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齟齬
105話 見知らぬ女性 *
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「あぁあ!…あっあっあ!、ああ、!!…きもち、っいぃ、…んんん!、んあ!!」
「もっと欲しいんだろ?どうして欲しい?」
寛也は酒に酔っ払いっている今の駿里なら言ってくれるかな、と少しの期待を胸に聞いた。
「ん゛あ!…もっ、とぉ…っおくまでぇ、ああ!…ついてっほしぃ…あっあっ!…、ちか、やぁっ、…んんん」
お酒の力は怖いなと思ったが、いつもなら絶対に聞けない言葉が聞けたのでたまにはいいなと思った。
「俺の駿里は世界一可愛いな」
これは自分でも自覚するほどくさいセリフだった。だが、そんなこともすました顔をして言えるほど今の駿里は寛也にとってかわいすぎた。
可愛いと言われ、駿里が中をきつく締める。
「そろそろ出すぞ」
寛也が射精する時はいつも言ってくれる。そのおかげで駿里は今から激しく腰を打ちつけられると心構えができる。
ピストンを早め駿里の中に勢いよく射精液を出した。
「駿里、もう1回」
「ねむ、ぃっ………」
「おい、駿里起きろ」
「……ん………ねるぅ…」
駿里は寛也の腕の中で寝てしまった。流石に泥酔して寝ている駿里を睡姦出来なかったので寛也は抱きたい衝動に耐えた。今の時刻は13時の為、夜に出来るかもしれないという期待があったからだ。
気持ちよさそうに眠る駿里の体を綺麗にし、充分寝たであろう松下を起こした。
「……おはようございます…」
「頭痛くないか?」
「少し痛いです」
「ならこれを飲め。駿里も酒を飲んでしまったから起きて頭痛を訴えたらこれを飲ませてやってくれ」
「ありがとうございます。承知しました」
松下はすぐに寛也から渡された鎮痛剤を飲んだ。その後テーブルに目を向けるとさっきまで散らかっていたものが全て綺麗に無くなっていた。
「組長すみません。片付けさせてしまいました」
「これぐらいお易い御用だ。俺は仕事に戻るから駿里を頼む」
「はい。」
「………康二。流石に飲みすぎた。体に悪くなるぞ?今後は酒を控えろ」
寛也は松下と二人の時は昔のように康二と呼んでいる。そう呼ばれる度松下は嬉しそうだった。
「…すみません。」
「俺がこの世界にお前を引きずり込んでしまったばかりに辛い思いばかりさせてごめんな」
「何言ってるんですか。俺は組長に命を救われた時からついて行くと決めてたんです。何があっても絶対に守ると」
「なら尚更だ。自棄酒はもうやめろ。食道癌や肝臓癌になってしまうぞ?それでは俺を守れないだろ。それにお前が俺を守りたいように俺もお前を守りたい。何度も言わせるな、自分の体を大切にしろ」
「はい」
寛也は分かればいい、と松下の頭をポンっと撫で仕事へ向かった。そして松下は鎮痛剤が聞くまでもう1時間ほど一眠りすることにした。ウイスキーを飲みまくったせいで頭痛がいつもよりも酷かったのだ。辛い仕事の後はいつもこうして現実から逃げてしまう癖があった。寛也はそれもあって今日駿里の世話係を松下に頼んだ。心を落ち着かせる時間を上げたのだ。
寛也が事務所につくと、ある人物が訪ねてきていた。
「久しぶりね寛也!」
「なんでお前がここにいるんだ」
寛也は挨拶をしてきた女性に無愛想に答えた。その女性はその対応になれているようで気に止めていなかった。
「碓氷から聞いたのよ。あなたが恋人を作ったって!どんな子なのか見にきちゃったわけ!」
「今すぐ帰れ。お前みたいなキス魔に会わせるわけないだろ」
