側も悩み大変な思いをする。こういう場合上手く言葉を選び相手の心を楽にしてあげることが出来るのは数少ない人だろう。だから駿里も勿論駿里の親戚も悪くない。誰も責めることが出来ないこの話を聞いて松下はどう駿里に声をかけるか悩んだ。そして決断する。変に言葉を選んだり考えたりするより自分らしく行こう…と。
「俺に打ち明けてくれてありがとうな。」
短いこの言葉であったがそれが松下らしかった。駿里の性格的にもこっちの方が良かった。長くグチグチ言われても頭の整理がつかず余計に考えてしまう。だからこういう時駿里は松下には本当に感謝しているしいつも支えてもらっている。此度もそうだ。それがなんだか嬉しくて心に空いた穴が塞がれていくような気がして駿里は自然と涙が溢れてきた。そして松下はその駿里の涙を拭いながらニカッと笑った。
「心の準備が出来てからでいい。組長にもちゃんと伝えるんだ。お前の気持ちをな。そうしねぇと組長も苦しい思いをしちまうからよ。それは駿里が1番したくねぇ事だろ?」
松下の言う通りだ。それは駿里が1番したくないこと。だけどそれが中々出来ない。自分にとって寛也が近い存在で大切だからこそ話せない。溝ができるのが怖かったり距離ができる気がして怖気づいてしまう。そんな駿里の不安が読み取れた松下は再び強く抱き締めてくれた。
「大丈夫だ。お前なら出来る。」
そう松下が言った時扉の方から駿里には足音が聞こえた。松下はその音に気づいていない様子であったので駿里が静かに音のした方をむくと寛也が立っていた。
「康二。」
そして会話が一段落着いたそのタイミングで寛也が松下の名を読んだ。もしかしたら2人が話していていたこと全てを聞かれていたかもしれない。松下は寛也の表情を見てこの場から立ち去ろうと自身の膝に乗っている抱き上げるようにして駿里を立たせた。そして寛也の近くまで行った。
「失礼します。」
松下が寛也に一礼をしてこの部屋を出ていってしまった。松下がいなくなってしまった為駿里は寛也と二人っきりになる。どうすればいいのか分からずただ下を俯いていた。そんな駿里の近くまで寛也はゆっくりと歩いてきた。
松下はそう言うと駿里が顔を上げるまで暫く待った。何10分でも何時間でも待つつもりだったが駿里は思ったよりも早く松下の顔を見上げた。それが嬉しくて松下は思わず笑みがこぼれる。
「これからは何があっても俺に相談しろ。組長と喧嘩した時もちょっとでもなんか嫌なことがあった時も些細なことで俺に全部言え。吐き出せ。人に話すと自覚はなくとも心がスッキリするらしいからよ。」
松下が言い終わると駿里は先程上げた顔を再び顔を下げた。この状況なのでそうなるのも無理もないかと松下は何も言わずに駿里の頭を撫でようとしたその時ーーー。
「…ありがとう。」
とても小さい声だった。静まり返ったこの空間でなければ聞こえなかったであろう。それでも頑張って駿里がそう言ってくれたことが松下にはわかった。それがなによりも嬉しかった。自分の話したことに反応してくれた。聞いていてくれた。それが嬉しくて松下は優しく頭を撫で駿里を抱きしめた。
「なんで誰にも相談してくれなかったんだ。」
そう言って松下は泣いていた。駿里にバレないように隠れるようにして。嗚咽を漏らすことなく静かに涙を流していた。しかし駿里は目と鼻の先にいる。気づかないはずがなかった。そんな松下を見て駿里は気づけば自然と口を開いていた。そしてーーー。
「………寛也達と出会う前ね、俺こんな風に死にたいって思ったことが1回だけあったんだ。その時色んなことが重なってさ。親は死んじゃうし、レイプされちゃうしでもう心はズタボロだった。それで…俺その時親戚の家に居させてもらってたから勇気を振り絞って相談して…。」
そこまで言うと駿里は黙り込んだ。話すことを格闘していたのだ。それも無理はない。自分の悩みを打ち明けることだけでもかなり勇気がいることだ。恥ずかしがっていえなかったりプライドが許さなかったりと中々口に出すことが出来ない。駿里は今、それをしてくれようとしている。松下はこの気を逃すわけにはいかなかった。どうしようか、と考えたが余計に口出しをして駿里の気を逸らしたりしてもいけない。だから黙ってただただ待つことにした。するとそんな松下の思いが伝わったのか駿里は再び話し始めた。
「…………死にたい、もう生きたくないって言った。そしたら『なんでそんな事言うの?そんな悲しいこと言わないでよ。』って言われたんだ。それはちゃんと俺のことを思って生きて欲しいからその言葉を選んだって分かってるよ。でも追い詰められた俺からしたら余計に苦しくなっちゃって。俺は辛いことを吐き出すのも許されないのってネガティブに考えちゃったんだ。それから人に相談することっていけないことなんだって思って中々自分の悩みを言えなかった。」
「そうか。そうだよな。」
駿里の言う通りだ。死ぬほど辛い思いをしている人に死なないでと言えば余計に追い詰めてしまうことになる。だがそれはその立場にならないと分からないことだ。相談される側も悩み大変な思いをする。こういう場合上手く言葉を選び相手の心を楽にしてあげることが出来るのは数少ない人だろう。だから駿里も勿論駿里の親戚も悪くない。誰も責めることが出来ないこの話を聞いて松下はどう駿里に声をかけるか悩んだ。そして決断する。変に言葉を選んだり考えたりするより自分らしく行こう…と。
「俺に打ち明けてくれてありがとうな。」
短いこの言葉であったがそれが松下らしかった。駿里の性格的にもこっちの方が良かった。長くグチグチ言われても頭の整理がつかず余計に考えてしまう。だからこういう時駿里は松下には本当に感謝しているしいつも支えてもらっている。此度もそうだ。それがなんだか嬉しくて心に空いた穴が塞がれていくような気がして駿里は自然と涙が溢れてきた。そして松下はその駿里の涙を拭いながらニカッと笑った。
「心の準備が出来てからでいい。組長にもちゃんと伝えるんだ。お前の気持ちをな。そうしねぇと組長も苦しい思いをしちまうからよ。それは駿里が1番したくねぇ事だろ?」
松下の言う通りだ。それは駿里が1番したくないこと。だけどそれが中々出来ない。自分にとって寛也が近い存在で大切だからこそ話せない。溝ができるのが怖かったり距離ができる気がして怖気づいてしまう。そんな駿里の不安が読み取れた松下は再び強く抱き締めてくれた。
「大丈夫だ。お前なら出来る。」
そう松下が言った時扉の方から駿里には足音が聞こえた。松下はその音に気づいていない様子であったので駿里が静かに音のした方をむくと寛也が立っていた。
「康二。」
そして会話が一段落着いたそのタイミングで寛也が松下の名を読んだ。もしかしたら2人が話していていたこと全てを聞かれていたかもしれない。松下は寛也の表情を見てこの場から立ち去ろうと自身の膝に乗っている抱き上げるようにして駿里を立たせた。そして寛也の近くまで行った。
「失礼します。」
松下が寛也に一礼をしてこの部屋を出ていってしまった。松下がいなくなってしまった為駿里は寛也と二人っきりになる。どうすればいいのか分からずただ下を俯いていた。そんな駿里の近くまで寛也はゆっくりと歩いてきた。
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