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根っからの優しい人
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「落ち着いたようだな誠也。じゃ水飲めそうか?涙いっぱい出したからよ、脱水になっちまうぞ。」
何分間泣いていたかも分からない。なのにその間慎都さんは俺から離れずにずっと抱きしめてくれたんだ。その後もこうして俺を気遣ってくれる。でも俺はそれが逆に怖かった。幸せを知れば不幸に落ちたくないという気持ちが出てしまう。もしものことがあった時…その事を考えると怖くなる。
「……の、む。」
「誠也?どうした?」
「…え?」
「なんか不安そうな顔してんぞお前。どうした。」
なんで分かるんだろう…。なんでこの人は俺に優しくしてくれるんだろう…。俺の顔が気に入ったから?そこだけなのか?じゃあ俺はいつか飽きられる可能性がある…?一度そんなことを考え始めたら俺は止まらなくなっていってた。
「…なんでもないです。」
「嘘つけ。顔に書いてあるぞ。俺が嫌か?」
「そうじゃないです…!」
そんな事あるわけないじゃないか。だから俺は直ぐに慎都さんにそう言った。
「そうか。なら他に訳があるんだな。隠してんじゃねぇよ。他の事は強要しないと言ったが一人で抱え込むのもなしだ。お前は俺のもんになるんだから。まぁだからといって無理に言わせるのも良くないよな。」
「……………っ。」
慎都さんに優しくされる度、俺は甘えたくなる。二度と治の所になんか戻りたくはない。渚さんのことは心配だけどそれ以上に健二や治が怖い。されてきたことが頭に全部残ってるんだ。なのに慎都さんがこうやって優しくするから俺はダメになりそう…。二度と嫌な事をされたくない。そう思っちまうぐらいに…。
「じゃあこうしよう誠也。言いたくなったら俺に話せ。いつでも俺はお前のそばにいるから。だからそんな顔すんな。分かったな。あと俺がいない時は基本的に銀時がお前の傍に着いてるはずだ。お前をここまで連れてきてくれた奴だ。覚えてるか?」
「…覚えてます。」
「お、いい子だ誠也。」
ただ覚えてるってだけなのに慎都さんは満面の笑みで俺の事を褒めてくれた。頭も撫でてくれた。これが本物の愛情って俺でも分かるぐらいに慎都さんは俺を可愛がってくれる。ここにいれば星秀さんも安心だ。
「今日のところは俺と一緒に過ごそうな。つーか腹減ったな。誠也は何食べたい?」
俺は今お腹は…空いてない。だから軽く食べられるものと…あと安いもの…がいいな。お世話になってんだからよ。
「…うどん。」
「は?うどん?いやいや肉食おうぜ。出前すっか。適当に頼んどくぞ。しっかり食べて肉つけろ。お前別に細いわけじゃねぇけど筋肉全然ねぇよな。」
「そ、そんな事…!!」
と、俺は否定したけど自分でも分かってるぐらいに筋肉がない。鍛える暇もなかったって言うのもあるけどただ単に忙しかったんだ。ヤクザの世界に踏み入れるまでは学校やバイトがあったし。いや、ほぼバイトだけだったけど…。
「いやいやそんな事あるわ。こんなんじゃ俺に抱かれる時身体もたねぇぞ。」
「…………っ!!」
「なんだその驚いた顔は。俺の愛人だろお前。今すぐにはさすがに抱かねぇけどいつかは抱くからな。けどその前に游に電話するから待ってろ。」
慎都さんはそう言うと游さんに電話をかけ始めた。相変わらず俺の事を抱きしめたまま。慎都さんは悪い人じゃないのはもう分かってる。けど俺はだからこそ不安なこともある。多分、俺の気持ちは…星秀さんに向いてるから。特別な思いを持ってるのは星秀さん…なんだ。だけどそれは言えない。星秀さんが追い出されたりなんてしたら俺は後悔してもしきれない。
「おう游…………あ?うるせぇよ。出前頼め。肉だ肉。お前らの分も頼んでいいから……………ああ………そうだ………じゃあ頼むな。」
游さんって声大きいよね。電話越しなのに声聞こえる。慎都さんの音量の設定が大きいのかな。いや、にしても声大きいわ。
「おーし。游が頼んでくれるぞ誠也。待ってような。」
「ありがとうございます慎都さん。」
「おう。あ、そうだ誠也。それとお前に聞いとかねぇとならん事があったんだ。」
「なん…ですか…?」
「星秀の事だ。」
俺は慎都さんにそう言われて思わずドキッとした。そして嫌な予感がしてしまう。
「お前、あいつのこと好きなのか?好きってのは恋愛的に。」
俺はどう答えたら正解になるんだろうか。けどどこかで妥協はしなければいけない。全ては上手くいかないんだから。ここで星秀さんが安全に過ごすためには…。
「いいえ、好きじゃないです。けど人としてとても尊敬してます。」
俺は嘘をついた。人生で初めて俺が特別な感情を抱いた大切な人の事をそうじゃないと言った。けど後悔はしてない。これは全部星秀さんのためなんだから。
「そうか。良かった。もしそうだったら色々複雑になるだろ?星秀も苦労してきたし、あいつにも色々してやりたいんだ。けどそういう事なら大丈夫そうだな。後で星秀にも会って来い誠也。きっと喜ぶだろうよ。でもちゃんと俺のとこに帰ってくるんだぞ。お前の居場所はここなんだから。まぁ住んでるところは上の階だけどな。」
「はい。ありがとうございます。」
「ああ。」
慎都さんはそう返事をすると俺の肩に手を回してきた。そして唇と唇が当たるだけのキスをしてきた。
