極道の密にされる健気少年

安達

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創始

142話 起きて *

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「駿里仕事に行ってくるからな。」

「………ん………まだだめ…。」

「寝ぼけてんのか?」


駿里は寝ながら寛也の腕を掴んでいる。いつもは仕事頑張ってね、と送り出すが本音は行って欲しくないと思っている事が寛也にバレた瞬間だ。


「仕事行くのが辛くなっちまったじゃねぇか。お前のバイト前には帰ってくるからいい子で待ってろよ。」


寛也は深い夢の中にいる駿里にいつも通りキスをした後仕事に向かった。その寛也とはすれ違いで松下が来た。


「お見送りを。お気をつけて。」

「ああ、駿里を頼む。俺が昨日無理させたから起こさないでやってくれ。」

「はい。承知しました。」


寛也を見送ったあと松下は駿里を起こさないようにこっそり寝室を覗いた。


「爆睡だな。」


松下は駿里が起きた時、喉が渇いていることを想定してベッドの近くの机に水を置きリビングで朝食を作り始めた。


「よう。」

「何の用だよ司波。」
 
「相変わらず冷てぇな。あれから駿里どうなって思って顔出しに来たんだよ。バイトも遂に始めたらしいじゃん。」


寛也から駿里が回復したと連絡が来て安心したが、司波は実際に目で容態を確認してない。その為今日仕事が無かったこともあり駿里の様子を見に来たのだ。それにバイト関しても気になりまくっていたから。


「あいにく駿里は今寝込んでる。」

「は?また熱出したのか?」

「違ぇよ。組長とお盛んなだけだ。」


仮に熱出したら組長がお前のこと呼ばないわけないだろ、と松下は言いながら料理を続けていた。


「そうか、それな良い。いやでも良いのか悪いのか分かんねぇな。」

「駿里が幸せならいんじゃねぇの?バイトの件に関しては俺も詳しくは知らねぇ。主に志方が見張ってっからよ。俺は志方から聞いただけで駿里本人から聞いてない。だから今日聞きまくろうと思ってんだ。そんなに気になるならお前も一緒に聞くか?」


本来なら志方ではなく松下がする予定の仕事だった。しかし、仕事が立て込んでおり体調を崩してはいけないと寛也が急遽志方に頼んだのだ。だから松下は駿里と関わる時間が大幅に減りかなり寂しがっている。


「いいのか?お前にしては太っ腹だな。」

「一言余計なんだよクソ。」

「口悪ぃなほんとお前は。 昨日とは大違いだな。」


仕事をしている時の松下は気前がいい。その姿を昨日見ていた為、司波は松下の演技力の凄さを実感した。

「昨日は仕事なんだからあたりめぇだろ。それにお前に気を使う必要無いしな。」

「少しは使えよな。年上だぞ俺は、まったく。ってか俺らこんな会話毎回してるな。」


これまでの出来事を懐かしむように司波が笑いながら言った。


「はは、言えてる。逆にまともに会話してる方が少ねぇかもな。来たついでにお前も食ってくか?」

「じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかね。」

「おう。」


松下と司波が何年かぶりに一緒に食事をし終えて駿里が起きるまで暇を潰しながら待っていた。だか、気づけば昼過ぎになっていた。


「そろそろ起こした方がいんじゃね?」

「そうだな。寝すぎても体に悪い。」


松下と司波は2人揃って駿里のところに行った。


「おい駿里、いい加減起きろ。」

「お前もっと優しく起こせよ。駿里、もう昼だぞ。そろそろ起きよう。」


司波は松下が布団を剥ぎ取ろうとしたのを阻止して優しく話しかけた。


「全然起きねぇなこいつ。なぁ司波、今何時?」

「1時だ。」

「なら3時ぐらいまで寝かせてやるか。」


駿里のバイトは5時からだ。無理に起こして体調が整っていない状態でバイトに行くのはあまり良くないだろうと思い松下はそう決断した。それに2時間もあれば準備できる余裕があるからだ。


