怖いお兄さん達に誘拐されたお話

安達

文字の大きさ
上 下
115 / 205

緊張

しおりを挟む
「ま、またそうやってっ、恥ずかしいこと言うなよ…!」



愛してるとか幸せにするとか。あの屋敷にいた時はそういう事を言われる度に怖いと思っていた。その言葉が鎖のように体に絡みついてくるから。それを言われる度俺はここにいなきゃいけない。まだ解放されない。そんな思いになっていた。だけど慎都さんに言われると…全然違ったんだ。



「あ?恥ずかしくねぇだろ。俺がお前を愛してんのは事実だし。それに何年待ったと思ってんだ。お前が俺のそばに居るのが幸せでたまんねぇよ。」

「…………っ。」



すき焼きを作りに行くと言ったはずの慎都さんだけどまだ俺をソファで抱きしめてキスをしまくってくる。こめかみにも頭にも唇にも鼻にも。顔全体にキスをしてきてた。俺はそれをされて思わず固まっちまった。自分でもなんでそうなったのかは分からない。緊張…してしまうんだ。



「し、慎都さん…!」

「んー?」

「キスは、もう…っ、」

「なんでだよ。嫌がってねぇじゃんお前。」

「そうだけど…っ。」



そう。嫌じゃないんだ。それが俺の中で整理できない。嫌で仕方がなかった行為なのにおかしいんだ。俺はおかしくなった。キスされても嫌じゃないなんて…。



「だけど?」

「…長いっ、から!」

「いいじゃねぇか。俺はそんだけお前を探してた。んで、ようやく巡り会えたんだ。これぐらいさせてくれよ。な?誠也。」

「あっ、ちょ…っ。」



慎都さんはまたキスを再開した。しかも今度はさっきよりも強く抱き締められてる。腕も一緒に抱きしめられてるから俺は為す術がない。抵抗する気もないけど恥ずかしくて…心臓がバクバクする。慎都さんに顔を鷲掴みにされて時より笑うその顔を見ると顔が赤くなっていく。



「可愛い顔。」

「…う、うるせぇっ、つかもういいだろっ、満足しただろ!」

「まーだ。こら誠也、逃げようとすんな。」



どの道俺は力の差があって逃げれないけど抵抗する素振りだけは見せてみた。こんな至近距離に慎都さんがいること自体恥ずかしくてどうしていいか分からなくなる。



「長げぇんだよ…!」

「んな長くねぇだろ。俺はその気になればもっとしつこいぞ。」

「や、やだ…!」



またキスをしてこようとした慎都さんを俺は思わず突っぱねた。けど当然そんなのなんの意味もなくて慎都さんは俺を腕を掴んで俺に近づいてきた。



「なんだよそれ。可愛いな。」

「は、離せって…っ。」

「嫌だね。」

「近い…っ、んだよ!」

「そりゃキスすんだから近づかねぇとな。」

「っ、も、キスはいいって!」

「なら本気で抵抗しろよ。それとも出来ねぇ?」

「……………っ。」

「意識してんのか俺の事。」



意識しねぇわけねぇじゃん…。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

インテリヤクザは子守りができない

タタミ
BL
とある事件で大学を中退した初瀬岳は、極道の道へ進みわずか5年で兼城組の若頭にまで上り詰めていた。 冷酷非道なやり口で出世したものの不必要に凄惨な報復を繰り返した結果、組長から『人間味を学べ』という名目で組のシマで立ちんぼをしていた少年・皆木冬馬の教育を任されてしまう。 なんでも性接待で物事を進めようとするバカな冬馬を煙たがっていたが、小学生の頃に親に捨てられ字もろくに読めないとわかると、徐々に同情という名の情を抱くようになり……──

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

中華マフィア若頭の寵愛が重すぎて頭を抱えています

橋本しら子
BL
あの時、あの場所に近づかなければ、変わらない日常の中にいることができたのかもしれない。居酒屋でアルバイトをしながら学費を稼ぐ苦学生の桃瀬朱兎(ももせあやと)は、バイト終わりに自宅近くの裏路地で怪我をしていた一人の男を助けた。その男こそ、朱龍会日本支部を取り仕切っている中華マフィアの若頭【鼬瓏(ゆうろん)】その人。彼に関わったことから事件に巻き込まれてしまい、気づけば闇オークションで人身売買に掛けられていた。偶然居合わせた鼬瓏に買われたことにより普通の日常から一変、非日常へ身を置くことになってしまったが…… 想像していたような酷い扱いなどなく、ただ鼬瓏に甘やかされながら何時も通りの生活を送っていた。 ※付きのお話は18指定になります。ご注意ください。 更新は不定期です。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・話の流れが遅い ・作者が話の進行悩み過ぎてる

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

処理中です...