極道の密にされる健気少年

安達

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創始

167話 大集結

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「意味わかんないっ、絶対やだ!」

「治してぇんだろ?」

「それはそうだけどさっ…。」


そんなことをされれば駿里は四六時中気を抜けない状況になる。でも松下の言う通り本当にそれで治るのら……。


「まぁ今はそれを忘れて楽しもうぜ。せっかくならあいつらも呼ぶか。」

「どいつらだ。つかさ、だいぶ前から思ってたんだけど名前で呼べよ。あいつらとか言われてもわかんねぇんだよ。俺にもわかるように言ってくれ。」


司波にとって松下が言うあいつらには心当たりがありすぎる。圷の事なのか、あるいは島袋や志方の事なのか誰のことを言っているのか全く分からないのだ。それなのに駿里は松下が言うあいつらと言うのを毎回わかっている様子だったのでさすがだなと司波は思った。


「悪い悪い。」

「思ってねぇだろ。」

「はは、バレたか。あいつらってのは圷達だ。志方も元気そうなら呼ぼうと思ってる。」


松下は司波にも分かるように訂正をした。


「俺も志方さんと話したい。」

「お前お仕置きされんのにいいのか?」

「え、なんでそれを康二さんが知ってんの?」


駿里は事務所で出会った際に聞いたのかと思ったが、確実にそれではない。事務所にいる時は多忙を極め、雑談をする余裕なんて無いはずだから。


「俺が志方に言ったからだ。駿里が酒を飲んだことをな。」

「最低だ!」


松下が言わなくとも寛也が口走っていたのでおのずと志方にもそのことがバレていたであろう。だが、いつも余計なことを幹部同士で共有する松下には困ったものだ。


「事実だろ。怒っても可愛いな。」

「お前のせいだろ。」

「おっ、志方も来れるって。」


松下が司波を無視して着信が鳴った為スマホを手に取り内容を確認すると志方からそう連絡が来ていた。


「じゃあ慎吾さんと話せたんだ。」

「そうみたいだな。駿里のおかげだってよ。ありがとな。」

「やるじゃん駿里。」


司波と松下の2人に頭を撫でられて褒められると恥ずかしくなったが嬉しかった。


「そういえば俺さ、明日寛也一緒にお店に行こうと思ってるんだ。」

「は?店ってバイトしてたところか?」


松下の穏やかな表情が一瞬にして変わった。本来なら外に出て気分転換させてあげたい。だが、それよりも心配が勝つのだ。


「そう。」

「駄目に決まってんだろ。」

「もうほんとに治ったもん。」

「どの辺が?」


松下が駿里の体の色んなところを撫でるように触りだした。


「ちょ、康二さんっ、くすぐったいからっ、やめっ…!」

「なぁ駿里。教えてくれよ。どの辺が治ったんだ?俺を納得させられたら外出する許可出してやるよ。」


段々と松下の手が脇に近づいてくる。駿里は必死に両脇を力強く締めていたが、そんな抵抗も虚しく松下の手が脇に入り込んでくる。


「ぜっ、全体的にっ!」

「へぇ、面白ぇ冗談言うじゃねぇか。」

「待ってっ、だめっ…!」


松下の手が完全に脇の下に入った。やばいと思い駿里は全力で身を捩る。


「おい暴れんな。」

「何喧嘩してんだよ。」


擽られそうになっているのに暴れないなんてそんなこと無理に決まってんじゃんか、と駿里が椅子から落ちる勢いで暴れだしたその時、後ろから圷の声がして3人は声のした方を向いた。


「聞いてよ圷さん、って天馬さんに海斗じゃん!久しぶり!」

「久しぶりだな駿里。会いたかった。」


駿里の目に映った海斗の姿はあれからしばらく経った事もあり更に大人びていた。あの時とは雰囲気が全く違う。そして何より圷のそばにいて幸せそうだった。


「俺も会いたかったぞ。」


天馬も駿里の元にやってきた。


「早かったなお前ら。」


松下は膝から飛んで天馬達のところに行ってしまった駿里を自分の元に引き戻しながら圷らにそう言った。


「事務所にいたからな。島袋達もそろそろで来ると思うぜ。」

「もちろん寛也もな。」


誰よりも駿里が待っている寛也の事を天馬が言ってくれた。


「良かったな駿里。そういや圷、あの件どうなった?」


松下が言ったあの件というのは先程、従業員と客が揉めて寛也までも事務所に行かざるを得なかった事だ。


「組長が来た途端丸く収まった。初めから大人しくしとけって感じだよな。」

「言えてるな。」


今回ばかりは組長も厳しい処置をするだろうな、と幹部の誰もが思った。


「海斗、圷にいじめられてねぇか?」


海斗がこの状況に緊張をしていることに気づくと松下が少しでも気を休めればとそういった。これから幹部が勢ぞろいすることを考えると海斗がここまで緊張をするのは当たり前だ。逆になんにも感じていない駿里にはさすが松下も感心する。


