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盗み聞き

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「渚さん。まだ連絡来ないのか…?」

「ああ。もう少し待とう。」 



進展があれば誰かから連絡が来ると渚さんは言った。けど誰からも連絡が来ないんだ。待てば待つほど不安が募っていく。俺はここにいることしか出来ないから無能な自分にも腹が立つ…。どうか…無事でいて欲しい。俺が強くそう思っていると…。



「おい渚!来い!」

「…は?お前なんでここにいるんだ。」

「いいから来い。」



何故かここに蓮さんが来た…。連絡が来ると言っていたから渚さんも驚いてる様子だった。



「分かったよ。誠也は?」

「誠也はここにいろ。お前だけ来い。」

「…おう。」



渚さんの顔色が曇った。何かあったんだ。俺も…知りたい。



「ま、まって蓮さん…!」

「どうした?」

「俺も聞きたい。」

「駄目だ。すぐ戻るからここにいろ。渚、行くぞ。」

「ああ。」



蓮さんは俺を突っ撥ねて部屋を出てしまった…。でも…もしかしたら盗み聞きが出来るかもしれない。そう思った俺はこの部屋を完全に渚さんと蓮さんが出た後に気づかれないよう静かに歩いてドアの所まで行った。そして耳をすませた。



「この話は誠也には絶対に言うな。これは組長の指示だ。」



あ…蓮さんの声聞こえる。これだと2人の話をちゃんと聞くことが出来る。けど俺には絶対に言うなって話…。やっぱり聞かない方がいいだろうか…。いやけど…俺は知りたい。きっと星秀さんの事だから。



「分かった。話の内容は星秀の事か?」

「そうだ。渚にとっても嫌な話になる。俺にとっても、な。」



星秀さんの事であってるんだ…。けど嫌な話って俺…ちゃんと受け入れられるのか…?やっぱり聞くのやめ…



「蓮。早く言え。大体は想像出来た。」

「星秀が死んだ。」



え…。嘘だ…。そんな…。聞かなきゃ…良かった…。もっと早く引き返してりゃ…。でも俺は信じない…。自分の目で見るまでは絶対…絶対…っ。



「…なぁ蓮。冗談言うなよ。俺に恨みでもあんのか?あいつはそんな簡単に死ぬようなやつじゃねぇ。」

「渚。受け入れたくねぇのは分かるがこれは事実だ。俺だってこんな事望んじゃいねぇよ。けどな、現実は変わんねぇんだ。」

「信じれるかよ。お前は星秀の死体は見たのか?」

「ああ。けど焼かれてたから顔の判別は出来なかった。」

「…はぁ?ふざけんなよ。それだったらもしかしたらあいつは生きてるかもしれねぇじゃねぇか!!」



…渚さんの言う通り。まだ…分からない。俺は込み上げてくる涙を堪えて話を…聞いた。



「落ち着け渚。やめろ。誠也に聞かれたらあいつを混乱させちまう。」

「…分かってるよ。けどな蓮、俺はちゃんとその死体が星秀のもんだと確認するまでは諦めねぇぞ。あいつは生きてる。」

「俺もそう思ってたんだが…その死体にあれがあったんだ。」

「…あれってなんだよ。」

「俺達がこれから同士として…仲間として買ったブレスレット。俺、渚と凛翔、勝…んで星秀。俺ら5人しか持ってねぇあのブレスレットが死体の腕に着いてたんだ。」



俺も知ってる…。そのブレスレットは星秀さんが肌身離さず付けてたものだから。



「…けどよぉ、それを外して星秀が死んだように見せかけた可能性だってあるじゃねぇか。誰かの仕業かもしれねぇだろ。なぁ蓮。」

「それが出来ねぇのは渚、お前も知ってるだろ。あのブレスレットは外れねぇ。」

「…なんだよこれ。なんでこうなるんだよ。」

「混乱するのは分かるが誠也の前では必ず控えろ。あいつを混乱させることだけは絶対にしちゃいけない。組長の指示でもあるからな。」

「…組長はなんでそうやって指示したんだ?」

「誠也の為でもあるし、星秀の為でもあるだろ。」

「…そうか。でもどの道俺は信じない。あいつは俺に何も言わずに死ぬようなやつじゃねぇ。」

「渚…。」



俺も渚さんと同じだ。信じない。絶対。だって約束したんだから。必ず星秀さんはどこかで生き延びてる。絶対に…っ。



「何も言うな蓮。誠也にはこの事を言わねぇから。だってあいつは死んでねぇんだから。」

「……………。」



蓮さんは黙り込んじまった。今の渚さんに何を言っても聞き入れてくれない。そう思ったんだろうな。けど蓮さんはきっと渚さんの気持ちも分かるからこそこうして渚さんに寄り添ってる。



「蓮、要件はこれだけか?」

「…そうだ。」

「この後も俺は引き続き誠也といていいって事だな?」

「ああ。」

「じゃあ俺は部屋に戻る。蓮、お前は仕事に戻んのか?」

「そうだな。」

「気をつけろよ。お前まで俺の前からいなくなるな。」

「それは渚、お前もだ。お互い気をつけよう。誠也を守りながら。」
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