馴れ馴れしく話しているこの女性は寛也の幼なじみの倉成 那香実だ。物凄い美人なのに男にまるで興味がなく、37という歳を迎えても未だに恋人を作ったことがなかった。
「つれないこと言わないでよ~。人目見たら帰るから、ね!?」
「嫌だ。今すぐ帰れ」
お互いに譲らない2人の所に天馬がやってきた。
「よう!那香実 (なごみ) 久しぶりだな!」
「天馬じゃない!久しぶりすぎてなんか変な感じね」
「そうだな」
天馬も同じく2人の幼なじみだった。
「来てそうそう寛也と言いやってるみたいだけど、どうした?」
天馬は2人が言い合っている事の発端を聞いた。どうせしょうもない事だろうとは分かっていたが、これ以上喧嘩をヒートアップさせる訳には行かないので中立役を買ってでた。
なぜなら、さっきまでいた幹部達は那香実が苦手で既にそそくさと逃げていった為、その場には天馬しかいなかったからだ。その理由は那香実がキス魔だから。仕事中だろうと、何をしていようと関係なくキス攻撃をしてくるのだ。
「寛也が恋人さんに会わせてくれないのよ。ほんとにケチなんだから」
「俺はちゃんと理由があって会わせたくないんだよ。お前が駿里と半径5m以内に近ずかないと約束できるなら話は違うがな」
「約束するわ」
那香実は純粋な眼差しで寛也を見た。胡散くせぇと寛也は那香実を睨み返した。
「なら約束破ったらペナルティーを払わせればいいんじゃねぇの?」
天馬は駿里に合わせてくれるまで絶対に帰らないという那香実の意志に困り果てていた寛也に助け舟を出した。
「そうだな。もし約束を破れば1500万払え」
「おい、そんな代償だと…「わかったわ!」 」
天馬が寛也にそれだと絶対に約束破るぞ!、と忠告しようとした言葉を遮るように那香実は言った。
「交渉成立だ。だが俺は今事務所に来た。だから仕事をしてから帰るから天馬お前が付き添え。暇だろ?」
「へいへい。行けばいいんだろ行けば」
「ちゃんと見張れよ」
鋭い目で寛也に警告され、う~わぁ怖いわ~、と言って那香実と事務所の外に出た。天馬はあまり乗り気ではなかったが、駿里が襲われてはまずいので見張り役としてついて行くことにした。それとは裏腹に那香実はとても嬉しそうである。
「お前は呑気でいいな」
「褒め言葉として受け取っておくわね」
エレベーターに乗り込んだ2人は何年かぶりに雑談をしていた。
「お前今なんの仕事してんの?すげぇ良いブランドもんの服身につけてるな」
「私社長をしてるのよ。キャバクラなんだけどね。寛也が管理する会社の1部よ。一応旭川組の軸って言われているほど売上が良いの」
「そうなのか!すげぇじゃん!俺全然知らなかった」
「会ってないもの。知らなくて当然よ。それより2人とも元気そうで安心したわ」
「それはこっちのセリフだ。…着いたぞ。」
長い長いエレベーターで最上階まで行った。念の為予備ベルを鳴らし中にいる松下に那香実がいることを知らせた。
そして中にいる松下は普段はならない予備ベルの音に飛び起きた。もう既に頭痛は治まっていた。松下がモニターフォンを見ると、そこには超がつくほど苦手な那香実がいた。寛也の許可を取り天馬と一緒に来たということを察した。
「入っていいぞ」
松下は極力距離を取りたかったので、モニターフォンから声を出した。その声を聞いた2人は中へと入ってきた。那香実は松下の姿を捉えると走って来て抱きついた。そして当たり前のようにキスをする
「っやめろ!毎度毎度キスしてくんな!俺はもう子供じゃねぇんだよ!」
「怒ってる康二も可愛いわね」
鬼メンタルの那香実はどれだけキレられても気にしない。これは那香実が昔一緒に暮らしていた親からよく怒鳴れ、暴力を振るわれてしまっていたので慣れてしまったことも関係しているだろう。そんな親からの虐待から那香実を救ったのは寛也の父だった。
