極道の密にされる健気少年

安達

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創始

147話 驚愕

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「そこ曲がれ。」


駿里は人気のない細い道に追い込まれた。居酒屋からはかなり歩きこの場所がどこかも分からない。特に駿里はバイト以外家にひきこもっている生活をしているし、バイトをしている前なんて家から出たことの方が少ない。

ーーーどうする、このままじゃまた寛也に迷惑をかける。自分でなんとかしないと。


「まだ先に行け。」

「はい。」


駿里は今は言う通りにするしかないと足を進める他なかった。ここで男に攻撃をしたとしても逆に反撃を受ける可能性の方が高い。駿里は本気の殴り合いの喧嘩をしたことがないのだから。


「もう少しだ。」


男の言われるがままに進んでいると道の先から人の声がした。それも1人ではない、2人、3人の声がする。駿里は焦った。1人なら逃げられるチャンスがあったが複数人いれば不可能だ。


「へぇ賢いな。俺の仲間だってわかるんだ。」

「こんな薄暗い人気の無い道にいるなんてあなたの仲間としか思えません。」

「こんな状況なのに冷静なんだな。面白い、気に入った。」


駿里が足を進める度に道の先にいる男たちの声が大きくなっていく。冷静でいられるわけが無い。それでも駿里は必死に冷静でいようとしているのだ。


「右に曲がれ。」


きっとこの先に男の仲間がいる。駿里は今すぐに逃げたい気持ちを抑えて震える足で右に曲がった。


「あーやっと来た。」


駿里は目の前の光景を見て吃驚した。


「盛り上がってんじゃん。」


駿里をここまで連れてきた男は目の前の光景を見て嘲笑うようにそう言った。


「でもそいつそろそろ死ぬだろ。そこら辺に捨てとけ。」

「………っ、」


駿里はその残酷な言葉を聞いて声すら出なかった。男が捨てとけと言った人物は駿里と同い年ぐらいの少年だった。5人ほどの男たちに囲まれてレイプされていたのだ。よほど長時間されていたのか意識は朦朧とし、口の周りには射精液がこびりついていた。そして、もう殺して と繰り返している。


「何驚いてんの?使えなくなった玩具はお前だって捨てるだろ、漲 駿里君。」

「お前良い奴連れてきたな。これまでのガキの中でもトップレベルで可愛い。」


路上に倒れた少年を踏みつけながら男たちが駿里に近づいてきた。


















**********


「店長、駿里帰ってきましたか?」


希夜は息を切らしながら店長に電話した。店を探しまくっても姿が見れらなった上に行く途中の道中でもすれ違わなかった。だから希夜は最悪の状況を想定していた。


『いや、帰ってきてない。まさかいなかったのか?』


希夜はその場で頭を抱えた。そして悔やんでも悔やみきれないほどの後悔に襲われてた。自分も一緒にスーパーに行っておけばよかったと。駿里はそれほどまでに美貌なのだ。


「とりあえず俺も店に戻ります。もしかしたらすれ違ってるかもしれないから。」


希夜そう言って電話を切り猛ダッシュで店に戻った。店にいる慎吾はずっと駿里に電話をかけ続けている。だが、繋がらない。留守番電話になっているのだ。慎吾からの連絡でその事を知った希夜はいたたまれなくなった。


「戻りました。」

「希夜、駿里が見つからなかったってほんとか?」

「ああ。ほんとだ。」

「と、とりあえず警察に電話しよう。」


店長が慌てて110と打って電話をかけようとしたのを希夜が妨げた。スマホを奪い去ったのだ。


「こんなことで警察が動いてくれるとは思えません。それに大事にして駿里がもっと危ない目にあったら元も子もない。店長、今は落ち着いて策を講じましょう。」

「そうだな。すまない。」

「まさかあいつらじゃないですよね…?」


慎吾が顔色を真っ青にして店長と希夜を見た。慎吾には昨日お客さんから聞いたある話がずっと頭にチラついていたのだ。


「もしそうだったらまずいぞ。」


その話を慎吾から聞いた希夜も同じだ。その事件に巻き込まれていないで欲しい、とずっと願っていたのだ。


「おい、あいつらって誰だ。」


この話を知らない店長は2人に問い詰めた。


「昨日来たお客さんが言ってたんですよ。その人ジャーナリストだったみたいなんです。それで今、若いと男の子が殺される事件が起こっているって。しかも性的暴行を加えたあとで殺しているみたいです。警察も犯人を刺激しないために極秘に捜査してるみたいでこのことは表には出てないらしいんです。」


しかもその事件で亡くなった少年は1人2人ではない。10人以上もいるのだ。ジャーナリストが話すには美形の少年が狙われているらしい。その条件に駿里は当てはまっている。