「駄目だ、昼夜逆転になっちまうだろ。辛抱強く起こす。」


反対に司波は寝すぎて頭痛や、今夜眠れなくなることを恐れ今、起こす判断をする。


「なら俺に任せろ。乱暴にはしねぇと約束するから。」

「それなら頼む。」

「お前は出てろ。」


松下はそう言いながら司波の体を反転させた。


「なんでだよ。まさかお前、如何わしいことすんじゃねぇだろうな。」

「ちげーよ。」

「ほんとか…?まぁ確かにお前、駿里のこと知り尽くしてるからな。頼んだぞ。」

「任せろ司波。」


これまで何度も駿里の世話をしてきている松下の発言だったため司波は信じて部屋を出た。


「あっさり信じやがったあいつ。まっ、いいや。駿里、早く起きねぇと襲っちまうぞ。」


松下は司波がこの部屋からいなくなると自分も布団の中に入った。そして仰向けに寝ている駿里の上に覆いかぶさった。


「お前何時に寝たんだよ。もしかして組長一睡もしてねぇのか。駿里、とりあえず起きろって。目開けろ。」

「…………ん………」

「やっと声出したな。このまま起きろ。」


松下は駿里の目を無理やり開かせた。駿里はまだ寝ているので案の定白目をむく。それでも起きないので頬を摘んだり、ちょっかいをかけてみたりしたが起きる気配がない。


「まじかよお前。なんでここまでして起きねぇんだよ。こうなりゃ最終手段だ。」


そう言って松下は寝ている駿里のズボンをガバッと下ろした。そして駿里のペニスを揉み出した。松下はさすがにここまですれば飛び起きるだろうと思い始めたが駿里は声が漏れるばかりで目が開かない。


「駿里、起きねぇとまじで俺に襲われんぞ。」

「………ん…………ぁ、………ぇ…?」

「あ、起きた。」


達しそうなのか駿里が腰を揺らし始めた頃やっと目を覚ました。目覚めた時は何が起こっているのか分からず駿里はフリーズしていたが下半身に違和感を覚えそこでようやく何をされているのかを理解した。


「ちょ、康二さん何してんの!」


状況がわかると駿里は慌てて起き上がり松下の下から抜け出した。


「駿里が全然起きねぇから。」

「普通に起こしてよ!」

「そう怒んな。中途半端だから辛いだろ。最後までしてやるからこっち来い。」


寝ている最中に松下が揉みしだいてきた為駿里のペニスは勃起状態であった。松下は自分のせいでそうなっているから、と駿里が達するまでしようとしたのだ。


「っ、トイレでするからいい!」

「遠慮すんな。」

「してないっ、こっち来るな、…っうわ!」


松下が駿里を見逃す訳もなく逃げるためベッドから降りようとした駿里の足を掴んで引っ張った。


「ほんとに大丈夫だからっ、!」

「あんま喚くとあっちにいる司波に聞こえちまうぞ?」


1度松下に捕まってしまえば逃げることは困難だ。だから大声を上げて抗議しようとしたがリビングに司波があるなら話は違ってくる。司波が仮に寝室に来たとしても下半身露出した姿を見られるわけにはいかない。


「いい子。処理するだけだから安心しろ。」

「……っ、………あっ………ぅ……んっ、…」

「お前、毎回のように声我慢すんなよ。今更俺に恥ずかしいもクソもねぇだろ。」


口を開けば声が出てしまうので駿里は首を振ることしか出来なかった。必死に我慢してるのに松下のテクニックが追い打ちをかけてくるように上手い。


「我慢するのは良くねぇぞ。気持ちんだろ?その証拠に腰揺れてんじゃねぇか。」


駿里は腰を無意識に揺らしてしまっていた。松下の言う通り声が漏れないように我慢して唇でも噛んで変に怪我でもしてしまえばこのことが察しの良い寛也にバレてしまう。とは言っても我慢してしまうのだ。


