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お風呂
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「温かいなぁ。やっぱ風呂に浸かると気分が良くなる。いいもんだ。なぁ誠也。お前はお風呂に浸かったりすんのか?」
「…いや。初めて。」
そう。俺の記憶の中での話だが俺は風呂に浸かったことがない。貧乏な家に生まれたから風呂すら入れない時もあった。あと…単に親たちの都合で。母親も父親もいたもののお互いに不倫しあっていた。だからその相手を連れ込んでる時、俺は必然的に野宿をするしかなかった。
「は?誠也は風呂に浸かったこと自体初めてなのか?」
「そう。」
「まじか。なら俺と初めて風呂に浸かったってことだよな。」
「そうなる。」
「そりゃ嬉しいな。もう少し浸かっていようぜ。」
なんでそんな嬉しそうな顔してんだよ。別にこんなの記念日にもなんもなんねぇだろ。相変わらず変な人…。だけどそんな変な星秀さんと過ごすこの時間は嫌な時間じゃない。
「わかった。」
「なぁ誠也。お前の話もっと聞かせてくれよ。」
「俺も星秀さんに聞きたいことがいっぱいある。」
「そうなのか?なら誠也から話していいぞ。」
「ありがとう星秀さん。それで聞きたい事なんだけどなんでこの組の人達は若いやつばっかりなんだ?」
この疑問は俺がここに連れてこられた時に思っていたことだ。組長の治ってやつもまだ20代。そんな組は珍しいと思う。堅気の俺でもわかる。だから気になってたんだ。
「それは組長が元組長を引きずり下ろしたからだ。まぁそれには色々あってな。けど俺は組長のしたことが正しいと思ってる。」
これはあくまで俺が想像する裏社会のことだけどこの世界はなんでもありな世界だと思う。殺しも拷問も。それが許される。拳銃だって持ってんだから。そんな世界で若くして幹部や組のトップに立つって相当大変な事だと思う。俺とは違う大変さ。いつ死ぬか分からない恐怖とかもありそうだな。
「…ヤクザってほんとに大変だ。相当な覚悟がないと出来ねぇよ。」
「ああ。大変さ。それに本当は身内で揉めるなんてあっちゃならねぇ事だからな。けどそれを覆すほどの揉め事があった。だからあれは仕方ねぇ事なんだ。」
「…深く聞かない方がいいなら聞かない。けどやっぱ殺しとかそういうのってほんとにあるのか?」
と、俺が言うと星秀さんは少し迷ったような顔をした。けど相変わらず星秀さんは俺の頭を撫でて俺を抱きしめている。俺もそれが嫌なわけじゃないから抵抗することは無かった。
「そうだな。それに答えを出すとしたらあるが答えだな。正直あんまいい話じゃねぇ。けどお前が聞きたいなら話してやるぞ誠也。」
「…星秀さんはほんとに優しいよね。」
「ん?なんだ急に。」
全身に入れ墨を入れているのに怖いと思わせない星秀さんのオーラ。俺に優しくしてくれるところもそうだ。今も抱きしめてくれてる。あと…勃起してる…。まぁそれは置いといて俺は気になることがあるんだ。
「だから俺、気になることがある。」
「うん。言ってみろ誠也。」
「…なんで星秀さんはヤクザの世界に?」
「はは、お前はほんとド直球なやつだな。お前といると暇しねぇ。」
そう言いながら星秀さんが髪をかきあげた。その後俺の事を見てまた大笑いをし始めた。
「ほんとに面白いやつだ。なぁ誠也。キスしていいか?」
「……え、と、」
「1回だけ、な?」
と、星秀さんは言うと俺の答えを聞かずにキスをしてきた。唇に。優しく軽いキスだった。その後星秀さんは微笑んで話を聞かせてくれた。
「誠也。そうだなぁ。なんて答えるのが正解なんだろうな。まぁ簡単に言えば俺はこの世界でしか生きれなかったんだ。普通の生活が俺には無理だったんだよ。」
「…そうだったのか。」
「そうそう。だから嫌々この世界に入ったわけじゃないんだ。あいつらもそうだ。」
あいつらってのは渚たちのことだよな。訳ありではあるものの皆嫌々入ったわけじゃない。俺はそれを聞いて少し安心した。
「なら良かった。少し心配だった。」
「お前が?俺の事を?」
「うん。」
「馬鹿言うんじゃねぇ誠也。お人好しにも程がある。お前さっき俺らに何されたのか忘れたのか?」
いや忘れたわけじゃない。けど俺はこれまで誰にも相手にして貰えなかった。みんな冷たい目で俺を見る。仮に寄ってきたとしてもそれは俺の顔が目当てのやつだけ。だけど星秀さんは中身を見てくれる。渚たちはそんな星秀さんの仲間だ。だから別にいい。怒ってもない。
「忘れてない。」
「…誠也、お前は根っからのお人好しなのか?」
「そんなの知らねぇ。俺は俺のしたいように生きてるだけだ。」
「そうか。俺はその生き方嫌いじゃねぇよ。」
「なんだそれ。」
「はは、だが誠也。お人好しもいい所にしてろよ。そうしねぇとあいつら調子乗るし組長だってお前の嫌なこといっぱいするかもしれねぇから。」
「大丈夫だ。」
だって逃げるから…なんて言わねぇけどな。だが気をつけねぇと星秀さんは勘がいい。なんて俺が思っていると…。
