怖いお兄さん達に誘拐されたお話

安達

文字の大きさ
上 下
105 / 220

一騎打ち

しおりを挟む
「…はは。油断したな。誠也、俺の後ろに隠れてろ。」



撃たれた…。游さんが…撃たれた…。血が…血が垂れてる。早く…早く止血をしないと…!!



「で、でも…游さん血がっ、」

「大丈夫だ。急所は避けてる。それにこのぐらい日常茶飯事だっての。いいから俺の言う通りにしろ。早く後ろに隠れろ。」

「わ、わかった…。」



俺がここで下手に動いても游さんの足でまといになるだけだ。それなら游さんの言う通りにする方がいい。



「誠也?なぁ誠也。何かくれんぼしてんだよ。お前の居場所はここだろ?忘れたのか?早く戻ってこい。」

「はは、目がイっちまってるぞ渚。」

「游さん。俺はあなたには話しかけてません。俺は誠也と話してます。」

「そうかよ。けど俺はお前とお喋りがしたい気分だ。」



怖い…。俺が知ってる渚さんじゃなかった。あの人は…誰なんだ。今まで俺が話してたのは本当の渚さんじゃ…なかったのか?



「そうですか。じゃあ聞かせてくださいよ游さん。なぜあなた達は組長の事を潰そうとしてくるのですか?健二さんを撃ったのもあなた達の仕業ですよね。どういうことですか?」

「言わなきゃ分かんねぇのか?そもそも俺らは仲良なんてねぇだろ。お互いが利用しあった存在だ。な?そうだろ?」

「それもそうですね。けどなにも切ることなんてないじゃないですか。組長は困っちゃいますよ。今は健二さんも動けない。俺たちはこれからどうしていけばいいんですか。」

「知らねぇよ。お前らの組の事だろ。俺に聞くな。自分で考えろ。今までそうしてきたろ?俺らの指示には従わずに勝手に行動してよ。なぁ渚。なのに今更助けてくださいだぁ?ふざけんじゃねぇよ。」

「家族なのに素っ気ないですね游さん。」

「家族?笑わせるな。」

「盃を交わしたでしょ?あれは家族になるって意味ですよ。」



手に持った銃をカチャカチャとしながら渚さんがそう言った。まだ渚さんは銃口を游さんに向けている。けど游さんは動じない。さすがとしか…言いようがなかった。



「あんなもん形だけだろ。それに俺らはお前らに忠告してた。もちろん近藤治にもな。つーか一番近藤治に忠告してたはずなんだがな。なのにお前らは好き勝手やって頭を困らせた。お前らの失態は誰がカバーしてきたと思ってんだ。頭がいなきゃお前らは今頃潰れてる。当然だろ切られてよ。」

「酷いなぁ游さん。じゃあせめて誠也は返してください。そいつは俺らのもんなんで。」



渚さんは銃口を今度は俺に向けてきた。その時俺は渚さんと目が合って思わず泣きそうになった。だってこんなの渚さんじゃない。悪い夢だと思いたかった…。



「いいや、返さない。返さねぇよ渚。このままここにいたら誠也が潰れちまう。」

「そうですか。では游さん、またあなたの体に穴が空きますよ。」

「なぁ渚。お前にとって星秀はどんな存在なんだ?」

「…はい?」



あ…。渚さんが動揺した。これまで隙すら見せなかった渚さんがその游さんの一言で狼狽えた。



「あいつはお前の事を親友だと言っていたぞ。」

「…なんであなたがそんなこと。星秀が游さんにそれを言ったんですか?違いますよね。嘘ばっかりつかないでくださいよ。」

「嘘じゃねぇよ。本当だ。何故か知りたいか?俺は星秀と繋がってるからだ。」

「…え?」

「あいつが色々手引きした。あいつもかなりの演技派だよな。けどお前らのことを友と言っていたのは本当だろうな。」

「…星秀はどこにいるんだ!」

「そうカッカするな渚。あいつも俺達が守ってやってるから。」



も…ってそれはつまり俺も…って事?安心して…もいい?俺はここから解放される…?あなたを信じてもいいですか…游さん。



「…游さん。星秀も返してください。」

「返さない。お前らはそうやって全てを失っていくんだ。」

「ふざけるな!!!誠也、お前も何してんだ!早くこっちに戻れ!!!!」

「渚、声を荒らげるな。」

「うるせぇ!!誠也、早くこっちに戻れ…」



バン!!!!



「………あ、」



凄まじい爆音とともに静寂が流れた。今度は游さんが渚さんを撃った…。けど游さんは渚さんの足を撃った。多分致命傷にならないように。



「すまんな渚。ここまでするつもりはなかった。けどお前は強いからな。こうするしかない。急所は避けてるから死にはしないだろう。誠也、行こう。」

「……………っ。」



俺は游さんに手を引かれても足を動かせなかった。それは嫌なんじゃない。怖かったんだ。拳銃なんてもの初めて見たし人が撃たれている場面も勿論見たことがない。だから怖くて足がすくんでしまったんだ。



「誠也。怖がらせて悪かった。渚は死なないから大丈夫。行こう。」

「…………う…う、ん、」
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

中華マフィア若頭の寵愛が重すぎて頭を抱えています

橋本しら子
BL
あの時、あの場所に近づかなければ、変わらない日常の中にいることができたのかもしれない。居酒屋でアルバイトをしながら学費を稼ぐ苦学生の桃瀬朱兎(ももせあやと)は、バイト終わりに自宅近くの裏路地で怪我をしていた一人の男を助けた。その男こそ、朱龍会日本支部を取り仕切っている中華マフィアの若頭【鼬瓏(ゆうろん)】その人。彼に関わったことから事件に巻き込まれてしまい、気づけば闇オークションで人身売買に掛けられていた。偶然居合わせた鼬瓏に買われたことにより普通の日常から一変、非日常へ身を置くことになってしまったが…… 想像していたような酷い扱いなどなく、ただ鼬瓏に甘やかされながら何時も通りの生活を送っていた。 ※付きのお話は18指定になります。ご注意ください。 更新は不定期です。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

ド平凡な俺が全員美形な四兄弟からなぜか愛され…執着されているらしい

パイ生地製作委員会
BL
それぞれ別ベクトルの執着攻め4人×平凡受け ★一言でも感想・質問嬉しいです:https://marshmallow-qa.com/8wk9xo87onpix02?t=dlOeZc&utm_medium=url_text&utm_source=promotion 更新報告用のX(Twitter)をフォローすると作品更新に早く気づけて便利です X(旧Twitter): https://twitter.com/piedough_bl

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

イケメンの後輩にめちゃめちゃお願いされて、一回だけやってしまったら、大変なことになってしまった話

ゆなな
BL
タイトルどおり熱烈に年下に口説かれるお話。Twitterに載せていたものに加筆しました。Twitter→@yuna_org

処理中です...