上 下
105 / 117

一騎打ち

しおりを挟む
「…はは。油断したな。誠也、俺の後ろに隠れてろ。」



撃たれた…。游さんが…撃たれた…。血が…血が垂れてる。早く…早く止血をしないと…!!



「で、でも…游さん血がっ、」

「大丈夫だ。急所は避けてる。それにこのぐらい日常茶飯事だっての。いいから俺の言う通りにしろ。早く後ろに隠れろ。」

「わ、わかった…。」



俺がここで下手に動いても游さんの足でまといになるだけだ。それなら游さんの言う通りにする方がいい。



「誠也?なぁ誠也。何かくれんぼしてんだよ。お前の居場所はここだろ?忘れたのか?早く戻ってこい。」

「はは、目がイっちまってるぞ渚。」

「游さん。俺はあなたには話しかけてません。俺は誠也と話してます。」

「そうかよ。けど俺はお前とお喋りがしたい気分だ。」



怖い…。俺が知ってる渚さんじゃなかった。あの人は…誰なんだ。今まで俺が話してたのは本当の渚さんじゃ…なかったのか?



「そうですか。じゃあ聞かせてくださいよ游さん。なぜあなた達は組長の事を潰そうとしてくるのですか?健二さんを撃ったのもあなた達の仕業ですよね。どういうことですか?」

「言わなきゃ分かんねぇのか?そもそも俺らは仲良なんてねぇだろ。お互いが利用しあった存在だ。な?そうだろ?」

「それもそうですね。けどなにも切ることなんてないじゃないですか。組長は困っちゃいますよ。今は健二さんも動けない。俺たちはこれからどうしていけばいいんですか。」

「知らねぇよ。お前らの組の事だろ。俺に聞くな。自分で考えろ。今までそうしてきたろ?俺らの指示には従わずに勝手に行動してよ。なぁ渚。なのに今更助けてくださいだぁ?ふざけんじゃねぇよ。」

「家族なのに素っ気ないですね游さん。」

「家族?笑わせるな。」

「盃を交わしたでしょ?あれは家族になるって意味ですよ。」



手に持った銃をカチャカチャとしながら渚さんがそう言った。まだ渚さんは銃口を游さんに向けている。けど游さんは動じない。さすがとしか…言いようがなかった。



「あんなもん形だけだろ。それに俺らはお前らに忠告してた。もちろん近藤治にもな。つーか一番近藤治に忠告してたはずなんだがな。なのにお前らは好き勝手やって頭を困らせた。お前らの失態は誰がカバーしてきたと思ってんだ。頭がいなきゃお前らは今頃潰れてる。当然だろ切られてよ。」

「酷いなぁ游さん。じゃあせめて誠也は返してください。そいつは俺らのもんなんで。」



渚さんは銃口を今度は俺に向けてきた。その時俺は渚さんと目が合って思わず泣きそうになった。だってこんなの渚さんじゃない。悪い夢だと思いたかった…。



「いいや、返さない。返さねぇよ渚。このままここにいたら誠也が潰れちまう。」

「そうですか。では游さん、またあなたの体に穴が空きますよ。」

「なぁ渚。お前にとって星秀はどんな存在なんだ?」

「…はい?」



あ…。渚さんが動揺した。これまで隙すら見せなかった渚さんがその游さんの一言で狼狽えた。



「あいつはお前の事を親友だと言っていたぞ。」

「…なんであなたがそんなこと。星秀が游さんにそれを言ったんですか?違いますよね。嘘ばっかりつかないでくださいよ。」

「嘘じゃねぇよ。本当だ。何故か知りたいか?俺は星秀と繋がってるからだ。」

「…え?」

「あいつが色々手引きした。あいつもかなりの演技派だよな。けどお前らのことを友と言っていたのは本当だろうな。」

「…星秀はどこにいるんだ!」

「そうカッカするな渚。あいつも俺達が守ってやってるから。」



も…ってそれはつまり俺も…って事?安心して…もいい?俺はここから解放される…?あなたを信じてもいいですか…游さん。



「…游さん。星秀も返してください。」

「返さない。お前らはそうやって全てを失っていくんだ。」

「ふざけるな!!!誠也、お前も何してんだ!早くこっちに戻れ!!!!」

「渚、声を荒らげるな。」

「うるせぇ!!誠也、早くこっちに戻れ…」



バン!!!!



「………あ、」



凄まじい爆音とともに静寂が流れた。今度は游さんが渚さんを撃った…。けど游さんは渚さんの足を撃った。多分致命傷にならないように。



「すまんな渚。ここまでするつもりはなかった。けどお前は強いからな。こうするしかない。急所は避けてるから死にはしないだろう。誠也、行こう。」

「……………っ。」



俺は游さんに手を引かれても足を動かせなかった。それは嫌なんじゃない。怖かったんだ。拳銃なんてもの初めて見たし人が撃たれている場面も勿論見たことがない。だから怖くて足がすくんでしまったんだ。



「誠也。怖がらせて悪かった。渚は死なないから大丈夫。行こう。」

「…………う…う、ん、」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉

あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた! 弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?

極道達に閉じ込められる少年〜監獄

安達
BL
翔湊(かなた)はヤクザの家計に生まれたと思っていた。組員からも兄達からも愛され守られ1度も外の世界に出たことがない。しかし、実際は違い家族と思っていた人達との血縁関係は無く養子であることが判明。そして翔湊は自分がなぜこの家に養子として迎え入れられたのか衝撃の事実を知る。頼れる家族も居なくなり外に出たことがない翔湊は友達もいない。一先この家から逃げ出そうとする。だが行く手を阻む俵積田会の極道達によってーーー? 最後はハッピーエンドです。

組長様のお嫁さん

ヨモギ丸
BL
いい所出身の外に憧れを抱くオメガのお坊ちゃん 雨宮 優 は家出をする。 持ち物に強めの薬を持っていたのだが、うっかりバックごと全ロスしてしまった。 公園のベンチで死にかけていた優を助けたのはたまたまお散歩していた世界規模の組を締め上げる組長 一ノ瀬 拓真 猫を飼う感覚で優を飼うことにした拓真だったが、だんだんその感情が恋愛感情に変化していく。 『へ?拓真さん俺でいいの?』

[R18] 20歳の俺、男達のペットになる

ねねこ
BL
20歳の男がご主人様に飼われペットとなり、体を開発されまくって、複数の男達に調教される話です。 複数表現あり

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

監禁されて愛されて

カイン
BL
美影美羽(みかげみう)はヤクザのトップである美影雷(みかげらい)の恋人らしい、しかし誰も見た事がない。それには雷の監禁が原因だった…そんな2人の日常を覗いて見ましょう〜

ニューハーフ極道ZERO

フロイライン
BL
イケイケの若手ヤクザ松山亮輔は、ヘタを打ってニューハーフにされてしまう。 激変する環境の中、苦労しながらも再び極道としてのし上がっていこうとするのだが‥

3人の弟に逆らえない

ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。 主人公:高校2年生の瑠璃 長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。 次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。 三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい? 3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。 しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか? そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。 調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m

処理中です...