「寛也の恋人さんはどこかしら?」
「おい、お前こんなことで1500万無駄にすんのかよ」
「1日あれば1500万なんて余裕で稼げるからいいのよ。駿里早くおきないかしら」
那香実は駿里が起きるまで待ちきれないという表情をして待っていた。するとそこへーー。
「康二さん、誰か来てるの?」
知らない人の話し声が聞こえ、気になった駿里が寝室から出てきた。
「あらまぁ!」
那香実は駿里の姿を捉えるやいなや先程松下にしたように抱きつきに行った。
「早速約束破りやがった」
天馬は知らない人から抱きつかれ困惑する駿里の元へ向かった。だが、時は既に遅し。那香実は駿里何度もキスを落としていた。
「うわぁ!、…あ、あの!、…んんっ!、まって!」
止まらぬキスの嵐に駿里は藻掻くが那香実の力は男並みに強く解けない。天馬が思いっきり那香実をシバいてやっとそこで解放された。
「この子可愛い過ぎるわ。持って帰っちゃいたいぐらいよ」
思い切りしばかれたというのにノーダメージの那香実を見て天馬はさすがに引いた。その天馬の引き顔に那香実は気がついた。
「何よその顔!レディをしばかないでもらえるかしら」
「ゴリラの間違いだろ」
天馬は那香実から守るように駿里を自分の後ろに行かせた。そこに松下も来て駿里を守った。そうしないと後から寛也に怒られてしまうからだ。
「駿里くん初めまして。寛也の幼なじみ那香実よ。あの寛也に恋人ができたって言うから思わず飛んで見に来ちゃったのよ。思った以上の可愛さにびっくりしちゃったわよ。よろしくね」
「そうだったんですね!よろしくお願いします」
キス魔ではあるが、怪しい人物ではないとわかると駿里は天馬の後ろから挨拶をして、那香実の元へ行こうとした。それをすかさず天馬と松下が止める。
「もう何もしないわよ。お話しましょうよ駿里くん」
「信じらんねぇな。」
天馬が疑惑の目を向けながら言った。
「なら私は先に座らしてもらうわね。その後駿里を私の向かいの席に座らせて。それならいいしょう?」
「まぁそれなら」
2人は言われた通り、那香実が席の向かい側に駿里を座らせた。そして駿里の隣に天馬が座り、後ろには松下がついた。いつでも助けられるようにと。
「あらまぁ。警戒心MAXって感じね。駿里くん、寛也のことが嫌になったら私のお店においで。今の様子を見てるとそんなことはないでしょうけど、いつでも歓迎するわ。このマンションから少し遠いけど、是非遊びに来てね」
「那香実さんありがとうございます」
「どうしましょう。可愛すぎるわ」
那香実は思わず駿里の手を握った。斜め右と駿里の後ろの方から、やめろという殺気だったオーラが出ているが全然気にしなかった。一向に那香実が駿里の手を離さないので松下が後ろから駿里の腕を優しく引っ張った。那香実はその様子を優しく微笑んでみていた。
「康二も駿里くんのことかなり気に入っているようね。分かるわよその気持ち。こんなに可愛いもの」
「気に入ってるなんてそんな軽い気持ちじゃねぇんだよ」
「そうなのね。………駿里くん」
那香実に可愛いと連呼され恥ずかしくなり下を向いている駿里の名前を呼んだ。
「なんですか?」
名前を呼ばれたので那香実の方を向いた。本当に綺麗な人だなぁ、と駿里はおもった。
「ありがとうね」
那香実が急に優しい笑顔でお礼を言ったので、駿里はもちろん松下も天馬も驚いていた。
「旭川組はあなたがいれば安心だわ。寛也にとって駿里くんは命以上の存在みたいだし、碓氷達にも気に入られているようね。たまには私も駿里君に癒してもらいに来るわね。」
「っありがとうございます」
駿里は那香実が言った一言一句全てが嬉しかった。
「いい子ね。ほんとに可愛いわ。」