「可愛いやつ。やっとお前に再会出来たんだ。今度は離さねぇよ。」
「…え?何を…言ってるんですか慎都さん。」
何分間泣いていたかも分からない。なのにその間慎都さんは俺から離れずにずっと抱きしめてくれたんだ。その後もこうして俺を気遣ってくれる。でも俺はそれが逆に怖かった。幸せを知れば不幸に落ちたくないという気持ちが出てしまう。もしものことがあった時…その事を考えると怖くなる。
「……の、む。」
「誠也?どうした?」
「…え?」
「なんか不安そうな顔してんぞお前。どうした。」
なんで分かるんだろう…。なんでこの人は俺に優しくしてくれるんだろう…。俺の顔が気に入ったから?そこだけなのか?じゃあ俺はいつか飽きられる可能性がある…?一度そんなことを考え始めたら俺は止まらなくなっていってた。
「…なんでもないです。」
「嘘つけ。顔に書いてあるぞ。俺が嫌か?」
「そうじゃないです…!」
そんな事あるわけないじゃないか。だから俺は直ぐに慎都さんにそう言った。
「そうか。なら他に訳があるんだな。隠してんじゃねぇよ。他の事は強要しないと言ったが一人で抱え込むのもなしだ。お前は俺のもんになるんだから。まぁだからといって無理に言わせるのも良くないよな。」
「……………っ。」
慎都さんに優しくされる度、俺は甘えたくなる。二度と治の所になんか戻りたくはない。渚さんのことは心配だけどそれ以上に健二や治が怖い。されてきたことが頭に全部残ってるんだ。なのに慎都さんがこうやって優しくするから俺はダメになりそう…。二度と嫌な事をされたくない。そう思っちまうぐらいに…。
「じゃあこうしよう誠也。言いたくなったら俺に話せ。いつでも俺はお前のそばにいるから。だからそんな顔すんな。分かったな。あと俺がいない時は基本的に銀時がお前の傍に着いてるはずだ。お前をここまで連れてきてくれた奴だ。覚えてるか?」
「…覚えてます。」
「お、いい子だ誠也。」
ただ覚えてるってだけなのに慎都さんは満面の笑みで俺の事を褒めてくれた。頭も撫でてくれた。これが本物の愛情って俺でも分かるぐらいに慎都さんは俺を可愛がってくれる。ここにいれば星秀さんも安心だ。
「今日のところは俺と一緒に過ごそうな。つーか腹減ったな。誠也は何食べたい?」
俺は今お腹は…空いてない。だから軽く食べられるものと…あと安いもの…がいいな。お世話になってんだからよ。
「…うどん。」
「は?うどん?いやいや肉食おうぜ。出前すっか。適当に頼んどくぞ。しっかり食べて肉つけろ。お前別に細いわけじゃねぇけど筋肉全然ねぇよな。」
「そ、そんな事…!!」
と、俺は否定したけど自分でも分かってるぐらいに筋肉がない。鍛える暇もなかったって言うのもあるけどただ単に忙しかったんだ。ヤクザの世界に踏み入れるまでは学校やバイトがあったし。いや、ほぼバイトだけだったけど…。
「いやいやそんな事あるわ。こんなんじゃ俺に抱かれる時身体もたねぇぞ。」
「…………っ!!」
「なんだその驚いた顔は。俺の愛人だろお前。今すぐにはさすがに抱かねぇけどいつかは抱くからな。けどその前に游に電話するから待ってろ。」
慎都さんはそう言うと游さんに電話をかけ始めた。相変わらず俺の事を抱きしめたまま。慎都さんは悪い人じゃないのはもう分かってる。けど俺はだからこそ不安なこともある。多分、俺の気持ちは…星秀さんに向いてるから。特別な思いを持ってるのは星秀さん…なんだ。だけどそれは言えない。星秀さんが追い出されたりなんてしたら俺は後悔してもしきれない。
「おう游…………あ?うるせぇよ。出前頼め。肉だ肉。お前らの分も頼んでいいから……………ああ………そうだ………じゃあ頼むな。」
游さんって声大きいよね。電話越しなのに声聞こえる。慎都さんの音量の設定が大きいのかな。いや、にしても声大きいわ。
「おーし。游が頼んでくれるぞ誠也。待ってような。」
「ありがとうございます慎都さん。」
「おう。あ、そうだ誠也。それとお前に聞いとかねぇとならん事があったんだ。」
「なん…ですか…?」
「星秀の事だ。」
俺は慎都さんにそう言われて思わずドキッとした。そして嫌な予感がしてしまう。
「お前、あいつのこと好きなのか?好きってのは恋愛的に。」
俺はどう答えたら正解になるんだろうか。けどどこかで妥協はしなければいけない。全ては上手くいかないんだから。ここで星秀さんが安全に過ごすためには…。
「いいえ、好きじゃないです。けど人としてとても尊敬してます。」
俺は嘘をついた。人生で初めて俺が特別な感情を抱いた大切な人の事をそうじゃないと言った。けど後悔はしてない。これは全部星秀さんのためなんだから。
「そうか。良かった。もしそうだったら色々複雑になるだろ?星秀も苦労してきたし、あいつにも色々してやりたいんだ。けどそういう事なら大丈夫そうだな。後で星秀にも会って来い誠也。きっと喜ぶだろうよ。でもちゃんと俺のとこに帰ってくるんだぞ。お前の居場所はここなんだから。まぁ住んでるところは上の階だけどな。」
「はい。ありがとうございます。」
「ああ。」
慎都さんはそう返事をすると俺の肩に手を回してきた。そして唇と唇が当たるだけのキスをしてきた。
「可愛いやつ。やっとお前に再会出来たんだ。今度は離さねぇよ。」
「…え?何を…言ってるんですか慎都さん。」
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