極道の密にされる健気少年

本家

53話 団欒

夕食を食べるため駿里と寛也は大広間に向かっていた


「寛也、俺トイレ行きたい」


「あっちに真っ直ぐ行ったらある。俺は先に行っていてもいいか?」


「うん！後でね」



駿里は言われた通りの道を行き、トイレに着いた。


「ホテルみたいだ」


寛也のところへ行こうと大広間に向かっているとひとにぶつかってしまった


「すみません！」


「気をつけろよ……お前、もしかして寛也の」


駿里は下げていた頭を上げて男の顔を見た。そこには寛也とは少し違うが、顔の整った男が立っていた


「そうです」


「寛也の兄の碓氷（うすい）だ。」


「そうだったんですか！よろしくお願いします。」


「ああ、よろしく」


ちょっとだけど、寛也と碓氷は似ているなと駿里は思った。見た目は真逆だけど。寛也はチャラいのに対し、碓氷は黒髪で凛としている



「今から夕食の時間だ。何でここにいる」


「トイレをお借りしてました」


「そうか。なら一緒に行こう」


「はい！」



2人は大広間に着き、そこにいた組員が扉を開けた。寛也は2人の存在に気が付きすぐに駿里をよんだ


「何でテメェと駿里が一緒にいるんだ」


「トイレの前でばったりあって、一緒にきただけだよ」


「そうだ、勘違いするな馬鹿野郎」


「なんだと？」


親父さん達は久しぶりに見て嬉しいのか、我が子の喧嘩を優しく見守っていた


「おい、やめろ」


2人の喧嘩に割って入ったのは初めてみる男だった


「兄貴、俺はなにも悪くねぇだろ？」


「お互い様だ。食事が不味くなるからやめろ」


その人物はさっき寛也が言っていた、もう1人兄のようだ


「では食べよう！」


親父さんがいい、皆食べ始めた。先程2人の喧嘩を止めた寛也の兄が話しかけてきた


「すまないな、駿里くん。俺は旭川家の長男、旭川槐だ。」


「よろしくお願いします！えんじゅって名前凄くかっこいいです」


「ありがとう」


槐も寛也同様顔立ちが綺麗だった。それは親父さんがかっこよくて、綺麗だからだろう。


「さっきも言ったが、一応。俺は次男の旭川碓氷だ。」


「よろしくお願いします。漲 駿里です」


「寛也はいい恋人を見つけたもんだ。この世の物とは思えんぐらい綺麗だな」


「おい、ジロジロみるな」


独占欲丸出しの寛也を揶揄う2人の兄。


「駿里、俺はこいつの父親の旭川　馬酔木（あしび）だ」


「私は母親の美榮でございます」


「よ、よろしくお願いします」


この家庭は一家揃って容姿端麗のようだ。


「息子達の顔も見れて、新しい家族も増えた。こんな幸せなことはない」


そう言って親父さんはごくごくと、酒を飲んだ


「駿里、口に合わなかったら食べなかたいいからな」


「大丈夫だよ、寛也。凄く美味しい！」


「ならよかった」



楽しく駿里達が話していると、大広間の扉が開いた


「お食事中失礼します」


「御子柴どうした？」


「組長に用事があったのですが、出直します」


よっぽど息子の顔が見れたことがうれしかったのだろう、親父さんはべろべろに酔っていた


「大事な用事じゃねぇの？」


「大丈夫です、若様。」


「そうか」


「はい。では失礼します」


御子柴は大広間を後にした


「やっぱりかっこいいなあ御子柴さん」


「おい、俺の前ではほかの男の名前を呼ぶな」


「はは、駿里も大変だな」


「馴れ馴れしく名前で呼ぶな、碓氷」


「兄貴に向かってその口の聞き方は無いだろ」


「うるせぇんだよ、お前らは」


「賑やかですね！」


兄弟もおらず、親もいない駿里は羨ましいに口喧嘩を見た。


「駿里、お前も来年ぐらいにはきっとこの喧嘩に参加してるぞ」


「ああ、想像できる」


「そんなことしませんよ！」


否定はしたものの駿里は嬉しく思った。


「そろそろ部屋に戻ろうか駿里」


「うん！」


「お前ら、ほどほどにやれよ。」


「やんねぇよ！」


最後の最後まで喧嘩をする碓氷と寛也をめんどくさそうに槐は見ていた