那香実の雰囲気がいつもと違い大人になっていたことに松下と天馬は驚き、警戒心を怠っていた。その隙を逃すまいと那香実は立ち上がり駿里に近づいて頭を撫でるふりをしてキスをした。慌てて松下と天馬はそれを止めるが、そこに寛也が帰ってきてしまった。
「お前いつもタイミング悪いな。」
天馬はやれやれと言うように寛也に言った。
「どういうことだ?」
寛也は天馬の先にいる駿里に目線を移した。そこには那香実に抱きつかれキスをされている駿里の姿があった。寛也は天馬同様那香実をシバいて、駿里を自分の元に寄せた。
「ほんとにあなた達レディに手加減ないわね」
「ゴリラの間違いだろ」
天馬と全く同じセリフを寛也が言ったので駿里は思わず笑ってしまった。
「そんなに面白かったか?」
寛也が駿里に微笑んで優しく問いかける。
「さっき天馬さんも同じこと言ったんだ。やっぱり2人とも似てるね」
天馬と似ていると言われると大抵怒る寛也だが、駿里の笑顔を見れたことが嬉しく微笑んでいた。
「そうか?」
「うん!」
その様子を見ていた那香実が寛也の元に来た。
「良かったわ。運命の人と出会えることが出来たみたいで。こういう仕事は心の支えが重要だもの。これで私も安心して仕事が出来るわ。」
「なんだよ気持ち悪ぃ。お前今日らしくねぇな」
寛也は天馬も松下も思っていたことを那香実に言った。
「俺の心配をしてくれるのは有難いが、自分の心配したらどうだ。お前この年で処女だろ?」
「は!?お前処女だったん?」
寛也の発言に驚いた天馬が大声で言った。
「うるさいわね!大事にしてんのよ!キャバクラしてるからってヤリマンじゃないのよ。皆訳があってこの仕事してるんだから」
「そうだよな。お前以外のキャバクラで働いている女性の方には謝る。だが、お前はそろそろ焦れよ」
「どの口が言ってんのよ。天馬もでしょ?童貞のくせに人のことバカにするんじゃないわよ」
駿里は大人の会話を大人しく聞いていた。なんか微笑ましいなぁ、と思い微笑んで見ていた。
「おい喧嘩するなら外でしろ。お前らもう帰れ」
寛也が追い払うように言った。
「そうね。そろそろ帰るわ。駿里くん!またね、愛してるわよ。」
最後の最後まで余計なことを言いながら駿里に投げキッスをする那香実の腕を引いて天馬と松下は家を出た。3人が帰ったあと寛也はソファに座り自分の膝の上に駿里を乗せた。
「どこにキスされた?」
「えっと、…頬っぺただけだよ」
右上を見て明らかに嘘をついているのがわかったので、寛也は駿里のズボンの中に手を入れた。
「っちょ、!」
「正直に言えない悪い子はお仕置きするのは当たり前だろ?」
「口と頬っぺた、それとおでこっ…です」
駿里は急いで言った。これでお仕置きはされないだろう、と寛也の顔を見た。だが、寛也は先程よりも怒っていた。
「そんなにされたのか?なら消毒しとかないとな」
寛也は駿里をソファに押し倒した。
「ちゃんと言ったのに!」
「俺以外の奴とキスしたなんて許せるわけねぇだろ?」
駿里は故意にキスをした訳でもないし、那香実が強制的にしてきたのだ、と反論をしたかったが、それを遮るように寛也がキスをした。
「どんな理由であろうと俺以外の奴と二度とキスをするな。分かったな?駿里だってたとえ事故でも俺が他の奴とキスをするのは嫌だろ?」
寛也に優しく言われ駿里は自分の行いを反省した。確かに強制的にされたとは言え、それが自分ではなく寛也だったら嫌で仕方がないだろう。
「…ごめんなさい」
「いいよ」
駿里は許してくれたと思い起き上がろうとすると寛也に肩を押し返された。
「なにしてんだ。お仕置きは決定事項だ」
「そんなぁっ、明日こそほんとに起きられなくなっちゃうよ」
「知るか。お前が悪い」
