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すれ違い
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逃がしてやる…?それってつまり俺だけがここから逃げるってことだよな。そんなの…おかしいだろ。自由になるべきは星秀さんだ。俺よりも先に自由にならなきゃいけない。この人はどこまでお人好しなんだよ…。
「…なんだよそれ。だったら星秀さんはどうなるんだよ。」
「それは気にしなくていい。とにかく誠也はここから逃げるんだ。」
「気にしなくていいってなんだよ…!!」
俺は思わず声を荒らげた。だってそうじゃないか。おかしい。こんなのおかしい。俺がここから逃げ出したら星秀さんが真っ先に疑われる。その星秀さんをあの治がどうするかなんて俺にだって想像出来る。
「…誠也。俺はお前に自由になって欲しいんだ。」
「んだ事頼んでねぇ!」
「じゃあお前はここにずっといるつもりなのか?」
「違う!そうじゃねぇだろ!」
俺だってずっとここにはいたくない。けどそうじゃない。俺がここで逃げたら星秀さんはどうなるんだよ。なんで自分を大切にしないんだ。俺は…俺はただここから逃げられたらいいってわけじゃない。星秀さんが逃げてそれで俺も逃げたい。そう思ってるんだ。
「…星秀さんも一緒に逃げればいいじゃねぇか。」
そしたら俺達は解放される。元の暮らしに戻れるんだ。なのになんで星秀さんはそう言ってくれないんだよ…。
「誠也。組長相手にそんな甘ったれた考えは通用しねぇんだ。」
「…わかってる。分かってるけど…。」
「チャンスは今しかない。健二さんが撃たれて組長も下手に動けない。ここに戻ってこれるかも分からない。組の存続にも関わる事だからな。だから逃げるなら今しかないんだ。お前が本気で逃げたいなら腹を括れ。」
「…なんで星秀さんは逃げないんだよ。」
「俺はここが別に嫌いじゃねぇんだよ。」
嘘だ…。星秀さん…嘘ついてる…。
「だからここに残る。俺の意思で残る。渚達と会えなくなるのも寂しいしな。」
これは多分…半分本音だ。渚さん達は星秀さんにとって心の支えであったはずだから。けどここから逃げたくないなんて星秀さんは思ってない。
「…嘘だ。」
「嘘じゃねぇよ。」
嘘をついてまで星秀さんは俺を守ろうとするのか。だったら俺も勝手な事していいよな。俺がどうしようと俺の勝手だ。
「…なら俺も逃げない。」
「は?」
「俺もここにいる。」
「お前馬鹿か。ここにいたら何されるのか忘れた訳じゃねぇだろ。なぁ誠也。チャンスは今しかないかもしれねぇんだ。これを逃したらもう逃げられないかもしれない。それを分かってんのか?」
星秀さんが俺の肩を掴みながら俺に言い聞かせるようにしてそう言ってきた。けど俺は聞く耳を持たない。聞きたくないから。
「…わかってる。」
「なら逃げろよ!」
「…逃げない。」
「誠也!!」
言うことを聞かない俺についに星秀さんが声を荒らげてきた。星秀さんは必死な顔をしてる。だから俺は…嬉しかった。ここまでして俺を守ろうとしてくれるこの人に惹かれていく。渚さん達も俺を守ってくれたけどやっぱり俺は星秀さんに特別な感情を持ってるんだ。
「…なんだよ。」
「なんだよじゃねぇだろ!いい加減にしろ誠也!お前…ここで一生を終えたいのか?」
「それは星秀さんも同じだろ。」
腹が立つ。俺は良くて自分はどうでもいいのか?なんだよその思考。俺は大切に育てられなかったから他人なんてどうでもいい。どうなろうと知ったこっちゃない。けど星秀さんはそんな俺が初めて幸せになって欲しいと思った男なんだ。なのに…なんだよそれ…。
「俺はいいんだよ!けど誠也、お前は違うだろ!」
「何も違わない。だから俺もここにいる。それは俺の勝手だ。別にいいじゃねぇか。星秀さんには関係ない。」
「関係なくねぇから言ってんだろ!」
なんでここまで怒るんだよ…。ここまで怒るなら自分のことも大切にしてくれよ…。俺をそんなふうに思ってくれるなら俺が大切に思ってる星秀さん…あんたも幸せになんなきゃいけないんだ。
「…何が関係ないんだよ。星秀さんはそう言うけど自分のことは何も大切にしないじゃないか。」
「は…?」
「星秀さんが俺の事を大切に思ってくれてるように俺も星秀さんには不自由なく生きて欲しい。そう思ってんのに…。」
本音が思わず俺は口からポロリと出た。けど後悔はしてない。俺がそういったことで星秀さんの怒りが一気に無くなったようだから。
「だから俺だけを優先すんのはやめて欲しい。逃げるなら俺は星秀さんと逃げたい。それが甘ったれた考えでも俺は1人で逃げるのは嫌だ。」
これは俺の本音。それを伝えれた。俺は喋るのが得意じゃないし伝えるのも得意じゃない。だから上手く星秀さんに伝えられたかどうかは分かんねぇけど気持ちが伝わってたら俺は嬉しい。
「…はは。誠也、お前は馬鹿なやつだ。馬鹿だ。だから組長に捕まるんだよ。」
「それは星秀さんもだろ。」
「…俺は自業自得な部分がある。まぁそれはいいとしてそういう事なら…一緒に逃げような誠也。」
「いいのか…?」