「嘘だろ…。今日は店を閉める。悪い、希夜これを出してきてくれ。」


店長は希夜に閉店を知らせる札を渡し玄関に出すように言った。


「店長、俺は駿里を探しに行きます。」


慎吾には心当たりがあった。こんな昼間っから駿里を連れ去り誰にもバレずに犯罪をおかせる場所。それはあそこしかない、と。


「ダメだ。危険すぎる。」

「駿里には俺みたいになって欲しくないんです!」


慎吾は過去に性被害に遭っていたことがあった。それも長期間の間。だから駿里をなんとしても助けたかったのだ。気持ちが痛いほどわかるから。


「慎吾頼むからやめてくれ。」

「俺はあなたに救われた命です。俺も同じように恩を返したい。でもそれ以上に駿里に辛い思いをして欲しくないんです。」

「それは俺も同じだ。」


店長は息子のような存在の慎吾に危険な目にあって欲しくなかった。でもここで止めれば慎吾に一生恨まれる。それでもいいと思っていた。しかし慎吾のあまりに真剣な眼差しを見て気持ちを変えた。


「強くなったな慎吾。自分のしたいようにしなさい。俺も助けに行く。手分けして探そう。」

「はい!」

「希夜、悪いがお前は店に残っていてくれ。もしかしたら駿里が帰ってくるかもしれないから。」

「いえ、店長が残っていてください。ここは店長の店です。俺が探しに行きます。」

「そうか。分かった、頼む。気をつけろよ。」


店長は2人が気づけばここまで成長していたのか、と時の流れの速さを感じた。まさに光陰矢の如し。2人は店長の言葉を聞くと手分けして探しに行った。そして慎吾は心当たりのある場所へと1人で向かっていった。希夜を危険な目に遭わせたくなかったのだ。

















*******

そして運の悪いことにいつもバイト中の駿里を監視している志方は他の仕事中だった。寛也から店が始まるまで自分の仕事をしていていい、と言われたからだ。まさか今、駿里があんな目にあっているなんて思いもせずに。


「志方、17時になったら頼むな。」


集中してパソコンを打っていた志方の後ろから寛也が話しかけてきた。寛也はさりげなく志方のディスクにコーヒーを置く。


「ありがとうございます。その件承知しました。駿里は本当に頑張りますね。」

「ああ、褒美をやらんとな。帰ったら駿里の大好きなパスタを作ってやろう。」


寛也はその材料を暇な松下に買いに行かせた。松下も喜んで引き受けてくれたが行く条件として自分も一緒に食べたいと言い出した。だから今日は松下と寛也、駿里の3人の食事会だ。


「いいですね。組長の手料理だと余計あいつ喜ぶと思います。」

「そうだな。お前も食べに来るか?」


志方が駿里に好意を抱いていることに気づいた上で寛也は食事会に招いた。志方が喜ぶだろう、と思って。


「いいんですか?」


志方がさぞ嬉しそうに満面の笑みなったのを見て寛也も釣られて笑った。


「もちろんだ。」

「では、お言葉に甘えさせていただきます。楽しみです。」

「俺もだ。」


そう言って寛也は自分のオフィス部屋まで戻って行った。


「おい志方、お前ずりぃな。仕事が駿里の監視とか最高すぎだろ。」


島袋はコロが付いた椅子に座っているため、座ったまま移動してきた。そしてパソコンを打っている志方の肩を抱いた。


「邪魔だ。あとサボるな島袋。さっさと仕事しろ。」


数分の間は無視していたが、それでも退いてくれる気配がないので志方は口を開いた。


「冷てぇな。ちょっとぐらい話そうぜ。」


島袋は志方に顔を近づけてそう言った。


「断る。時間の無駄だ。」

「駿里の話って言ったら?」


今の島袋の発言を聞いて志方は目を輝かせた。駿里のことになると顔に出やすくなる。ポーカーフェイスの志方が感情をわかりやすく表に出してくれるようになったのは駿里のおかげだ。


「それならしよう。」

「はは、ちょろいなお前。」


笑いながら島袋はそう言った。そして先程寛也が志方に入れたコーヒーを飲みながら真剣な顔をした。


「このコーヒー美味い。」

「うるせぇ。さっさと話を聞かせろ。」


話されるのを焦らされて腹が立ってきた志方はコーヒーを奪い去って机に置き軽く島袋をシバいた。


「あのな、実は駿里………。」


島袋はしばかれたにもかかわらず、うんともすんとも言わずに志方を向いた。そしてその場にいたほかの幹部達も島袋がこれから言う内容が気になるらしく聞き耳を立てていた。
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