極道達に閉じ込められる少年〜監獄

安達

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1話 衝撃の事実

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ヤクザの家族に育てられたと言っても翔湊はとても幸せな人生を歩んでいた。そんな平穏な日常を変える一通の手紙が届いた。


「翔湊、お前宛に手紙届いてんぞ。」

「ありがとう西嶋さん。」


翔湊はわざわざ自分の部屋まで手紙を届けに来てくれた組長の西嶋にお礼を言った。西嶋は翔湊が1番多く関わっている組員だ。言わば翔湊のお世話係。


「おう。」


翔湊はお父さんからこの家から出ることを許されていない。外の世界は危険だから。その代わりに最低限の勉学は組員から教えてもらい、兄達からも沢山のことを教えてもらい不自由なく生活している……はずだった。


「誰からだろ。」


手紙が入っている封筒にはどこにも送り主の名前や住所が書いていない。


「とりあえず開けてみよ。」


翔湊が封筒を開け、中を見てみると1枚の便箋が入っていた。そして中に書いてあった内容により翔湊は驚いてのどが塞がって何も言う事ができ無くなってしまった。


「え、なにこれ……。」


にわかには信じがたいが、手紙の内容はーーー。

『拝啓 俵積田 翔湊様。
この内容を読んで驚くことだろう。しかし全て事   実だ。だからどうか信じて。まず翔湊は俵積田家の人間じゃない。君はそこにいるべき人じゃないんだ。君は体目的で養子に入れられたんだ。翔湊が今まで襲われなかったのはまだ大人になっていないから。でももう17歳になった。そのままそこに入れば必ず襲われてしまう。取り返しがつかなくなってしまう。それに家から出ることを1度も許されないなんておかしいだろ?とりあえず交番に駆け込んで。その後俺が助けに行くから。やっと翔湊を助けられる手筈が整ったんだ。安心して慎重にその監獄から逃げて。翔湊の実の兄より。』


翔湊は迷った。なぜなら家族や組員の言ったこと以外信じたことがないからだ。いや、それしか信じることが出来なかった。生きているうちに関わった人間がその人たちだけだったから。


「お父さんに聞いてみよ。こんなのデタラメに決まってる。俺の体目的なんてそんなこと絶対にあるはずない。」


翔湊は急いで自分の部屋を出て父の元に向かった。


「おい翔湊。そんなに走ったら危ないだろうが
どうした?」

「俺急いでるんだ肱川 (ひしかわ) さん。もう行くね!」

「待て。その手紙はなんだ。」


西嶋同様、組員の肱川。だが、西嶋とは違い肱川はこの組の幹部だ。持っていた手紙を奪われそうになり翔湊は奪われぬようにサッと避けた。


「やましいもん持ってんじゃねぇだろうな。」

「違うよ!」

「なら今すぐ見せろ。」


翔湊は9割近く手紙の信じていなかった。でも肱川がここまで焦る理由が手紙の内容だとしたら納得が行く。これは翔湊に知られてはまずいことだから。


「やだ!」

「俺の力に勝てると思ってんのか?」


肱川は感ずいた。今まで翔湊が自分に歯向かってきたことなど1度もなかったからだ。その為きっと自分が養子でなんのためにこの組に入れられたのか知ってしまったのだろう、と気づいたのだ。外部の人と接触がない翔湊が手紙を隠す理由なんてそれしかないから。しかしこれは肱川の想定内だった。いつかはボロが出てバレてしまうのだから。


「あーぁ、やっぱりな。」


肱川は翔湊を簡単にねじふせて手紙を取り上げ中身を見た。


「返して!」

「馬鹿かお前。返すわけねぇだろ。おい!誰かいるか?」

「ここに。」


近くにいたのだろう。肱川の声を聞いてすぐに駆けつけてきた。その者は肱川の直々の部下だった。


「全部翔湊にバレた。組長に知らせてくれ。」

「承知しました。」


肱川は部下に指示をした。組長は翔湊の父親だ。いや正しくは父親と思っていた人だ。


「離せ!」


翔湊は肱川の足を思いっきり踏んで拘束が緩んだ隙を逃さず走って逃げた。


「おい待て翔湊、…って追いかけねぇけどな。はは、組員が死ぬほどいる居るこの屋敷から逃げられわけねぇだろ。だからちょっとばかり良い夢を見させてやるよ。」


肱川を含め幹部は5人おり、皆30代だ。翔湊が全ての事実を知り逃げだした時のために色んな準備をしている。肱川は一先幹部全員にこのことを知らせ、部下に指示を出した。そして組長の実の息子の3人に連絡をした。それは翔湊が兄だと思い慕っていた人物だった。


