59 / 205
後悔はない
しおりを挟む
「賢明な判断だぞ誠也。」
「……………っ。」
治は俺を縛っていた縄を解きながらそう言った。賢明…。いや違う。馬鹿だよ俺は…。こんなところで一生を過ごすなんて取引をしてしまったんだからな。けどそうするしか俺には方法がない。どの道俺には自由なんて無かっただろうから。やっぱり諦めなければなんとかなるとかそういう戯言がいちばん嫌いだ。
「誠也おいで。風呂に入ろうな。」
治はそう言いながら俺を満足そうに抱き抱えてこの部屋を出ていった。
「なぁ誠也。お前好きなもんとかあんのか?」
「…好きな物?」
何も考えずにぼーっとしていると治に急にそう言われた。けど俺は好きな物なんてない。だからなんて答えるべきか迷っちまった。
「特にはねぇのか?」
「…………っ。」
「別に怒ったりしねぇよ。ないならないでいい。お前の好きなもんが知りたかっただけだ。それに今ねぇなら今から作っていけばいいしな。」
こうやって普通に話してる時の治はあんまり怖くない。ただ地雷は分かんねぇ。だからいつも気を張ってなきゃいけねぇ。
「もっと部屋の案内したかったんだが仕事の時間が近づいてきてしまった。また留守番させちまうけど許してくれ誠也。」
俺はそっちの方が嬉しい。一人の時間がどれだけ嬉しいことか。やっと安心出来る空間にいける…と思ったのに。
「健二がお前の傍にいる予定だから安心して俺の帰りを待っとけ、な?」
「……はい。」
最悪だ。やっと1人になれると思ったのに健二が来んのかよ…。嫌だ…。
「いい子だ誠也。」
そんなことを言いながら治が俺の頭を撫でていると後ろから足音が聞こえてきた。
「組長!!」
「あ?健二か。なんでお前ここにいるんだよ。」
足音の主は健二だった。裏表が激しいやつ。嫌いだ…。
「それはこっちのセリフですよ組長。どこにいらっしゃったんですか。これから商談ですよ。早く準備しないと間に合いません。」
「んな事分かってるよ。だから今から戻ろうとしてたんだ。」
「そうですか。とりあえず誠也は俺が預かりますので組長は準備なさってください。」
「口うるさいやつだな。」
「組長がマイペースなんですよ!」
「分かった分かった。誠也、また後でな。あーそれと星秀の事だがこの組から解放してやることにした。だから健二、お前もそのつもりでいろ。」
「承知しました。では、お気を付けて。」
星秀さんを解放するって言ったのに健二は顔色1つ変えずにそう言った。そんで俺を治から俺を受け取った。だから今度は健二に抱き抱えられる形となっちまった。
「なぁ誠也。星秀はなんかやらかしたのか?」
治の姿が消えた途端に健二はそう言ってきた。だから俺は迷った。本当のことを言っていいのかどうかということを…。
「…そういうわけじゃ、」
「ん?ならなんだよ。まぁ後で組長に聞けばいいか。とりあえず部屋に戻ろうな誠也。」
「…はい。」
「……………っ。」
治は俺を縛っていた縄を解きながらそう言った。賢明…。いや違う。馬鹿だよ俺は…。こんなところで一生を過ごすなんて取引をしてしまったんだからな。けどそうするしか俺には方法がない。どの道俺には自由なんて無かっただろうから。やっぱり諦めなければなんとかなるとかそういう戯言がいちばん嫌いだ。
「誠也おいで。風呂に入ろうな。」
治はそう言いながら俺を満足そうに抱き抱えてこの部屋を出ていった。
「なぁ誠也。お前好きなもんとかあんのか?」
「…好きな物?」
何も考えずにぼーっとしていると治に急にそう言われた。けど俺は好きな物なんてない。だからなんて答えるべきか迷っちまった。
「特にはねぇのか?」
「…………っ。」
「別に怒ったりしねぇよ。ないならないでいい。お前の好きなもんが知りたかっただけだ。それに今ねぇなら今から作っていけばいいしな。」
こうやって普通に話してる時の治はあんまり怖くない。ただ地雷は分かんねぇ。だからいつも気を張ってなきゃいけねぇ。
「もっと部屋の案内したかったんだが仕事の時間が近づいてきてしまった。また留守番させちまうけど許してくれ誠也。」
