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大切な人
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「まぁ何にせよ俺はお前を大切にする。そんで星秀をここから逃がしてやろう。」
「…そうだな。」
渚さんは本気でそう言ってきた。まぁそうか。長年星秀んを逃がそうともがいていてそれがやっと叶うんだから。けど…星秀さんと会えなくなるのは正直辛い。別に好きとかそういうんじゃないのになんだよこの感情…。
「ただ一つ問題があるんだよな。」
「…問題?」
「そうだ誠也。その問題ってのがあいつが素直に逃げてくれるかどうかってことだ。」
確かに…。渚さんの言う通りだ。星秀さんは我慢強くて自分を犠牲にする人。だから…。
「俺も逃げるって言ったら星秀さんは逃げるんじゃ…?」
「おう。初めからそのつもりだ。けど誠也が来ねぇ。その事に気づいた星秀は戻ってきそうでな。あいつが傷つけられる姿はもう俺は見たくねぇ。あいつには自由に生きて欲しい。けど星秀はそれを誠也に思ってる。俺があいつにそう思ってるのと同じでな。だからお前が一緒に逃げねぇとあいつも逃げねぇ気がしてよ。」
「…じゃあ俺も逃げる方が。」
「駄目だ。」
…やっぱりそうだよな。俺の中でベストなのは星秀さんと一緒に逃げること。けどそれをしたら星秀さんが危険な目に遭う。渚さんが言うんだからそれは間違えない。けどやっぱ俺もここから逃げてぇ。
「誠也にはここにいてもらう。さっきも約束したろ?」
「…けどそしたら星秀さんは、」
「そうだな。何か策を考えねぇといけねぇな。まぁあと3日あるから考えみる。それをまたお前に伝えに来る。」
「分かった。」
「おう。そろそろ組長が帰ってくるだろうから静かに待ってような。分かってるだろうがこの事は俺以外に話すなよ。」
「…分かってる。」
「いい子だ誠也。」
人生思いどおりには行かない。思い通りに行かなさすぎる。どうしたら俺はここから逃げられる…。どうやったら星秀さんと一緒に…。
「誠也?どうした浮かない顔をして。」
「あ…、いや。」
俺は考えるあまり険しい顔をしてしまっていた。それだけここに居たくないから。けどそれを渚さんに伝えても意味が無い。渚さんは優しいけど…優しくなったけど俺をここから逃がしてくれはしないだろうから。
「なんでもない…。」
「そうか。困った事があったらなんでも言えよ。」
「…ああ。」
困ってることは沢山ある。数え切れねぇよ。まずはここから出たい。治を何とかして欲しい。犯されたくない。舐められるのも嫌いだ。キスも嫌い。触られるのも怖い。隣にいられるだけで嫌だ。けどそれを言ったところでなんにも変わんねぇんだ。俺はな。星秀さんは違う。地獄から解放される。それを思うだけで俺は頑張れる…。
「にしてもお前ほんと可愛いよな。なぁ誠也。」
「……可愛くねぇ。」
「いや可愛いぞ。さすがにこれは自覚してんだろ。」
…自覚?そんなの昔っからしてる。けどこの顔のせいで俺は嫌な事が沢山あった。だから何もされないように喧嘩も強くなった…つもりだったんだよ。お前らには適わねぇけどな。
「知らねぇそんなの…。」
「そうかそうか。お、組長が帰ってくるみたいだぞ。足音が聞こえてきた。」
最悪だ…。一生…帰ってこなくていいのに。
「誠也。俺との約束覚えてるな?組長に楯突くなよ。いい子でいるんだ。お前を守るために。」
「…わかってる。」
「いい子だ。何があっても今は耐えるんだ。お前なら出来るから。」
渚さんはそう子供を言い聞かせるみたいに言ってきた。けど馬鹿にしてるわけじゃねぇ。だから俺も渚さんのその言葉に頷いた。
「よぉ。誠也はいい子にしてたか?」
扉が開いて治がこの部屋に入ってきた。それだけで俺は震えそうになる。怖いんだ…こいつ。威圧感があるんだよ。
「お疲れ様です組長。はい。誠也はとてもいい子でしたよ。ベットから一歩も降りようとせず組長を待ってました。」
「そうかそうか。渚、お前もありがとな。仕事に戻っていいぞ。」
「承知しました。ではお気を付けて。」
ああ…。渚さんも行ってしまった。また治と2人っきり。地獄の空間だ。地獄の時間だ。こいつは地雷が分かんねぇからいつ爆発するか分からない。その恐怖に脅えながらこいつと過ごす時間は地獄以外の何物でもない。
「なぁ誠也。渚と何話してたんだ?」
「…別に何も…話してない。」
変に嘘をつくと治にはバレちまう。だから俺は下を向きながらそう言った。そしたら顔が焦っていたとしても治にはそれが見えねぇからな。
「そうか。ま、緊張するよな。これからお前はここで生活するんだ。あいつらとも仲良くするんだぞ。無理にとは言わねぇけどな。」
「…はい。」
渚さん…とは仲良く出来るだろうな。けど他の4人は分からない。健二に至っては無理だ。仲良くなんか出来ない。怖いが勝ってしまうから…。くそ…っ。星秀さんと俺も逃げたい…っ。悔しいな…。
「随分と聞き分けが良くなったなお前。まぁいい事か。そんなお前には褒美をやらねぇとな。誠也、足を広げろ。」
「…え?」
「聞こえなかったか?足広げろって言ったんだ。可愛がってやるよ。」
「…そうだな。」
渚さんは本気でそう言ってきた。まぁそうか。長年星秀んを逃がそうともがいていてそれがやっと叶うんだから。けど…星秀さんと会えなくなるのは正直辛い。別に好きとかそういうんじゃないのになんだよこの感情…。
「ただ一つ問題があるんだよな。」
「…問題?」
「そうだ誠也。その問題ってのがあいつが素直に逃げてくれるかどうかってことだ。」
確かに…。渚さんの言う通りだ。星秀さんは我慢強くて自分を犠牲にする人。だから…。
「俺も逃げるって言ったら星秀さんは逃げるんじゃ…?」
「おう。初めからそのつもりだ。けど誠也が来ねぇ。その事に気づいた星秀は戻ってきそうでな。あいつが傷つけられる姿はもう俺は見たくねぇ。あいつには自由に生きて欲しい。けど星秀はそれを誠也に思ってる。俺があいつにそう思ってるのと同じでな。だからお前が一緒に逃げねぇとあいつも逃げねぇ気がしてよ。」
「…じゃあ俺も逃げる方が。」
「駄目だ。」
…やっぱりそうだよな。俺の中でベストなのは星秀さんと一緒に逃げること。けどそれをしたら星秀さんが危険な目に遭う。渚さんが言うんだからそれは間違えない。けどやっぱ俺もここから逃げてぇ。
「誠也にはここにいてもらう。さっきも約束したろ?」
「…けどそしたら星秀さんは、」
「そうだな。何か策を考えねぇといけねぇな。まぁあと3日あるから考えみる。それをまたお前に伝えに来る。」
「分かった。」
「おう。そろそろ組長が帰ってくるだろうから静かに待ってような。分かってるだろうがこの事は俺以外に話すなよ。」
「…分かってる。」
「いい子だ誠也。」
人生思いどおりには行かない。思い通りに行かなさすぎる。どうしたら俺はここから逃げられる…。どうやったら星秀さんと一緒に…。
「誠也?どうした浮かない顔をして。」
「あ…、いや。」
俺は考えるあまり険しい顔をしてしまっていた。それだけここに居たくないから。けどそれを渚さんに伝えても意味が無い。渚さんは優しいけど…優しくなったけど俺をここから逃がしてくれはしないだろうから。
「なんでもない…。」
「そうか。困った事があったらなんでも言えよ。」
「…ああ。」
困ってることは沢山ある。数え切れねぇよ。まずはここから出たい。治を何とかして欲しい。犯されたくない。舐められるのも嫌いだ。キスも嫌い。触られるのも怖い。隣にいられるだけで嫌だ。けどそれを言ったところでなんにも変わんねぇんだ。俺はな。星秀さんは違う。地獄から解放される。それを思うだけで俺は頑張れる…。
「にしてもお前ほんと可愛いよな。なぁ誠也。」
「……可愛くねぇ。」
「いや可愛いぞ。さすがにこれは自覚してんだろ。」
…自覚?そんなの昔っからしてる。けどこの顔のせいで俺は嫌な事が沢山あった。だから何もされないように喧嘩も強くなった…つもりだったんだよ。お前らには適わねぇけどな。
「知らねぇそんなの…。」
「そうかそうか。お、組長が帰ってくるみたいだぞ。足音が聞こえてきた。」
最悪だ…。一生…帰ってこなくていいのに。
「誠也。俺との約束覚えてるな?組長に楯突くなよ。いい子でいるんだ。お前を守るために。」
「…わかってる。」
「いい子だ。何があっても今は耐えるんだ。お前なら出来るから。」
渚さんはそう子供を言い聞かせるみたいに言ってきた。けど馬鹿にしてるわけじゃねぇ。だから俺も渚さんのその言葉に頷いた。
「よぉ。誠也はいい子にしてたか?」
扉が開いて治がこの部屋に入ってきた。それだけで俺は震えそうになる。怖いんだ…こいつ。威圧感があるんだよ。
「お疲れ様です組長。はい。誠也はとてもいい子でしたよ。ベットから一歩も降りようとせず組長を待ってました。」
「そうかそうか。渚、お前もありがとな。仕事に戻っていいぞ。」
「承知しました。ではお気を付けて。」
ああ…。渚さんも行ってしまった。また治と2人っきり。地獄の空間だ。地獄の時間だ。こいつは地雷が分かんねぇからいつ爆発するか分からない。その恐怖に脅えながらこいつと過ごす時間は地獄以外の何物でもない。
「なぁ誠也。渚と何話してたんだ?」
「…別に何も…話してない。」
変に嘘をつくと治にはバレちまう。だから俺は下を向きながらそう言った。そしたら顔が焦っていたとしても治にはそれが見えねぇからな。
「そうか。ま、緊張するよな。これからお前はここで生活するんだ。あいつらとも仲良くするんだぞ。無理にとは言わねぇけどな。」
「…はい。」
渚さん…とは仲良く出来るだろうな。けど他の4人は分からない。健二に至っては無理だ。仲良くなんか出来ない。怖いが勝ってしまうから…。くそ…っ。星秀さんと俺も逃げたい…っ。悔しいな…。
「随分と聞き分けが良くなったなお前。まぁいい事か。そんなお前には褒美をやらねぇとな。誠也、足を広げろ。」
「…え?」
「聞こえなかったか?足広げろって言ったんだ。可愛がってやるよ。」
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