「逃げなきゃっ、早く下にっ、早く!」


念には念をと、翔湊の部屋は1番上の階であった。5階建ての大きな屋敷のため、5階と言っても下の階に行くまで時間がかかる。翔湊は死に物狂いで走って逃げた。

組員達がわざと玄関の先まで逃がされているとは知りもせずにー。


「着いたっ、……うあっ、!」


翔湊が玄関のドアに手をかけた時、後ろから力いっぱい引かれた。


「翔湊、いい夢見れたか?」


後ろから腕を引かれた人物に両腕でガッチリ拘束されたため翔湊は顔だけ上げた。するとそこにはこの組の幹部の松永が居た。


「な、んで……。」

「逆になんで逃げれると思ったんだよ。さっさと戻んぞ。」


今度は橘修(たちばな)に頬を撫でられながらそう言われた。橘修も幹部である。肱川の連絡を受けて翔湊の所まで来たのだ。


「やだっ、おねがい、離してよっ、」

「怯えた顔も可愛いな。もう我慢しなくていいとかほんとに最高だ。でもなぁ翔湊、いい子にしてた方が後悔しねぇぞ。」


同じく幹部の彌生(やよい)にも軽く脅され翔湊は涙が止まらなくなった。


「こんなのっ、酷すぎるよっ…。」

「知らなきゃ幸せだったのにな。とりまえず組長が呼んでっからさっさと行くぞ。」


4人と同じく組の幹部である海田も駆けつけ、翔湊を組長の元に行くように則した。5人の幹部が集結し、ほかの組員はなんの騒ぎかとソワソワしている。


「おい肱川、翔湊が抵抗を続けるようなら気を失わせろ。」

「へいへい。」


肱川は海田に言われ、翔湊のみぞおちを殴った。翔湊は一瞬苦しんだ顔をしたがその後は眠りに落ちた。


「おし、大人しくなったな。」


気を失った翔湊を肱川は抱きかかえた。


「急ぎ足で行くぞ。組長を怒らせたくねぇからよ。」

「だな。」


海田は4人を急かして急ぎ足で組長の所まで向かった。


「早く抱きてねぇな。」


抱きかかえている翔湊の顔を愛おしそうにみながら肱川が言った。


「俺もだ、でも先に若様たちだろうな。」


少し残念そうに彌生が言う。しかし組長の実の息子のため逆らうことは許されない。だから大人しく言うことを聞くしかないのだ。


「その後で存分に楽しめばいいだろ。」


と、松永。


「それまで待てねぇよ。」


橘修が松永に噛み付くように言った。


「お前らつべこべ言わずにさっさと歩け。」

「海田は相変わらず怖いねぇ。」


海田に舌打ちされたが呑気に笑いながら肱川は歩いた。こんな事をしているうちに組長の部屋の前に到着した5人は身なりを整え、気持ちを入れ替えた。


「入るぞお前ら。」


海田がノックをして6人は部屋に入っていった。5人の幹部の表情はこれまで緩んでいたが、入った瞬間引き締まった。


「失礼します組長。遅れて申し訳ありません。翔湊と連れてきました。」

「ああ、待っていたぞ。」


タバコを吸いながら肱川に抱かれている翔湊をみて組長は悪い顔をする。


「どうされますか?」

「バレてしまったのなら仕方が無い。これから躾をして息子達の玩具にでもしろ。翔湊を家に向い入れた理由がそれだからな。お前らも好きなだけ遊ぶといい。言うことを聞かないようならちゃんと調教しとけよ。」


海田らは楽しみで仕方がない気持ちを抑えた。


「「「はい。」」」

「仕事に戻れ。あ、忘れていた。もし翔湊が俺に会いたいと言ったら俺はもう二度と翔湊に会わない、そう伝えとけ。

「承知しました。では、失礼します。」


翔湊を含む6人は組長の部屋を後にした。


「どうする?」

「若様の所に行くに決まってんだろ。」

「その前に少しだけいじめてもバレねぇだろ。」


彌生が気を失っている翔湊の服の中に手を忍ばせ横腹を撫でた。


「ふざけるな。俺は若様の反感を買いたくない。ほら、さっさと行くぞ。」


海田が彌生の手を払い除け、1発殴った。


「ほーい。」


松永と肱川は殴られたのにもかからずピンとしている彌生に引き顔をする。橘修はと言うと、1人でさっさと若様の所へと向かって行っていた。


「おい橘修、1人でノコノコ歩いてんじゃねぇよ!」

「てめぇらが遅いんだよ。」


置いていかれた4人は走って橘修のところまで合流し、目的地を目指して行った。
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