俺はそっちの方が嬉しい。一人の時間がどれだけ嬉しいことか。やっと安心出来る空間にいける…と思ったのに。
「健二がお前の傍にいる予定だから安心して俺の帰りを待っとけ、な?」
「……はい。」
最悪だ。やっと1人になれると思ったのに健二が来んのかよ…。嫌だ…。
「いい子だ誠也。」
そんなことを言いながら治が俺の頭を撫でていると後ろから足音が聞こえてきた。
「組長!!」
「あ?健二か。なんでお前ここにいるんだよ。」
足音の主は健二だった。裏表が激しいやつ。嫌いだ…。
「それはこっちのセリフですよ組長。どこにいらっしゃったんですか。これから商談ですよ。早く準備しないと間に合いません。」
「んな事分かってるよ。だから今から戻ろうとしてたんだ。」
「そうですか。とりあえず誠也は俺が預かりますので組長は準備なさってください。」
「口うるさいやつだな。」
「組長がマイペースなんですよ!」
「分かった分かった。誠也、また後でな。あーそれと星秀の事だがこの組から解放してやることにした。だから健二、お前もそのつもりでいろ。」
「承知しました。では、お気を付けて。」
星秀さんを解放するって言ったのに健二は顔色1つ変えずにそう言った。そんで俺を治から俺を受け取った。だから今度は健二に抱き抱えられる形となっちまった。
「なぁ誠也。星秀はなんかやらかしたのか?」
治の姿が消えた途端に健二はそう言ってきた。だから俺は迷った。本当のことを言っていいのかどうかということを…。
「…そういうわけじゃ、」
「ん?ならなんだよ。まぁ後で組長に聞けばいいか。とりあえず部屋に戻ろうな誠也。」
「…はい。」
119
お気に入りに追加
543
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
中華マフィア若頭の寵愛が重すぎて頭を抱えています
橋本しら子
BL
あの時、あの場所に近づかなければ、変わらない日常の中にいることができたのかもしれない。居酒屋でアルバイトをしながら学費を稼ぐ苦学生の桃瀬朱兎(ももせあやと)は、バイト終わりに自宅近くの裏路地で怪我をしていた一人の男を助けた。その男こそ、朱龍会日本支部を取り仕切っている中華マフィアの若頭【鼬瓏(ゆうろん)】その人。彼に関わったことから事件に巻き込まれてしまい、気づけば闇オークションで人身売買に掛けられていた。偶然居合わせた鼬瓏に買われたことにより普通の日常から一変、非日常へ身を置くことになってしまったが……
想像していたような酷い扱いなどなく、ただ鼬瓏に甘やかされながら何時も通りの生活を送っていた。
※付きのお話は18指定になります。ご注意ください。
更新は不定期です。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。

目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
インテリヤクザは子守りができない
タタミ
BL
とある事件で大学を中退した初瀬岳は、極道の道へ進みわずか5年で兼城組の若頭にまで上り詰めていた。
冷酷非道なやり口で出世したものの不必要に凄惨な報復を繰り返した結果、組長から『人間味を学べ』という名目で組のシマで立ちんぼをしていた少年・皆木冬馬の教育を任されてしまう。
なんでも性接待で物事を進めようとするバカな冬馬を煙たがっていたが、小学生の頃に親に捨てられ字もろくに読めないとわかると、徐々に同情という名の情を抱くようになり……──

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

ヤクザと捨て子
幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子
ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。
ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる