52 / 102
頼み
しおりを挟む
「見る目…?なんですかそれ…。」
「細かいことは気にすんな。とにかく星秀が違う目をしたんだ。お前はそれだけ知ってればいい。」
なんだよそれ…。ヤクザってのは横暴なやつばっかりだな。渚もそうだ。けどこの話は星秀さんのこと。だから詳しく俺は知りたい。
「渚さん。」
「あ?」
「俺は星秀さんのことを知りたいです。」
「そうかよ。」
そうかよってなんだよ。俺は知りたいって言ってんのにその反応なんだよ。もっと詳しく言えってか?そうか。それなら言ってやるよ。星秀さんのためだ。
「だから教えてください。」
「それは無理だ。」
「どうしてですか?」
「どうしてもだ。詳しくは言えねぇ。それを言うことで星秀を傷つけちまうかもしれねぇから。今だってあいつはきっと泣いてる。」
やっぱり知ってるんだ渚も…。今星秀さんが何をされてるのか…。
「それは…渚さんにもどうにも出来ないんですか?」
「ああ。俺が下手に動けば星秀が傷つけられる。だからあんまり動けねぇ。組長は俺らに星秀にしてる仕打ちを言ってない。けど俺らが勘づいてることも知ってる。そんな組長に楯突けば星秀が傷つく。俺も組長が嫌いなわけじゃねぇからこうやってこんな話をするのも少し辛い。」
「…あの、渚さん。」
「なんだよ。」
「…俺、ここから逃げたいんです。」
「は?」
言ってしまった…。いやけど言わなくても渚さんは気づいてるよな。俺が逃げ出そうとしてることに。だから治が帰ってくるまでに伝えたいことを伝えるんだ。
「何言ってんだよお前。そんな事許さねぇよ。」
渚がそう言いながら俺の腕を掴んできた。今すぐに逃げようなんて思ってるわけじゃない。だから今腕を掴んでも意味無い…。言わないけどさ。
「それは分かってます。」
「ならなんで言うんだよ。しかも俺に。馬鹿なのか?いやまぁどっちでもいいけどよ。何がなんでも逃がさねぇからな。」
「どうしてですか?」
「俺が単にお前を気に入ってるから。」
「…渚さん。ほんとにそれが理由ですか?」
「ああ。まぁ正直に言えば半分それが理由だ。」
半分…。俺はそのもう半分の理由が知りたい。多分星秀さんの事だから。
「もう半分は…?」
「生意気なやつだな。」
「教えてください渚さん。」
「言わねぇよ。」
「星秀さんのことですか?」
時間が無い。だから俺は一向に言おうとしない渚さんにそう言った。そしたら渚さんは少しだけ動揺した。俺はそれを見逃さなかった。
「星秀さんのことなんですね。」
「…なんだお前。俺の事怖くねぇのかよ。スラスラ喋りやがって。つーか誠也、お前何を企んでんだ。」
「何も企んでませんよ。」
「嘘をつくな。組長が帰ってきたらお前が逃げようとしてたことを報告してもいいんだぞ。」
ってことは渚さんは言わないつもりだったんだ。何でもかんでも報告するくせに俺が逃げたいってさっき言ったことは報告するつもりはなかった。それには絶対なにか理由があるはず。
「言わないつもりだったんですね。俺が逃げたいって渚さんに言ったこと。」
「…うるせぇ。」
「渚さん教えてください。俺は星秀さんを助けたいんです。」
「それは本気か?」
「嘘なんて言いません。」
星秀さんは優しい人だから。優しくて…どうしようもない人。俺なんかのために我慢する人。だから俺も助けるんだ。
「そうか。ならお前を信じる。」
…え?そんな躊躇なく?俺の事を信じるのか…?
「そんな簡単に…?」
「簡単じゃねぇよ。けどそうするしかねぇだろ。あいつを助けられるのはお前だけだ。」
渚さんは…嘘をついてない。星秀さんを本気で助けようとしてる。
「渚さん。俺は…星秀さんと逃げたいです。」
「一緒にか?」
「はい。」
「誠也。悪いがそれは出来ねぇ。」
「…え?」
助けてくれるんじゃないのか?俺を騙してたのか?けどそうは見えない。どういう事だ…?
「一緒には逃がしてやることは出来ない。」
ああ…なるほど。そういう事だったのか。
「俺と星秀さん別々にって事ですか?」
「いやそうじゃねぇ。」
そうじゃない…?だったらなんだ…?渚は何を考えてるんだ…?全くわかんねぇ。
「じゃあどういうことですか…?」
「悪いが俺はお前を逃がしてやるつもりは無い。逃がすのは星秀だけだ。」
「…え?」
「すまんな誠也。単にそれは俺がお前を気に入ってるっていうのもある。俺は実際組長がお前を捨てるなら俺が貰うつもりだしよ。だがそれ以上に組長がお前を気に入ってる。そんな状態で仮に運良くお前が逃げ出したとしても組長は必ずお前を見つけ出す。どこにいたとしてもな。あの人は力があるから。そんなお前と星秀を一緒に逃がしてやったら星秀が危険な目に遭う。それは出来ねぇんだ。あいつをもう傷つけたくないから。すまない誠也。星秀のために俺に協力してくれ。」
星秀さんだけ…。そしたら俺はここにずっといることになる…。けど星秀さんはそれで解放される。長い地獄から解放されることが出来るんだ。俺は逃げたとしてもまた捕まる可能性が高い…。それなら…。
「分かりました。星秀さんのために俺は渚さんに協力します。」
「細かいことは気にすんな。とにかく星秀が違う目をしたんだ。お前はそれだけ知ってればいい。」
なんだよそれ…。ヤクザってのは横暴なやつばっかりだな。渚もそうだ。けどこの話は星秀さんのこと。だから詳しく俺は知りたい。
「渚さん。」
「あ?」
「俺は星秀さんのことを知りたいです。」
「そうかよ。」
そうかよってなんだよ。俺は知りたいって言ってんのにその反応なんだよ。もっと詳しく言えってか?そうか。それなら言ってやるよ。星秀さんのためだ。
「だから教えてください。」
「それは無理だ。」
「どうしてですか?」
「どうしてもだ。詳しくは言えねぇ。それを言うことで星秀を傷つけちまうかもしれねぇから。今だってあいつはきっと泣いてる。」
やっぱり知ってるんだ渚も…。今星秀さんが何をされてるのか…。
「それは…渚さんにもどうにも出来ないんですか?」
「ああ。俺が下手に動けば星秀が傷つけられる。だからあんまり動けねぇ。組長は俺らに星秀にしてる仕打ちを言ってない。けど俺らが勘づいてることも知ってる。そんな組長に楯突けば星秀が傷つく。俺も組長が嫌いなわけじゃねぇからこうやってこんな話をするのも少し辛い。」
「…あの、渚さん。」
「なんだよ。」
「…俺、ここから逃げたいんです。」
「は?」
言ってしまった…。いやけど言わなくても渚さんは気づいてるよな。俺が逃げ出そうとしてることに。だから治が帰ってくるまでに伝えたいことを伝えるんだ。
「何言ってんだよお前。そんな事許さねぇよ。」
渚がそう言いながら俺の腕を掴んできた。今すぐに逃げようなんて思ってるわけじゃない。だから今腕を掴んでも意味無い…。言わないけどさ。
「それは分かってます。」
「ならなんで言うんだよ。しかも俺に。馬鹿なのか?いやまぁどっちでもいいけどよ。何がなんでも逃がさねぇからな。」
「どうしてですか?」
「俺が単にお前を気に入ってるから。」
「…渚さん。ほんとにそれが理由ですか?」
「ああ。まぁ正直に言えば半分それが理由だ。」
半分…。俺はそのもう半分の理由が知りたい。多分星秀さんの事だから。
「もう半分は…?」
「生意気なやつだな。」
「教えてください渚さん。」
「言わねぇよ。」
「星秀さんのことですか?」
時間が無い。だから俺は一向に言おうとしない渚さんにそう言った。そしたら渚さんは少しだけ動揺した。俺はそれを見逃さなかった。
「星秀さんのことなんですね。」
「…なんだお前。俺の事怖くねぇのかよ。スラスラ喋りやがって。つーか誠也、お前何を企んでんだ。」
「何も企んでませんよ。」
「嘘をつくな。組長が帰ってきたらお前が逃げようとしてたことを報告してもいいんだぞ。」
ってことは渚さんは言わないつもりだったんだ。何でもかんでも報告するくせに俺が逃げたいってさっき言ったことは報告するつもりはなかった。それには絶対なにか理由があるはず。
「言わないつもりだったんですね。俺が逃げたいって渚さんに言ったこと。」
「…うるせぇ。」
「渚さん教えてください。俺は星秀さんを助けたいんです。」
「それは本気か?」
「嘘なんて言いません。」
星秀さんは優しい人だから。優しくて…どうしようもない人。俺なんかのために我慢する人。だから俺も助けるんだ。
「そうか。ならお前を信じる。」
…え?そんな躊躇なく?俺の事を信じるのか…?