「俺は誠也の幸せを望んでる。その幸せが俺と逃げることなら俺はお前と一緒に行くよ。だが分かってるだろうが簡単じゃない。もしかしたらお前は會田会の連中に狙われてる可能性もあるんだ。だから慎重に行くぞ。分かったな。」
「…なんだよそれ。だったら星秀さんはどうなるんだよ。」
「それは気にしなくていい。とにかく誠也はここから逃げるんだ。」
「気にしなくていいってなんだよ…!!」
俺は思わず声を荒らげた。だってそうじゃないか。おかしい。こんなのおかしい。俺がここから逃げ出したら星秀さんが真っ先に疑われる。その星秀さんをあの治がどうするかなんて俺にだって想像出来る。
「…誠也。俺はお前に自由になって欲しいんだ。」
「んだ事頼んでねぇ!」
「じゃあお前はここにずっといるつもりなのか?」
「違う!そうじゃねぇだろ!」
俺だってずっとここにはいたくない。けどそうじゃない。俺がここで逃げたら星秀さんはどうなるんだよ。なんで自分を大切にしないんだ。俺は…俺はただここから逃げられたらいいってわけじゃない。星秀さんが逃げてそれで俺も逃げたい。そう思ってるんだ。
「…星秀さんも一緒に逃げればいいじゃねぇか。」
そしたら俺達は解放される。元の暮らしに戻れるんだ。なのになんで星秀さんはそう言ってくれないんだよ…。
「誠也。組長相手にそんな甘ったれた考えは通用しねぇんだ。」
「…わかってる。分かってるけど…。」
「チャンスは今しかない。健二さんが撃たれて組長も下手に動けない。ここに戻ってこれるかも分からない。組の存続にも関わる事だからな。だから逃げるなら今しかないんだ。お前が本気で逃げたいなら腹を括れ。」
「…なんで星秀さんは逃げないんだよ。」
「俺はここが別に嫌いじゃねぇんだよ。」
嘘だ…。星秀さん…嘘ついてる…。
「だからここに残る。俺の意思で残る。渚達と会えなくなるのも寂しいしな。」
これは多分…半分本音だ。渚さん達は星秀さんにとって心の支えであったはずだから。けどここから逃げたくないなんて星秀さんは思ってない。
「…嘘だ。」
「嘘じゃねぇよ。」
嘘をついてまで星秀さんは俺を守ろうとするのか。だったら俺も勝手な事していいよな。俺がどうしようと俺の勝手だ。
「…なら俺も逃げない。」
「は?」
「俺もここにいる。」
「お前馬鹿か。ここにいたら何されるのか忘れた訳じゃねぇだろ。なぁ誠也。チャンスは今しかないかもしれねぇんだ。これを逃したらもう逃げられないかもしれない。それを分かってんのか?」
星秀さんが俺の肩を掴みながら俺に言い聞かせるようにしてそう言ってきた。けど俺は聞く耳を持たない。聞きたくないから。
「…わかってる。」
「なら逃げろよ!」
「…逃げない。」
「誠也!!」
言うことを聞かない俺についに星秀さんが声を荒らげてきた。星秀さんは必死な顔をしてる。だから俺は…嬉しかった。ここまでして俺を守ろうとしてくれるこの人に惹かれていく。渚さん達も俺を守ってくれたけどやっぱり俺は星秀さんに特別な感情を持ってるんだ。
「…なんだよ。」
「なんだよじゃねぇだろ!いい加減にしろ誠也!お前…ここで一生を終えたいのか?」
「それは星秀さんも同じだろ。」
腹が立つ。俺は良くて自分はどうでもいいのか?なんだよその思考。俺は大切に育てられなかったから他人なんてどうでもいい。どうなろうと知ったこっちゃない。けど星秀さんはそんな俺が初めて幸せになって欲しいと思った男なんだ。なのに…なんだよそれ…。
「俺はいいんだよ!けど誠也、お前は違うだろ!」
「何も違わない。だから俺もここにいる。それは俺の勝手だ。別にいいじゃねぇか。星秀さんには関係ない。」
「関係なくねぇから言ってんだろ!」
なんでここまで怒るんだよ…。ここまで怒るなら自分のことも大切にしてくれよ…。俺をそんなふうに思ってくれるなら俺が大切に思ってる星秀さん…あんたも幸せになんなきゃいけないんだ。
「…何が関係ないんだよ。星秀さんはそう言うけど自分のことは何も大切にしないじゃないか。」
「は…?」
「星秀さんが俺の事を大切に思ってくれてるように俺も星秀さんには不自由なく生きて欲しい。そう思ってんのに…。」
本音が思わず俺は口からポロリと出た。けど後悔はしてない。俺がそういったことで星秀さんの怒りが一気に無くなったようだから。
「だから俺だけを優先すんのはやめて欲しい。逃げるなら俺は星秀さんと逃げたい。それが甘ったれた考えでも俺は1人で逃げるのは嫌だ。」
これは俺の本音。それを伝えれた。俺は喋るのが得意じゃないし伝えるのも得意じゃない。だから上手く星秀さんに伝えられたかどうかは分かんねぇけど気持ちが伝わってたら俺は嬉しい。
「…はは。誠也、お前は馬鹿なやつだ。馬鹿だ。だから組長に捕まるんだよ。」
「それは星秀さんもだろ。」
「…俺は自業自得な部分がある。まぁそれはいいとしてそういう事なら…一緒に逃げような誠也。」
「いいのか…?」
「俺は誠也の幸せを望んでる。その幸せが俺と逃げることなら俺はお前と一緒に行くよ。だが分かってるだろうが簡単じゃない。もしかしたらお前は會田会の連中に狙われてる可能性もあるんだ。だから慎重に行くぞ。分かったな。」
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