寛也は駿里の服に手をかけ、ぬがし始めた。
この展開何回目だろう、と駿里は小さく抵抗しながら考えていた。
「もっと欲しいんだろ?どうして欲しい?」
寛也は酒に酔っ払いっている今の駿里なら言ってくれるかな、と少しの期待を胸に聞いた。
「ん゛あ!…もっ、とぉ…っおくまでぇ、ああ!…ついてっほしぃ…あっあっ!…、ちか、やぁっ、…んんん」
お酒の力は怖いなと思ったが、いつもなら絶対に聞けない言葉が聞けたのでたまにはいいなと思った。
「俺の駿里は世界一可愛いな」
これは自分でも自覚するほどくさいセリフだった。だが、そんなこともすました顔をして言えるほど今の駿里は寛也にとってかわいすぎた。
可愛いと言われ、駿里が中をきつく締める。
「そろそろ出すぞ」
寛也が射精する時はいつも言ってくれる。そのおかげで駿里は今から激しく腰を打ちつけられると心構えができる。
ピストンを早め駿里の中に勢いよく射精液を出した。
「駿里、もう1回」
「ねむ、ぃっ………」
「おい、駿里起きろ」
「……ん………ねるぅ…」
駿里は寛也の腕の中で寝てしまった。流石に泥酔して寝ている駿里を睡姦出来なかったので寛也は抱きたい衝動に耐えた。今の時刻は13時の為、夜に出来るかもしれないという期待があったからだ。
気持ちよさそうに眠る駿里の体を綺麗にし、充分寝たであろう松下を起こした。
「……おはようございます…」
「頭痛くないか?」
「少し痛いです」
「ならこれを飲め。駿里も酒を飲んでしまったから起きて頭痛を訴えたらこれを飲ませてやってくれ」
「ありがとうございます。承知しました」
松下はすぐに寛也から渡された鎮痛剤を飲んだ。その後テーブルに目を向けるとさっきまで散らかっていたものが全て綺麗に無くなっていた。
「組長すみません。片付けさせてしまいました」
「これぐらいお易い御用だ。俺は仕事に戻るから駿里を頼む」
「はい。」
「………康二。流石に飲みすぎた。体に悪くなるぞ?今後は酒を控えろ」
寛也は松下と二人の時は昔のように康二と呼んでいる。そう呼ばれる度松下は嬉しそうだった。
「…すみません。」
「俺がこの世界にお前を引きずり込んでしまったばかりに辛い思いばかりさせてごめんな」
「何言ってるんですか。俺は組長に命を救われた時からついて行くと決めてたんです。何があっても絶対に守ると」
「なら尚更だ。自棄酒はもうやめろ。食道癌や肝臓癌になってしまうぞ?それでは俺を守れないだろ。それにお前が俺を守りたいように俺もお前を守りたい。何度も言わせるな、自分の体を大切にしろ」
「はい」
寛也は分かればいい、と松下の頭をポンっと撫で仕事へ向かった。そして松下は鎮痛剤が聞くまでもう1時間ほど一眠りすることにした。ウイスキーを飲みまくったせいで頭痛がいつもよりも酷かったのだ。辛い仕事の後はいつもこうして現実から逃げてしまう癖があった。寛也はそれもあって今日駿里の世話係を松下に頼んだ。心を落ち着かせる時間を上げたのだ。
寛也が事務所につくと、ある人物が訪ねてきていた。
「久しぶりね寛也!」
「なんでお前がここにいるんだ」
寛也は挨拶をしてきた女性に無愛想に答えた。その女性はその対応になれているようで気に止めていなかった。
「碓氷から聞いたのよ。あなたが恋人を作ったって!どんな子なのか見にきちゃったわけ!」
「今すぐ帰れ。お前みたいなキス魔に会わせるわけないだろ」
馴れ馴れしく話しているこの女性は寛也の幼なじみの倉成 那香実だ。物凄い美人なのに男にまるで興味がなく、37という歳を迎えても未だに恋人を作ったことがなかった。
「つれないこと言わないでよ~。人目見たら帰るから、ね!?」
「嫌だ。今すぐ帰れ」
お互いに譲らない2人の所に天馬がやってきた。