「そんな簡単に…?」
「簡単じゃねぇよ。けどそうするしかねぇだろ。あいつを助けられるのはお前だけだ。」
渚さんは…嘘をついてない。星秀さんを本気で助けようとしてる。
「渚さん。俺は…星秀さんと逃げたいです。」
「一緒にか?」
「はい。」
「誠也。悪いがそれは出来ねぇ。」
「…え?」
助けてくれるんじゃないのか?俺を騙してたのか?けどそうは見えない。どういう事だ…?
「一緒には逃がしてやることは出来ない。」
ああ…なるほど。そういう事だったのか。
「俺と星秀さん別々にって事ですか?」
「いやそうじゃねぇ。」
そうじゃない…?だったらなんだ…?渚は何を考えてるんだ…?全くわかんねぇ。
「じゃあどういうことですか…?」
「悪いが俺はお前を逃がしてやるつもりは無い。逃がすのは星秀だけだ。」
「…え?」
「すまんな誠也。単にそれは俺がお前を気に入ってるっていうのもある。俺は実際組長がお前を捨てるなら俺が貰うつもりだしよ。だがそれ以上に組長がお前を気に入ってる。そんな状態で仮に運良くお前が逃げ出したとしても組長は必ずお前を見つけ出す。どこにいたとしてもな。あの人は力があるから。そんなお前と星秀を一緒に逃がしてやったら星秀が危険な目に遭う。それは出来ねぇんだ。あいつをもう傷つけたくないから。すまない誠也。星秀のために俺に協力してくれ。」
星秀さんだけ…。そしたら俺はここにずっといることになる…。けど星秀さんはそれで解放される。長い地獄から解放されることが出来るんだ。俺は逃げたとしてもまた捕まる可能性が高い…。それなら…。
「分かりました。星秀さんのために俺は渚さんに協力します。」
68
お気に入りに追加
377
あなたにおすすめの小説
監禁されて愛されて
カイン
BL
美影美羽(みかげみう)はヤクザのトップである美影雷(みかげらい)の恋人らしい、しかし誰も見た事がない。それには雷の監禁が原因だった…そんな2人の日常を覗いて見ましょう〜
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
極道達に閉じ込められる少年〜監獄
安達
BL
翔湊(かなた)はヤクザの家計に生まれたと思っていた。組員からも兄達からも愛され守られ1度も外の世界に出たことがない。しかし、実際は違い家族と思っていた人達との血縁関係は無く養子であることが判明。そして翔湊は自分がなぜこの家に養子として迎え入れられたのか衝撃の事実を知る。頼れる家族も居なくなり外に出たことがない翔湊は友達もいない。一先この家から逃げ出そうとする。だが行く手を阻む俵積田会の極道達によってーーー?
最後はハッピーエンドです。
組長様のお嫁さん
ヨモギ丸
BL
いい所出身の外に憧れを抱くオメガのお坊ちゃん 雨宮 優 は家出をする。
持ち物に強めの薬を持っていたのだが、うっかりバックごと全ロスしてしまった。
公園のベンチで死にかけていた優を助けたのはたまたまお散歩していた世界規模の組を締め上げる組長 一ノ瀬 拓真
猫を飼う感覚で優を飼うことにした拓真だったが、だんだんその感情が恋愛感情に変化していく。
『へ?拓真さん俺でいいの?』
執着系義兄の溺愛セックスで魔力を補給される話
Laxia
BL
元々魔力が少ない体質の弟──ルークは、誰かに魔力を補給してもらわなければ生きていけなかった。だから今日も、他の男と魔力供給という名の気持ちいいセックスをしていたその時──。
「何をしてる?お前は俺のものだ」
2023.11.20. 内容が一部抜けており、11.09更新分の文章を修正しました。
3人の弟に逆らえない
ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。
主人公:高校2年生の瑠璃
長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。
次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。
三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい?
3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。
しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか?
そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。
調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる