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「誠也を解放してやる…」



違う。健二はそんな事しない。絶対しない。だって痛ぇから…。健二が俺の腕を容赦なく強く掴んでるから。そんだけ健二は怒ってるってことだろ。なのにやめてくれるわけ…ない。



「と、でも言うと思ったか?馬鹿かお前。指なんて落として何になる。誠也をそこまでして庇ってよぉ、お前になんの得があんだよ。あとな蓮、指なんて落としてみろ。そん時は誠也を三日三晩俺と組長で抱き潰す羽目になるぞ。」



やっぱりそうだ…。でも大丈夫。俺は…はなからやめてくれることを期待してねぇから。



「健二さん…。あなた達はそうやって星秀の事も追い込んで行ったんですか…?」

「蓮。やめろ。それは今関係ねぇだろ。」

「どうしてあなた達はそんな事をするんですか!!」



初めて見た…。いや俺は蓮さんと出会ってからそんなに時間が経ってないから初めて見るのは当然だけど…。だけど蓮さんがこうやって怒鳴る姿は想像もしてなかった。それだけ2人が本気でぶつかってる…。



「おいおいなんだよ蓮。今更か?今まで何も言わずに黙って見ていただけの癖に今更お前は俺に吠えるのか?渚もそうだけどよ。お前らどうしたんだよ。今まで何も口出ししなかったじゃねぇか。それどころか参加してたよなぁ。お前も楽しそうに今は死んだあいつらを犯してたじゃねぇか。」

「そうですね。俺は意気地無しなので組長や健二さんに何も言えませんでしたよ。それに健二さんの言う通り俺も犯しました。ただひたすらに欲を満たすためにね。けど今は違う。徐々に俺は犯すことをやめていきまたよね。でもあなた達に俺は何も言わなかった。それは…俺は組長や健二さんの事を誰よりも尊敬してますから。尊敬して慕ってますから。けどこればっかりは黙って見てられません。」



そう言いながら蓮さんが俺の腕を掴んできた。健二に掴まれてる方とは逆の腕だ。その蓮さんの方に俺は身体を無意識に向けてしまった。そんなことをしたら…。



「おい誠也。動くんじゃねぇ。今すぐにでも犯されたいのか?」



当然健二を怒らせてしまった。顔を鷲掴みにされて脅された。けど直ぐに蓮さんが健二を止めてくれたんだ。



「離してください健二さん。誠也が怖がってます。」

「当然だろ。怖がらせる為にやってんだから。」

「そんな事をする理由はなんですか?」

「はぁ?お前何言ってんだ。蓮は人を殺す時に一々理由を作ってんのか?作んねぇだろ。ただ組長に指示されたからやるんだろ?それと一緒じゃねぇか。」

「一緒ではありません。」

「めんどくせぇな。誠也だけ特別扱いする理由は星秀じゃねぇのかよ。お前は本気で誠也を気に入ったのか?なぁ蓮。」



俺が健二に…何を言われてる訳でもない。けど…なのにとても怖い。恐ろしく怖かった。腕が…足が…震えるぐらいに…。



「はい。そうですね。健二さんの言う通りです。俺は誠也を気に入ってます。」

「はは、そうかよ。なら蓮、お前は矛盾してるぞ。」

「…はい?」

「お前は誠也を愛してんだろ?なぁ蓮。のくせにこいつを逃がそうとしねぇじゃねぇか。お前の手の中から誠也が消えるのが嫌なんだろ?なのに俺にこんな事をされる時だけ助けるのか?本気でこいつを助けたいなら逃がしてやればいいじゃねぇか。蓮にも渚にもその力はある。なのにやらねぇのか?」



そう…なのか?けど渚さんは言ってた。俺が逃げたら星秀さんが大変な目に遭う…って。だから俺はここにいなきゃいけないって…。そうだよな…。俺はそのためにここにいるんだ…。渚さんも蓮さんもその為に俺をここに閉じこめる。星秀さんのため…だよな。