「よう!那香実 (なごみ) 久しぶりだな!」
「天馬じゃない!久しぶりすぎてなんか変な感じね」
「そうだな」
天馬も同じく2人の幼なじみだった。
「来てそうそう寛也と言いやってるみたいだけど、どうした?」
天馬は2人が言い合っている事の発端を聞いた。どうせしょうもない事だろうとは分かっていたが、これ以上喧嘩をヒートアップさせる訳には行かないので中立役を買ってでた。
なぜなら、さっきまでいた幹部達は那香実が苦手で既にそそくさと逃げていった為、その場には天馬しかいなかったからだ。その理由は那香実がキス魔だから。仕事中だろうと、何をしていようと関係なくキス攻撃をしてくるのだ。
「寛也が恋人さんに会わせてくれないのよ。ほんとにケチなんだから」
「俺はちゃんと理由があって会わせたくないんだよ。お前が駿里と半径5m以内に近ずかないと約束できるなら話は違うがな」
「約束するわ」
那香実は純粋な眼差しで寛也を見た。胡散くせぇと寛也は那香実を睨み返した。
「なら約束破ったらペナルティーを払わせればいいんじゃねぇの?」
天馬は駿里に合わせてくれるまで絶対に帰らないという那香実の意志に困り果てていた寛也に助け舟を出した。
「そうだな。もし約束を破れば1500万払え」
「おい、そんな代償だと…「わかったわ!」 」
天馬が寛也にそれだと絶対に約束破るぞ!、と忠告しようとした言葉を遮るように那香実は言った。
「交渉成立だ。だが俺は今事務所に来た。だから仕事をしてから帰るから天馬お前が付き添え。暇だろ?」
「へいへい。行けばいいんだろ行けば」
「ちゃんと見張れよ」
鋭い目で寛也に警告され、う~わぁ怖いわ~、と言って那香実と事務所の外に出た。天馬はあまり乗り気ではなかったが、駿里が襲われてはまずいので見張り役としてついて行くことにした。それとは裏腹に那香実はとても嬉しそうである。
「お前は呑気でいいな」
「褒め言葉として受け取っておくわね」
エレベーターに乗り込んだ2人は何年かぶりに雑談をしていた。
「お前今なんの仕事してんの?すげぇ良いブランドもんの服身につけてるな」
「私社長をしてるのよ。キャバクラなんだけどね。寛也が管理する会社の1部よ。一応旭川組の軸って言われているほど売上が良いの」
「そうなのか!すげぇじゃん!俺全然知らなかった」
「会ってないもの。知らなくて当然よ。それより2人とも元気そうで安心したわ」
「それはこっちのセリフだ。…着いたぞ。」
長い長いエレベーターで最上階まで行った。念の為予備ベルを鳴らし中にいる松下に那香実がいることを知らせた。
そして中にいる松下は普段はならない予備ベルの音に飛び起きた。もう既に頭痛は治まっていた。松下がモニターフォンを見ると、そこには超がつくほど苦手な那香実がいた。寛也の許可を取り天馬と一緒に来たということを察した。
「入っていいぞ」
松下は極力距離を取りたかったので、モニターフォンから声を出した。その声を聞いた2人は中へと入ってきた。那香実は松下の姿を捉えると走って来て抱きついた。そして当たり前のようにキスをする
「っやめろ!毎度毎度キスしてくんな!俺はもう子供じゃねぇんだよ!」
「怒ってる康二も可愛いわね」
鬼メンタルの那香実はどれだけキレられても気にしない。これは那香実が昔一緒に暮らしていた親からよく怒鳴れ、暴力を振るわれてしまっていたので慣れてしまったことも関係しているだろう。そんな親からの虐待から那香実を救ったのは寛也の父だった。
「寛也の恋人さんはどこかしら?」
「おい、お前こんなことで1500万無駄にすんのかよ」
「1日あれば1500万なんて余裕で稼げるからいいのよ。駿里早くおきないかしら」
