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我慢

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あ…まずい。渚さんが部屋の中に戻ってくる。急げ。早く戻んねぇと!



「誠也。待たせたな。」



ギリギリセーフ…。渚さんが部屋に戻る前に俺はベットに戻ることが出来た。多分…怪しまれてねぇよな…?



「おかえり渚さん。」

「…ああ。」



渚さん…?元気がねぇのか…?あの話のあとだから当然か。けどなんか…違和感がある。



「なぁ誠也。」

「…なんだ?」

「お前今の話聞いてただろ。」



なんで…知ってんだよ。いやカマかけられてるだけの可能性はある。だから俺は必死に演技をしようと決めた。



「話?なんの事だ?」

「とぼけるな。全部知ってんだよ。盗み聞きしてただろ。んな事しちゃ駄目だろ誠也。」



これは…もう隠せない。言い訳もきかない。でもなんで渚さんはそれを知ってるんだよ…。



「…ごめんなさい。」

「たく、仕方ねぇな。」

「…だって、気になるだろ。あんな言い方されたら。」

「そうかもな。んで、お前はどう思った?ここから逃げようと思ったか?」

「…え?」



何を…言ってるんだ…?逃げる…?なんであの話の流れでそうなるんだよ。



「とぼけんじゃねぇ。ここから逃げて星秀の所に行くつもりだろ。許さねぇよそんな事。」

「ち、ちがっ、渚さん…!」



誤解してる!完全に渚さんは誤解してる!俺はそんなことするつもりなんてねぇのに!なのに…渚さんは俺の上に覆いかぶさって逃げるなと言わんばかりに圧をかけてきた。



「渚さんっ、俺はそんなことしない…っ!」

「信用ねぇな。だからお前を拘束する。」

「…なっ、」



渚さんはスーツのポケットから手錠を取りだして素早く俺の左手に付けた。なんで…なんでこうなるんだよ…。



「…話聞いてくれよ渚さん。」



俺は渚さんに両手に手錠をはめられてその手錠はベットにつけられた。だから両手を拘束された上、俺は身動き出来なくなった。



「何も聞かねぇ。お前は星秀の事になると度が過ぎる。だから信用しねぇ。」

「なんでそうなるんだよ…!」

「信用ねぇからだ。」



信用ねぇって…。なんで…。俺は逃げる素振りも見せてねぇじゃねぇかよ…っ。



「星秀の事は俺達がどうにかするからここで待ってろ。俺もあいつらと星秀を探す。それまでここにいるんだ。分かったな。」

「…れ、蓮さんにここにいるよう言われてたじゃねぇか!」

「なんだよ。誠也は俺にここにいて欲しいのか?」

「そうじゃ…ねぇけど。」

「ちゃんと組長には許可を取ってる。だから心配は無用だ。その際組長から言われたんだ。お前を拘束しとけって。俺もそれに賛成したからこうしてる。」

「…意味わかんねぇ。」



ほんとに…意味わかんねぇ。けど星秀さんを探してくれるんだ渚さんは。だから俺は我慢した。我慢をすることにした。



「なぁ誠也。お前はいい子に待てるのか?出来ねぇのか?」

「…分かった。ここで待つ。」

「いい子だ。じゃあ俺が戻るまでここにいろよ。あとこの手錠は外れねぇから取ろうとしても無駄だ。分かったな。」

「…………っ。」

「誠也?返事は?」

「…わかった。」

「ん。いい子。じゃあまた後でな。」



渚さんはそう言って部屋を出ていっちまった。だから俺は…1人。ここに来てから1人になることは中々なかったから変な感じだ。このまま…渚さんを待とう。

でも………。



「あーあ。やっとどっかに行った。たく、どいつもこいつも過保護だな。お前全然1人になんねぇじゃん。」



誰だ…。こいつ…。知らない奴が来た。渚さんとすれ違いでこの部屋に入ってきた…。まずい…まずいまずい。俺は今拘束されてる…!!



「君が誠也君か。噂通りいい顔してんねぇ。」

「…だ、誰だよ!!!」



くそ…くそくそ…!渚さんのばか!!動けねぇじゃねぇかよ!!知らねぇやつがここにいんのにどうしろって言うんだ!



「怯えちゃって。可愛いね。」

「来るなっ、こっちに来んじゃねぇ…!!」

「顔はいいけど言葉遣いは駄目だな。ふーん。」



こいつ…もスーツを着てる。けどこの組の奴じゃない。誰だ…。身なりも整ってる。もしかして…こいつ…他の組の奴か…?



「…お前…だれ、だよ。」

「そんなに俺の事が知りてぇか。なら教えてやるよ。俺は會田会の組員だ。そんで會田会の若頭補佐を勤めてる。その意味が分かるな?」
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