「……………。」

「図星かよ、蓮。」

「…そうかもしれません。けどだからこそ俺は誠也にここで不自由なく生活をしてもらおうと…」

「はは、馬鹿を言うな。それはお前のエゴだろ?誠也はここから逃げてぇんじゃねぇの?だから俺は躾をするんだ。ここから逃げないように。組長を嫌がらないようにな。そんで俺はそれをちゃんと誠也に伝えてる。けどお前らは誠也になんて言った?星秀のため…だっけ?確かにそうかもしれねぇけどそれが全部じゃねぇだろ。お前は誠也を逃がしたくないんだよ。優しくするだけしてここからは逃がしてやらない一番最悪な奴じゃねぇか。」

「違う…!蓮さんは最悪な人なんかじゃねぇ…!」

「黙れ誠也。今俺はこいつと話してんだ。黙ってろ。」

「………………っ。」



くそ…。情けない…。俺はまじで情けない…。健二にただそう言われただけなのに怖くて黙り込んじまう…。言いたいことすら…言えてねぇ…。



「なぁ蓮。答えろ。」

「……………。」



なんで蓮さんは黙り込んでんだ…?蓮さんは星秀さんを助けるためにここに俺を閉じ込めるんじゃねぇのか…?あ…違う。渚さんはこうとも言ってた。俺を気に入ったから俺をここから逃がしてやる訳には行かないって。いやけどそれは星秀さんと俺が一緒に逃げたら星秀さんに危険が及ぶからじゃなかったか…?なんかもう…分かんねぇ…。



「そうですね健二さん。俺は確かに矛盾してます。」

「やっと認めたか。」

「けど俺はなんにせよ誠也を傷つけるのに賛成しません。」



…分かんなくなった感情がまとまった。やっぱり蓮さんはいい人だ。俺を守ってくれる数少ない人…。



「蓮。それはつまり組長に反抗するってことか?」

「間違ってることは正さないといけません。」

「へぇ…。言うようになったな。つーかよぉ。それはつまり俺らの部下をやめるって事か?盃まで俺らは交わしたのに今更極道やめるってのかよ。」

「そうではありません。俺は健二さんと組長に恩がありますから命を捧げ続ける事には変わりありません。」

「けどお前は俺らに反抗すんだろ?」

「誠也は…誠也の事に関してはだけです。」

「へぇ。じゃあ俺が誠也にこんな事したら怒んのかよ。」

「っ、ぅ、やめろ!!」



俺は健二にもの凄い力で引っ張られて蓮さんから離された。蓮さんも俺の事を力いっぱい掴んでいたはずなのにそれも抜けるほどの力で健二に引っ張られた。それだけじゃない。力いっぱい乳首を引っ張られた。



「やめっ、やめろって、触んじゃねぇ…!」

「健二さん!やめてください!」

「動くな蓮。動けばこいつに媚薬を入れる。それをされたくなきゃそこにいろ。こいつは感じやすいから媚薬なんて入れられたら地獄だろうな。」



どこから出したのか健二は手に注射器を持っていた。その中には媚薬…。健二が言ってることが正しいなら媚薬が入っている。俺はそんなもの勿論飲んだこともないし体に入れたこともない。未知のものだ。だから…怖くなって俺は暴れることをやめた。やめざるを得なかった。



「…健二さん。」

「悪いな蓮。お前の事は好きだからよ、言うことを聞いてあげたいぜ。お前は仕事も出来るし付き合いも長いからな。けどよぉ、誠也の事に関しちゃ譲れねぇ。だからいっその事お前もこっち側に来いよ蓮。罪悪感なんてあるからいけねぇんだ。星秀はお前らの望み通り解放してやる。だから迷うな蓮。こいつを自分のものにしたいんだろ?欲望を閉ざすなよ。ほら、お前の望み通りに動けよ。お前はどうしたい?本音隠さず一緒にやろうぜ。なぁ?蓮。」
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