「はい。大切にしてもらってます。」


海斗がそう言ったのが嬉しかったようで圷は海斗を自分の方に抱き寄せた。


「良かったね海斗。幸せそうで嬉しい。」

「俺もだ。駿里が元気そうで安心した。」


圷から駿里の様子を聞いていた海斗はかなり心配をしていた。だが、今見た感じ駿里の顔色はよく海斗はひとまず安心することが出来たのだ。


「じゃ、その辺にしてお前はこっちな。」

「うあっ!」


松下は海斗の方を向いていた駿里の頬を掴んで自分の方を向かせた。


「独り占めしてんじゃねぇよ。」

「あ?なんだお前らかよ。組長は?」


今度は島袋と煙草谷がやってきた。


「お前自分から呼んでおいてその言い草はねぇだろ。まぁいいけどさ。組長は後始末してんだ。直樹もいるし、森廣さんもいるからって俺らは先に行ってていいぞって言われたんだよ。志方もあと少し時間がかかるらしい。」

「なるほどな。お楽しみは最後に取っておくもんって言うしな。辛抱強く待とうぜ駿里。」


松下は駿里が頷いたのを見ていい子だな、と言い抱きしめた。その様子を見て島袋が近づいてくる。


「なぁ駿里。こいつばっか構ってんじゃねぇよ。俺の相手もしろよな。」

「違うよ。康二さんが離してくれないの。」


駿里は先程から松下の膝の上から逃げては引き戻さるというものを繰り返されていた。そんな事とは知らない島袋は2人がずっと抱き合っていると思っていたようだ。だが駿里にそう言われてよく見ると確かに松下によってがっちりとホールドされていた。


「俺が助けてやるよ。」

「てめぇ、ふざけんじゃねぇ。」


島袋が松下の腕に手をかけ、2人がちょっとした口喧嘩を始めた時ーーー。


「相変わらず騒がしい奴らだな。顔を合わせる度喧嘩すんじゃねぇよ。」

「寛也!」


駿里は寛也が帰ってきたことで松下の腕の中から解放された。そして身動きできるようになるとすぐに寛也のもとに駆け寄った。


「「「お疲れ様です。」」」

「お前らもな。」


寛也は自分に抱きついてきた駿里を抱き締め返して松下らの方を向いた。


「おかえり寛也。」

「組長があまりに遅いからこいつ泣きそうだったんですよ。」

「そうか。待たせちまってごめんな。」

「仕事大変だった?」

「そんなとこだ。な?直樹。」


寛也と一緒に後処理をしていた直樹が後ろから出てきた。直樹は駿里と久しぶりに会うことが出来て本当に嬉しかったようで満面の笑みになっていた。


「はい。久しぶりだな駿里!」

「直樹!」

「おい、あんまベタベタくっ付くんじゃねぇ。」


久々の再会により嬉しくなった駿里は直樹に抱きつこうとした。それを寛也はすぐさま止める。


「はーい。」

「たく、お前は。」

「本当にお2人は仲睦まじいですね。嬉しい限りです!」


直樹にとっても駿里の笑顔が見られることは嬉しい以外の何ものでもなかった。


「ほんとお前と言う通りだな、直樹。」


天馬が直樹に肩を組みながら言った。ずっと事務所にいる天馬は直樹と関わる時間も多く2人はいつの間にか本音で話せるほど深い関係になっていた。


「志方じゃねぇか!」


天馬と同じことを思っていた松下もそれを口に出そうとした。が、その時視界に志方の姿が入った。落ち込んでいた志方のことを案じていた松下は志方の元気そうな姿を見て安心した。


「よう、松下。組長遅れて申し訳ありません。」

「気にすんな。それよりお前いい顔してんな。」


寛也も嬉しそうに志方にそう言った。


「はい。駿里、ありがとな。」

「俺は何もしてないよ。でもほんとに良かった。」

「ああ。よし、駿里に礼として自慢の料理を作るぜ。」

「やった!」


志方の料理が食べられると思うと駿里は嬉しくて堪らなくなった。それだけ志方の料理は美味しいのだ。


「はは、駿里だけかよ。」


松下が笑いながら言った。いつもの調子を取り戻した志方を見て嬉しく思ったのだ。


「もちろん全員分作ってやるよ。圷行くぞ。」

「俺もかよ。」

「あったりめぇだろ。早く来い。」


そう言うと志方は圷と共にキッチンへ向かい料理を作り始めた。


「じゃあ駿里、2人だけで少しの間別室に行こうか。話があるんだ。」

「うん、分かった!」


寛也からのそう言われ駿里はドキドキした。心臓の鼓動が落ち着かぬまま寛也の後を追って行った。
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