上 下
53 / 117

覚悟

しおりを挟む
「いいんだな。お前はここから二度と出れない。そういう事になるぞ。覚悟はあるのか誠也。」



そんな覚悟なんてあるわけねぇだろ…。嫌に決まってる…。俺はこんなんだけど誰かの役に立つ仕事がしたいっていう夢があったんだ。けど仕方ねぇじゃねぇか。星秀さんがこれ以上傷つく姿を見たくない…。だから…。



「あります。」

「そうか。思ってるよりもお前は強い子だな。さすが俺が惚れた男だ。」

「…はい?」



惚れた…?また変な冗談を言い始めた。だから俺は呆れた顔をして渚さんを見た。



「なんだその顔は。可愛いな。」

「か、可愛くねぇ…!」



俺は渚に顔を触られて思わず敬語を忘れるほど慌ててしまった。そんな俺をみて渚は笑ってきやがった…。



「はは、お前慌てすぎだろ。」

「うるさいです…。」

「別に敬語で喋んなくていい。楽に話せ。協力までしてもらうんだ。俺はお前に平穏な毎日を送って欲しい。少しでもな。だから俺の前だけは気を抜いて過ごしてろ、な?誠也。」



そこまで渚さんにとって星秀さんは大切なんだろうな。星秀さんにもこの組に味方がいたんだ。良かった…。



「あ、ありがとう…。」

「そうそう。その調子だ。それで本題に戻ってもいいか?」

「うん。」

「はは、可愛いやつ。」

「俺は可愛くねぇ…!」

「いや可愛いだろ。まぁいいけど。んで話を戻すが星秀は3日後に帰ってくるよな。作戦を実行するのはその時だ。星秀が戻ったあといつもだったら組長が星秀のことを抱くんだ。ボロボロになった状態のあいつをな。けど今はお前がいるから多分抱かない。」



治って本当に人間なのかよ…。どうしてそこまで酷いことを普通にできるんだ…。なんかここまで来ると治も過去に何かあったんじゃないかって思い始めちまう。



「星秀を逃がすチャンスはその時しかない。だからお前は組長の気を引いてて欲しい。星秀が帰ってきてから出来るだけ長くだ。出来るのなら健二さんの気も引いてて欲しい。」

「……………。」



なんか俺はその渚さんの言葉を聞いて安心した。星秀さんは本当にこの人に大切にされてるんだなって思えたから。



「なんだよ誠也。急に黙り込んで。」

「…なんか渚さんってそんな感じの人だと思わなかった。さっきは根っからのヤクザって感じの怖さがあったのに。」

「あれは仕方ねぇ事だ。けど怖がらせて悪かった。組長の前だったしあん時は星秀もいたからな。だから俺はお前に酷くしちまった。お前を抱いたのは…悪い。普通に我慢出来なかった。何せお前可愛いからよ。」

「…可愛くねぇし。」



隙あらば可愛いと言ってくる…。俺だって男だ。可愛いよりかはかっこいいがいい…。いいよな渚さんはかっこいい顔してんだから…っ。



「いや可愛いよお前は。認めねぇところもまた可愛い。だから誠也、お前あんま組長に楯突くなよ。」

「…なんで?」



って聞かなくても分かる。俺が楯突けば治は怒る。それを渚さんは避けたいんだろうな。



「お前が嫌な思いをするからだ。俺はあんまお前を傷つけたくない。けど俺には権力がねぇから組長を止めることが出来ねぇ。だからお前は自分を守れ。」

「…けど、ずっと言いなりは嫌だ。」

「分かってる。お前のその気持ちも分かる。けど組長に逆らっていいことは無い。あの人は凄い人だから。」

「すごいって…?」

「それは詳しく話せねぇ。」



くそ…俺はそこが聞きたいのに。けど俺には話せねぇってことは俺は知らない方がいいことってことだよな。それなら聞かずにおこう。



「…渚さん。本当に俺が大人しくしてたら酷い事はされないのか…?」

「そうだ。」

「どうしてそう言い切れるんだ…?」

「組長はそもそも攫った少年をこの屋敷に連れてこない。ましてやこんな部屋まで与えることは絶対にない。過去に組長が攫った奴をここに連れてきたのは星秀だけだ。それとお前。だから俺には分かる。組長はお前を一生ここに閉じ込めるつもりだってな。」

「…一生。」

「そうだ。だから平穏に暮らすためにお前は自分を守るんだ。」



一生…この監獄にいなきゃいけない。それは嫌だ。だってここにいたら星秀さんが本当に逃げれたのかどうかも分からない。逃げるべきだ。渚さんにはあんな風に言ったけど星秀さんが逃げたあとでやっぱり逃げよう。



「…分かった。」

「よし、いい子だ誠也。それとすまないな。」



渚さんはそう言いながら申し訳なさそうな顔をして俺の頭を撫でてきた。



「…なんで渚さんが謝るんだよ。」

「お前は組長に見つからなきゃ普通に暮らせてた。家庭環境は最悪だったかもしれねぇけど家を出て違う人生だって歩めた。なのにここに来たからお前は自由が無くなった。俺も酷い事したしな。けど俺はお前を逃がしてやるつもりは無い。ごめんな。でもその分お前の事は絶対大切にするから。」



矛盾してる。けど渚さんは悪いやつじゃない。いや悪いやつだ。悪いやつだけど悪いやつじゃない。なんて言えばいいのか分かんねぇけどこの人は本気で俺のことを考えてくれてる。



「…告白みたいになってる。」

「はは、確かに。けど実際俺は誠也が好きだしな。」

「まだ出会ったばかりじゃねぇか。」

「そうだけどよ。一目惚れとかってあるだろ?俺は多分それだ。」

「…変なやつ。」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉

あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた! 弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?

極道達に閉じ込められる少年〜監獄

安達
BL
翔湊(かなた)はヤクザの家計に生まれたと思っていた。組員からも兄達からも愛され守られ1度も外の世界に出たことがない。しかし、実際は違い家族と思っていた人達との血縁関係は無く養子であることが判明。そして翔湊は自分がなぜこの家に養子として迎え入れられたのか衝撃の事実を知る。頼れる家族も居なくなり外に出たことがない翔湊は友達もいない。一先この家から逃げ出そうとする。だが行く手を阻む俵積田会の極道達によってーーー? 最後はハッピーエンドです。

組長様のお嫁さん

ヨモギ丸
BL
いい所出身の外に憧れを抱くオメガのお坊ちゃん 雨宮 優 は家出をする。 持ち物に強めの薬を持っていたのだが、うっかりバックごと全ロスしてしまった。 公園のベンチで死にかけていた優を助けたのはたまたまお散歩していた世界規模の組を締め上げる組長 一ノ瀬 拓真 猫を飼う感覚で優を飼うことにした拓真だったが、だんだんその感情が恋愛感情に変化していく。 『へ?拓真さん俺でいいの?』

[R18] 20歳の俺、男達のペットになる

ねねこ
BL
20歳の男がご主人様に飼われペットとなり、体を開発されまくって、複数の男達に調教される話です。 複数表現あり

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

監禁されて愛されて

カイン
BL
美影美羽(みかげみう)はヤクザのトップである美影雷(みかげらい)の恋人らしい、しかし誰も見た事がない。それには雷の監禁が原因だった…そんな2人の日常を覗いて見ましょう〜

ニューハーフ極道ZERO

フロイライン
BL
イケイケの若手ヤクザ松山亮輔は、ヘタを打ってニューハーフにされてしまう。 激変する環境の中、苦労しながらも再び極道としてのし上がっていこうとするのだが‥

処理中です...