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やっと会えた
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「誠也。落ち着いたか?」
「…うん。」
子供みたいに泣いた。すげぇ泣いた。嗚咽も漏らしながら泣いた。泣くことすら俺は忘れてたのに。泣き方も忘れてたのにここに来てから俺は感情豊かになってる。我慢出来てたものが出来なくなっていく。けど怖くはない。こうして慎都さんが受け入れてくれるって分かったから。
「ありがとうな誠也。」
「…え?何が?」
俺は慎都さんにお礼を言われるようなことを出来てない。ここに来てからというもの頼りっぱなしになっているから。ご飯も作ってくれるし食べさせてくれる。お風呂だって入れて貰えた。服も着せてもらった。全部してもらってばかりだ。なのになんでお礼なんか…。
「俺の前で泣いてくれてありがとうって事だ。我慢せずに全部さらけ出してくれてありがとう。それはつまり俺は信頼されてるってことだろ?嬉しいなぁ。」
「そ、そういうじゃねぇしっ、勝手に解釈すんな…!」
「はは、いいじゃねぇか。都合よく解釈した方が楽しいだろ?」
「…変なやつ。」
そんなこと言われたの初めてだ。なんだよ。泣いてくれてありがとうって…。俺が泣くと母親はうるせぇ喚くなって。だから俺は泣かないようになった。それが原因で。だけど…慎都さんはありがとうって…。
「変なやつでいいわ。お前がそばにいてくれるなら。」
「…そういう恥ずかしいセリフ普通に言うなよ。」
「いいじゃねぇか。俺はお前を愛してんだから。」
「や、やめろって慎都さん…っ。」
「照れてんのか?可愛いやつだな。」
「う、うるせぇ…!」
「否定しないんだな。良い兆しだ。いい子いい子。」
否定はしない。だって本当だから。俺は大切にされることでこんな気持ちになるんだってことを教えて貰えた。俺にもいたんだって。大切に…俺にこんなに愛をくれる人が…。生きてれば何とかなるって…あれ本当だったんだな。
「よし。行こう誠也。星秀が待ってるから。」
「そうだな。」
「あ、待て。その前にお前これ羽織っていけ。」
と、俺は慎都さんにジャケットを渡された。けどこれを着たら…。
「でもこれ着たら…昨日慎都さんがつけたこの痕が隠れちまう。」
「なんだお前。見せたいのか。」
「ち、違ぇよ!昨日慎都さんが言ったんじゃねぇか…!」
まるで俺が見せたいみたいになったじゃねぇか!元々言ったのは慎都さんなのに!見せないと星秀さんには会わせないって!覚えてねぇとは言わせねぇ!
「あー気が変わった。お前も何も気にせず星秀に会いたいだろ。」
「…なんで急に。」
「安心したんだ。お前が俺の事ちゃんと好きなんだなって思って。」
…え。な…に、好き?
「好きじゃねぇしっ、勘違いすんなっ!」
「なーに言ってんだ。お前は俺の事好きだろ。いずれ認めさせてやるよ。とりあえず今はいいから着ろ。外は寒いぞ。」
「外って…廊下じゃねぇか。」
「部屋から出たら全部外だ。いいから行くぞ誠也。」
「お、おう。」
俺が泣いたせいで時間食っちまったからか慎都さんは少し急いでた。そのまま俺は慎都さんの後をついて行ってある部屋の前まで来た。
「誠也。この部屋ん中に星秀がいる。だから行ってこい。」
「…え?」
行ってこいって…どういうことだ。俺一人で行っていいのか…?俺はてっきり慎都さんもついてくるんだと思ってた。
「なんだ?」
「慎都さんは来ないのか…?」
「俺は行かない。お前も俺がいたら星秀と話したいこと話せねぇだろ。ゆっくり話すといい。」
そう言って慎都さんは俺の頭を撫でてくれた。その温もりを感じたら俺また…っ。
「…ありがとう。」
「あーあ。またそんな顔して。元気な顔見せてやれよ。泣きそうな顔すんな今は。帰ってからはいくらでも泣いていいから。」
「…うん。」
そうだ。慎都さんの言う通りだ。星秀さんも俺のことを心配してる。俺が星秀さんを心配しているように。それほどあそこの屋敷で起きてたことは残虐な事だった。今…治は…どうしてんだろうな。いや、俺が知ったこっちゃない。もう忘れよう。会うことは無いんだから。
「涙出そう?一人で行けそうか?誠也。」
「っ、うん。星秀さんに会ってくる。慎都さんはどこにいるんだ?」
「游のとこ。あの部屋の中にいる。話が終わったら銀時に言いな。この部屋の前に立たせとくから。」
「そ、そんな申し訳ねぇよ!」
「それがあいつの仕事だ。いいから行ってこい。」
「あ…ちょっ、」
早く行けと言うように慎都さんはドアを開けて俺の事を部屋の中に入れた。しかも慎都さんはドアを直ぐに閉じやがった…っ。
「…いって、」
「誠也。大丈夫か?」
あ…。
「星秀さん…っ。」