那香実は駿里が起きるまで待ちきれないという表情をして待っていた。するとそこへーー。
「康二さん、誰か来てるの?」
知らない人の話し声が聞こえ、気になった駿里が寝室から出てきた。
「あらまぁ!」
那香実は駿里の姿を捉えるやいなや先程松下にしたように抱きつきに行った。
「早速約束破りやがった」
天馬は知らない人から抱きつかれ困惑する駿里の元へ向かった。だが、時は既に遅し。那香実は駿里何度もキスを落としていた。
「うわぁ!、…あ、あの!、…んんっ!、まって!」
止まらぬキスの嵐に駿里は藻掻くが那香実の力は男並みに強く解けない。天馬が思いっきり那香実をシバいてやっとそこで解放された。
「この子可愛い過ぎるわ。持って帰っちゃいたいぐらいよ」
思い切りしばかれたというのにノーダメージの那香実を見て天馬はさすがに引いた。その天馬の引き顔に那香実は気がついた。
「何よその顔!レディをしばかないでもらえるかしら」
「ゴリラの間違いだろ」
天馬は那香実から守るように駿里を自分の後ろに行かせた。そこに松下も来て駿里を守った。そうしないと後から寛也に怒られてしまうからだ。
「駿里くん初めまして。寛也の幼なじみ那香実よ。あの寛也に恋人ができたって言うから思わず飛んで見に来ちゃったのよ。思った以上の可愛さにびっくりしちゃったわよ。よろしくね」
「そうだったんですね!よろしくお願いします」
キス魔ではあるが、怪しい人物ではないとわかると駿里は天馬の後ろから挨拶をして、那香実の元へ行こうとした。それをすかさず天馬と松下が止める。
「もう何もしないわよ。お話しましょうよ駿里くん」
「信じらんねぇな。」
天馬が疑惑の目を向けながら言った。
「なら私は先に座らしてもらうわね。その後駿里を私の向かいの席に座らせて。それならいいしょう?」
「まぁそれなら」
2人は言われた通り、那香実が席の向かい側に駿里を座らせた。そして駿里の隣に天馬が座り、後ろには松下がついた。いつでも助けられるようにと。
「あらまぁ。警戒心MAXって感じね。駿里くん、寛也のことが嫌になったら私のお店においで。今の様子を見てるとそんなことはないでしょうけど、いつでも歓迎するわ。このマンションから少し遠いけど、是非遊びに来てね」
「那香実さんありがとうございます」
「どうしましょう。可愛すぎるわ」
那香実は思わず駿里の手を握った。斜め右と駿里の後ろの方から、やめろという殺気だったオーラが出ているが全然気にしなかった。一向に那香実が駿里の手を離さないので松下が後ろから駿里の腕を優しく引っ張った。那香実はその様子を優しく微笑んでみていた。
「康二も駿里くんのことかなり気に入っているようね。分かるわよその気持ち。こんなに可愛いもの」
「気に入ってるなんてそんな軽い気持ちじゃねぇんだよ」
「そうなのね。………駿里くん」
那香実に可愛いと連呼され恥ずかしくなり下を向いている駿里の名前を呼んだ。
「なんですか?」
名前を呼ばれたので那香実の方を向いた。本当に綺麗な人だなぁ、と駿里はおもった。
「ありがとうね」
那香実が急に優しい笑顔でお礼を言ったので、駿里はもちろん松下も天馬も驚いていた。
「旭川組はあなたがいれば安心だわ。寛也にとって駿里くんは命以上の存在みたいだし、碓氷達にも気に入られているようね。たまには私も駿里君に癒してもらいに来るわね。」
「っありがとうございます」
駿里は那香実が言った一言一句全てが嬉しかった。
「いい子ね。ほんとに可愛いわ。」
那香実の雰囲気がいつもと違い大人になっていたことに松下と天馬は驚き、警戒心を怠っていた。その隙を逃すまいと那香実は立ち上がり駿里に近づいて頭を撫でるふりをしてキスをした。慌てて松下と天馬はそれを止めるが、そこに寛也が帰ってきてしまった。
