怖いお兄さん達に誘拐されたお話

喧嘩

｢だったら俺も引きませんよ健二さん。｣

｢はぁ…。なんだお前。なんなんだよ。誠也がそんなにいいか？違ぇだろ。お前は元々こいつで遊ぶつもりだったんだから。俺はなんでもお前らの事なら知ってんだよ。お前がこいつに入れ込む理由は星秀だろうが。お前らの望み通り星秀には幹部の仕事のみをこれからはさせるから邪魔すんじゃねぇ。｣



健二がそう言うと蓮さんが止まった…。蓮さんだけじゃない…。俺もだ…。そんで恐怖が一気にどこかへ行った。だって健二がもう星秀さんに酷い事をしないって言ったから…。



｢…け、健二さん。それってほんとですか？ほんとに星秀さんには何もしないのか？｣

｢そうだ。けど誠也、それを組長の前で言うなよ。分かったな。｣

｢…はい。｣



それはさすがに言えない。だから俺は健二にそう言われなくても治には言おうとするつもりはなかった。それは自分の首を絞めるのと変わらないから。



｢蓮。お前もいい加減に誠也を離せ。破門にされたいのか。｣

｢出来ませんよねそんな事。俺を破門になんて出来るはずがないって分かってます。｣

｢は…っ、めんどくせぇやつだな。まぁいい。やる事は変わんねぇんだから。退け。｣

｢…っ、く゛っ！｣



俺の事をずっと守ろうとしてくれた蓮さんが俺の前から消えた。健二が思いっきり蓮さんを蹴飛ばしたんだ。その痛みに蓮さんは一瞬うずくまった。



｢れ、蓮さん…っ！！｣

｢誠也、こいつを庇うな。お前はこれから躾だぞ。｣



俺は蓮さんが心配でベットから落ちた蓮さんの所に駆け寄ろうとした。けど健二に腕を捕まれそれすらも出来ない。俺は怒りのあまり健二を睨みつけた。



｢離せ卑怯者…！！｣

｢はは、言ってくれんじゃねぇか誠也。俺は卑怯者か。はは、そうかそうか。それならそれでいい。なんと言われようとも俺はお前を逃がしてやらないし言うことを聞かねぇならそれなりのことをするんだからよ。｣

｢っ、やめろっ、離せよ…っ！！｣

｢健二さん…待ってください…！！｣

｢あ？なんだ気絶してなかったのか。さすがは蓮だな。｣



あの健二の蹴りを入れられたのに蓮さんは立ち上がっていた。けど苦しそうにしてる。俺なんかを守るために…。くそ…。このままじゃ蓮さんが…っ。俺はどうするのが正解なんだよ…っ。



｢待ってください健二さん…。｣

｢今度はなんだよ。｣

｢誠也はもう拒みませんよ組長のこと。だからやめてあげてください。｣

｢蓮、冗談言うのも大概にしろ。こいつが組長の事を拒まないのは当たり前の話だろ？こいつは組長のもんなんだからよ。｣

｢…健二さん。どうか頼みます。俺からの頼みです。どうか。｣



蓮さんがとても苦しそうにしてた。俺がちゃんと躾を受けますと言えば蓮さんはこんな目には遭わなかった。俺のせいだ。けど怖くて…怖くて体が動かないんだ。口も動かせねぇんだ…。



｢そうだな蓮。普段からお前の頼みとありゃ聞いてやったかもしれねぇな。けどな蓮、誠也の事に関しては聞けねぇよ。なんでか分かるか？こいつは組長の所有物だからだ。お前は干渉するな。組長の前では絶対にそういうのはやめろ。｣

｢やりませんよ組長の前では。健二さんだから言ってるんです。お願いします健二さん。今日だけ…誠也の様子を見てやってくれませんか？それで誠也が組長の事を拒んだら俺が責任を取って指を落とします。｣

｢…馬鹿かお前。｣

｢俺は本気です。だからどうかお願いします。｣



蓮さんが必死の顔をして健二に頼み込んでいた。俺のために…。俺は誰かに守られるってことをされたことがなかったからこうして誰かに守られると涙が溢れてくる。人の温もりってこんなに暖かいんだって…。だから俺はもうそれで良かった。躾をされようがなんだろうが良かった。蓮さんが俺のためにそう言ってくれたことが嬉しかったから。だから健二がどう言うかなんてどうでもよかった…。けど…俺がそんな風に思っていたその時健二が…。



｢お前がそこまで言うなら……｣