「昨日ぶりだな。元気そうで良かった。会いたかったぞ。」
「…うん。」
子供みたいに泣いた。すげぇ泣いた。嗚咽も漏らしながら泣いた。泣くことすら俺は忘れてたのに。泣き方も忘れてたのにここに来てから俺は感情豊かになってる。我慢出来てたものが出来なくなっていく。けど怖くはない。こうして慎都さんが受け入れてくれるって分かったから。
「ありがとうな誠也。」
「…え?何が?」
俺は慎都さんにお礼を言われるようなことを出来てない。ここに来てからというもの頼りっぱなしになっているから。ご飯も作ってくれるし食べさせてくれる。お風呂だって入れて貰えた。服も着せてもらった。全部してもらってばかりだ。なのになんでお礼なんか…。
「俺の前で泣いてくれてありがとうって事だ。我慢せずに全部さらけ出してくれてありがとう。それはつまり俺は信頼されてるってことだろ?嬉しいなぁ。」
「そ、そういうじゃねぇしっ、勝手に解釈すんな…!」
「はは、いいじゃねぇか。都合よく解釈した方が楽しいだろ?」
「…変なやつ。」
そんなこと言われたの初めてだ。なんだよ。泣いてくれてありがとうって…。俺が泣くと母親はうるせぇ喚くなって。だから俺は泣かないようになった。それが原因で。だけど…慎都さんはありがとうって…。
「変なやつでいいわ。お前がそばにいてくれるなら。」
「…そういう恥ずかしいセリフ普通に言うなよ。」
「いいじゃねぇか。俺はお前を愛してんだから。」
「や、やめろって慎都さん…っ。」
「照れてんのか?可愛いやつだな。」
「う、うるせぇ…!」
「否定しないんだな。良い兆しだ。いい子いい子。」
否定はしない。だって本当だから。俺は大切にされることでこんな気持ちになるんだってことを教えて貰えた。俺にもいたんだって。大切に…俺にこんなに愛をくれる人が…。生きてれば何とかなるって…あれ本当だったんだな。
「よし。行こう誠也。星秀が待ってるから。」
「そうだな。」
「あ、待て。その前にお前これ羽織っていけ。」
と、俺は慎都さんにジャケットを渡された。けどこれを着たら…。
「でもこれ着たら…昨日慎都さんがつけたこの痕が隠れちまう。」
「なんだお前。見せたいのか。」
「ち、違ぇよ!昨日慎都さんが言ったんじゃねぇか…!」
まるで俺が見せたいみたいになったじゃねぇか!元々言ったのは慎都さんなのに!見せないと星秀さんには会わせないって!覚えてねぇとは言わせねぇ!
「あー気が変わった。お前も何も気にせず星秀に会いたいだろ。」
「…なんで急に。」
「安心したんだ。お前が俺の事ちゃんと好きなんだなって思って。」
…え。な…に、好き?
「好きじゃねぇしっ、勘違いすんなっ!」
「なーに言ってんだ。お前は俺の事好きだろ。いずれ認めさせてやるよ。とりあえず今はいいから着ろ。外は寒いぞ。」
「外って…廊下じゃねぇか。」
「部屋から出たら全部外だ。いいから行くぞ誠也。」
「お、おう。」
俺が泣いたせいで時間食っちまったからか慎都さんは少し急いでた。そのまま俺は慎都さんの後をついて行ってある部屋の前まで来た。
「誠也。この部屋ん中に星秀がいる。だから行ってこい。」
「…え?」
行ってこいって…どういうことだ。俺一人で行っていいのか…?俺はてっきり慎都さんもついてくるんだと思ってた。
「なんだ?」
「慎都さんは来ないのか…?」
「俺は行かない。お前も俺がいたら星秀と話したいこと話せねぇだろ。ゆっくり話すといい。」
そう言って慎都さんは俺の頭を撫でてくれた。その温もりを感じたら俺また…っ。
「…ありがとう。」
「あーあ。またそんな顔して。元気な顔見せてやれよ。泣きそうな顔すんな今は。帰ってからはいくらでも泣いていいから。」
「…うん。」
そうだ。慎都さんの言う通りだ。星秀さんも俺のことを心配してる。俺が星秀さんを心配しているように。それほどあそこの屋敷で起きてたことは残虐な事だった。今…治は…どうしてんだろうな。いや、俺が知ったこっちゃない。もう忘れよう。会うことは無いんだから。
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「っ、うん。星秀さんに会ってくる。慎都さんはどこにいるんだ?」
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「そ、そんな申し訳ねぇよ!」
「それがあいつの仕事だ。いいから行ってこい。」
「あ…ちょっ、」
早く行けと言うように慎都さんはドアを開けて俺の事を部屋の中に入れた。しかも慎都さんはドアを直ぐに閉じやがった…っ。
「…いって、」
「誠也。大丈夫か?」
あ…。
「星秀さん…っ。」
「昨日ぶりだな。元気そうで良かった。会いたかったぞ。」
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