「……ぁ、……んふっ、…ぅ…」

「おい唇噛むなって。それするぐらいなら俺の指噛めよ。」


松下は駿里の体を拘束していた方の手を駿里の口に入れた。そして射精が近くなってきたことを悟るとペニスを刺激している手の動きを早めた。


「…あっ、……ぅ、…っ、ーーー!」

「良かったろ。」

「良くないよっ、!」


駿里は昨日寛也に酷く抱かれたことに加えて今の射精が腰に一撃を与えため、体が上手く動かせなくなってしまった。


「あー、お前唇結構血出てんじゃねぇか。手当すんぞ。ついでに腰もな。」


駿里が怒っているのを無視して松下は出血してしまった唇を見た。


「自分で歩くっ、下ろしてっ、」

「駄目だ。バイト前に無理すんな。」

「ああっ!忘れてた、今何時?」


駿里が慌てふためいて松下に聞いた。寝すぎて遅刻ギリギリになっているのではないかと不安になったのだ。


「1時半ぐらいだな。」

「良かった、まだ時間に余裕ある。」

「さすがにギリギリに起こすほど俺は悪人じゃねぇよ。相手が駿里だしな。」


昨日は駿里を志方が送迎していたが、今日は仕事に余裕があるため松下が行く。松下にとっても楽しみであるのにそんな意地悪をする訳ない。


「ありがとう康二さん。」

「いいぜ。その代わりさっきのはこの借りでチャラな。」



松下はそう言って駿里を抱き抱えて司波の元に行った。


「おはよう駿里。」

「司波さんおはよう。」

「すげぇなお前マジで駿里のこと起こしたのか。」

「だろ。それと司波、こいつ腰と唇負傷してっから見てやって。」


松下は駿里をソファに下ろして呑気に昼食を食べている司波を呼んだ。


「そりゃ大変だ。直ぐに見てあげるからね。」

「ありがとう。」


司波がいつも常備している仕事の鞄から救急用の道具を取り出して駿里のところまで戻ってきた。


「ん?唇の傷新しいね。さっき噛んだの?」

「そ、そうなんです!」


駿里が明らかに動揺したのを見て司波が松下を見る。


「なんだよ。」

「松下、やったなお前。寛也に知られたら殺されんぞ。」


駿里は二人の会話を黙って見ていた。寛也はなにか文句は言うだろうが相手が松下だからそれ以上はきっと何も無い。少しばかり冷や汗をかいている司波とは裏腹に駿里は冷静だった。ただ単に寝起きということもあるだろう。


「組長は俺を殺さねぇよ馬鹿。つか、仕方ねぇだろ駿里が起きなかったんだから。理由話せば分かってくれるさ。」

「それもそうだな。よし、駿里終わったよ。腰はしばらくしたら痛みが引くと思うからそれまでは安静にしてようね。」

「うん、分かった。」


司波に処置をしてもらったあと駿里は寛也への言い訳を考えていた。不注意で噛んだと言っても嘘が付けない駿里は顔に出てしまう。だからどうしようか迷っていた。


「こういう時は正直に言うのが1番だよ。」


駿里があまりにも考え込んでいるので司波が助言をした。そして司波が話し終えたのと同時に玄関の開く音がした。


「帰ってきたようだね。」

「緊張する…。」

「駿里、玄関まで走って組長の機嫌取ってこい。」

「康二さんナイス!」


駿里は腰の痛みがまだ引いていないのに寛也の所に走って行った。


「おかえり寛也会いたかった!」

「ただいま。」


寛也は自分に抱きついてきた駿里を一旦離し、目が合うように頬を掴んで上を向かせた。そして逃がさないとばかりにもう片方の腕で駿里の肩を抱いて自分に密着させた。


「何を隠してる。正直に言ったら許してやるから。」


走って迎えに来てくれたことは嬉しかったが寛也は駿里の表情がいつもと違うことにすぐに気づいた。駿里がなにかやましいことを隠す時は僅かに瞬きが多くなる。


「えっ、なんで分かるの、?」

「やっぱ隠してんのか。その唇の傷も説明してくれるよな?」

「あ、えっと………。」
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