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キス

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「逃がしてやる…ってどういうことだ?」

「言葉のまんまだよ。俺がお前をここから逃がすってこと。もしそうならお前はどうするんだ?誠也。」



…渚さんは俺を揶揄ってんだろうか?そりゃ俺はもちろん逃げたい。逃げれるなら何でもいい。けどそれは簡単じゃない。簡単に逃げれないのは俺が一番わかってる。それに星秀さんがここに帰ってくるんだ。だから俺はここから逃げるつもりは今はない。



「…逃げない。」

「え、まじか。」

「…なんだよ。」

「いやぁ、俺が思ってた回答と違ったから。誠也は何がなんでもここから逃げると思ってたわ。」

「…そりゃ逃げれるなら逃げたい。けどなんの考えもなしにそれを実行するのは危険だってわかってるから。」



今俺が逃げたら星秀さんに被害が及ぶかもしれない。それだけは嫌だから。



「へぇ。誠也って意外と賢いのな。それが分かってるならよかった。お前が逃げたとてすぐに捕まる。そしたらお前は組長と健二さんに酷い目に遭わされちまうからな。それはあんま俺も見たくねぇ。だから逃げないでくれよ誠也。」



渚さんはそう言いながら俺の頭を撫でて抱きしめてきた。この人はよく俺を抱きしめてくる。癖なのか…?



「んじゃ、誠也。キスして貰おうか。」

「…嫌って言ったらどうする?」

「そうだなぁ。そんな我儘言うやつには唇が腫れるまでキスしてやるよ。」



渚さんはニヤって笑いながら俺の唇を触ってきた。冗談じゃない。渚さんは本気だ。そこまでされるぐらいなら俺からキスしよう…。



「…それはいやだ。」

「ならキス、な?」

「わかった…。」

「物分りのいいやつは好きだぜ。」



あーも…。どいつもこいつも要求が多い…。けど渚さんはやっぱり治よりも健二よりも怖くない。本音で話せてる。全部じゃないけどな。



「ほら誠也。早く。」

「わかったから…。」

「ちゃんと唇にするんだぞ。」

「…分かってる。」



俺がそう返事をすると渚さんがまた笑った。その後俺を逃がさないと言わんばかりに抱きしめてきた。そのせいで俺と渚さんの鼻が当たっちまいそうなほど近い距離になった。



「ち、近ぇ…って、」

「いいじゃねぇか別に。こうしねぇと誠也が逃げるだろ?」

「逃げねぇから…!」

「ふーん。まぁいいや。さっさとキスしろ。これ以上待たせるな。」



そう言いながら渚さんは俺の服の中に手を入れてきた。これは早くしねぇとまじでやばい。力じゃ渚さんには適わねえから…。だから俺は目をつぶって渚さんの唇にキスをした。



「…してやったぞキス。」

「相変わらず生意気なやつだな。まぁそこが可愛んだけどな。いい子だ誠也。よくやった。」



何が嬉しんだよ…。俺なんかにキスされて…。そんなに笑顔になるほど嬉しいのか…?渚さんはほんと変なやつだ…。



「…変なやつ。」

「あ?おい誠也。そりゃ俺の事か?」

「他に誰がいんだよ。」

「あー?こらてめぇ。口の利き方に気をつけろよ。」

「だって俺なんかにキスされて何が嬉しんだよ。」

「…誠也。お前ってほんと馬鹿だよな。」



なっ…!誰が馬鹿だ!いや俺は馬鹿だけどよ…。けどそんなストレートに言うなよ…。



「うるせぇ…。」

「はは、可愛いやつ。そういや蓮がお前に会いたがってたぞ。」



蓮…?ああ、わかった。あの幹部だ。渚さんと同じように俺を犯したやつ。そんなやつに会いたくなんかねぇ。



「…俺は会いたくない。」

「はは、そう言うと思った。けどそれ言うのは俺の前だけにしとけよ。あいつらにそんな事言っちゃ駄目だ。酷い目に遭うぞ。」

「…分かってる。渚さんの前だけだ。」

「へぇ。」



なんだこいつ…。いきなりニヤニヤしやがって。気持ち悪ぃな。なんだよ…。渚さんって未だによくわかんねぇ。



「なぁ誠也。それってつまり俺が誠也の中で特別ってことか?」

「ち、ちげぇ!勘違いすんな!」

「はー。お前可愛いやつだな。こっち来い。抱きしめてやる。」

「やめろっ、離せ…!」

「離さねぇよ。可愛いやつめ。お前の言うことなら出来る範囲で答えてやるから何でも言ってみろ誠也。」

「え…?何でも…?」

「おうよ!」



何でも…。何でも教えてくれる…。それならあれがいい。俺が1番知りたいのはあれだ。



「じゃあ…出口教えろ。」

「馬鹿かお前。犯すぞ。」
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