怖いお兄さん達に誘拐されたお話

安達

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不眠

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「誠也?眠れねぇのか?」

「………………。」



休める…。そうなったはずなのに俺は全く眠れなかった。治が隣にいるからか…?いやきっと違う。そうじゃない。ただただ時間だけがすぎていく…。俺…寝る時いつもどうしてたっけ…?



「無理に寝る必要なんてねぇじゃねぇか。気分転換に歩くか?」

「…歩かない。」



歩くほどの体力なんてないから。疲れて立つことすらも辛い。なのに歩けるわけがなかった。だけどだからといって寝れる訳でもない。



「歩くのも辛いか。」

「……………。」

「なら抱っこしてやる。それならいいだろ?」



ここにいても寝れる気がしない。それなら気分転換に…いや外に出れば何かを探れるかもしれない。それなら外に出た方がいいじゃないか。



「…外行く。」

「おし、じゃあ行こうな。」



そう言った治に俺は頷いた。そしたら治は俺の頭を撫でてきて俺を抱き上げた。



「やっぱ抵抗しねぇと可愛いな。」

「………………。」



抵抗させるようなことをしてるのはお前じゃねぇか…。それを言う勇気なんてねぇけどな…。



「さて、どこに行こうか。事務所もさっき行ってたもんなぁ。下の階に行ってみるか?一個下の階。」



…下の階。誰かが幹部以上しかこの階にはいないって言ってた。てことは下の階にいるのは幹部以下。だとしてもきっと強い。けどどんなやつらがいるのか俺は興味があった。



「行ってみたい。」

「おお。じゃあ行こうな。」

「治さん。下の階には何があるんですか…?」

「何があるってわけじゃねぇけどまぁ事務所みたいなもんだよな。後はヤクザの仕事をする部屋だ。」

「ヤクザの仕事をする部屋って…?」



拷問部屋とか…?カツアゲする部屋とか…?色々妄想が広がる…。



「なんだ誠也。知りたいのか?」

「ちょっとだけ。」

「じゃあ案内してやるよ。怖くなったら直ぐにいえよ。帰ってくるからよ。」

「…怖くなんてならない。」

「はは、そうかそうか。」



そんなふうに治と話しているとエレベーターの前に来ていた。大きい部屋だなとは思っていたけどまさかエレベーターがあるとは思わなかった。



「エレベーターもあるのか…。」

「そうだ。階段はめんどくせぇからな。つってもエレベーター使ってんのは幹部と俺だけだけどな。下っ端の連中は階段だ。」

「…疲れちまうな。」

「それが下っ端ってやつだ。」



また情報が増えた。エレベーターを使うのは渚達幹部と健二、治だけ。階段よりも誰かと出くわす確率が少ないけど幹部たちに出会う確率は高い。ただ反対に階段を使えば幹部には出会わないけど下っ端の人達に出会う。どっちがいいのか…。



「誠也。ここが下の階だ。」

「…綺麗。」

「そうだろ?掃除は一丁前にさせてんだ。汚ぇのはいやだからな。」



上の階もすげぇ綺麗だったけどここも負けないぐらい綺麗だ。ホテルみたいな感じ…。



「「「組長。お疲れ様です。」」」

「おう。」



俺が辺りを見渡していると治の周りに数人集まっていた。この人たちもスーツだ。そんで顔…怖い。



「そいつが誠也くんですか?」

「そうだ。可愛いだろ?」

「はい。組長とお似合いですね。」

「はは、そうかそうか。今日は特に仕事があってきたわけじゃねぇからお前らも仕事に戻れ。俺は自由に歩き回るが気を使わなくていい。」

「「「承知しました。」」」

「じゃ、またなんかあったらすぐ報告な。」

「はい組長。失礼します。」



これが…下っ端?全然下っ端じゃねぇじゃねぇか。充分怖いわ…。



「治さん。」

「どうした?」

「今の誰ですか…?」

「俺の部下だ。優秀な部下だ。」



俺が聞きたかったのはその部下のランクだけど…まぁいいや。あんま聞きすぎると不審がられちまいそうだから。



「ここには部下だけが…?」

「そうだな。1階とかは闇バイトの奴らが行き来したりするが2階以上は基本的に組の連中だけだな。」

「闇バイトってほんとにあるんだな…。」

「ああ。あるぜ。誠也、お前もやってみるか?」

「だ、誰が…!」

「はは、冗談だ。」

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