極道達に閉じ込められる少年〜監獄

安達

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25話 嵐

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「おい彌生、その辺にしてやれ。」


さっきからずっと助けを求めてたのに誰一人として助けてくれなかった。だがあまりにも彌生がしつこいこともあり肱川が止めた。そのおかげで翔湊は彌生から解放されることが出来たが止めるのが遅いよと翔湊は肱川を見る。



「なんだその目は。せっかく止めてやったのによ。」



肱川は恩を仇で返すとは何事だと言いながら翔湊を押し倒した。翔湊は感情が顔に出やすい自分を恨む。やっと彌生から解放されたのに今度は肱川に捕まってしまった。しかも腕を掴まれて翔湊に覆い被さるようにして上に乗られている。まだ彌生に拘束されていた時の方が動けていた。



「…あの肱川さん、離して欲しいなぁ。」

「俺傷ついたんだわ。せっかくお前を助けてやったのにそんな恨めしそうな目をされてよ。」



耳を撫でられながら悪い笑みを浮かべて肱川は翔湊を見る。やばい。これやばい。言葉選びを間違ったら肱川さんを余計に興奮させちゃう。翔湊はそう思い慎重に肱川と話をしようとしたが焦りからか咄嗟に思っていたものとは違う言葉を言ってしまう。



「ごめん、謝るから!」

「俺は別に謝って欲しんじゃねぇよ。」



翔湊は肱川に鼻をつままれた。そして肱川は翔湊と鼻先が当たるほど顔を近づける。ここまで来たら肱川に何をしたら解放してくれるのか翔湊は嫌でも分かってしまう。



「これで分かるだろ?俺が何をして欲しいのかが。」

「…分かんない。」



そう言って翔湊は顔を背けた。本当は何をして欲しいかなんてとうに分かっている。キスをすれば肱川は解放してくれるだろう。だがここで翔湊が肱川にキスをするのはかなり恥ずかしい事だった。なぜならみんなが見ているから。



「翔湊。」



肱川は翔湊の頬を掴んで自分と無理やり目を合わせさせた。顔を掴まれてしまえば肱川を見るしかなくなる。逃げ道が無くなった翔湊は勇気を振り絞って後先考えずに肱川に軽くキスをした。



「良い子だ。」



これでやっと解放される。そう安堵して翔湊はソファから降りようとするも肱川は自分の上から退いてくれない。まだ何かするつもりなのではないかと翔湊は勘づく。恐る恐る肱川の顔を見ると案の定彼は意地悪い笑みを浮かべていた。



「良い子には褒美をやらんとな。」

「いらない!」



肱川にもう一度キスされそうになり翔湊は必死で顔を背けた。その様子を見て松永が大笑いする。



「だってよ肱川。お前の褒美なんぞ翔湊は求めてねぇよ。」

「うるせぇな横から口を挟むんじゃねぇ。」

「事実だろ。」



松永が2人の元にやってきてそう言った。翔湊は松永が自分を助けに来てくれたのだと思っていた。だが違ったようだ。松永は助けてくれるどころか翔湊にちょっかいをかけてくる。頬をつんつんと指でつついたり撫でたりとしょうもない揶揄いをかけてくるばかりで全く助けてくれる気配がない松永から翔湊は顔を背けた。



「翔湊、こいつなんかよりも俺の方がいいよな?」

「どっちも嫌だ。」

「はは、お前らどっちも嫌われてんじゃねぇか。」



遠くで見ていた橘修がソファで戯れている3人を見てガバガバと笑った。人の不幸を笑うんじゃねぇと松永に野次を飛ばされたがそれも無視して楽しそうに笑っていた。だが楽しいのは傍観してる海田や橘修、彌生のみ。実際に拒否られた松永と肱川は楽しいはずがない。



「翔湊、今なんつった?」

「俺らのことが嫌なわけねぇよな?」

「今の言葉取り消して訂正しねぇとお仕置きすんぞ。」



服の中に手を入れられて乳首を摘まれた。俺が弱いって分かっててそういうことしてくるのほんとにどうかと思うけどね。翔湊はそう言いたいがこれ以上彼らをヒートアップさせるわけにはいかないので本音を抑えた。



「っ…、2人とも大好きだから!」



ヒートアップさせない為にそう言ったがまぁでもこれは事実である。翔湊はみんなのことが大好きだ。正直になれないだけで尊敬もしているし信頼もしている。嘘ではないが恥ずかしいため実際に伝えるというのは苦手だった。



「ああ、知ってるぜ。お前俺らのこと昔っから大好きだんな。」

「相変わらず素直じゃねぇな。」

「うるさい。お腹すいたからいい加減退いて。」

「仕方ねぇな。」



そう言って2人は俺の上から退いてくれたけど自由にはなれなかった。覆いかぶさられている状態から肱川の膝の上に乗せられた体制に変わっただけで身体自体は相変わらず自由に動かせそうにない。このまま行くときっと食事も…。



「ほら翔湊、食べさせてやる。」



やっぱりそうなるか。ここで俺がどれだけ嫌がっても食べさせようとしてくるし俺に自分で食べさせてくれない。しかも俺があんまり駄々をこねると口移しで食べさせられる羽目になるので翔湊には選択肢が初めからない。



「お、やけに素直に口を開けるんだな。」



その事を占めたと思った松永は手に持っていたスプーンを口に運んだ。それを口に含むと翔湊の後頭部に手を当てて唇を合わせた。そして松永は指を翔湊の口の中にツッコんで唇が開いたことを確認すると松永は口に含んでいたものを流し込んだ。
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