怖いお兄さん達に誘拐されたお話

安達

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目覚め

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「……………………っ。」



いつの間にか俺は気絶してしまっていたようで気がついたらベットの上にいた。けど体が痛くて動くこともままらねぇ状態だ。



「く、そ………っ。」



せめてここがどこなのか…出口がどこにあるのかだけでも知りたい。なのにそれすら出来ねぇ。好き勝手されただけじゃなく何もされてない今にまで体を縛られる。こんなに腰が痛いことはかつてなかった。腰だけじゃない…足も…腕も…喉も…体全部が痛い。そんで…怖い。ここが怖い。



「………でく、ち、見つけねぇと…。」



俺は痛む体と恐怖心を抑え部屋の中を見渡した。だけど窓は一つもない。扉は1つ。多分あそこからしか出られない。その先はどうなってるのか俺は眠っていたから分からねぇ。初めに連れてこられた部屋とは違う。ここは一体どこなんだ。



「……く゛っ、い、てぇ…。身体が痛てぇ…。」



少しでも部屋の中を探ろうと俺は立ち上がろうとした。だが起き上がることも出来そうにない。頑張ろとしてもそれを遮るかのようにして激痛が走る…。



「………………くそ。」



俺は思わずベットを殴った。スマホも何も無い。連絡を取る相手がいるって訳じゃあねぇけどせめてスマホがあれば…。



「起きたようだな誠也。」

「………っ!」



こいつ…いつ部屋に入ってきたんだ?全然気づかなかった。今こいつの顔なんて見たくねぇのに。こいつを見ると…怖くて…何も出来なくなる。



「誠也。どうしたんだ。そんなに震えて。大丈夫だ。組長は今部屋にいるから。俺はお前を確認しに来ただけ。今は何もしねぇよ。まぁそれはお前次第かもしれねぇけどな。」

「……………っ。」



怖い…。怖い…。こいつたしか健二って名前だったはず。あの治って男の部下だ。そんで俺に酷いことをした張本人。今度は何をしにしたんだ…。



「そんなに俺が怖いか?ん?」



当たり前だ。怖くないはずがない。俺とお前の力の差は天と地の差があるんだから。



「お?また黙りか?まぁ喉痛てぇよな。あんなに叫んでたらそりゃ当然だ。」



そう言って健二って男はベットの中に入り込んできた。その健二って男から俺は逃げたかったのに怖くて体が震えて…逃げることも出来なかった。逃げたら何をされるかもう知ってるから。



「偉いじゃねぇか誠也。逃げないなんて成長したなぁ。まぁあんだけ虐めればこうなるか。あん時お前狂ったように泣いて謝ってたもんな。」



なんでこいつ笑ってんだよ…。何が楽しんだ。俺はあんな目に遭ってトラウマなのに…。今だって怖くて体が震えてる。気絶しても何度も起こされまた泣かせさせられる。それがどれだけ苦しかったか…。俺の中でこの記憶が消えることは無いと思う。



「けど大丈夫だ。今はまじで何もしねぇから。自己紹介でもしよう。ほら、大丈夫だからそろそろ震え治まれよ。」



そんなこと言われても無理だ。お前が近くにいたら怖くて仕方ねぇんだよ。反抗したいって気持ちが無くなるぐらいに怖い。なのにこいつは俺の頭とか撫でてくるんだ。抱きしめてくるんだ。俺の恐怖を煽るかのようにして。



「……………っ。」

「ま、いっか。震えも時期に治まるだろ。しばらく一緒に暮らすことになんだから焦らなくてもいいよな。」



そんなふうになって溜まるか。逃げ出してやるんだ俺は…。けどこのままだと本当にそうなりそうで…怖い。



「俺の名前は泰松 健二(やすまつ けんじ)、23歳だ。覚えとけよ?そんで俺の事は健二さんって呼べ、な?分かってると思うがこれは提案じゃねぇ。命令だ。その意味がもうお前なら分かるよな。誠也。」



分かる…。痛いほど分かる…。逆らったらまたあんな目に遭うってことも…。



「…わか、ってます。」

「いい子だ誠也。そんでさっき俺と一緒にいたお方だが…あーお前の愛人の方な?分かるだろ?あのお方はこの組の組長だ。だが組長はまだ27歳。若いだろ?お前は16歳だからまぁ10歳差か。近いっちゃ近いな。」



俺の年齢までバレてる…。ていうか相変わらずこの人は治って男を褒めるのが好きだな。まぁけど確かに言ってる通りかもしれない。組長ってことは1番上の人ってことだよな。だったら27ってのは確かに若い。



「だから組長はちょくちょく命が狙われんだよ。そのために俺がいるって訳だ。だから俺とは長い付き合いになる。言っちまえば一生かもな。お前は組長の愛人だから。」



何回も言うなよ気持ち悪い。ていうか愛人になったんだ俺…。さっき、つーか出会った時はペット?とか言われてたのに…。なんか更に気持ち悪いもんになった。



「…愛人、ですか?」

「そうだ。あ?嫌なのか?」

「…………っ。」



やめてくれよその怖い声…。その怖い声もその目も全部が俺は怖いんだよ…。そんな情けない自分に打ちのめされそうになる…。けど今は逆らっていいことは無い。だから…。



「ちが、」

「あ?」

「違います…。」

「そうだよな。ならなんでそう聞いたんだ?」

「最初はペットって…。」

「ペット?組長がお前にそう言ったのか?」

「…はい。」



俺がそう言うと健二さんは少し考え込んだ顔をした。つかこいつ…いつまでここにいんだよ。さっさとどっか行け…。



「そうかそうか。そうなのか。」

「…どうしたんですか?」

「いや組長はいつも誰かしらを拉致するんだがな。」



最低だ。反吐が出る。そいつらを殺してるって確か言ってたよな。俺は思わずこいつを睨みそうになったけど耐えた。



「ペットとか言わねぇんだよ。組長の中でペットって存在は大切だから。」



…は?何言ってんだ。大切?大切なやつにあんなことをするか普通…。冗談言うなよ…。



「……そうなんですね。」

「ああ。それがしかも今や愛人だ。お前は相当運がいいな。」



良くねぇよ。死んだ方がマシだ…。



「殺されずにここにいるどころかこんな部屋まで用意されてんだから。しかもお前親との関係も良くねぇだろ。」



なんで知ってんだよ…。それ…。ヤクザってのは情報も全部抜き取るのか…?こいつらいつから俺を尾行してた…?



「…な、んでそれ…。」

「知ってるに決まってんだろ。馬鹿なのかお前。お前の事は全部知ってる。あ、そうそう。これを伝えるように組長から言われたんだ。お前、学校退学してるからな。」

「…はい?」
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