「誠也。正直に答えてくれ。お前は今、逃げようと思ってる?」
「…いや。初めて。」
そう。俺の記憶の中での話だが俺は風呂に浸かったことがない。貧乏な家に生まれたから風呂すら入れない時もあった。あと…単に親たちの都合で。母親も父親もいたもののお互いに不倫しあっていた。だからその相手を連れ込んでる時、俺は必然的に野宿をするしかなかった。
「は?誠也は風呂に浸かったこと自体初めてなのか?」
「そう。」
「まじか。なら俺と初めて風呂に浸かったってことだよな。」
「そうなる。」
「そりゃ嬉しいな。もう少し浸かっていようぜ。」
なんでそんな嬉しそうな顔してんだよ。別にこんなの記念日にもなんもなんねぇだろ。相変わらず変な人…。だけどそんな変な星秀さんと過ごすこの時間は嫌な時間じゃない。
「わかった。」
「なぁ誠也。お前の話もっと聞かせてくれよ。」
「俺も星秀さんに聞きたいことがいっぱいある。」
「そうなのか?なら誠也から話していいぞ。」
「ありがとう星秀さん。それで聞きたい事なんだけどなんでこの組の人達は若いやつばっかりなんだ?」
この疑問は俺がここに連れてこられた時に思っていたことだ。組長の治ってやつもまだ20代。そんな組は珍しいと思う。堅気の俺でもわかる。だから気になってたんだ。
「それは組長が元組長を引きずり下ろしたからだ。まぁそれには色々あってな。けど俺は組長のしたことが正しいと思ってる。」
これはあくまで俺が想像する裏社会のことだけどこの世界はなんでもありな世界だと思う。殺しも拷問も。それが許される。拳銃だって持ってんだから。そんな世界で若くして幹部や組のトップに立つって相当大変な事だと思う。俺とは違う大変さ。いつ死ぬか分からない恐怖とかもありそうだな。
「…ヤクザってほんとに大変だ。相当な覚悟がないと出来ねぇよ。」
「ああ。大変さ。それに本当は身内で揉めるなんてあっちゃならねぇ事だからな。けどそれを覆すほどの揉め事があった。だからあれは仕方ねぇ事なんだ。」
「…深く聞かない方がいいなら聞かない。けどやっぱ殺しとかそういうのってほんとにあるのか?」
と、俺が言うと星秀さんは少し迷ったような顔をした。けど相変わらず星秀さんは俺の頭を撫でて俺を抱きしめている。俺もそれが嫌なわけじゃないから抵抗することは無かった。
「そうだな。それに答えを出すとしたらあるが答えだな。正直あんまいい話じゃねぇ。けどお前が聞きたいなら話してやるぞ誠也。」
「…星秀さんはほんとに優しいよね。」
「ん?なんだ急に。」
全身に入れ墨を入れているのに怖いと思わせない星秀さんのオーラ。俺に優しくしてくれるところもそうだ。今も抱きしめてくれてる。あと…勃起してる…。まぁそれは置いといて俺は気になることがあるんだ。
「だから俺、気になることがある。」
「うん。言ってみろ誠也。」
「…なんで星秀さんはヤクザの世界に?」
「はは、お前はほんとド直球なやつだな。お前といると暇しねぇ。」
そう言いながら星秀さんが髪をかきあげた。その後俺の事を見てまた大笑いをし始めた。
「ほんとに面白いやつだ。なぁ誠也。キスしていいか?」
「……え、と、」
「1回だけ、な?」
と、星秀さんは言うと俺の答えを聞かずにキスをしてきた。唇に。優しく軽いキスだった。その後星秀さんは微笑んで話を聞かせてくれた。
「誠也。そうだなぁ。なんて答えるのが正解なんだろうな。まぁ簡単に言えば俺はこの世界でしか生きれなかったんだ。普通の生活が俺には無理だったんだよ。」
「…そうだったのか。」
「そうそう。だから嫌々この世界に入ったわけじゃないんだ。あいつらもそうだ。」
あいつらってのは渚たちのことだよな。訳ありではあるものの皆嫌々入ったわけじゃない。俺はそれを聞いて少し安心した。
「なら良かった。少し心配だった。」
「お前が?俺の事を?」
「うん。」
「馬鹿言うんじゃねぇ誠也。お人好しにも程がある。お前さっき俺らに何されたのか忘れたのか?」
いや忘れたわけじゃない。けど俺はこれまで誰にも相手にして貰えなかった。みんな冷たい目で俺を見る。仮に寄ってきたとしてもそれは俺の顔が目当てのやつだけ。だけど星秀さんは中身を見てくれる。渚たちはそんな星秀さんの仲間だ。だから別にいい。怒ってもない。
「忘れてない。」
「…誠也、お前は根っからのお人好しなのか?」
「そんなの知らねぇ。俺は俺のしたいように生きてるだけだ。」
「そうか。俺はその生き方嫌いじゃねぇよ。」
「なんだそれ。」
「はは、だが誠也。お人好しもいい所にしてろよ。そうしねぇとあいつら調子乗るし組長だってお前の嫌なこといっぱいするかもしれねぇから。」
「大丈夫だ。」
だって逃げるから…なんて言わねぇけどな。だが気をつけねぇと星秀さんは勘がいい。なんて俺が思っていると…。
「誠也。正直に答えてくれ。お前は今、逃げようと思ってる?」
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