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覚悟
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「いいんだな。お前はここから二度と出れない。そういう事になるぞ。覚悟はあるのか誠也。」
そんな覚悟なんてあるわけねぇだろ…。嫌に決まってる…。俺はこんなんだけど誰かの役に立つ仕事がしたいっていう夢があったんだ。けど仕方ねぇじゃねぇか。星秀さんがこれ以上傷つく姿を見たくない…。だから…。
「あります。」
「そうか。思ってるよりもお前は強い子だな。さすが俺が惚れた男だ。」
「…はい?」
惚れた…?また変な冗談を言い始めた。だから俺は呆れた顔をして渚さんを見た。
「なんだその顔は。可愛いな。」
「か、可愛くねぇ…!」
俺は渚に顔を触られて思わず敬語を忘れるほど慌ててしまった。そんな俺をみて渚は笑ってきやがった…。
「はは、お前慌てすぎだろ。」
「うるさいです…。」
「別に敬語で喋んなくていい。楽に話せ。協力までしてもらうんだ。俺はお前に平穏な毎日を送って欲しい。少しでもな。だから俺の前だけは気を抜いて過ごしてろ、な?誠也。」
そこまで渚さんにとって星秀さんは大切なんだろうな。星秀さんにもこの組に味方がいたんだ。良かった…。
「あ、ありがとう…。」
「そうそう。その調子だ。それで本題に戻ってもいいか?」
「うん。」
「はは、可愛いやつ。」
「俺は可愛くねぇ…!」
「いや可愛いだろ。まぁいいけど。んで話を戻すが星秀は3日後に帰ってくるよな。作戦を実行するのはその時だ。星秀が戻ったあといつもだったら組長が星秀のことを抱くんだ。ボロボロになった状態のあいつをな。けど今はお前がいるから多分抱かない。」
治って本当に人間なのかよ…。どうしてそこまで酷いことを普通にできるんだ…。なんかここまで来ると治も過去に何かあったんじゃないかって思い始めちまう。
「星秀を逃がすチャンスはその時しかない。だからお前は組長の気を引いてて欲しい。星秀が帰ってきてから出来るだけ長くだ。出来るのなら健二さんの気も引いてて欲しい。」
「……………。」
なんか俺はその渚さんの言葉を聞いて安心した。星秀さんは本当にこの人に大切にされてるんだなって思えたから。
「なんだよ誠也。急に黙り込んで。」
「…なんか渚さんってそんな感じの人だと思わなかった。さっきは根っからのヤクザって感じの怖さがあったのに。」
「あれは仕方ねぇ事だ。けど怖がらせて悪かった。組長の前だったしあん時は星秀もいたからな。だから俺はお前に酷くしちまった。お前を抱いたのは…悪い。普通に我慢出来なかった。何せお前可愛いからよ。」
「…可愛くねぇし。」
隙あらば可愛いと言ってくる…。俺だって男だ。可愛いよりかはかっこいいがいい…。いいよな渚さんはかっこいい顔してんだから…っ。
「いや可愛いよお前は。認めねぇところもまた可愛い。だから誠也、お前あんま組長に楯突くなよ。」
「…なんで?」
って聞かなくても分かる。俺が楯突けば治は怒る。それを渚さんは避けたいんだろうな。
「お前が嫌な思いをするからだ。俺はあんまお前を傷つけたくない。けど俺には権力がねぇから組長を止めることが出来ねぇ。だからお前は自分を守れ。」
「…けど、ずっと言いなりは嫌だ。」
「分かってる。お前のその気持ちも分かる。けど組長に逆らっていいことは無い。あの人は凄い人だから。」
「すごいって…?」
「それは詳しく話せねぇ。」
くそ…俺はそこが聞きたいのに。けど俺には話せねぇってことは俺は知らない方がいいことってことだよな。それなら聞かずにおこう。
「…渚さん。本当に俺が大人しくしてたら酷い事はされないのか…?」
「そうだ。」
「どうしてそう言い切れるんだ…?」
「組長はそもそも攫った少年をこの屋敷に連れてこない。ましてやこんな部屋まで与えることは絶対にない。過去に組長が攫った奴をここに連れてきたのは星秀だけだ。それとお前。だから俺には分かる。組長はお前を一生ここに閉じ込めるつもりだってな。」
「…一生。」
「そうだ。だから平穏に暮らすためにお前は自分を守るんだ。」
一生…この監獄にいなきゃいけない。それは嫌だ。だってここにいたら星秀さんが本当に逃げれたのかどうかも分からない。逃げるべきだ。渚さんにはあんな風に言ったけど星秀さんが逃げたあとでやっぱり逃げよう。
「…分かった。」
「よし、いい子だ誠也。それとすまないな。」
渚さんはそう言いながら申し訳なさそうな顔をして俺の頭を撫でてきた。
「…なんで渚さんが謝るんだよ。」
「お前は組長に見つからなきゃ普通に暮らせてた。家庭環境は最悪だったかもしれねぇけど家を出て違う人生だって歩めた。なのにここに来たからお前は自由が無くなった。俺も酷い事したしな。けど俺はお前を逃がしてやるつもりは無い。ごめんな。でもその分お前の事は絶対大切にするから。」
矛盾してる。けど渚さんは悪いやつじゃない。いや悪いやつだ。悪いやつだけど悪いやつじゃない。なんて言えばいいのか分かんねぇけどこの人は本気で俺のことを考えてくれてる。
「…告白みたいになってる。」
「はは、確かに。けど実際俺は誠也が好きだしな。」