「お前いつもタイミング悪いな。」
天馬はやれやれと言うように寛也に言った。
「どういうことだ?」
寛也は天馬の先にいる駿里に目線を移した。そこには那香実に抱きつかれキスをされている駿里の姿があった。寛也は天馬同様那香実をシバいて、駿里を自分の元に寄せた。
「ほんとにあなた達レディに手加減ないわね」
「ゴリラの間違いだろ」
天馬と全く同じセリフを寛也が言ったので駿里は思わず笑ってしまった。
「そんなに面白かったか?」
寛也が駿里に微笑んで優しく問いかける。
「さっき天馬さんも同じこと言ったんだ。やっぱり2人とも似てるね」
天馬と似ていると言われると大抵怒る寛也だが、駿里の笑顔を見れたことが嬉しく微笑んでいた。
「そうか?」
「うん!」
その様子を見ていた那香実が寛也の元に来た。
「良かったわ。運命の人と出会えることが出来たみたいで。こういう仕事は心の支えが重要だもの。これで私も安心して仕事が出来るわ。」
「なんだよ気持ち悪ぃ。お前今日らしくねぇな」
寛也は天馬も松下も思っていたことを那香実に言った。
「俺の心配をしてくれるのは有難いが、自分の心配したらどうだ。お前この年で処女だろ?」
「は!?お前処女だったん?」
寛也の発言に驚いた天馬が大声で言った。
「うるさいわね!大事にしてんのよ!キャバクラしてるからってヤリマンじゃないのよ。皆訳があってこの仕事してるんだから」
「そうだよな。お前以外のキャバクラで働いている女性の方には謝る。だが、お前はそろそろ焦れよ」
「どの口が言ってんのよ。天馬もでしょ?童貞のくせに人のことバカにするんじゃないわよ」
駿里は大人の会話を大人しく聞いていた。なんか微笑ましいなぁ、と思い微笑んで見ていた。
「おい喧嘩するなら外でしろ。お前らもう帰れ」
寛也が追い払うように言った。
「そうね。そろそろ帰るわ。駿里くん!またね、愛してるわよ。」
最後の最後まで余計なことを言いながら駿里に投げキッスをする那香実の腕を引いて天馬と松下は家を出た。3人が帰ったあと寛也はソファに座り自分の膝の上に駿里を乗せた。
「どこにキスされた?」
「えっと、…頬っぺただけだよ」
右上を見て明らかに嘘をついているのがわかったので、寛也は駿里のズボンの中に手を入れた。
「っちょ、!」
「正直に言えない悪い子はお仕置きするのは当たり前だろ?」
「口と頬っぺた、それとおでこっ…です」
駿里は急いで言った。これでお仕置きはされないだろう、と寛也の顔を見た。だが、寛也は先程よりも怒っていた。
「そんなにされたのか?なら消毒しとかないとな」
寛也は駿里をソファに押し倒した。
「ちゃんと言ったのに!」
「俺以外の奴とキスしたなんて許せるわけねぇだろ?」
駿里は故意にキスをした訳でもないし、那香実が強制的にしてきたのだ、と反論をしたかったが、それを遮るように寛也がキスをした。
「どんな理由であろうと俺以外の奴と二度とキスをするな。分かったな?駿里だってたとえ事故でも俺が他の奴とキスをするのは嫌だろ?」
寛也に優しく言われ駿里は自分の行いを反省した。確かに強制的にされたとは言え、それが自分ではなく寛也だったら嫌で仕方がないだろう。
「…ごめんなさい」
「いいよ」
駿里は許してくれたと思い起き上がろうとすると寛也に肩を押し返された。
「なにしてんだ。お仕置きは決定事項だ」
「そんなぁっ、明日こそほんとに起きられなくなっちゃうよ」
「知るか。お前が悪い」
寛也は駿里の服に手をかけ、ぬがし始めた。
この展開何回目だろう、と駿里は小さく抵抗しながら考えていた。
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