「まだ出会ったばかりじゃねぇか。」
「そうだけどよ。一目惚れとかってあるだろ?俺は多分それだ。」
「…変なやつ。」
そんな覚悟なんてあるわけねぇだろ…。嫌に決まってる…。俺はこんなんだけど誰かの役に立つ仕事がしたいっていう夢があったんだ。けど仕方ねぇじゃねぇか。星秀さんがこれ以上傷つく姿を見たくない…。だから…。
「あります。」
「そうか。思ってるよりもお前は強い子だな。さすが俺が惚れた男だ。」
「…はい?」
惚れた…?また変な冗談を言い始めた。だから俺は呆れた顔をして渚さんを見た。
「なんだその顔は。可愛いな。」
「か、可愛くねぇ…!」
俺は渚に顔を触られて思わず敬語を忘れるほど慌ててしまった。そんな俺をみて渚は笑ってきやがった…。
「はは、お前慌てすぎだろ。」
「うるさいです…。」
「別に敬語で喋んなくていい。楽に話せ。協力までしてもらうんだ。俺はお前に平穏な毎日を送って欲しい。少しでもな。だから俺の前だけは気を抜いて過ごしてろ、な?誠也。」
そこまで渚さんにとって星秀さんは大切なんだろうな。星秀さんにもこの組に味方がいたんだ。良かった…。
「あ、ありがとう…。」
「そうそう。その調子だ。それで本題に戻ってもいいか?」
「うん。」
「はは、可愛いやつ。」
「俺は可愛くねぇ…!」
「いや可愛いだろ。まぁいいけど。んで話を戻すが星秀は3日後に帰ってくるよな。作戦を実行するのはその時だ。星秀が戻ったあといつもだったら組長が星秀のことを抱くんだ。ボロボロになった状態のあいつをな。けど今はお前がいるから多分抱かない。」
治って本当に人間なのかよ…。どうしてそこまで酷いことを普通にできるんだ…。なんかここまで来ると治も過去に何かあったんじゃないかって思い始めちまう。
「星秀を逃がすチャンスはその時しかない。だからお前は組長の気を引いてて欲しい。星秀が帰ってきてから出来るだけ長くだ。出来るのなら健二さんの気も引いてて欲しい。」
「……………。」
なんか俺はその渚さんの言葉を聞いて安心した。星秀さんは本当にこの人に大切にされてるんだなって思えたから。
「なんだよ誠也。急に黙り込んで。」
「…なんか渚さんってそんな感じの人だと思わなかった。さっきは根っからのヤクザって感じの怖さがあったのに。」
「あれは仕方ねぇ事だ。けど怖がらせて悪かった。組長の前だったしあん時は星秀もいたからな。だから俺はお前に酷くしちまった。お前を抱いたのは…悪い。普通に我慢出来なかった。何せお前可愛いからよ。」
「…可愛くねぇし。」
隙あらば可愛いと言ってくる…。俺だって男だ。可愛いよりかはかっこいいがいい…。いいよな渚さんはかっこいい顔してんだから…っ。
「いや可愛いよお前は。認めねぇところもまた可愛い。だから誠也、お前あんま組長に楯突くなよ。」
「…なんで?」
って聞かなくても分かる。俺が楯突けば治は怒る。それを渚さんは避けたいんだろうな。
「お前が嫌な思いをするからだ。俺はあんまお前を傷つけたくない。けど俺には権力がねぇから組長を止めることが出来ねぇ。だからお前は自分を守れ。」
「…けど、ずっと言いなりは嫌だ。」
「分かってる。お前のその気持ちも分かる。けど組長に逆らっていいことは無い。あの人は凄い人だから。」
「すごいって…?」
「それは詳しく話せねぇ。」
くそ…俺はそこが聞きたいのに。けど俺には話せねぇってことは俺は知らない方がいいことってことだよな。それなら聞かずにおこう。
「…渚さん。本当に俺が大人しくしてたら酷い事はされないのか…?」
「そうだ。」
「どうしてそう言い切れるんだ…?」
「組長はそもそも攫った少年をこの屋敷に連れてこない。ましてやこんな部屋まで与えることは絶対にない。過去に組長が攫った奴をここに連れてきたのは星秀だけだ。それとお前。だから俺には分かる。組長はお前を一生ここに閉じ込めるつもりだってな。」
「…一生。」
「そうだ。だから平穏に暮らすためにお前は自分を守るんだ。」
一生…この監獄にいなきゃいけない。それは嫌だ。だってここにいたら星秀さんが本当に逃げれたのかどうかも分からない。逃げるべきだ。渚さんにはあんな風に言ったけど星秀さんが逃げたあとでやっぱり逃げよう。
「…分かった。」
「よし、いい子だ誠也。それとすまないな。」
渚さんはそう言いながら申し訳なさそうな顔をして俺の頭を撫でてきた。
「…なんで渚さんが謝るんだよ。」
「お前は組長に見つからなきゃ普通に暮らせてた。家庭環境は最悪だったかもしれねぇけど家を出て違う人生だって歩めた。なのにここに来たからお前は自由が無くなった。俺も酷い事したしな。けど俺はお前を逃がしてやるつもりは無い。ごめんな。でもその分お前の事は絶対大切にするから。」
矛盾してる。けど渚さんは悪いやつじゃない。いや悪いやつだ。悪いやつだけど悪いやつじゃない。なんて言えばいいのか分かんねぇけどこの人は本気で俺のことを考えてくれてる。
「…告白みたいになってる。」
「はは、確かに。けど実際俺は誠也が好きだしな。」
「まだ出会ったばかりじゃねぇか。」
「そうだけどよ。一目惚れとかってあるだろ?俺は多分それだ。」
「…変なやつ。」
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